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「腸閉塞(イレウス)の入院期間」はどれくらい?治療方法や退院後の生活も解説!

 公開日:2025/04/04
「腸閉塞(イレウス)の入院期間」はどれくらい?治療方法や退院後の生活も解説!

腸閉塞(イレウス)とは腸管の閉塞により起こる状態です。腸閉塞に対する治療方法は保存治療と手術治療です。治療方法は腸閉塞の種類や状態によって選択されます。

原因はさまざまで腫瘍や炎症、異物、手術痕による癒着があります。消化管の役割はお口から飲食したものの通り道となり、消化や吸収、排泄をすることです。

腸閉塞を発症すると、「入院期間はどのくらい?」「治療はなにをするの?」といった疑問を抱いたり、退院後の生活を不安に感じたりする方が多いでしょう。

今回の記事では腸閉塞における一般的な入院期間や、治療方法や流れとともに、退院後の生活の注意点について解説します。ぜひ最後まで読み進めていただけますと幸いです。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

プロフィールをもっと見る
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

腸閉塞(イレウス)の検査と治療方法

腸閉塞(イレウス)の検査と治療方法

腸閉塞(イレウス)が疑われる症状を教えてください。

腸閉塞の主な症状は以下の5点です。

  • 排便・排ガスの停止
  • 腹痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 腹部の膨満感
  • 発熱

腸閉塞が起こると、主に消化器系の症状がみられます。腸閉塞により消化物が閉塞部から肛門側へ流れなくなることで、排便・排ガスが停止します。消化物が腸管内に多く溜まることで、腹部の膨満感があるでしょう。閉塞部から口側に溜まった消化物が胃まで逆流することで、吐き気や嘔吐の症状が現れます。腸閉塞により炎症が発生することで発熱を起こす場合もあります。

どのような検査を行いますか?

腸閉塞が疑われる場合には以下の検査が行われます。

  • 血液検査
  • 腹部レントゲン検査
  • 腹部造影CT検査
  • 造影MRI検査
  • 腹部超音波検査

排便・排ガスが停止しているため、腸管内にはガスが溜まった状態です。腹部レントゲン検査で腹部のガスを確認することで、腸閉塞の所見を確認できます。腸閉塞には腫瘍や炎症・異物・手術痕による癒着といったさまざまな原因があります。治療方針を検討するために必要な検査が、腹部造影CT検査や造影MRI検査、腹部超音波検査です。

治療方法を教えてください。

腸閉塞の治療は主に、保存的治療手術治療です。検査で確認した腸閉塞の状態や種類によって治療方法を選択します。保存的治療の場合はまず腸管に負担をかけないよう、食べ物や飲み物を一切とれない絶飲食にすることが重要です。脱水予防や栄養補給のため、点滴をします。必要に応じて鼻からチューブを入れる処置をします。チューブの先端が閉塞部位付近にある場合をイレウス管、胃内にある場合が経鼻胃管です。腸管内に溜まった消化液や胃内への逆流をチューブを通して体外へ排出することで、腸管の安静をとります。以下3点の場合に手術治療を選択します。

  • 保存治療で症状が改善しない
  • 腸管の血行障害がある腸閉塞
  • 腫瘍が原因の場合

手術治療では腹腔鏡手術、もしくは開腹手術があります。腹腔鏡手術では、腹腔鏡というカメラを使用して腹部内の観察をしながら手術を進めるようになります。メリットは手術の傷跡が小さく、術後の痛みが少ないことです。腹腔鏡手術が難しい場合には開腹手術となります。開腹手術では腹部に大きな傷を必要としますが、手術時にしっかり腹腔内を確認でき、手術操作がしやすい点がメリットです。

腸閉塞(イレウス)の入院期間と治療の流れ

腸閉塞(イレウス)の入院期間と治療の流れ

保存的治療を行う場合の入院期間はどのくらいですか?

保存的治療を行う場合の平均入院期間は11日程度です。しかし、治療経過や病状により入院期間が変動することもあります。そのため、詳細は医療機関で相談するようにしましょう。

手術を行う場合の入院期間はどのくらいですか?

