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「動脈硬化」を発症すると「足にどんな初期症状」が現れるかご存知ですか?

 公開日:2025/10/18
「動脈硬化」を発症すると「足にどんな初期症状」が現れるかご存知ですか?

足の動脈硬化には、どのような初期症状があるでしょうか?

足の血管が詰まると足の感覚が鈍くなり、患者さん自身が気付かないうちに症状が進行するケースが少なくありません。

動脈硬化が進行すると、足を切断せざるを得なくなったり、心筋梗塞などの致命的な症状を合併したりする可能性が高くなります。

早期治療で症状の進行を防ぐためにも、動脈硬化の初期症状を見逃さないようにしましょう。

本記事では、足の動脈効果の初期症状や原因・予防方法を解説します。

吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

動脈硬化について

高血圧と血液検査表

動脈硬化とはどのような病気ですか?

動脈硬化とは、血管の内側が傷ついて炎症を起こし、そこにコレステロールなどが沈着して血管が硬くなってしまう病気です。沈着したコレステロールは粥腫(じゅくしゅ)とよばれる塊になり、血管が狭くなったり詰まったりして、血液の流れが悪くなります。動脈硬化が進行して血流が悪くなると、特に身体の末端部に酸素と栄養が供給されにくくなり、細胞の壊死や細菌感染症が悪化するリスクが高まります。

動脈硬化の種類について教えてください。

動脈硬化には、その症状や発生場所によっていくつかの種類があります。代表的なものは、以下の3つです。

  • 粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)
  • 細動脈硬化
  • 中膜硬化(メンケルベルグ型硬化)

粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)は、大動脈など太い動脈で起こり、血管内にコレステロールなどの物質が蓄積して血流が悪くなってしまう症状です。細動脈硬化は、脳や臓器内の細い動脈が硬化する症状で、進行すると脳出血などのリスクが高まります。中膜硬化は、血管壁を構成する中膜の部分が石灰化して、動脈の弾力が失われてしまう症状です。いずれの動脈硬化も、動脈が破裂したり詰まったりするリスクが高まるため、早めの治療が重要になります。血管に沈着した粥腫が流れ出して、血管の細い部分に詰まってしまうことを梗塞といいます。心血管で起こる梗塞が心筋梗塞、脳血管で起こる梗塞が脳梗塞です。また、下半身で起こる梗塞を伴う動脈硬化を、下肢閉塞性動脈硬化といいます。

下肢閉塞性動脈硬化の初期症状と原因

足をさわる男性

初期症状にはどのようなものがありますか?

下肢閉塞性動脈硬化の代表的な初期症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)とよばれる歩行の障害です。歩いているときに足底やふくらはぎに痛みが生じ、安静にすると痛みが引きます。症状が進行するにつれて、痛みが生じる感覚が短くなるのが特徴です。下肢閉塞性動脈硬化は、初期にはほとんど症状がないまま進行していくことも少なくありません。足のしびれや足先の冷えを感じる場合もありますが、糖尿病や神経の炎症など別の病気の可能性もあるため、詳しい検査が必要です。

下肢閉塞性動脈硬化症が進行するとどうなりますか?

下肢閉塞性動脈硬化が進行すると、安静時でも慢性的な足の痛みが続くようになります。じっとしていても足が痛み、日常生活や睡眠に支障をきたすことも少なくありません。さらに症状が進行すると、血流の悪化によって細胞に酸素や栄養が供給されなくなります。血流が少なくなると足先の感覚も鈍ってくるため、外傷や細菌感染があっても気が付かないケースも少なくありません。細胞が壊死したり感染症が悪化したりして治療が難しくなると、足を切断せざるを得ない場合もあります。下肢閉塞性動脈硬化が起きている場合、下肢以外の脳血管や心血管でも動脈硬化が進行している可能性が高いでしょう。下肢閉塞性動脈硬化の進行とともに、心筋梗塞や脳梗塞など致命的な病気を発症するケースは少なくありません。足の動脈硬化の症状がある患者さんが適切な治療を受けなかった場合、5年後には30%の方が命を落とし、4%の方は足を失うという報告もあります。

下肢閉塞性動脈硬化症の原因を教えてください。

下肢閉塞性動脈硬化は生活習慣病の一種で、ほかの生活習慣病と合併しているケースが少なくありません。下肢閉塞性動脈硬化を含む生活習慣病のリスクが高まるのは、主に以下のような原因があります。

  • 加齢
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 運動不足
  • 食生活の乱れ

血管の弾力は、誰であっても加齢によって少しづつ失われていきます。喫煙や飲酒は毛細血管を収縮させ、動脈硬化を早めてしまう大きなリスク要因です。また、運動不足や食生活の乱れも、動脈硬化をはじめとした生活習慣病の原因となります。

下肢閉塞性動脈硬化症になりやすいのはどのような方ですか?

