「大人が中耳炎」を発症するとどんな症状が現れる?【医師監修】

中耳炎は小児に多い病気ですが、大人でもかかる可能性があります。本記事では大人の中耳炎について、種類ごとの原因や症状、治療法、放置した場合のリスク、そして治療期間や日常生活での注意点までを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
大人の中耳炎の概要と種類

中耳炎とはどのような病気ですか?
大人がかかる中耳炎の種類を教えてください
それぞれの中耳炎の原因を教えてください
急性中耳炎の原因
多くは風邪(ウイルス性感冒)など上気道炎に引き続いて発症します。
滲出性中耳炎の原因
耳管の機能不全が根本原因です。急性中耳炎の後、中耳に液体が残って滲出性中耳炎に移行するケースが最も多くみられます。
慢性中耳炎の原因
多くは急性中耳炎の繰り返しや治療不十分により、鼓膜に穴が開いた状態が治らず慢性化したものです。
真珠腫性中耳炎の原因
幼少期からの中耳炎の反復や滲出性中耳炎の遷延によって耳管機能が低下し、中耳の換気不全が長期間続くことが発生要因と考えられています。
大人の中耳炎の症状

急性中耳炎はどのような症状ですか?
滲出性中耳炎の症状を教えてください
慢性中耳炎ではどのような症状が現れますか?
真珠種性中耳炎の症状を教えてください
大人の中耳炎の治療法と注意点

中耳炎を治療せずに放置するとどうなりますか?
まず急性中耳炎を放置すると、症状が悪化して鼓膜が自然に破れる可能性があります。鼓膜に穴が開いたまま放っておくと、その穴が閉じにくくなりに移行することがあります。慢性中耳炎に進むと耳だれを繰り返し、聴力がどんどん低下してしまいます。また急性中耳炎の段階で治療せずにいると、中耳の炎症が内耳に波及して内耳炎を起こすことがあります。内耳炎になると激しいめまいや難聴が起こり、早期に適切な治療をしなければ後遺症として難聴や耳鳴りが残る恐れがあります。
滲出性中耳炎を痛みがないからと放置するケースもありますが、それも危険です。滲出性中耳炎を放置するということは中耳に液体が溜まりっぱなしになるということであり、その状態が長引くと中耳炎が慢性化してしまいます。結果として真菌(カビ)や細菌が増殖しやすくなり、真珠腫性中耳炎に進展するリスクが高まります。
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎を治療しないままでいると、難聴が進むだけでなく、真珠腫の場合は周囲の骨を破壊して症状がどんどん重くなります。真珠腫性中耳炎では放置により顔面麻痺や脳への感染(髄膜炎・脳膿瘍)など命に関わる合併症を引き起こすケースすらあります。
痛みがない場合でも、中耳炎の疑いがある症状が続くときは絶対に放置せず耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けましょう。
中耳炎の種類別に治療法を教えてください
滲出性中耳炎では原因疾患の治療が基本となります。例えばアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があればその治療を行い、耳管の通りを改善させます。並行して、耳鼻科で定期的に耳管通気処置(耳の奥に空気を送って通りをよくする処置)を行い、中耳内の陰圧を改善して滲出液の排出を促します。これらの保存的治療で改善しない場合、鼓膜切開を行って貯留液を吸引・排出します。鼓膜切開しても再び滲出液が溜まってしまう場合は、鼓膜チューブ留置術を検討します。鼓膜チューブは耳管の代わりに中耳の換気と排液を継続する役割を果たします。
慢性中耳炎は根治には手術が必要になることが多いです。まずは耳だれがひどい場合に抗菌薬の点耳や飲み薬で感染を抑え、耳の中を清潔に保つ処置を行います。しかし鼓膜に大きな穴が残っている限り、聴力の低下が続き再感染もしやすい状態です。そのため鼓膜の穴を塞ぐ手術(鼓膜形成術)や、中耳の奥の病巣を清掃する手術(乳突洞削開術)、さらには壊れてしまった耳小骨を再建する手術(鼓室形成術)を行って、中耳の構造と機能を回復させます。
真珠腫性中耳炎は原則として手術で真珠腫を摘出する治療が必要です。初期の小さい病変であれば外来処置で経過を見ることもありますが、基本的には早期に手術を行うことが推奨されます。手術では中耳や乳突洞のなかにできた真珠腫を隅々まで取り除き、そのうえで障害された耳小骨を再建して聴力の回復も図るのが一般的です。
中耳炎の治療期間はどの程度ですか?
中耳炎における日常生活上の注意点を教えてください
鼻のケア
鼻風邪や鼻づまりがあるときは、片方ずつ鼻をかむようにして過度な圧をかけないようにします。
耳を清潔・乾燥に保つ
耳だれが出ているときは、耳の周囲に流れ出た分泌物を清潔なガーゼでやさしく拭き取ります。
気圧の変化に注意
中耳炎の症状があるときは、飛行機の離着陸や高所・深水への移動で耳に強い痛みを感じることがあります。
生活習慣の改善
喫煙は耳管粘膜をむくませ機能を低下させるため、中耳炎を治りにくくします。
症状が軽快しても通院を続ける
中耳炎は症状がおさまっても中耳のなかに炎症が残っている場合があるため、自己判断で治ったと思って通院を中断しないようにしましょう。
以上の点に気をつけることで、中耳炎の早期回復と再発防止に役立ちます。普段から鼻・喉の健康管理をし、中耳炎になりにくい生活習慣を心がけましょう。
編集部まとめ

中耳炎は子どもの病気というイメージから軽く見られがちですが、大人でも発症しうる身近な病気です。痛みや発熱などつらい症状が出るだけでなく、適切に治さないと慢性的な難聴など後遺症につながるケースも少なくありません。特に大人の中耳炎は悪化すると手術が必要になる場合もある重い病気です。発症や重症化を防ぐためには正しい知識を持って予防に努め、万一異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。日頃から鼻や喉のケア、生活習慣の見直しを行い、中耳炎になりにくい健康的な生活を心がけましょう。




