「マイコプラズマ肺炎の後遺症」はご存知ですか?後遺症対策についても解説!
公開日:2025/11/14

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ細菌によって引き起こされる感染症で、若い方が多く罹患します。 初期症状は発熱や倦怠感を伴う風邪のような症状です。その後、痰のない頑固なせきが長く続きます。これらは一般的な症状であり、後遺症となることはほとんどありません。ただし、発熱がぶり返したり、せきが3~4週間以上続いたりする場合は、合併症を伴っている可能性があります。 この記事ではマイコプラズマ肺炎の特徴と後遺症、医療機関への受診基準について解説します。

監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
目次 -INDEX-
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎にはどのような特徴がありますか?
痰を伴わない乾いたせきが特徴で、解熱後も長く続くことから頑固なせきと表現されます。患者さんの約80%が14歳以下で、一般的な肺炎と異なり、高齢の方に少ないのが特徴です。
多くが気管支炎程度の軽症で自然治癒で完治しますが、まれに中耳炎や心筋炎などの合併症を引き起こし、重症化することがあります。
感染から発症までの潜伏期間は2~3週間とされ、飛沫感染もしくは接触感染により広がります。そのため家族や学校などの集団生活の場でたびたび集団感染が発生します。
マイコプラズマ肺炎に合併症はありますか?
マイコプラズマ肺炎は、初期に発熱や身体の倦怠感を伴う風邪症状があらわれます。その後、解熱に伴い痰を絡まないせきが強くなり3~4週間ほど続くでしょう。これらはマイコプラズマ肺炎の一般的な症状であり、多くの方が上気道炎や気管支炎程度で改善します。
一度治まった発熱が再発したり、せきが3~4週間以上続いたりする場合は、中耳炎・皮疹・心筋炎・ギランバレー症候群などの合併症が疑われます。ギランバレー症候群とは、末梢神経の炎症により手足が動きにくくなる病気です。
マイコプラズマ肺炎は完治まで1週間程度の軽症で済むことが少なくないですが、合併症が見られる場合は1ヶ月以上の入院治療が必要となる場合があります。これらの症状が現れる前に検査が必要です。発熱や倦怠感が長引く場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
マイコプラズマ肺炎は再感染しますか?
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ細菌によって引き起こされる感染症です。
病原体は体内に侵入すると粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、粘膜上皮を破壊します。免疫機構によって病原体は気道粘液へと排出されますが、4~6週間以上排出が続くため長引くでしょう。その後抗体が生産されほかの細菌同様免疫を獲得しますが、生涯に渡り有効なものではなく徐々に減衰します。そのため、免疫が低下すると再感染する可能性があります。
マイコプラズマ肺炎の後遺症
マイコプラズマ肺炎が治ると呼吸機能は元通りになりますか?
マイコプラズマ肺炎は初期に発熱・全身倦怠・頭痛が発症した後、痰を伴わないせきが3~4週間ほど続きます。頑固な持続性のせきと表現されるほど長引くため呼吸機能が低下しますが、マイコプラズマ肺炎の多くは感染症状が出現しない不顕性感染であり、自然治癒によって呼吸機能は元に戻るでしょう。
しかし近年では重症肺炎となる症例も確認され、中耳炎・脳炎・ギランバレー症候群など肺炎以外の合併症を起こす場合があります。3~4週間以上経過しても呼吸機能が元に戻らない場合は、合併症を起こしている可能性があるため、医療機関へ相談しましょう。
せきが治らないのはマイコプラズマ肺炎の後遺症ですか?
マイコプラズマ肺炎の特徴は頑固な長引くせきです。3~4週間程度せきが続くことが多いですが、徐々に収まっていきます。しかし、1ヶ月以上せきが続く場合には、何らかの後遺症が関係している可能性があるでしょう。
せきは、気管に痰が溜まったときや、有害な物質を吸い込んだときに起こる身体の反射反応です。マイコプラズマ肺炎を発症すると、気管に炎症が起こり痰が出ない乾いたせきが出ます。せきが長引く場合には、閉塞性細気管支炎のような後遺症の可能性があります。また、患者さんの肺機能が有意に低下している場合や重症肺炎となる場合は、自然治癒せずにせきが止まりません。喘息との区別がつかない方や症状の悪化を懸念する方は、医療機関へ相談しましょう。
身体がだるいのはマイコプラズマ肺炎の後遺症ですか?
