「梅毒の潜伏期間」はどのくらい?原因や症状も解説!【医師監修】

梅毒は梅毒トレポネ-マ(学名:Treponema pallidum)による細菌性の性感染症で、世界中に広くみられます。
梅毒は全身に多彩な臨床症状をきたし、適切な抗菌薬治療を受けなければ深刻な健康上の影響が生じます。
また、性感染症であり若年者から幅広い年齢層に感染リスクがあるとともに、母子感染による流産や先天梅毒などもありえるため公衆衛生上の対策も必要な疾患です。
この記事では梅毒を適切に防ぐために重要な潜伏期間を詳しく解説します。また、原因や症状・感染リスクや治療方法も紹介します。
梅毒の予防や治療に役立てていただければ幸いです。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
梅毒の原因と症状
梅毒の原因を教えてください。
梅毒の病期(ステージ)と症状について教えてください。
- 第1期は感染後約3週間から3ヶ月で症状が現れる時期
- 第2期は感染後約3ヶ月から3年の時期
- 第3期は感染後3年から10年の時期
- 第4期は感染後10年以上経過した時期
梅毒は長い時間をかけてゆっくり進行していきます。第1期と第2期では、他者への感染リスクが高いため、ステージを医療者と患者が共有し理解することが重要です。次に症状についてステージの特徴をみていきましょう。
- 第1期は感染した部位(性器やお口の中、肛門周囲)に痛みのないしこりや潰瘍ができる
- 第2期はリンパ節の腫れやバラ疹と呼ばれる赤い発疹が全身に認められることがある
- 第3期は皮膚や筋肉などにゴム腫と呼ばれる腫瘍が発生する
- 第4期は多くの臓器に腫瘍が発生し神経が侵される
更に症状の有無についても分類があり、治療の必要性も異なります。
- 自他覚症状がなく治療の必要がある活動性梅毒を潜伏梅毒
- 症状がなく治療の必要がない陳旧性梅毒
潜伏と聞くと感染リスクが低いように感じますが、梅毒は活発に活動しており、感染リスクが高い状態となるため正しい病識が重要です。
梅毒の潜伏期間と感染リスクについて
梅毒の潜伏期間はどのくらいですか?
梅毒の感染経路について教えてください。
- 性行為:膣性交、肛門性交、オーラルセックスなどで感染者の粘膜や皮膚と接触する
- キス:口腔内に病変がある場合にキスで感染する可能性がある
- 母子感染:妊娠中に胎盤を介して胎児に感染し、先天梅毒を引き起こす可能性がある
- 皮膚潰瘍との接触:感染者の病変部に接触することで感染する場合もある
その他、輸血やお風呂での感染報告もありますがまれです。
潜伏期間でもうつりますか?
梅毒の病期(ステージ)によって感染力は異なりますか?
- 第1期は皮膚や粘膜病変が顕著で感染力が高い時期
- 第2期においても全身に発疹(バラ疹)が現れる時期で、引き続き感染力が高い
- 第3期になると内臓や神経に進行するが、他者への感染力は低い
症状の有無についても以下のように分類がされています。
- 早期潜伏梅毒(感染後1年以内):症状はないものの、感染力を持つ場合がある
- 後期潜伏梅毒(感染後1年以上):感染力は低い
このように梅毒は様々な分類があり、それぞれのステージに特徴があるため感染力を把握することが重要です。
梅毒の治療方法と予防方法
梅毒は自然治癒しますか?
梅毒の検査はどのように行われますか?
- 培養:ウサギの睾丸での培養が患者さんの検体から菌を発育させる唯一の手段
- 菌の観察:検体によっては免疫染色によって菌を顕微鏡下で観察できる
- PCR:菌の遺伝子を特異的に増幅することで存在を証明する
上記の方法は、いずれも実施可能な施設は限られており、多くの場合は以下のような血清学的検査が実施されています。
- 非トレポネーマ抗原検査:カルジオリピンーコレステロールーレシチンの脂質抗原と呼ばれる梅毒に似た成分を検出する方法
- トレポネーマ抗原検査:梅毒そのものを検出する特異性が高い検査
この二つの検査結果をもとに正確に解釈を行います。しかし検査は万能ではありません。梅毒ではないが検査で検出される偽陽性と、梅毒に感染しているが検査で検出できない偽陰性に注意が必要です。検査の組み合わせによって治療効果の判定やステージの予測にも結果が用いられます。
梅毒の治療方法を教えてください。
- 発熱
- 悪寒
- 筋肉痛
- 頭痛
ペニシリン系抗菌薬にアレルギーがある方は、ほかの薬剤が考慮されます。妊娠中の患者さんに対してテトラサイクリン系抗菌薬を使用すると、胎児の骨や歯の発達に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
梅毒の予防方法を教えてください。
- 不特定多数の人との性的接触が感染リスクを高める
- オーラルセックスやアナルセックスでも感染する
- コンドームを適切に使用することで感染リスクを下げられる
- 梅毒が疑われる症状が自然に消退したとしても医療機関を受診する必要がある
- 梅毒が治癒しても新たな梅毒の罹患は予防できない
先天梅毒を予防するには、以下のようなことが重要です。
- 梅毒スクリーニング検査を含む妊婦健診の推進
- 妊娠中に少しでも心当たりや疑わしい症状があった際の積極的な梅毒検査の実施
- 梅毒と診断されたときの早期治療の実施
- 妊娠中の性交渉に関する啓発
個人で気をつけるには限界があり、社会での啓蒙活動も重要です。
編集部まとめ
梅毒の潜伏期間についてまとめました。梅毒は梅毒トレポネーマによる性感染症で、性行為や母子感染で広がります。
感染後1週間から3ヶ月程度の潜伏期間を経て発症し、無痛性のしこりや発疹が現れますが、自然に治まることもあるため正しい理解が必要です。
早期発見には検査が重要で、治療は主にペニシリン系の抗菌薬が用いられます。予防には、感染者との性交渉を避け、コンドームを適切に使用することが推奨されますが、完全には予防できません。
梅毒の予防のためには、潜伏期間の理解や啓発活動を社会全体で行うことが重要です。