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「冬季うつ病になりやすい人」の特徴はご存知ですか?なりやすい年齢層も解説!

 公開日:2025/01/24
「冬季うつ病になりやすい人」の特徴はご存知ですか?なりやすい年齢層も解説!

冬になるとなんだか気分が落ち込む・やる気がでない・朝起きるのがつらいと感じることはありませんか?

もしかすると、その症状は季節性情動障害(SAD)の一種である 冬季うつ病のサインかもしれません。

冬季うつ病は、日照時間の短縮や気温低下が影響し、心と身体のバランスが崩れることが原因で発症するといわれています。

この記事では、冬季うつ病になりやすい方の特徴・原因・予防法を詳しく解説します。気になる症状がある方は、最後までご覧ください。

舘野 歩

監修医師
舘野 歩(東京慈恵会医科大学附属病院)

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東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。現在は「東京慈恵会医科大学附属病院」勤務。専門は精神神経科。日本精神神経学会専門医・精神科指導医、日本森田療法学会認定医、精神保健指定医。東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授。

冬季うつ病になりやすい人の特徴

悩む人

冬季うつ病になりやすい人の特徴を教えてください。

冬季うつ病になりやすい方の特徴は以下のとおりです。

  • 女性
  • 日照時間が短い緯度の高い地域に住んでいる
  • 季節の変化に繊細に反応する方

ホルモンバランスの変化が大きい女性は、うつ病を発症しやすい傾向にあります。それに加え、冬になり日照時間が短い地域に住んでいる場合、太陽の光に当たる時間が少なくなるためセロトニンの分泌が減ります。セロトニンは気分を左右するホルモンで、減少すると気分が低下し、うつ状態になってしまうのです。季節の変化や環境の変化に敏感に反応してしまう方は、冬季うつ病になりやすいといえます。

男性と女性ではどちらがなりやすいですか?

冬季うつ病は、女性の方が男性の3倍発症しやすいといわれています。女性が発症しやすい理由として、次の3つの原因が挙げられます。

  • ホルモンバランス
  • セロトニン分泌量が少ない
  • ストレスを受けやすい

女性は月経周期や妊娠・出産・更年期などライフイベントに伴い、ホルモンバランスが変化しやすい特徴があります。特に、エストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンは、気分を安定させる脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの働きに影響を与えるホルモンです。また、女性はセロトニンの分泌量が男性よりも少ないことがわかっています。そのため、日照時間が短くなるとセロトニンの分泌が減少することに加え、もともと分泌量が少ない女性は、冬季うつ病になりやすいのです。

冬季うつ病になりやすい年齢層を教えてください。

冬季うつ病は、20代前半の方で症状が出現しやすい傾向があります。社会人として働きだす20代は、ストレスを感じる環境におかれている人が多い年代です。一般的なうつ病を発症する人も多く、季節の変わり目に発症する冬季うつ病も発症しやすい傾向にあります。

住んでいる地域によってなりやすさに違いはありますか?

冬季うつ病は、住んでいる地域により発症のしやすさが大きく異なります。主な原因は、日照時間と気候の変化です。日照時間が少なく降雪が多い地域では、冬季うつ病になりやすい傾向があります。太陽の光を浴びる時間が少なくなると、セロトニンの分泌量が低下しやすくなるためです。高緯度の地方である北国や降雪がある地域では、冬季うつ病を発症する確率が高くなるといわれています。

冬季うつ病の原因や症状

湖

冬季うつ病の原因を教えてください。

冬季うつ病の原因は、以下の6つが挙げられます。

  • 日照時間の減少
  • セロトニン分泌量の低下
  • メラトニン分泌量の増加
  • 体内時計(概日リズム)の乱れ
  • ビタミンDの不足
  • 寒さによる運動量の低下

前述したとおり、日照時間が短くなる冬の期間は、太陽の光を浴びる時間が減少します。脳内の神経伝達物質の分泌量が減ったり、ホルモンバランスが崩れやすくなったりするため、気分の落ち込みや意欲の低下を引き起こすのです。人間の身体は、太陽の光を浴びて体内時計を調整しています。しかし、冬に日照時間が減少すると体内時計が乱れ、不眠や仮眠の状態を引き起こし心の不調や気分の落ち込みにつながります。その結果、うつ状態になるのです。また、太陽の光を浴びることで体内でつくられるビタミンDは、セロトニンの生成を助ける働きがあります。日照時間が短くなる冬はビタミンDの合成が減少し、セロトニン分泌が低下する可能性があるため、冬季うつの原因の一つだといわれています。さらに寒くなる冬は、外出が減ったり、家に引きこもりがちになったりする方が多いのではないでしょうか。運動不足になったり、孤独感を抱きやすくなったりするため、冬季うつ病を発症しやすくなります。

冬季うつ病になるとどのような症状が出ますか?

