「白内障の進行を止める」にはどうすべき?進行度別の症状や食事面のポイントも解説!
公開日:2025/09/06

白内障と診断されると「この先視力はどうなるのだろう?」と不安になりますよね。白内障は中高年以降に多くみられる目の病気ですが、進行のしかたや段階ごとの症状、そして進行を遅らせる対処法を理解しておくことが大切です。白内障はゆっくり進むことが多く、適切な治療や生活習慣の工夫で日常生活への影響を減らすことができます。本記事では、白内障の進行度別の症状や、眼科で行われる進行抑制の治療法、セルフケアのポイントについて解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
白内障の進行度別症状
白内障はどの程度の速度で進行していきますか?
一般的に、加齢による白内障の進行はゆるやかで半年~1年単位で徐々に悪化します。そのため、初期には自覚症状がほとんどなく、気付きにくいこともあります。ただし、進行スピードには個人差が大きく、若い年代で発症する白内障や糖尿病が原因の白内障では早く濁りが進む場合があります。まずは定期的に眼科検診を受けて、自分の白内障がどの程度進んでいるかを把握することが大切です。
白内障の進行度別に症状を教えてください
白内障のごく初期には目のかすみや軽いぼやけを感じる程度で、自覚症状をほとんど感じないことも多いです。この段階では「年のせいで視力が落ちたかな?」と見過ごされがちです。しかし、水晶体が少しずつ白く濁り始めると、光がうまく通らずにちらつき、ものが二重(三重)に見える、眩しさを強く感じるといった変化が現れ始めます。まだ視力自体はあまり低下しないため、日常生活に大きな支障は出ない段階です。
中期になり濁りが進行してくると、視界全体が薄い霧がかかったようにかすむようになります。この頃には視力の低下も自覚し始め、眼鏡やコンタクトレンズの度数を何度合わせ直してもすぐ合わなくなる、といった変化が起こりえます。また、人によっては色が薄暗く見える・物が黄ばんで見えることもあります。
白内障がかなり進行した状態では、水晶体の濁りが高度になり視力が大幅に低下します。進行した白内障の瞳孔(ひとみ)は灰白色や茶色に見えることもあり、ここまでくると眼鏡では視力矯正ができなくなります。人によっては指の本数がわかる程度、さらに悪化すると明るさを感じるのがやっとという状態に至ることもあります。日常生活では読書やテレビ視聴はもちろん、歩行時にも人や段差が見えにくくなり大変危険です。
白内障を放置するとどうなりますか?
白内障の進行をそのまま放置すると、最終的には失明に至る恐れがあります。実際、世界的に見ると白内障が失明原因の第1位の国も少なくありません。また、白内障が重度になるとさまざまな合併症を引き起こすことがあります。さらに、白内障が進みすぎると手術前の精密検査で正確に眼内レンズ度数を測れず、手術後にピントが合いにくくなり、眼鏡などが必須になる場合もあります。
白内障の進行を止めるための治療法
白内障の進行を止めるために眼科ではどのような治療が行われますか?
白内障が初期と診断された場合、まずは点眼薬による進行抑制治療が行われるのが一般的です。現在の医療では、一度濁った水晶体を透明に元どおりにする目薬は存在しません。しかし、ピレノキシン製剤や、グルタチオン製剤の点眼薬が白内障の進行を遅らせる目的で用いられています。
ピレノキシンは水晶体のタンパク質が変性して濁るのを阻害し、グルタチオンはレンズ内の抗酸化物質を補って濁りを抑える働きがあります。これらの点眼薬は毎日継続してさす必要がありますが、初期白内障の進行をゆるやかにする効果が期待されています。ただし、目薬で水晶体の濁り自体を改善することはできないため、視力が劇的によくなることはありません。あくまで現状より悪化するペースを抑えるための治療となります。
点滴以外の白内障の進行を止める治療法を教えてください
白内障が中期~進行期に進み、見えづらさが日常生活に支障を来たすようなら手術による治療を検討します。手術が必要な段階になるまでは、眼科で定期的に経過観察を行いつつ、生活上の工夫で対応します。
白内障が原因で運転免許更新に必要な視力に満たなくなるケースもあるため、運転をする方は医師と相談して手術のタイミングを決めることも大切です。白内障の進行を早める恐れのある全身疾患(糖尿病など)がある場合は、その治療もしっかり行いましょう。
白内障の治療に副作用はありますか?