マイコプラズマ肺炎を含めた気管支肺炎の多くは、初発症状として身体の倦怠感が確認されています。マイコプラズマ肺炎の特徴は長引くせきです。しかし、せきの症状が3~4週間以上見られる場合には、閉塞性細気管支炎のような後遺症の可能性もあるでしょう。閉塞性細気管支炎では、息切れなどの倦怠感があらわれることがあります。また、一部の患者さんは重症化し、胸膜炎・心筋炎・脳炎などの合併症を引き起こします。症状として倦怠感が長引いた場合は、腎不全などの合併症が原因である可能性が考えられるため、かかりつけ医を訪ねましょう。状況に応じて、投薬が必要になります。
熱がぶり返すのはマイコプラズマ肺炎の後遺症ですか?
マイコプラズマ肺炎に罹患し気管支炎を起こすと、発熱やせきなどの風邪症状が出ます。これらは閉塞性細気管支炎という後遺症である可能性があります。また、一部の患者さんは中耳炎・無菌性髄膜炎・脳炎・ギランバレー症候群などの合併症を併発し、解熱した後に再び発熱する場合があります。速やかにかかりつけ医の診察を受けましょう。
通常の治療期間は1週間程度ですが、場合によっては1ヶ月以上の入院治療が必要となります。
吐き気・食欲不振はマイコプラズマ肺炎の後遺症ですか?
マイコプラズマ肺炎に感染すると、頭痛や発熱を伴う風邪症状が初期に発生します。これらは閉塞性細気管支炎という後遺症の可能性があります。また、脳炎や肝炎などの別の症状を合併する患者さんもいます。下痢や嘔吐などの消化器症状もそのひとつで、重症化する場合は速やかにかかりつけ医の判断を仰ぎ治療を開始しましょう。場合によっては1ヶ月以上の入院治療が必要となります。
マイコプラズマ肺炎の後遺症対策
マイコプラズマ肺炎の後遺症が出たときは休養すべきですか?
痰を伴わない長引くせきが続く場合でも、通常は特別な休養は必要ありません。3~4週間程症状が続いた後に自然治癒するでしょう。しかし、閉塞性細気管支炎のような後遺症も確認されているため休養するようにしましょう。また、腹痛や吐き気などの消化器や神経の痛みなど風邪症状以外を訴える場合は、合併症を併発している恐れがあります。
一度回復した風邪症状が再び見られる場合も合併症が起きている可能性があるため、かかりつけ医の診察を速やかに受けましょう。1ヶ月以上の入院が必要になるケースもあります。
マイコプラズマ肺炎の後遺症で医療機関の受診は必要ですか?
マイコプラズマ肺炎の特徴は、痰を伴わない長引くせきです。発熱や頭痛などの風邪症状の後に、なかなか治らない場合は3~4週間程経つと自然治癒するでしょう。しかし、マイコプラズマ肺炎は後遺症として閉塞性細気管支炎が確認されています。また、吐き気や腹痛などの消化器系の症状が出たりする場合は、合併症を起こしている可能性があります。どちらも重症化する可能性があるため医療機関の診断が必要です。PCR検査や血清検査で診断された場合、抗菌薬による治療が行われます。
マイコプラズマ肺炎には予防ワクチンがないため、免疫力を高めることが予防の鍵となります。
編集部まとめ
この記事では、マイコプラズマ肺炎の特徴や後遺症について解説しました。マイコプラズマ肺炎は頑固なせきが特徴ですが自然治癒する一方で、閉塞性細気管支炎などの後遺症を発症する可能性もあります。また、心筋炎などの合併症を併発し、重症化する場合もあります。
マイコプラズマ肺炎は、患者さんの約80%が14歳以下の若年層です。発熱や身体の倦怠感は初期症状として見られますが、長く続きません。痰を伴わないせきが3~4週間続きます。
患者さんの平均年齢が6歳と若いため喘息様気管支炎が観察されますが、多くの方が自然治癒するため後遺症は残らないでしょう。しかし重症化する例も確認されており、特に合併症に気をつける必要があります。
3~4週間を過ぎてもせきが止まらなかったり腹痛や吐き気などの消化器症状や熱のぶり返しがあったりする場合は、合併症を起こしている可能性があるためすぐに医療機関への受診を推奨します。
参考文献



