「大人が手足口病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?【医師監修】

手足口病は子どもがかかりやすい感染症とされていますが、大人にも感染することがあります。発熱や口内炎、手足の発疹など、場合によっては子どもよりも強い症状が出ることもあるため注意が必要です。
本記事では胃腸炎の食事について以下の点を中心にご紹介します。
- 手足口病について
- 大人の手足口病
- 大人が手足口病に感染した際の対応方法・予防
大人の手足口病について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
目次 -INDEX-
手足口病について

手足口病はどのような感染症ですか?
主に乳幼児を中心に夏季に流行し、2歳以下の発症が多いとされているものの、小学生でも感染がみられることがあります。
発熱しないこともありますが、発熱した場合も多くの場合2〜3日程度で解熱します。口腔内の水疱が痛みを伴うため、食事や水分がとりづらくなり、乳幼児では機嫌が悪くなることもあります。
初期症状が軽いため気付かれにくく、集団生活の場で知らないうちに感染が広がることもあるため注意が必要です。
手足口病の感染経路はいくつありますか?
・飛沫感染
感染者の咳やくしゃみ、会話の際に飛ぶ飛沫に含まれるウイルスを吸い込むことで感染します。保育園や幼稚園など、子ども同士の距離が近い環境では特に注意が必要です。
・接触感染
ウイルスが付着したドアノブやおもちゃ、水疱の中の液体などに触れた手で、目や鼻、お口に触れることで感染します。間接的な接触でもうつるため、こまめな手洗いや消毒が大切です。
・糞口感染
便に含まれるウイルスが、手指を介してお口に入ることで感染します。おむつ交換やトイレの後には、丁寧な手洗いを徹底することが重要です。
このように、複数の経路で感染が広がる可能性があります。
手足口病はどのような合併症を引き起こしますか?
【髄膜炎】
脳や脊髄を覆う髄膜に炎症が起こり、発熱、頭痛、嘔吐、光への過敏などがみられます。無菌性髄膜炎が多く、治療で回復することが多い傾向にありますが、乳児では症状に気付きにくいため注意が必要です。
【小脳失調症】
ふらつき、ろれつ障害、眼球の異常な動きなどが見られます。1〜2ヶ月程度で自然に回復しますが、経過観察が重要です。
【急性弛緩性麻痺】
手足や呼吸筋の筋力が急激に低下し、動かせなくなることがあります。根本的な治療法はなく、対症療法が中心です。
【脳炎】
脳に炎症が生じることで、意識障害、けいれん、異常行動、麻痺などの重い症状を引き起こす可能性があり、後遺症や死亡のリスクもあります。
【ギランバレー症候群】
感染後、免疫が誤って末梢神経を攻撃し、手足のしびれや脱力、重症時には呼吸筋麻痺や自律神経障害を招くことがあります。まれですが後遺症が残る例もあるため注意が必要です。
大人の手足口病

手足口病は大人にも感染する可能性がありますか?
感染で多いとされているのが家庭内で子どもから大人にうつるケースで、小さな子どもを育てる家庭では、おむつ交換や看病などを通じた感染が少なくありません。また、感染した子どもの親が職場にウイルスを持ち込むことで、周囲に広がることもあるため注意が必要です。
大人が手足口病に感染するとどのような症状が現れますか?
・発熱・倦怠感
38度前後の高熱が出ることがあり、全身のだるさや関節痛、頭痛を伴うことがあります。
・喉の痛み・口内炎
口腔内や喉に水疱や潰瘍ができ、飲食時に強い痛みを感じることがあります。水分がとれず脱水になることもあるため注意が必要です。
・発疹
手のひらや足の裏、関節部分に赤い発疹や水疱が現れ、歩行や動作に支障が出る程の痛みを感じるケースもあります。
・消化器症状
下痢や嘔吐がみられることもあり、脱水を引き起こすリスクがあります。
これらの症状には個人差がありますが、症状が強く出た場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
大人が手足口病に感染する原因を教えてください
【子どもとの接触】
手足口病はウイルス性の感染症で、唾液、便、水疱のなかの液などを介して感染します。おむつ替えや看病の際に手指を介して感染が広がることがあります。
【免疫力の低下】
睡眠不足やストレス、栄養の偏りなどで免疫機能が落ちていると、感染しやすくなります。妊娠中も一時的に免疫力が低下しやすく、注意が必要です。
【再感染の可能性】
手足口病の原因となるウイルスには複数の型があり、過去に感染していても、異なる型により再び発症することがあります。
大人も子どもと同じく、日頃からの丁寧な手洗いや体調管理を通じた予防が大切です。
大人が手足口病に感染した際の対応方法・予防

大人が手足口病に感染した場合、どのように過ごすのがおすすめですか?
・食事・栄養管理
発熱や口内炎で食欲が落ちることもあるため、冷たいゼリーやスープなど、喉に刺激の少ないものを選び、無理のない範囲で栄養補給をしましょう。
・症状の緩和
発熱や痛みには解熱鎮痛剤の使用がおすすめです。お口の痛みが強い場合は、飲食の工夫も重要です。
手足口病に感染した後、いつから会社へ出勤できますか?
厚生労働省の目安では、「解熱して1日以上経過し、普段どおりに食事がとれる状態」であれば出勤は可能とされています。手足の発疹が残っていても、症状が落ち着いていれば問題ありません。
ただし、発症後もしばらくは唾液や便からウイルスが排出されるため、基本的な感染対策を徹底しましょう。
不安がある場合は、医療機関や職場に事前に相談してから出勤することをおすすめします。
大人が手足口病に感染しないようにするための予防法を教えてください
1.手洗い・うがい
外出後やトイレの後、食事前には石けんで丁寧に手を洗い、うがいも習慣化しましょう。ウイルスは手やお口から体内に侵入するため、口腔内の清潔も感染予防につながります。
2.生活環境の清掃
ドアノブやトイレ、共用物などはこまめに消毒し、家庭や職場を清潔に保つよう心がけましょう。なかでも、感染者がいる場合は、便や唾液にウイルスが含まれているため、排泄物の処理には十分な注意が必要です。
3.体調管理
睡眠不足や栄養の偏りは免疫力の低下につながります。規則正しい生活とバランスの取れた食事を心がけましょう。暑い時期は冷たい物の摂りすぎにも注意が必要です。
こうした対策を継続することで、感染リスクを大きく下げられます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
まずはしっかりと休養をとり、喉への刺激が少ない食事やこまめな水分補給を心がけて、無理のない範囲で回復を目指してください。症状が治まった後もウイルスの排出は続くため、ご家族や周囲への配慮も忘れずにすることが大切です。
焦らず、ご自身のペースで体調の回復を優先しながら、日々をお過ごしください。
編集部まとめ

ここまで大人の手足口病についてお伝えしてきました。大人の手足口病の要点をまとめると以下のとおりです。
- 手足口病(HFMD:hand, foot and mouth disease)は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどが原因のウイルス性感染症のこと
- 手足口病は、子どもがかかりやすい感染症とされていますが、大人にも感染する可能性がある
- 手足口病は、出勤停止期間が定められている感染症ではないため、出勤の時期は体調と感染予防の観点から判断することが大切である
手足口病は子どもがかかりやすい感染症ですが、大人が感染すると重い症状が出ることもあります。感染経路や予防策を理解し、手洗いや体調管理を徹底することが大切です。
今回の記事が、大人の手足口病について知りたい方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献