下肢閉塞性動脈硬化になりやすいとされているのは、主に以下の5つに当てはまる方です。

  • 喫煙歴がある
  • 閉経している
  • 透析を受けている
  • 心筋梗塞や脳梗塞の既往歴がある
  • 糖尿病・高血圧症・脂質異常症がある

足の動脈硬化は男性に起こりやすいといわれていますが、閉経した女性もホルモンバランスの変化によって動脈硬化を生じやすくなります。また、すでに心血管や脳血管の動脈硬化を経験している方は、足の動脈硬化を合併する可能性があるため注意しましょう。糖尿病や脂質異常症など、生活習慣病の治療を受けている方もリスクが高くなります。足の動脈硬化でも全身の病気と考え、全体的な生活習慣の見直しが大切です。

下肢閉塞性動脈硬化症の治療法

ウォーキングする女性の足元

足の動脈硬化の初期症状が疑われる場合、何科を受診すればよいですか?

動脈硬化は血管の病気であるため、初期症状が疑われる場合には、循環器科や血管外科を受診しましょう。下肢閉塞性動脈硬化の初期症状である足のしびれや冷感は、糖尿病でも起こることがあります。また、足のしびれや痛みは関節や神経の炎症で起こることも少なくありません。疑わしい症状がある場合には、まずは早めに近くの医療機関を受診し、症状の原因を特定することが大切です。

下肢閉塞性動脈硬化症の診断方法はどのようなものですか?

下肢閉塞性動脈硬化の検査では、ABI検査とよばれる両腕両足の血圧測定が一般的です。両手首と両足首にカフを巻き、腕と足の血圧を測定します。通常であれば足の血圧は腕よりも高くなりますが、下肢閉塞性動脈硬化によって血流が悪化している場合、足の血圧が腕よりも低くなります。足の血圧が腕に対して0.9未満である場合は、下肢閉塞性動脈硬化の可能性が高いでしょう。その後にエコー検査やCT検査で血管の状態を詳しく調べ、確定診断を行います。

下肢閉塞性動脈硬化症はどのようにして治療しますか?

下肢閉塞性動脈硬化の原因が生活習慣にある場合、まずは生活習慣の改善が必要です。乱れた食生活の改善や、運動不足の解消が重要です。運動療法には、医療機関で行う監視下運動療法と、患者さんが自主的に行う在宅運動療法があります。歩行障害が重度でなければ、在宅運動療法が基本となるでしょう。これに加えて、薬物療法が必要な場合には、血栓を溶かす薬や血管を広げる薬が用いられます。運動療法や薬物療法で効果が見られない場合には、外科手術が必要になります。細くなった血管をバルーンで拡張するバルーン治療や、ワイヤーで補強するカテーテル留置などが一般的です。また、詰まった血管を迂回する新たな血流路を作るバイパス手術もあります。下肢の一部が壊死して回復が見込めない場合は、悪影響が全身に広がるのを防ぐために切断せざるを得ません。なるべく身体に負担の少ない治療で身体の機能を守るためにも、早めの治療が大切です。

日常生活で改善すべきことを教えてください。

動脈硬化は生活習慣病として発症するケースがほとんどであるため、予防や治療には生活習慣の改善が不可欠です。食べ過ぎや運動不足によって肥満になっている場合は、まずバランスのよい食事と運動習慣を心がけましょう。1日3食で食事の品目を多くすることで、食べ過ぎや栄養の偏りを防ぎやすくなります。運動習慣は、1日30分を目安にウォーキングなどの軽い運動でも十分効果的です。喫煙や飲酒は動脈硬化のリスクを高めるため、なるべく控えるようにしましょう。薬物療法や手術療法で症状の進行を止められても、原因となった生活習慣を正さなければ、根本的には治らないことを忘れないようにしましょう。

編集部まとめ

公園を話しながら歩く高齢者夫婦

足の動脈硬化である下肢閉塞性動脈硬化の初期症状や、治療法を解説してきました。

動脈硬化は代表的な生活習慣病で、適切に治療しなければ心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる事態になる場合も少なくありません。

また、足が壊死して失うことになると、生活の質が大きく低下してしまいます。

足を切断した患者さんのうち、30%が2年以内に死亡しているという報告もあり、早めの治療で足を守ることは命を守ることにもつながります。

足のしびれや歩行時の痛みを感じたら、早めに近くの医療機関に相談しましょう。

この記事の監修医師