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「梅毒の潜伏期間」はどのくらい?原因や症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/04/11
「梅毒の潜伏期間」はどのくらい?原因や症状も解説!【医師監修】

梅毒は梅毒トレポネ-マ(学名:Treponema pallidum)による細菌性の性感染症で、世界中に広くみられます。

梅毒は全身に多彩な臨床症状をきたし、適切な抗菌薬治療を受けなければ深刻な健康上の影響が生じます。

また、性感染症であり若年者から幅広い年齢層に感染リスクがあるとともに、母子感染による流産や先天梅毒などもありえるため公衆衛生上の対策も必要な疾患です。

この記事では梅毒を適切に防ぐために重要な潜伏期間を詳しく解説します。また、原因や症状・感染リスクや治療方法も紹介します。

梅毒の予防や治療に役立てていただければ幸いです。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

梅毒の原因と症状

性病

梅毒の原因を教えてください。

梅毒の原因は梅毒トレポネーマへの感染です。梅毒は主に性行為で感染する性感染症で、ほかの感染経路として胎盤を介した母体感染も起こりえます。本菌は低酸素状態でしか長く生存できないため、直接的な粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為のリスクが高い一方、入浴やコップの使い回しなどの感染リスクは低いです。極めてまれに、傷口が多量の梅毒トレポネーマに汚染された物品に触れたことで感染したという報告もあります。輸血での感染を心配している方もいますが、血液検査により安全な血液が供給されているためまれです。性行為による感染を防ぐためには、リスクのある相手との性行為を避けたり、コンドームを使用したりすることが有効といわれています。梅毒を正しく恐れ、適切に予防することが重要です。次に梅毒を予防するうえで重要な、ステージや潜伏期間について詳しくみていきます。

梅毒の病期(ステージ)と症状について教えてください。

梅毒の病期(ステージ)と症状を理解することは、梅毒の予防にも重要です。まずは母子感染により起こる先天梅毒と、主に性行為により感染する後天梅毒に分けられます。さらに後天梅毒は1期から4期に分類されています。以下に時期の分類から挙げていきましょう。

  • 第1期は感染後約3週間から3ヶ月で症状が現れる時期
  • 第2期は感染後約3ヶ月から3年の時期
  • 第3期は感染後3年から10年の時期
  • 第4期は感染後10年以上経過した時期

梅毒は長い時間をかけてゆっくり進行していきます。第1期と第2期では、他者への感染リスクが高いため、ステージを医療者と患者が共有し理解することが重要です。次に症状についてステージの特徴をみていきましょう。

  • 第1期は感染した部位(性器やお口の中、肛門周囲)に痛みのないしこりや潰瘍ができる
  • 第2期はリンパ節の腫れやバラ疹と呼ばれる赤い発疹が全身に認められることがある
  • 第3期は皮膚や筋肉などにゴム腫と呼ばれる腫瘍が発生する
  • 第4期は多くの臓器に腫瘍が発生し神経が侵される

更に症状の有無についても分類があり、治療の必要性も異なります。

  • 自他覚症状がなく治療の必要がある活動性梅毒を潜伏梅毒
  • 症状がなく治療の必要がない陳旧性梅毒

潜伏と聞くと感染リスクが低いように感じますが、梅毒は活発に活動しており、感染リスクが高い状態となるため正しい病識が重要です。

梅毒の潜伏期間と感染リスクについて

口を開けた女性

梅毒の潜伏期間はどのくらいですか?

梅毒の潜伏期間は個人差が大きく、早くて感染後に約1週間です。遅い場合では、感染後13週間の潜伏期間を経て発症します。また潜伏梅毒は主に第1期と2期の間、および2期の症状が消えた後にみられ、梅毒血清反応陽性でも症状が認められない状態です。潜伏梅毒のうち、感染後1年以内を早期潜伏梅毒、感染後1年以降を後期潜伏梅毒といいます。早期潜伏梅毒の後、再発を繰り返しながら第3期に移行します。症状がなくなったから大丈夫と、治療や予防を中断しないことが重要です。

梅毒の感染経路について教えてください。

梅毒の感染経路は、以下のようなものが挙げられます。

  • 性行為:膣性交、肛門性交、オーラルセックスなどで感染者の粘膜や皮膚と接触する
  • キス:口腔内に病変がある場合にキスで感染する可能性がある
  • 母子感染:妊娠中に胎盤を介して胎児に感染し、先天梅毒を引き起こす可能性がある
  • 皮膚潰瘍との接触:感染者の病変部に接触することで感染する場合もある

その他、輸血やお風呂での感染報告もありますがまれです。

潜伏期間でもうつりますか?

梅毒は潜伏期間中でも感染する可能性があります。特に感染後1年以内の早期潜伏梅毒では、病変が顕著である場合があり、他者に感染するリスクが高くなります。リスクのある性行為に心当たりがある場合は、感染拡大を防ぐために自粛が必要です。

梅毒の病期(ステージ)によって感染力は異なりますか?