白内障の進行抑制に用いられる点眼薬は副作用はまれですが、長期間使用するため防腐剤によるドライアイなどによる目の渇きや異物感などが起こることがあります。これらの症状は点眼を中止すれば治まる軽度なものがほとんどですが、異常を感じたら早めに担当医に伝えましょう。一方、手術自体は眼内レンズ挿入術といって濁った水晶体を人工のレンズに置き換える方法で、安全性が高く短時間で終わるのが一般的です。医師とよく相談し、不安な点や術後の経過について説明を受けておきましょう。
白内障の進行を止めるためのセルフケアと注意点
白内障の進行を止める効果が期待できる生活習慣はありますか?
喫煙や強い紫外線への曝露は、白内障の発症・進行リスクを高める代表的な要因です。白内障と診断されたら禁煙を心がけ、日差しの強い屋外ではUVカット効果のあるサングラスやつばの広い帽子で目を保護しましょう。このほか、糖尿病など生活習慣病の管理、適度な有酸素運動による血流促進、過度な飲酒を控えることも水晶体の酸化ストレスを減らすのに有効と考えられます。規則正しい生活と十分な睡眠で全身の健康を保つことが、白内障の進行予防にもつながります。
白内障の患者さんが積極的に食べた方がよい栄養素を教えてください
食生活の面では、抗酸化作用のある栄養素を豊富に含む食品を意識して取ることもおすすめです。代表的なのはビタミンC・ベータカロチン(ビタミンA)・ルテイン・ゼアキサンチンといった成分です。ビタミンCは水晶体の酸化を抑える力が強く、野菜や果物(ブロッコリー、イチゴ、柑橘類など)や緑茶に多く含まれます。ベータカロチンやルテイン、ゼアキサンチンは緑黄色野菜(ほうれん草、ニンジン、カボチャ、ブロッコリーなど)に豊富で、目の水晶体や網膜を酸化ストレスから守る働きが期待できます。
研究においても、ビタミンCの摂取量が多い人ほど白内障の発症リスクが低い傾向が報告されており、男性ではリスクが35%減、女性では41%減少したとのデータがあります。ただし、特定のサプリメントだけで白内障を防げるわけではありませんので、栄養バランスのよい食事を基本に、これらの栄養素を日々取り入れることが大切です。
白内障と診断された際に避けた方がよい行動はありますか?
白内障とわかったら、目に負担をかけるような行動をできるだけ控えましょう。まず強い日差しに長時間あたるのは避け、先述のように必ず紫外線対策をしてください。特に、夏の直射日光の下や、山・海辺など紫外線量の多い環境では注意が必要です。同様に、溶接作業やスキー場など強い光線を浴びる場面でも保護具を使用しましょう。
次に、過度な目の酷使にも気をつけます。例えば暗い場所で細かい文字を読んだり、長時間パソコンやスマートフォン画面を見続けたりすると、白内障そのものを悪化させるわけではありませんが、目の疲労感や頭痛を感じることがふえます。白内障のある目はただでさえピントが合いにくく疲れやすいため、1時間に1回は休憩をとる、画面の明るさを適切に調整する、といった工夫で負担を和らげましょう。
編集部まとめ
白内障と診断されたばかりの方にとって、今後の見え方や生活への影響は心配の種だと思います。しかし、白内障は正しく恐れて正しく対処すれば決して悲観すべき病気ではありません。進行はゆっくりで、初期のうちは点眼治療や生活習慣の見直しによって視力低下を抑えることが可能です。
何より大切なのは、早い段階から病状を理解し、日常的な対策をコツコツ続けることです。紫外線予防や禁煙、栄養バランスのよい食事といった習慣は、目の健康のみならず全身の健康にもメリットがあります。そうした積み重ねが白内障の進行を緩やかにし、快適な視生活を長く維持することにつながります。
そして、もし手術が必要な状態になっても、現在の白内障手術は安全性が高く日帰りも可能な治療ですので、過度に心配しすぎないでください。定期的に眼科医の診察を受けながら、自分の目と上手に付き合っていきましょう。見えにくさを我慢せず、適切なケアと治療で大切な視力を守ってくださいね。



