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「ストレス」が原因で「逆流性食道炎」を発症することはあるの?【医師監修】

 公開日:2025/09/24
「ストレス」が原因で「逆流性食道炎」を発症することはあるの?【医師監修】

逆流性食道炎は、胃酸などの消化液が食道に逆流することで炎症を起こし、胸やけや喉の違和感などの症状を引き起こす病気です。近年は食生活の欧米化やデスクワーク中心の生活スタイルの影響に加え、精神的なストレスとの関連も注目されており、患者数が増加傾向にあります。

特にストレスは、胃腸の働きや自律神経に影響を与え、逆流性食道炎の発症や悪化の引き金となることがあります。この記事では、逆流性食道炎の基本的な知識から、ストレスとの関係性、さらにストレスが原因で発症した場合の具体的な対処法までを詳しく解説します。再発予防のための生活の工夫も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

逆流性食道炎の概要

逆流性食道炎の概要

逆流性食道炎はどのような病気ですか?

逆流性食道炎とは、胃の中にある胃酸や消化酵素(ペプシンなど)が、通常は逆流しないはずの食道に戻ってしまい、食道の粘膜に炎症を起こす病気です。

胃の中は強い酸性の環境ですが、胃の内側はそれに耐えられるようにできています。一方、食道は酸に弱く、胃酸が繰り返し逆流してくると粘膜が傷つきやすくなり、炎症が起こります。

この状態が続くと、食道の内側がただれてびらん潰瘍(かいよう)ができたり、傷が治る過程で食道が狭くなる狭窄(きょうさく)といった合併症につながるおそれもあります。早めの予防や治療が重要です。

逆流性食道炎の症状を教えてください

逆流性食道炎でよく見られる症状は、胸のあたりが焼けつくように感じる胸やけと、胃の内容物が喉の方まで上がってくる呑酸(どんさん)です。これらはもっとも代表的な症状とされています。

そのほかにも、喉に何かがつかえているように感じる異物感、声のかすれ、原因がはっきりしない咳、胸の不快感、食後のげっぷや食べ物のつかえ感など、多様な症状が現れることがあります。これらの症状は、特に食後や横になったとき、または夜間に強くなる傾向があります。

逆流性食道炎|原因とストレスの関係

逆流性食道炎|原因とストレスの関係

逆流性食道炎の主な原因を教えてください

逆流性食道炎の主な原因には、食道下部括約筋(胃と食道の間にある筋肉)の機能低下や、胃酸の分泌過多腹圧の上昇があります。脂肪分の多い食事や過食、喫煙、飲酒などの生活習慣もこれらに影響を与えるとされています。また、加齢や肥満、姿勢の悪さ、便秘なども発症リスクを高めます。こうした複合的な要因が重なることで、胃の内容物が逆流しやすくなり、炎症を引き起こす状態になります。

逆流性食道炎を発症するメカニズムを教えてください

胃の中の内容物、特に酸性の胃液は、本来胃の中だけで働きます。しかし、下部食道括約筋のゆるみや腹圧の増加により、胃酸が食道へと逆流してしまうことがあります。食道の粘膜は酸に対する防御力が低いため、繰り返し胃酸にさらされることで炎症やびらんが生じます。また、胃の内容物が長時間胃内にとどまることで、逆流の頻度が高まりやすくなり、症状が慢性化する要因にもなります。

逆流性食道炎とストレスには関係がありますか?

はい、ストレスは逆流性食道炎の発症や悪化に深く関係しています。強いストレスがかかると、自律神経の働きが乱れ、胃酸の分泌が過剰になったり、胃の動きが鈍くなったりすることがあります。また、ストレスによって食道下部括約筋の緊張が低下することで、逆流が起こりやすくなります。精神的な緊張や不安が続くことで、胃の内容物が排出されにくくなり、胃に圧力がかかる時間が長くなることも要因のひとつです。このように、ストレスは消化管全体の働きに影響を与えるため、逆流性食道炎の予防や治療において無視できない要素となります。

ストレスで逆流性食道炎になったときの対処法

ストレスで逆流性食道炎になったときの対処法

逆流性食道炎が疑われるときは何科を受診しますか?

逆流性食道炎の可能性がある場合は、まず消化器内科の受診がすすめられます。胸やけ、呑酸、喉の違和感、咳などの症状が続く場合は、内視鏡検査などで食道の状態を確認する必要があります。近隣に専門の消化器内科がない場合でも、一般内科で初期評価を受けることは可能です。早めの診察により、ほかの疾患との見分けや適切な治療の開始が期待できます。

ストレスが原因で逆流性食道炎になった場合の治療法を教えてください

ストレスが関係する逆流性食道炎の治療では、薬による治療生活習慣の見直しの両方が重要になります。

薬物療法では、胃酸の出る量をおさえる薬が使われます。代表的なのがプロトンポンプ阻害薬(PPI)H2ブロッカーと呼ばれる薬で、胃の中の酸を減らし、荒れた食道の粘膜を修復しやすくします。

一方で、生活習慣の改善も欠かせません。暴飲暴食を避ける、就寝前2〜3時間は食事を控える、前かがみや腹部を圧迫する姿勢を避けるといった日常的な工夫が大切です。食事は脂っこいものや刺激物を控え、腹八分目を心がけるとよいでしょう。

また、ストレスが引き金となっている場合は、心身を整えるための工夫も治療の一環になります。十分な睡眠をとる、ゆっくり湯船につかる、呼吸法や瞑想などのリラックス法を取り入れる、ウォーキングなどの軽い運動を続けることも効果的です。

必要に応じて、ストレスや不安をやわらげる目的で、抗不安薬や自律神経のバランスを整える漢方薬が処方されることもあります。

ストレスが原因の逆流性食道炎は自然治癒しますか?

軽度で一時的なストレスによって起こる逆流性食道炎であれば、ストレスが解消され、生活リズムが整うことで自然に症状が改善することもあります。しかし、症状が長期間続く場合生活に支障をきたす場合は、治療が必要です。自己判断で放置すると、食道粘膜にびらんや潰瘍ができるなど、状態が悪化する恐れもあるため注意が必要です。

ストレスがある限り逆流性食道炎は再発しやすいですか?

はい、ストレスが継続していると、再発のリスクは高まります。たとえ薬で症状が改善しても、根本的な原因であるストレスが解消されていなければ、胃酸の分泌や消化機能への影響が続き、症状の再燃につながります。そのため、治療が終わった後も、ストレス対策や規則正しい生活を続けることが、長期的な再発予防には欠かせません。心身のバランスを整える意識を持つことが、安定した生活の維持につながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

 逆流性食道炎は、胃酸などの消化液が食道に逆流することで粘膜が傷つき、胸やけや喉の違和感などの不快な症状が現れる病気です。食事の内容や姿勢、加齢、肥満などの身体的要因に加えて、近年ではストレスが引き金となるケースも増えており、生活全体の見直しが重要になっています。

特にストレスは、自律神経を介して胃酸の分泌や食道の運動機能に影響を与えるため、薬による治療だけでなく、睡眠や運動、気分転換などを通じた心身のケアも不可欠です。症状が軽いうちに対処すれば、再発や慢性化を防ぐことも可能です。

違和感が続く場合は早めに消化器内科などの医療機関を受診し、必要な検査と適切な治療を受けましょう。ストレスと上手につき合いながら、無理のない範囲で生活を整えていくことが、逆流性食道炎と向き合う第一歩となります。

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