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「梅毒の原因」はご存知ですか?初期症状や感染しやすい行動も解説!【医師監修】

 公開日:2025/09/29
「梅毒の原因」はご存知ですか?初期症状や感染しやすい行動も解説!【医師監修】

梅毒と聞くと、昔の病気という印象を持つ方もいるかもしれません。しかし実は今、梅毒の感染が急速に広まっています。

梅毒はペニシリンなど有効な薬があり完治が可能な性感染症ですが、治療をせずに放っておくと、全身に重い症状が現れることがあります。

この記事では、梅毒の原因や感染経路、症状から治療法までをQ&A形式でわかりやすく説明します。自分自身と大切な方を守るためにも、正しい知識を身につけましょう。
居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

梅毒の原因と感染経路

梅毒の原因と感染経路

梅毒の原因は何ですか?

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされる性感染症です。ほとんどは性的な接触によって粘膜や皮膚から感染します。

この感染症は全身の臓器にさまざまな病変を引き起こします。適切な治療を受けずに長期間放置すると、重篤な合併症を起こし死に至ることもあります。

近年、日本では梅毒に感染する方が増加しており、それに伴って母体から胎児に感染する先天梅毒も増加傾向にあります。

梅毒には有効な抗菌薬があり、早期の適切な治療で完治が可能です。ただし、症状が一時的に改善したからといって自己判断で治療を中断すると、体内で病気が進行することもあります。また、治療により完治した後でも再感染する可能性があるので、定期的な検査と予防対策が重要です。

梅毒の感染経路を教えてください

梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマは、低酸素環境でしか長く生存できず、自然界ではヒトのみを宿主とする細菌です。そのため、感染経路は限られており、主に性的接触によって感染が広がります

具体的には、感染者の性器やお口、肛門などの粘膜や、皮膚の小さな傷を通じて菌が体内に侵入することで感染します。

また、梅毒には母子感染のリスクもあります。梅毒に感染している妊婦から胎盤を通じて胎児に感染し、流産や死産、あるいは出生後の赤ちゃんが先天梅毒を発症することがあります。先天梅毒は、難聴、失明、皮膚の異常、骨の変形、発達の遅れなど重い障害を引き起こすおそれがあります。

梅毒に感染しやすい行動にはどのようなものがありますか?

梅毒は、感染者の病変部位と粘膜や皮膚が直接接触することによって感染します。 そのため、以下のような性行為は感染リスクを高めます。

  • 膣性交(セックス)
  • 肛門性交(アナルセックス)
  • 口腔性交(オーラルセックス)

梅毒の予防にはコンドームの使用が有効です。ただし、コンドームで覆われていない部位に病変がある場合は、接触によって感染する可能性があるため完全に防ぐことはできません。

梅毒の感染者数

梅毒の感染者数

日本における1年間の梅毒の感染者数を教えてください

梅毒は近年、感染者数が急増しています。 日本では1948年から法律に基づき毎年の感染者数が把握されています。1960年代に10,000例を超える大規模な流行がみられた後は減少し、2000年代は年間500〜900例程度で推移していました。ところが、2011年頃から再び増加に転じ、2022年に10,141例、2024年には14,829例が報告され、約半世紀ぶりの高水準となっています。

年齢別では、特に20代の女性と20〜50代の男性に多くみられることがわかっています。

梅毒の感染者数が多い地域や都道府県はどこですか?

梅毒の感染者数は、全国的に増加傾向にありますが、特に多く報告されているのは、人口が集中する大都市圏です。2024年の都道府県別報告数では、以下の地域で多くの感染者が確認されています。

  • 東京都:3,742人
  • 大阪府:1,951人
  • 福岡県:880人
  • 愛知県:851人
  • 神奈川県:800人

これらの都市圏では人が多く集まり、出会いの機会も多いため、感染が広がりやすい環境が整っていると考えられます。

梅毒の症状

梅毒の症状

梅毒の初期症状を教えてください

梅毒に感染して3〜4週間が経過した頃、感染が起きた部位に軟骨に似た硬さのしこり(硬性下疳)ができ、潰瘍化します。鼠径部(股の付け根)のリンパ節が腫れることもあります。

これらの症状は、痛みがほとんどなく、あっても軽度で、やがて多くは自然に消えていきます。梅毒の初期症状ともいえるこの時期は、第I期顕症梅毒と呼ばれます。

梅毒は症状がおさまったら治ったと考えてもよいですか?

