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「梅毒」を発症すると「皮膚」にどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/09/10
「梅毒」を発症すると「皮膚」にどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】

性的接触により感染する梅毒という病気があります。梅毒は特有の皮膚症状が現れることがある病気です。 本記事では、梅毒の皮膚症状や皮膚以外の症状を初期・中期・後期の感染経過別に説明します。 併せて、梅毒の診断や治療法・梅毒の注意点や予防法などについて解説します。梅毒に感染すると深刻な健康上の悪影響が生じることもあるため、適切な治療を受けて回復を目指しましょう。

水戸 陽貴

監修医師
水戸 陽貴(中通総合病院)

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旭川医科大学卒業 。現在は中通総合病院内科科長。専門は感染症科、総合内科。

梅毒の感染経過別にみられる皮膚症状

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感染初期にみられる皮膚症状を教えてください。

梅毒感染初期(3週間程度経過するまで)には梅毒トレポネ−マという病原体の侵入部位に初期硬結(しょきこうけつ)や硬性下疳(こうせいげかん)などの皮膚症状が現れます。初期硬結は軟骨のような硬さを持つしこりです。初期硬結の段階を過ぎると、周囲から強く浸潤されるようになって硬く盛り上がってきます。中心には潰瘍が形成され、これを硬性下疳といいます。発症部位は男性では亀頭部・冠状溝・包皮などで、女性では大小陰唇・子宮頸部などです。初期硬結・硬性下疳ともに疼痛などの自覚症状はなく、特に治療をしなくても数週間で自然に治まります。しかしここでしっかり治療を受けておかないと、病原体が体内で増殖し続け、感染中期に進むことがあるので注意が必要です。

感染中期の皮膚症状を教えてください。

梅感染後3ヶ月程度経過すると中期になり、次のような皮膚症状が生じます。
  • バラ疹:手のひら・足の裏・体幹部に生じる淡い赤い色の発疹
  • 丘疹性梅毒:小豆大からエンドウ大の赤褐色や赤銅色の丘疹・結節
  • 梅毒性乾癬:赤褐色や赤銅色の班で鱗屑を伴い、乾癬に似ている
  • 扁平コンジローマ:平たいいぼ状の皮膚症状
  • 膿疱性梅毒:膿疱(のうほう)が多発する症状
  • 梅毒性アンギーナ:びらんや潰瘍を伴った発赤・腫脹(しゅちょう)・浸軟
  • 粘膜疹:乳白斑のような症状
  • 梅毒性脱毛:まばらに毛が抜ける症状
梅毒中期にはさまざまな皮膚症状が生じますが、出現頻度が高いのは丘疹性梅毒・梅毒性乾癬などです。次に高いのはバラ疹・扁平コンジローマ・梅毒性アンギーナ・梅毒性脱毛となっています。膿疱性梅毒の出現頻度は低いです。

感染後期にはどのような皮膚症状がみられますか?

梅毒感染後3年以上経過すると、第3期とも呼ばれる後期に入ります。この時期に見られる皮膚症状は結節性梅毒疹やゴム腫です。ただ、現在では第3期の症状はあまり見られなくなりました。

皮膚以外に症状が出ることはありますか?

梅毒に感染すると、皮膚症状以外に次のような症状を呈することがあります。
  • 初期:所属リンパ節腫脹・髄膜炎
  • 中期:発熱・倦怠感・全身性リンパ節腫脹・消化器系/泌尿器系/筋骨格系の症状
  • 後期:大動脈炎・大動脈瘤・大動脈弁逆流症・脊髄癆(せきずいろう)・進行麻痺
梅毒感染ではこれらの症状や皮膚症状を呈することもありますが、症状が現れない無症候性梅毒もあります。しかし、症状が現れなくても梅毒に感染していれば、その後脳や心臓に重大な合併症が起きることもあるためしっかり治療をしましょう。

梅毒の診断と治療方法

腕組みする医師

梅毒を診断する検査方法を教えてください。

梅毒の検査方法は、医師による診察のほか血液検査(抗体検査)があります。男性の場合は泌尿器科や皮膚科、女性の場合は産婦人科や皮膚科などほとんどの医療機関で血液検査が可能です。病変から検体を採取して顕微鏡で観察する検査・PCR検査などが行われるケースもあります。梅毒の検査というと匿名で受けたいという方もいるでしょうが、地域によっては保健所で匿名・無料の検査が受けられる場合があります。梅毒の検査を受けるときは、感染の可能性がある時期や感染の予防状況(コンドーム使用など)について医師と共有することが重要です。また本人だけでなく、感染の可能性があるパートナーも積極的に検査を受けるようにしましょう。

梅毒にはどのような治療方法が適応されますか?

