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「胃腸炎」を発症すると現れる主な「6つの症状」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/04/03
「胃腸炎」を発症すると現れる主な「6つの症状」はご存知ですか?【医師監修】

感染性胃腸炎は、細菌やウイルスによって引き起こされる感染症です。一年を通して発生する病気ですが、主に秋から冬の時期に感染者数が増加し、特にウイルス性の胃腸炎が多いです。

感染力が強いウイルスのため、自分では気を付けていても感染した家族や友人が触った物にウイルスが付着しており、それを触ることで感染してしまう場合もあります。

本記事では感染性胃腸炎の症状や感染経路、予防方法について解説していきます。

感染性胃腸炎について詳しく知りたいと考えている方の参考になれば幸いです。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

プロフィールをもっと見る
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

感染性胃腸炎の感染経路や症状

ベッドルームにいる女性

感染性胃腸炎を引き起こす原因となる病原体を教えてください。

感染性胃腸炎の原因となる病原体には以下のようなものがあります。

  • ノロウイルス
  • ロタウイルス
  • サポウイルス
  • アデノウイルス

ノロウイルスは幅広い年代に感染するケースが多く、強い感染力を持つウイルスです。子供や年配の方は重症化する可能性があります。おう吐物が喉に詰まり、窒息死することも少なくありません。ロタウイルスとアデノウイルスは乳幼児に多く感染が確認されるウイルスです。5歳までの急性胃腸炎の患者さんは、40〜50%前後がロタウイルスに感染しています。大人はロタウイルスへの感染を複数回経験している場合があるため、それほど症状が重篤化するケースはありません。1歳以下の乳児は症状の進行が早いと言われています。胃腸炎にはその他にサルモネラやカンピロバクターといった細菌性のものや、アメーバやクリプトスポリジウムといった寄生虫由来のものがあります。

感染性胃腸炎にかかるとどのような症状が出ますか?

どの病原体においても、おう吐と下痢の症状が顕著に現れます。その他の症状は以下のとおりです。

  • 吐き気
  • 発熱
  • 腹痛
  • 脱水
  • 電解質喪失症状
  • けいれん

原因となる病原体・感染経路・菌量・年齢・体調によって症状の程度も変化します。小児の場合はおう吐、大人の場合は下痢の症状が表れることが多いです。ロタウイルスに感染した幼児はけいれんを起こすこともあります。なかには感染しても症状が出ない場合や、風邪のような症状のみで治まる方もいます。症状が現れる期間は平均して5〜6日程度です。

感染性胃腸炎の感染経路を教えてください。

感染経路としては主に4つが挙げられます。

  • 経口感染
  • 接触感染
  • 飛沫感染
  • 空気感染

経口感染はウイルスによって汚染された食品を食べることで感染する経路です。接触感染では感染者のふん便・おう吐物に直接触れた場合や、感染者がしっかり手を洗わずに触れたドアノブなどを介して手にウイルス感染する場合を指します。その他にもおう吐した際の飛沫による飛沫感染や、ふん便が乾燥し空気中のほこりとともに宙に舞ったものを吸い込むことでも発症する空気感染があります。処理を行う場合はマスクや手袋を着用し十分に注意して行いましょう。

潜伏期間はどのくらいですか?

病原体によっても前後しますが、おおよそ1〜3日程度です。感染後は症状が出る方がほとんどですが、まれに無症状のまま進行する場合や、軽い風邪のような症状で治まる場合もあります。感染経路が食品の場合、食品の摂取量や調理方法などにより潜伏期間が変動する可能性もあるため、体調の変化には十分注意しましょう。

感染性胃腸炎の治療方法やセルフケア

自宅療養

感染性胃腸炎で医療機関へ行く目安を教えてください。

脱水症状がひどく、水分を摂取してもすぐにおう吐する場合や、水分の摂取さえできない場合は速やかに医療機関を受診しましょう。腹痛や下痢、高熱も通常1〜2日で治りますが、症状が改善されず長引いている場合も病院へ行くのをおすすめします。体力の弱い乳幼児や高齢者の方は、症状が重くなり悪化する可能性が高いです。無理はせず、感染が疑われる段階で医療機関で治療を受けましょう。