症状が消えたとしても、治ったと判断するのは禁物です。

梅毒は、数年〜数十年にわたって症状が出たり消えたりを繰り返しながら進行する感染症です。第I期顕症梅毒の症状が自然におさまった後も、体内の梅毒トレポネーマは活動を続け、血液を通じて全身に広がっていきます。

感染から約3ヶ月が経過すると、次の段階である第II期顕症梅毒に移行します。この頃になると、手のひらや足の裏を含む全身に、バラ疹と呼ばれる淡い赤い色の発疹が現れることがあります。

さらにこの発疹も、治療しなくても一時的に消えることがありますが、病気自体が治ったわけではありません。

梅毒はどのように進行していきますか?

梅毒は、複数の段階(病期)を経て進行していく感染症です。初期症状がおさまったからといって完治したとするのは危険です。治療をせずに放置すると、時間の経過とともに、全身の臓器や神経に深刻な影響を及ぼすこともあります

以下の表に、各病期と主な症状をまとめました。

病期 感染後の期間 主な症状 感染力
第I期顕症梅毒 約3〜4週間 感染部位にしこりや潰瘍 鼠径部リンパ節の腫れ 性行為感染 母子感染
(潜伏期間) 約1ヶ月〜3ヶ月 性行為感染 母子感染
第II期顕症梅毒 約3ヶ月程度 発疹(バラ疹) 全身の臓器にさまざまな症状 性行為感染 母子感染
早期潜伏梅毒 1年以内 自覚症状のない期間 体内で梅毒トレポネーマが活動 性行為感染 母子感染
後期潜伏梅毒 1年以降 母子感染
晩期顕性梅毒 数年〜数十年 ゴム腫、心血管梅毒、脊髄癆(せきずいろう)など 感染力なし

このように、梅毒は症状が現れたり自然に消えたりを繰り返しながら、長い時間をかけて身体の中で進行します。

早期に治療を開始できれば完治が可能です。初期症状に気付いたときだけではなく、「もしかして」と思ったタイミングで迷わず検査を受けましょう

梅毒を放置するとどうなるのか教えてください

梅毒を放置すると、数年〜数十年かけて全身に病変が広がるおそれがあります。 体内に潜む梅毒トレポネーマが活動を続け、血液を通じて心臓や血管、神経、脳などへ広がるためです。

晩期にはゴム腫と呼ばれる腫瘍が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊することがあります。さらに、大動脈瘤が生じる心血管梅毒、精神症状や認知機能の低下を伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)など、深刻な合併症を引き起こすことがあります。

梅毒の検査・治療法

梅毒の検査・治療法

梅毒の検査方法を教えてください

梅毒の検査は主に、医師による診察血液検査で行われます。感染によって体内にできる抗体を調べることで、感染の有無や進行の程度を確認します。症状がある場合は、しこりや潰瘍などの病変部から分泌物を採取して調べることもあります。

検査は全国の医療機関や保健所などで受けられます。保健所によっては匿名、無料で検査ができるところもあります。 梅毒を含む性感染症は、感染の可能性がある周囲の方(パートナーなど)も検査を受けることが重要です。

梅毒はどのように治療しますか?

梅毒の治療には、抗菌薬(主にペニシリン系の抗生物質)が用いられます。感染の時期や進行度によって治療期間や薬の種類は異なりますが、早期に発見して適切な治療を行えば、完治が可能です。

薬を飲み始めると症状が一時的に悪化するヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応が起こることもあります。これは治療初期に梅毒トレポネーマが急激に破壊されることで認められる発熱や悪寒、頭痛などの一時的な症状です。通常は1日以内におさまる反応であり、治療中止の必要はありません。医師の指示にしたがって服薬を継続しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ 梅毒は、誰でも感染する可能性のある性感染症です。症状が出ない時期もあるため、気付かないうちに感染が進行してしまうこともあります。

しかし、早期に発見し適切な治療を受ければ完治が可能です。不安を感じたときや、気になる症状がある際には、ためらわずに医療機関や保健所に相談しましょう。

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