「大人がマイコプラズマ肺炎」にかかったら「出勤停止」になるの?【医師監修】
公開日:2025/11/13

「マイコプラズマ肺炎にかかったら出勤できないの?」と悩む方は少なくありません。マイコプラズマ肺炎は、これまでに3~7年周期で何度も大流行を起こしていることが知られています。 マイコプラズマ肺炎と診断されたら職場に出勤してよいのか、どのような対策をしたら効果的かなど、知りたい方はいるでしょう。 マイコプラズマ肺炎は呼吸器感染症のため、飛沫感染や接触感染への対策が重要です。本記事では、マイコプラズマ肺炎で出勤停止になるのか、マイコプラズマ肺炎の症状・対処法・予防法についても解説します。 原因や症状に加えて病院を受診する目安もお伝えするので、マイコプラズマ肺炎にかかっても必要以上に悩まなくてよいように、確認しておきましょう。

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
マイコプラズマ肺炎の原因や症状
マイコプラズマ肺炎とはどのような病気ですか?
マイコプラズマ肺炎は、頑固な咳が長続きする呼吸器感染症です。主に6~12歳のお子さんや若い世代に流行しやすく、高齢者への感染は少ないとされています。感染しても軽症で、いつの間にか症状が落ち着いていることもあります。しかし、重症化すると入院治療となる可能性があるため注意が必要です。秋や冬の寒い季節に増える傾向が一般的でしたが、2024年には夏にマイコプラズマ肺炎の感染者拡大が起こりました。年間を通じて罹患する可能性があることを認識しておきましょう。
原因を教えてください。
肺炎マイコプラズマという細菌感染が原因で、潜伏期間は2~3週間です。飛沫感染や接触感染でマイコプラズマ肺炎にかかるため、日常的な感染予防が重要です。マイコプラズマ肺炎の患者さんの咳やくしゃみを吸い込んだり、接触したりしないように気をつけましょう。家庭や学校、職場で感染者が現れると、感染拡大につながる恐れがあります。インフルエンザのように、短期間で大規模な感染拡大につながらないと考えられていますが、予防対策が重要です。
どのような症状が出ますか?
マイコプラズマ肺炎の主な症状は、以下のとおりです。
- 発熱
- 倦怠感
- 頭痛
- 乾いた席
- 中耳炎
- 皮疹
- 胸膜炎
- 心筋炎
- ギランバレー症候群
- 髄膜炎
- 末梢神経障害
マイコプラズマ肺炎にかかりやすい年齢層を教えてください。
マイコプラズマ肺炎は、感染者の80%が14歳以下といわれています。感染性肺炎は以下のとおり、3つに分類されます。
- 細菌性肺炎:肺炎球菌・インフルエンザ菌など
- ウイルス性肺炎:インフルエンザウイルス・コロナウイルスなど
- 非定型肺炎:マイコプラズマ・クラミジアなど
マイコプラズマ肺炎に大人がかかったら出勤停止になる?
マイコプラズマ肺炎は大人でもかかりますか?
マイコプラズマ肺炎は6~12歳のお子さんが感染しやすいと考えられていますが、大人でもかかる可能性があります。特に、お子さんと関わる環境にいる大人の場合、マイコプラズマ肺炎に感染しやすいため感染対策が重要です。お子さんに関係する環境は、以下のとおりです。
お子さんがいる家庭
保育園・幼稚園・小学校などお子さんに関わる職場で働く方
公共交通機関を利用して通勤する方
飛沫は約1~2mまで飛び散るとされています。飛沫感染の対策は以下のとおりです。
- 感染者から2m以上離れる・濃厚接触を控える
- マスクの着用
- 室内の換気
- 石けんによる適切な手洗い
- アルコールによる手指衛生
大人がマイコプラズマ肺炎にかかったら出勤停止になりますか?
マイコプラズマ肺炎は、感染症法(省令)上で5類感染症と定められています。5類感染症は、関係機関による発生動向調査および国民や医療関係者への情報提供が行われます。しかし、5類感染症は、国から就業制限指示を出すことはできません。出勤停止になるかどうかは、感染者の症状や勤務先の判断次第となるでしょう。解熱し症状が改善した場合は出勤してもよいと考えられます。しかし、ほかの方に感染させたり再感染したりなど、マイコプラズマ肺炎の感染リスクを認識した行動が重要です。
大人がマイコプラズマ肺炎にかかった場合、どのくらい仕事を休めばよいですか?
マイコプラズマ肺炎は5類感染症のため、法律上明確な出勤停止や行動制限はありません。マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法では第一種・第二種・第三種以外のその他の学校感染症に指定されていますが、明確な出席停止指示はありません。登園・登校の判断は、各教育機関に任されています。ただし感染リスクがあるため、マイコプラズマ肺炎と診断された場合は出席停止・症状が改善すれば登校可能としている教育機関が少なくありません。症状が改善すれば、感染力は弱いとされています。大人の場合でも、症状が出現した時期・辛い症状があるなどの急性期は仕事を休み、症状が改善したら出勤する方がよいでしょう。
マイコプラズマ肺炎の対処法や予防法
マイコプラズマ肺炎にかかった場合に自宅でできる対処法を教えてください。
マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染や接触感染のリスクがあります。マイコプラズマ肺炎と診断された場合は、自宅でもマスク着用や適切な手洗いうがいが必要です。接触により肺マイコプラズマ細菌がすぐに体内に侵入するわけではありません。しかし、接触感染のリスクは否定できないため、マイコプラズマ肺炎感染者との濃厚接触は、できる限り控えた方がよいでしょう。
医療機関にかかる目安を教えてください。
一般的な風邪の場合、約3日でピークとなり症状が徐々に落ち着いていくと考えられています。しかし、約1週間経っても咳が長引く場合は、医療機関の受診をおすすめします。個人差があるため、普段の風邪症状と比べて受診を検討しましょう。医療機関でのマイコプラズマ肺炎の一般的な診断方法は、以下のとおりです。
- 周囲の流行状況と患者さんの症状
- 胸部レントゲン・CT
- 血液検査
- 60歳未満の方
- 基礎疾患がないあるいは軽度
- 頑固な咳症状がある
- 胸部聴診をしても明らかな異常所見がない
- 迅速診断法で原因菌が証明されない
- 血液検査で末梢白血球数が1マイクロリットルあたり10,000個未満
マイコプラズマ肺炎を予防する方法はありますか?
マイコプラズマ肺炎には、効果的な予防ワクチンはありません。マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染と接触感染のリスクがあります。そのため、普段からマスクの着用・うがい・適切な手洗い・手指消毒を行ったりタオルの共用を避けたりなど、基本的な感染対策が重要です。また、マイコプラズマ肺炎が流行している時期には、人ごみを避けるようにしましょう。
編集部まとめ
マイコプラズマ肺炎は、6~12歳のお子さんや若い世代に流行しやすく、長引く頑固な咳が特徴の呼吸器感染症です。大人でも感染する可能性があります。
感染症法上で5類感染症に定められ、特に行動制限はありません。マイコプラズマ肺炎に感染した場合は、ご自身の症状や職場の指示に応じて、出勤の判断をしましょう。
飛沫感染や接触感染のリスクがあるため、辛い咳や発熱症状がある場合は、無理な出勤は控えた方がよいでしょう。流行時期にはマスクの着用・うがい・適切な手洗い・手指消毒などの感染対策が重要です。
基本的には軽症で、自然治癒する場合も少なくありません。しかし重症化リスクもあるため、約1週間以上症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
参考文献