医療機関での治療方法を教えてください。

感染性胃腸炎は有効な治療法や抗ウイルス剤は見つかっておらず、対症療法での治療となります。おう吐や下痢で身体から水分が多く失われるため、脱水症状になってしまう場合も少なくありません。脱水症状がひどい場合は医療機関で輸液(点滴)を行います。下痢止め薬はかえって症状の回復が遅くなるケースもあるため、使用はなるべく控えましょう。どうしても下痢がひどく辛い場合は、医師に相談して服用するかどうか決めるのが望ましいです。

家庭でのセルフケア方法を教えてください。

脱水症状を防ぐためにこまめに水分補給を行います。吐き気がある場合は治まるのを待ってから、少しずつ頻繁に水分をとりましょう。おう吐の症状がある場合は、おう吐が落ち着いてきたら少しずつ水分補給を行い、消化しやすい食事を取り安静にしましょう。乳幼児や高齢者が感染してしまったときは家庭でのセルフケアでは対応しきれない場合もあるため、病院の受診がおすすめです。高齢者は誤嚥(おう吐物が気管に入ること)から肺炎が引き起こされる可能性があるため、体調の変化には十分注意しましょう。

感染性胃腸炎が完治するまでの期間はどのくらいですか?

ノロウイルスの場合は24〜48時間、ロタウイルスの場合は5〜6日間です。症状の程度や体調によっても個人差があります。ただし、症状が回復した後もウイルスは1週間〜1ヶ月の間、ふん便中から排出されます。感染性胃腸炎に罹った場合は、症状が治った後もふん便を流す場合はふたを閉めウイルスが飛散しないようにしたり、手洗いを欠かさず行ったりしましょう。周囲の方にウイルスを移さないように配慮することが必要です。

感染性胃腸炎の予防方法

手洗い

感染性胃腸炎の予防方法を教えてください。

基本的な予防方法は手洗いです。調理を行う前や食事をする前など、せっけんと流水で入念に手首まで洗い流しましょう。手洗い後に使用するタオルも、未使用できれいな状態のものを使用します。使い捨てタイプのペーパータオルを使用するのもおすすめです。カキやホタテなどの二枚貝を調理する場合、中心部までしっかりと火を通しましょう。十分に火が通っていないとウイルスの感染力は維持されたままです。調理に使用した器具も十分に洗い、煮沸消毒を行います。ノロウイルスが疑われる症状が出ている場合も、家庭内感染を防ぐため調理を控えましょう。

感染性胃腸炎の家族をケアする場合の注意点を教えてください。

家族で感染性胃腸炎の感染者が出た場合は、家庭内感染を防ぐため食器や生活環境の消毒を徹底し、おう吐物やふん便といった排泄物の処理で二次感染しないように対策を行います。その際は以下の点に注意しましょう。

  • 食器は85度以上の熱湯で1分以上加熱する、または塩素消毒液に浸す
  • 感染者が触った箇所を塩素消毒剤で消毒する
  • 衣類は洗剤を入れた水で丁寧にもみ洗いする
  • 汚物を処理する際はマスクや使い捨て手袋・ガウンを着用する
  • おう吐物は乾燥する前にペーパータオルで拭き取る
  • 拭き取ったおう吐物や手袋・マスクはビニール袋に密封し捨てる
  • 換気はおう吐物を処理した後に空気の流れに注意して行う
  • 石鹸を使って丁寧に手を洗う

感染が判明したら速やかに感染者の隔離を行い、食事を運ぶ際も部屋に入らないようにします。なるべく感染者との接触を減らすようにしましょう。

編集部まとめ

回復した男性
感染性胃腸炎はノロウイルスやロタウイルスなどによって引き起こされる病気です。

感染するとおう吐や下痢をはじめ発熱や腹痛・脱水といった症状が多く現れ、通常1〜3日ほどで治ります。

体調や年齢、原因となるウイルスによっては症状が重くなったり、長引いたりします。症状が改善されない場合は無理をせず、速やかに医療機関を受診しましょう。

感染性胃腸炎は基本的に手洗いを丁寧に行うことで予防できます。感染性胃腸炎が疑われる症状が出ている際は調理を控えることも大切です。

一緒に暮らす家族に感染者が出た場合は速やかに隔離を行います。おう吐物や排泄物を処理する際は手袋を使う、感染者が使用したものは分けて洗うなど、家庭内で二次感染が発生しないよう対策を行いましょう。

この記事の監修医師

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