冬季うつ病では、典型的なうつ病とは異なる症状があらわれます。

  • 過眠
  • 過食
  • 体重増加
  • 意欲低下
  • 倦怠感

一般的なうつ病のような抑うつ症状が見られないのが特徴です。過眠とは、日中の眠気が強くなり、夜の睡眠時間も長くなり寝ても寝足りないと感じる状態をいいます。冬季うつ病の特徴として、過食の傾向も挙げられます。食べ物のなかでも、炭水化物を欲する場合が多く、白米・パン・パスタなどを好む傾向があります。また、チョコレートといったお菓子類を好んで食べるのも冬季うつ病の特徴です。動くのがだるい・何もしたくないなど抑制症状を自覚している場合もうつ傾向かもしれません。

一般的なうつ病とは違う症状の特徴を教えてください。

一般的なうつ病は、食欲が減退し体重が減少したり、不眠になったりする傾向があります。それに対し、冬季うつ病では、過食・過眠・体重増加が特徴的な症状です。食欲亢進(こうしん)するため、体重は増加します。また、寝ても寝足りない状態で日中も眠気に襲われている状態が続くこともあります。いわゆる冬眠に近い状態です。季節が変わり始める10月~11月頃からうつ症状(悲しい・憂鬱・意欲低下)が出現し、3月頃になると回復するサイクルを繰り返します。

冬季うつ病の治療法や予防法

ウォーキング

冬季うつ病で医療機関にかかる目安を教えてください。

冬季うつ病の症状が2週間以上続き、日常生活に支障が出る状態であれば医療機関を受診することをおすすめします。毎年冬になると体調が悪くなるケースを繰り返している場合は、冬季うつ病の可能性があります。春になると自然に回復するため、うつ病だと気付かない場合もあるでしょう。このような状態が2年以上続く場合は、専門的な治療が必要になることもあります。生活リズムの改善・運動・日光浴などのセルフケアを行っても症状が改善しない・憂鬱な気分が続く場合は、我慢せずに受診しましょう。精神科や心療内科では、診断・治療が受けられます。また、かかりつけの一般内科でも相談できる場合があります。必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。

冬季うつ病の治療はどのように行いますか?

冬季うつ病は、日照時間が大きく影響していることから、太陽の光を浴びることが効果的であるといわれています。しかし、冬の間は日照時間が少ないため、実際に太陽の光を十分に浴びることが難しくセルフケアでは対応できません。そこで用いられる治療法が、人工的な光(ライト)を浴びる高照度光療法です。1~2時間で、2,500~10,000ルクスの高照度の光を照射します。治療の効果が表れやすく、1週間ほどで改善する場合が少なくありません。治療を中断してしまうと再発する可能性が高まるため、冬の間は連日行い効果が期待されるまで続けるとよいでしょう。

冬季うつ病の予防法を教えてください。

冬を心身ともに健康で過ごす場合には、冬季うつ病を未然に防ぐようにしましょう。日常生活のなかで、行っていることを意識して取り組むことで、冬季うつ病を予防し改善できます。

  • 規則正しい生活
  • 太陽の光を浴びる
  • トリプトファンを摂取する
  • 運動をする

冬は日照時間が少なくなり、体内時計のリズムが乱れがちになります。眠気が強く、つい遅くまで寝ていたいと思うかもしれませんが、朝起きて太陽の光を浴びるようにしましょう。太陽の光を浴びるのが難しいときは、部屋の照明をつけて明るい光を目から取り込むようにしましょう。そうすることでセロトニンの分泌を活性化できます。冬に不足しがちなセロトニンは、トリプトファンという必須アミノ酸からつくられます。しかし、トリプトファンは人間の体内ではつくられないため、食事から摂取しなくてはいけません。トリプトファンはたんぱく質に含まれるため、魚・肉・豆腐・牛乳・チーズなどを意識的に食事に取り入れるとよいでしょう。寒いと運動したり、家から出たりすることも控えがちになります。運動不足は、冬季うつ病の原因にもなるため、適度な運動を日常生活のなかに取り入れることも大切です。軽いウォーキング・ランニング・ストレッチなど身体を動かす機会をつくりましょう。外出が難しい場合は、家事をしながら意識的に身体を動かすようにしましょう。

編集部まとめ

看護師
冬季うつ病は、季節の変わり目である10月~11月頃に発症し、春頃になると回復するのが特徴です。

女性がなりやすく、冬の日照時間の短縮や気温の変化、ホルモンバランスの崩れなどが主な原因とされています。

過眠・過食・体重増加が特徴的な症状で、一般的なうつ病で現れない症状を伴うのが、冬季うつ病です。

冬に体調不良や気分の落ち込みを感じる場合、冬季うつ病の可能性があります。

冬季うつ病の症状が長期間続いたり、日常生活に支障が出たりするなどつらい場合には我慢せず、早めに医療機関を受診しましょう。

寒くて動くのが億劫になりがちな冬ですが、太陽の光を浴びる・規則正しく生活する・適度な運動をすることで、冬季うつ病を予防できます。

日常生活のなかに予防法を取り入れ、寒い冬を乗り切っていきましょう。

この記事の監修医師