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「糖尿病の食事療法」ではどのような食品を選べばよいかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/09/15
「糖尿病の食事療法」ではどのような食品を選べばよいかご存知ですか?【医師監修】

糖尿病、特に2型糖尿病の治療は食事療法運動療法が基本です。今回は食事療法について、基本と継続のポイントをご説明します。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

糖尿病治療に食事療法が必要な理由

糖尿病治療に食事療法が必要な理由

糖尿病は薬だけで治療をすることはできますか?

糖尿病を薬だけで治療することは、実際のところ難しいです。 糖尿病はインスリンが効きにくいか、インスリン分泌能力が低いことで、血糖値が閾値以上に上昇する病気です。この血糖上昇は食事摂取と大きく関わっています。食事を食べるたびに、血糖値が大きく上昇するのです。

現在国内で発売されている糖尿病薬は、食後の血糖上昇をゆるやかにするものや、空腹時を含めて血糖値を持続的に低下させるものなどがあります。しかし、食事療法がきちんとできていないと、薬の効果が食事内容や摂取方法による血糖上昇効果を下回ってしまうため、薬を使用してもうまく血糖値が下がらないことになります。

糖尿病で食事にまったく気を付けなかった場合に起きることを教えてください

薬をきちんと使用していても、食事療法に気を付けないと、食後の血糖値の乱高下が起こります。

例えば、食べる内容や食べ方が薬の効果を上回ってしまった場合、血糖値が閾値を超えて上昇してしまうことになります。一方で、薬の効果を下回る食べ方をした場合、低血糖の危険が出てきます。

一度の高血糖が命の危険につながることは少ないですが、低血糖はたった一回でも命の危険につながります。もちろん、高血糖が持続すると糖尿病合併症が発症および進展してしまうので高血糖も避けるべきです。

糖尿病は食事療法と服薬によって健康な状態を目指すことはできますか?

食事療法のほかに運動療法も大事です。食事療法運動療法糖尿病薬の継続、この3つが揃ってはじめて健康的な生活を目指すことができることが多いです。 糖尿病は罹患してすぐは症状がないですが、なぜ治療するのでしょうか。糖尿病がありながらも、健康な方と同様の生活を送るため、糖尿病の合併症が出る時期を可能な限り遅らせるためです。 このためには、症状がないうちから積極的に健康的な生活を送り、病院で処方された糖尿病薬をきっちり続けることが大切です。

糖尿病薬の役目も重要です。2型糖尿病では、発症した時点で膵臓のインスリンを作る細胞が1/2程度まで低下しているという報告があります。このため、いくら食事や運動を節制しても、健常人ほどは血糖上昇を抑えられないことが多々あります。食事運動にあわせて、糖尿病薬を続けることで、インスリンの働きが助けられたり、強化されたりします。糖尿病薬をしっかり続け、合併症の出ない範囲での血糖推移を目指すことが、糖尿病の方の健康にとってよりよい結果をもたらすでしょう。

糖尿病食事療法の基本

糖尿病食事療法の基本

糖尿病の食事療法ではどのような食品を選べばよいですか?

食品の選び方だけでなく、食べる順番もとても大事です。 サラダなど、血糖値を上げにくい食品を、意識して食事の初めの方に食べるようにしてください。また、糖質といって、ご飯やパン、麺類、芋など、またフルーツを含めたデザート類は、なるべく食事の最後に食べるようにしましょう。 こうすることで、食事による急激な血糖上昇をできるだけなだらかに抑えることができると知られています。

外食時のメニューの選び方を教えてください

ポイントはいくつかあります。

  • なるべくサラダをつけて、サラダから先に食べ始めること
  • 早食いは避け、ゆっくりよく噛んで食べること
  • 総カロリーを意識し、カロリーのとりすぎに注意すること

コンビニで食事を買う際も、なるべく野菜を一緒に買って食べるようにしてみてください。 また、一口を小さくし、30回程度の咀嚼を意識して食べると効果的です。豆腐を30回噛めとは言いませんので、食事の際は適切な回数噛むことを心がけましょう。

糖尿病の食事療法では摂取カロリーも考慮すべきですか?

はい、考慮すべきです。摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、肥満傾向になり、肥満になると糖尿病は悪化傾向になることが多いです。それだけでなく、メタボリック・ドミノといって、肥満はさまざまな病気の原因となります。 1日に摂取する総カロリーの値は、身長や現在の体重、年齢などから総合的に判断されます。 どのくらいのカロリー摂取がご自身の身体に適切か、気になる方はぜひ一度受診されている病院で確認されてみてください。

間食やお酒との付き合い方を教えてください。

間食は控えるのが理想的です。 どうしても間食をするならば、ガムなどカロリーや糖質が少ないものを選ぶと健康被害が少ないでしょう。血糖値を上げにくい食べ物を選ぶことが重要です。最近は糖質が少ないお菓子も販売されています。もしくは、食後すぐにデザートとして間食で食べたかったものを摂取すると、突然間食を摂るよりも血糖値は上がりにくいでしょう。

お酒については、飲みすぎに注意し、飲む場合も1日アルコールの1単位までを意識して節制するのが理想的です。アルコールの1単位とは、アルコール度数5%程度のビールなら500ミリリットルL(中びん1本)、アルコール度数15%前後の日本酒なら180ミリリットル(1合)、アルコール度数25%の焼酎なら約110ミリリットル(0.6合)程度を指します。

糖尿病食事療法を継続するためのポイント

糖尿病食事療法を継続するためのポイント

食事療法を継続するための工夫を教えてください。

食事療法を継続するためには、まずは定期的に病院に通院して現在の血糖値を知ることが大切です。糖尿病は困らないことに困る病気で、困ったことが起こったときにはすでに合併症が進行してしまっていることが多いです。症状がないときも、むしろ症状がないときこそ食事療法に気を付けておくことで、将来重篤な合併症を発症するリスクが低くなります。しかし、意識していても3ヶ月ほど経てば気が緩んできてしまうものです。気が緩んでいるときにこそ、気合を入れ直して自分の食事と向き合うことが重要です。

また、生活習慣をがらっと変えるときは、根をつめすぎると続かないことがあります。たまの外食など、食事を楽しむときはできるだけ楽しんで、ゆっくり食べる、サラダから食べるなどそのときできる範囲の食事療法で続けていくことも継続の秘訣です。

糖尿病の食事療法は誰に相談すればよいですか?

かかりつけ医、もしくは、かかりつけの病院の栄養士に相談するのがよいでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

 糖尿病の診断を受けたけれど、どのように、どこまでの食事療法を取り入れたらいいかわからない、そういった方は多いのではないでしょうか。 食事内容をがらっと変えることが難しければ、まずは1食に1皿分の野菜をつけて、野菜から食べてみることから始めてみてください。そして、無理のない範囲で継続しましょう。 繰り返しになってしまいますが、食事療法、運動療法、そして薬物治療は糖尿病治療の基本です。定期的に病院に通院し、この3つの治療を続けることで、糖尿病のない方と同様の健康的な人生を目指しましょう。

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