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「帯状疱疹」の痛みや辛さを緩和する「治療法」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/12/22
「帯状疱疹」の痛みや辛さを緩和する「治療法」はご存知ですか?【医師監修】

帯状疱疹は、体内の神経に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化して起こる疾患です。
初めてVZVに感染すると水痘(水ぼうそう)を発症します。水痘を発症するとVZVは皮膚から神経に移動し、後根神経節(こうこんしんけいせつ)という神経の束の内部に潜伏します。皮膚症状が回復しても神経節に潜伏するVZVは生涯留まり続け、再活性化して発症するのが帯状疱疹です。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

帯状疱疹の基礎知識

帯状疱疹の基礎知識

帯状疱疹の原因を教えてください

後根神経節に潜伏したVZVが加齢やストレス、過労などで免疫が低下したことをきっかけに、再活性化したことが原因です。
体内にいるVZVを排除することはできません。一度でも水ぼうそうに感染したか、水痘ワクチンを接種した方は誰でも帯状疱疹を発症するリスクがあります。

VZVが再び活動を始めると、神経の根元(神経節)で増え始めます。さらに神経を通り、皮膚の表面まで移動します。そして皮膚の細胞に感染して増殖を始めます。ウイルスが通った神経に沿って、赤いブツブツした皮疹や水ぶくれ(水疱)が帯状に現れます。

帯状疱疹の症状にはどのようなものがありますか?

皮膚の痛み
身体の片側の皮膚表面にピリピリした痛み、かゆみを感じます。針で刺されたような痛み、電気で痺れたような痛みなど、感じ方はさまざまです。
帯状疱疹診療ガイドライン2025では、皮疹が出2日前~2週間前に70~80%の患者さんが痛みやかゆみを感じたとあります。
帯状疱疹の痛みの原因はVZVに神経を傷つけられた痛みと、皮膚の炎症によるものです。VZVは神経を包んでいる膜(神経周膜)に感染して傷つけます。

皮疹
皮疹は赤いブツブツから始まります。数日で水疱に変化した後に化膿し、やがてカサブタ(痂皮)に変化します。皮膚の炎症は通常、数週間ほどで回復します。

微熱、頭痛など
20%未満の患者さんには微熱、頭痛、不快感など、風邪のような症状が見られます。

ハント症候群
顔に帯状疱疹が発症するケースがあります。眼や耳の神経にダメージを与え、顔や耳などに皮疹が表れます。治癒率は治療を行っても70%、未治療では30%で、後遺症が残るリスクがある疾患です。
顔面麻痺や難聴、めまいなどの後遺症を発症するリスクがあるため、もし顔にピリピリした鋭い痛みや赤い発疹ができたら、すぐに皮膚科を受診しましょう。

目の疾患
眼にVZVが感染すると、結膜炎など目の疾患を併発します。アシクロビル眼軟膏の併用が望ましいです。

そのほか
重症化すると運動麻痺を起こし、腕が上がらなくなることがあります。外陰部に発症すると尿閉を起こすことがあります。これらの症状が出た場合は入院が必要です。

帯状疱疹の治療法

帯状疱疹の治療法

帯状疱疹を完治させる治療法はありますか?

帯状疱疹の症状を抑える治療法はあります。しかし原因ウイルスの消滅が完治と定義するなら、現代でも治療法はありません。

急性期の症状を治療するために抗ウイルス薬を投与します。内服薬か点滴でアシクロビルやバラシクロビル、ファムシクロビルなどの全身投与を行います。妊婦の方や授乳中の方にも大きな問題はなく、推奨される治療法です。

帯状疱疹の痛みや辛さを緩和する治療法を教えてください

痛みの緩和には飲み薬(内服薬)を用います。塗り薬(外用薬)は評価が乏しいため推奨されていません。
内服薬は、軽い痛みならアセトアミノフェンを、緩和しない場合は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用します。効果が見られない場合はリン酸コデインや、抗うつ剤のアミトリプチリンを投与します。
激しい痛みの場合はブロック注射を行います。

帯状疱疹の治療で入院することはありますか?

あります。広範囲に症状が広がった場合や、耳、眼、陰部に症状が出た場合は合併症のリスクが高いため、入院が必要です。
抗ウイルス薬の点滴投与と症状に合わせた加療を行います。

播種性帯状疱疹
広範囲にウイルスが広がり発症すると患部からウイルスが大量に出て、空気感染を引き起こします。隔離が必要で、すべての水疱がかさぶたになるまで隔離は続きます。
播種性帯状疱疹の患者さんは周囲に感染させるリスクがあります。二次感染者は3日以内にワクチン接種を行えば85%発症を防ぎ、3~4日以内に静注用γ-グロブリンを投与すれば発症予防と軽症化ができます。

帯状疱疹が治るまでの期間を教えてください

皮膚にピリピリした痛みや違和感が出てから、かさぶたがはがれ落ちるまでは4週間ほどかかります。水疱が破れ、膿が出て潰瘍になり、かさぶたに覆われるまでは2~3週間かかります。

しかし、皮膚のかさぶたが剥がれた後にもピリピリした痛みが残ることがあります。これが帯状疱疹後神経痛という後遺症です。

帯状疱疹後神経痛の治療法

帯状疱疹後神経痛の治療法

帯状疱疹後神経痛はどのような病気ですか?