梅毒に対しては抗菌薬による内服や注射治療が行われます。使用される抗菌薬はペニシリン系です。症状によっては入院のうえ、抗菌薬を点滴することもあります。内服治療の場合は、医師が病気などを考慮して治療期間を決めます。仮に症状がよくなっても、内服治療を途中でやめてはいけません。医師の指示に従いましょう。また、治療中は医師が大丈夫だと判断するまで、性行為などは慎むようにしましょう。

受診の目安を教えてください。

梅毒の潜伏期間は10~90日と幅があります。そのため、受診の目安としては、感染が心配される性的接触後3週間から2ヶ月程度が適切なタイミングでしょう。そのあたりで検査を受けてみるのがおすすめです。

梅毒の注意点と予防法

注意

妊娠中に梅毒に感染した場合のリスクを教えてください。

妊娠中に梅毒に感染した場合に心配されるのが生まれてくる赤ちゃんへの影響です。妊婦の子宮内で赤ちゃんが梅毒に感染することを先天性梅毒といいますが、お腹の赤ちゃんへの感染率は6〜8割だともいいます。妊婦から母子感染するリスクは以下のような数字になっています。
  • 早期梅毒第1期:約70~100%
  • 早期梅毒第2期:約70%
  • 早期潜伏期:約40%
  • 後期潜伏期:約10%
早期顕症梅毒(1期・2期)の時期はとても感染力が高いです。感染時期が妊娠の後期になるほど、赤ちゃんへの感染率も高くなります。先天性梅毒に感染した赤ちゃんには次のような症状が発症することもあります。まず胎児の場合です。
  • 胎児発育遅延
  • 肝脾腫
  • 心奇形
  • 紫斑
  • 小頭症
  • 水頭症
  • 脳内石灰化
出生児では次のような症状を発症することがあります。
  • 難聴
  • 失明(網膜炎)
  • 精神発達遅滞
  • 白内障
  • 骨軟骨炎
  • 斑状発疹
  • 水疱状発疹
  • 角膜炎
  • ハッチンソン歯
妊婦が梅毒の治療をしないで放置しておくと、死産や早産になったり赤ちゃんの神経や骨などに異常が生じたりすることもあります。出生児に症状がなくても、学童期に発症する場合があります。そのため、妊婦が梅毒に感染した場合は早期にしっかりと治療することが重要です。適切な時期に治療すれば、赤ちゃんへの影響を防げる可能性が高くなります。

治療が終わったらもう梅毒にかかりませんか?

梅毒が完治すると一定の抗体ができますが、再感染を予防できるわけではありません。そのため、適切な予防策を取らず性的接触をすると再び梅毒に感染する可能性があります。適切な予防策とは、コンドームの使用やパートナーの治療などですが、この点については後ほど解説しましょう。

梅毒の予防法はありますか?

梅毒は性的接触から起こることが多いため、正しい性行為をすることが予防法になります。具体的にはコンドームの使用です。コンドームを適切に使用することで、梅毒の感染リスクを低減できます。ただし、コンドームを使用しても完全に感染を防げるわけではありません。コンドームが覆っていない部分から感染する可能性があります。不特定多数の相手との性的接触は避けましょう。梅毒感染あるいは感染させるリスクが高まります。いずれにしろ予防策を講じておけばよいというものではなく、性的接触による感染リスクが存在することは覚えておきましょう。妊娠中に梅毒に感染した場合、先天性梅毒を完全に予防する方法はありません。赤ちゃんに症状が発症するとは限りませんが、母親が治癒しても赤ちゃんへの母子感染が起きることはあります。母子感染で赤ちゃんに何らかの先天的異常が発症した場合は、治療が困難になることがあります。

編集部まとめ

診察する男性と医師 今回の記事では梅毒の皮膚症状やほかの症状の解説をし、診断・治療方法・注意点・予防法などを紹介しました。梅毒は主に性的接触から感染する病気ですが、その他にも輸血による感染・母子感染というケースもあります。 梅毒には特有の症状があり、皮膚に現れることもあります。初期から後期別の皮膚症状は異なりますが、自然に治まってしまうこともあるため、油断する方もいるでしょう。しかし、油断は禁物です。 梅毒に感染して症状が治まっても、病原菌が体内で増殖している可能性があります。梅毒と思われる症状が現れたら、早期に医師の診断と検査を受けましょう。そのうえで陽性になったら、適切な治療を受けることが大事です。 残念ながら梅毒が完治しても再発することはありますが、完治後に適切な性行為で予防が可能です。梅毒に感染することを避けるために、日頃から予防法をしっかり学んで対処するようにしましょう。

この記事の監修医師