梅毒は病期によって感染力が異なります

  • 第1期は皮膚や粘膜病変が顕著で感染力が高い時期
  • 第2期においても全身に発疹(バラ疹)が現れる時期で、引き続き感染力が高い
  • 第3期になると内臓や神経に進行するが、他者への感染力は低い

症状の有無についても以下のように分類がされています。

  • 早期潜伏梅毒(感染後1年以内):症状はないものの、感染力を持つ場合がある
  • 後期潜伏梅毒(感染後1年以上):感染力は低い

このように梅毒は様々な分類があり、それぞれのステージに特徴があるため感染力を把握することが重要です。

梅毒の治療方法と予防方法

聴診器

梅毒は自然治癒しますか?

梅毒は自然治癒しません。初期症状として現れるしこりや潰瘍は数週間から数ヶ月で自然に消失しますが、感染は体内で進行します。適切な抗生物質治療を受けることで治癒が期待できます。

梅毒の検査はどのように行われますか?

梅毒は偽装の達人の異名をもち、症状の鑑別や検査での発見が難しい病気です。そのため、梅毒を理解したうえでの検査戦略が大切になります。また、梅毒を疑って検査を進めるためには正確な問診も重要です。梅毒の検査方法と特徴を以下に挙げます。

  • 培養:ウサギの睾丸での培養が患者さんの検体から菌を発育させる唯一の手段
  • 菌の観察:検体によっては免疫染色によって菌を顕微鏡下で観察できる
  • PCR:菌の遺伝子を特異的に増幅することで存在を証明する

上記の方法は、いずれも実施可能な施設は限られており、多くの場合は以下のような血清学的検査が実施されています。

  • 非トレポネーマ抗原検査:カルジオリピンーコレステロールーレシチンの脂質抗原と呼ばれる梅毒に似た成分を検出する方法
  • トレポネーマ抗原検査:梅毒そのものを検出する特異性が高い検査

この二つの検査結果をもとに正確に解釈を行います。しかし検査は万能ではありません。梅毒ではないが検査で検出される偽陽性と、梅毒に感染しているが検査で検出できない偽陰性に注意が必要です。検査の組み合わせによって治療効果の判定やステージの予測にも結果が用いられます。

梅毒の治療方法を教えてください。

梅毒の治療方法は、主にペニシリン系抗菌薬のアモキシリン投薬が一般的です。治療開始後24時間以内に、Jarisch-Herxheimer反応(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)と呼ばれる副反応が現れることがあります。そのため、あらかじめ事前の説明や心構えが必要です。この副反応は、抗菌薬によって破壊された菌体からサイトカインが放出されることによって生じ、以下のような症状が出現します。

  • 発熱
  • 悪寒
  • 筋肉痛
  • 頭痛

ペニシリン系抗菌薬にアレルギーがある方は、ほかの薬剤が考慮されます。妊娠中の患者さんに対してテトラサイクリン系抗菌薬を使用すると、胎児の骨や歯の発達に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

梅毒の予防方法を教えてください。

梅毒に罹患した者との性交渉を避けることが基本です。粘膜や皮膚が梅毒の病変などと直接接触しないように、また病変の存在に気付かない場合もあることから、性交渉の際はコンドームを適切に使用します。ただし、コンドームで覆われていない箇所から感染する可能性があるため、完全に予防することはできません。また、性風俗従事者や利用者・同性愛者・性的活動性が高い若年者など感染リスクの高い集団に対して、啓発を行うことも重要です。啓発のポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 不特定多数の人との性的接触が感染リスクを高める
  • オーラルセックスやアナルセックスでも感染する
  • コンドームを適切に使用することで感染リスクを下げられる
  • 梅毒が疑われる症状が自然に消退したとしても医療機関を受診する必要がある
  • 梅毒が治癒しても新たな梅毒の罹患は予防できない

先天梅毒を予防するには、以下のようなことが重要です。

  • 梅毒スクリーニング検査を含む妊婦健診の推進
  • 妊娠中に少しでも心当たりや疑わしい症状があった際の積極的な梅毒検査の実施
  • 梅毒と診断されたときの早期治療の実施
  • 妊娠中の性交渉に関する啓発

個人で気をつけるには限界があり、社会での啓蒙活動も重要です。

編集部まとめ

花

梅毒の潜伏期間についてまとめました。梅毒は梅毒トレポネーマによる性感染症で、性行為や母子感染で広がります。

感染後1週間から3ヶ月程度の潜伏期間を経て発症し、無痛性のしこりや発疹が現れますが、自然に治まることもあるため正しい理解が必要です。

早期発見には検査が重要で、治療は主にペニシリン系の抗菌薬が用いられます。予防には、感染者との性交渉を避け、コンドームを適切に使用することが推奨されますが、完全には予防できません。

梅毒の予防のためには、潜伏期間の理解や啓発活動を社会全体で行うことが重要です。

この記事の監修医師