帯状疱疹後神経痛は、皮疹が治った後にも3ヶ月以上続く疼痛のことです。焼けるような痛み、チクチク刺されるような痛みと表現される神経障害性疼痛で、日常生活や睡眠に支障を及ぼす場合もあります。強い痛みが続き、疼痛管理が難しいのが特徴です。

症状が数年以上続くことがある、厄介な後遺症です。服が患部に触れる、風が当たるなど軽い刺激に強い痛みを感じることがあります。
皮膚の炎症は1ヶ月ほどで改善しますが、神経のダメージはなかなか回復しません。何年も治療が必要になることがあります。
帯状疱疹後神経痛は高齢者が発症しやすく、早期治療とワクチン接種による予防が推奨されています。

帯状疱疹後神経痛の治療法を教えてください

帯状疱疹後神経痛は現在のところ効果的な治療法はなく、すべて対症療法になります。
薬物療法が基本で、痛みのコントロールが難しい場合には神経ブロック注射で疼痛管理を行います。

神経障害疼痛薬物治療ガイドラインでは、以下の薬剤を推奨しています。

  • カルシウム(Ca2+)チャネルα2δリガンド(プレガバリン、ガバペンチン)
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(デュロキセチン)
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプリチン、ノルトリプチリン、イミプラミン)

これらの薬で効果が見られない場合は、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液や、オピオイド鎮痛薬のトラマドールを使用します。

帯状疱疹発症後に帯状疱疹後神経痛を予防する方法はありますか?

あります。早期治療で帯状疱疹後神経痛のリスクを下げることができます。
早期に抗ウイルス薬を投与できれば帯状疱疹後神経痛の発症率を下げることができます。

皮疹が出て72時間以内、遅くても5日以内の投与が必要です。
保険適用外ですが、抗うつ剤のアミトリプチリンの早期投与も帯状疱疹後神経痛の発生を低減させます。60歳以上の方には積極的に加療されます。

皮膚にピリピリと神経に触れるような痛みや、チクチク刺されるような違和感があれば、発疹がなくてもすぐに皮膚科を受診しましょう。発疹を伴わない場合は帯状疱疹の確定診断はできませんが、要経過観察になり、早期に帯状疱疹を発見、治療できる体制が整います。

効果が高い予防法は、帯状疱疹ワクチンの接種です。
65歳以上の方は定期接種の対象になりましたが、任意接種(自費で行う予防接種)は50歳からできます。組換えワクチンは18歳以上の帯状疱疹発症リスクが高い方も対象です。

帯状疱疹ワクチンには生ワクチンと組換えワクチンの2種類があります。
予防効果が高いのは組換えワクチンですが、それぞれメリット、デメリットがあります。主治医と相談して、どちらを選ぶか判断しましょう。

生ワクチン
以前から使用されているワクチンです。実費で約10,000円と安価、1回で接種が完了するなど、手軽さがメリットです。インフルエンザワクチンと同じ、皮下注射で接種します。
デメリットは接種に制限があることです。生ワクチンのため免疫抑制者には接種ができません。帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の予防効果は、組換えワクチンに比べて劣ります。

組換えワクチン
2018年に承認された、新しいタイプのワクチンです。
帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛とも予防効果が極めて高く、接種後3年で帯状疱疹の発症を97.2%、8年後でも84%抑えます。新型コロナワクチンのように筋肉注射で接種します。
デメリットは2回接種が必要なこと、価格が高価なことです。医療機関により金額は異なりますが、実費で40,000円以上が相場です。
しかし帯状疱疹後神経痛を発症すると苦しいのは症状だけではありません。通院に多くの時間を費やし、多額の医療費が発生します。組換えワクチンはリスクを大きく低減できます。

編集部まとめ

編集部まとめ

帯状疱疹の原因になるVZVは神経のなかで休眠していますが、取り除くことは現代の医療ではできません。
ウイルスを再活性させない、させてもすぐ沈静化させるためにもワクチン接種と、皮膚科への早急な受診を行いましょう。治療は早いほど予後が良く、発疹が出て72時間以内が理想です。早期治療とワクチン接種で、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを大きく下げることができます。

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