手術治療を行う場合の平均入院期間は19日程度です。保存的治療後に手術治療を選択することにより、入院期間が長期となる傾向にあります。保存的治療の適応ではない絞扼性イレウスなどの場合は緊急で手術治療を行うので、入院期間が短縮する傾向にあります。

治療の流れを教えてください。

腸閉塞と診断があれば、まずは保存的治療もしくは手術治療の選択をします。保存的治療の場合はまず、絶飲食の状態となります。誤って飲食をしないように注意が必要です。経鼻胃管もしくはイレウス管を消化管内に挿入することで、腸管に溜まった消化物を体外へ排出して、腸管の負担を軽減します。鼻からチューブが出ているので違和感がありますが、抜けてしまうと治療が進まなくなるので、触らないように注意しましょう。絶飲食のため脱水にならないように、栄養やミネラルを点滴で補います。排便や排ガスが確認できるようになり、レントゲン検査で腸管内のガスがない状態を確認して挿入しているチューブを抜きます。食事が開始となれば、まずは重湯からです。排便や排ガス、腹痛、吐き気がないことを確認しながら食事を進めていきます。症状がなければ、少しずつ形のある食事が食べられるようになります。通常のご飯が食べられるようになれば退院となるでしょう。保存的治療では症状が改善しない場合や、絞扼性イレウスの場合に適応となるのが手術治療です。手術は腹腔鏡手術もしくは開腹手術があり、腸閉塞の状態により手術方法が選択されます。お腹に穴をあけて腸閉塞の原因である癒着の剥離や腸管の切除を行います。手術後翌日からリハビリが始まりますが、傷の痛みがあるので、痛み止めを使いながらコントロールしていきましょう。手術後3〜4日程度で食事が開始となり、手術から2週間程度で退院となるでしょう。

入院費用の目安を教えてください。

入院費用の目安は健康保険が3割負担の方で150,000円程度とされています。食事料金やベッド料金などは病院により差があるので、変動する場合があります。

腸閉塞(イレウス)の退院後の生活

腸閉塞(イレウス)の退院後の生活

治療によるリスクや副作用はありますか?

保存治療では経鼻胃管やイレウス管を挿入し、腸管内の減圧を図ります。腸管の安静を図る治療として一般的ですが、挿入時に消化管穿孔のリスクがあります。挿入時の操作などで胃や腸管に穴が空いてしまう状態です。消化管穿孔が生じた場合には、手術治療が必要となります。手術治療では以下のとおりさまざまなリスクがあります。

  •  出血
  •  傷の痛み
  •  傷の感染症
  •  腸管の縫合不全
  •  腸管の穿孔
  •  イレウスの再燃
  •  吐き気
  •  肺炎など呼吸不全
  •  アレルギー

腸閉塞を治療するために腹部や腸管を切除することによるリスクと、手術時の麻酔薬による身体的な影響があります。

退院後の生活で注意する点はありますか?

退院後の生活で注意することは以下の5点です。

  • 繊維質の多い食べ物や消化の悪い食材は避ける
  • 毎日から2日毎の排便習慣を意識する
  • 適度な運動をする
  • 傷に負担のかかる、重たいものは持たない
  • シャワーで身体の清潔を保つ

腸閉塞の治療後で症状が改善している状態でも、腸の回復はまだ充分とはいえません。消化に悪い食べ物不溶性の食物繊維を摂りすぎないように注意しましょう。消化吸収がうまく進まず、消化物が腸内に停滞することで腸が詰まるリスクがあります。少しずつ時間をかけて、満腹の八分目程度に抑えるようにしましょう。毎日もしくは2日毎の排便習慣を意識することが大切です。ヨーグルトや乳酸菌飲料を取り入れて腸内環境を整えたり、1日2リットルを目安に水を飲んだりすると効果的です。適度に運動を行うことで、傷や腸管の運動の回復を促します。退院後は体力が低下しているため、少しずつ活動量を増やしていきましょう。退院する頃には傷の出血もなく、治癒が進んでいます。しかし、重いものを持つなど腹部に負担がかかることで腸管が脱出する、腹壁瘢痕ヘルニアに注意が必要です。傷に負担のかからない生活を心がけましょう。傷の感染症にも注意が必要です。毎日シャワーに入り泡石鹸でやさしく洗いましょう。入浴は浴槽内の雑菌による感染症を引き起こすリスクがあるので、医師へ相談するようにしてください。

再発の可能性はありますか?

腸閉塞は治癒した場合でも再発の可能性がある病気です。再発の原因として、臓器や周囲の腹膜などが炎症により癒着することで、腸管の狭窄や捻れが起こり腸閉塞が再発してしまいます。適切な食事と排便習慣を意識し、排便・排ガスの停止や腹痛、吐き気が続く場合には早急に病院へ相談をしましょう。

編集部まとめ

優しそうに微笑む女性医師

腸閉塞の治療では入院が必要となり、入院期間や治療の流れについて患者さんは不安を抱くものです。腸閉塞は過去の手術による癒着や腫瘍、腹部の炎症などにより引き起こされます。

治療方法として保存的治療と手術治療があり、腸閉塞の状態によって治療方法が選択されます。治療方法や治療経過によって、入院期間には個人差があるため、焦らずに治療に取り組む気持ちが大切です。

症状が改善して退院した後も、再発の可能性があります。腸閉塞の再発を予防するため、食事や排便の習慣をコントロールして適度な運動を心がけましょう。

この記事の監修医師

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