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「胃下垂だと太らない」って本当?胃下垂になる原因も解説!【医師監修】

 公開日:2025/01/07
「胃下垂だと太らない」って本当?胃下垂になる原因も解説!【医師監修】

胃下垂と聞くと、なんとなく胃の位置が下がっていて太りにくいというイメージをもっている方は多いのではないでしょうか。

見た目や体型が気になる方は、太りにくくてうらやましいと感じるかもしれません。しかし、もう少し太りたいのになかなか太れず、胃下垂かも、と悩んでいる方も少なくありません。

この記事では、胃下垂は太らないのかという疑問について、また胃下垂の原因や治療法について解説します。胃下垂について疑問がある方の参考になれば幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃下垂だと太らないって本当?

食欲不振の女性

胃下垂は痩せている方がなりやすいですか?

胃下垂は一般的に痩せている女性に多い傾向があります。しかし、痩せているから胃下垂になりやすいというわけではありません。痩せていて筋肉が少ないこと脂肪が少ないことが胃下垂の原因になる可能性があります。また、胃下垂の方は、不快な症状が原因でたくさん食べられない方が多く、実際に痩せている方の割合が多いです。このような理由から、胃下垂は痩せている方がなるものというイメージにつながっているのではないでしょうか。

胃下垂だと太らないって本当ですか?

胃下垂は一般的に体つきが細い女性に多い特徴があります。胃下垂の方が太りにくいといわれるのは、以下のような理由が考えられます。

  • 少しの量で満腹感を覚え、たくさん食べられない
  • 食後のむかつきが気になり、あまり食べない
  • 消化吸収機能が落ち、食べたものを効率よく吸収できない

このような自覚症状がある方は自然と食べる量が少なくなり、結果、太りにくくなります。しかし、胃下垂になる方はもともとやせ型の方に多いため、かならずしも胃下垂になると太らなくなるということではありません。

胃下垂の症状や原因

お腹をおさえる女性

胃下垂とはどのような状態ですか?

胃下垂とは胃が正常な位置から垂れ下がっている状態です。重症では骨盤の中まで胃が落ち込むこともあります。正常な胃の位置は、みぞおちの後ろ側で臍の少し上までの高さです。胃は腹腔内に浮いていて、よく伸びる臓器です。食後は空腹時の2~3倍の大きさになりますが、筋肉や脂肪で支えられているため、食後も下垂しないようになっています。しかし、この筋肉や脂肪が少ないと重くなった胃を支えられずに胃下垂になると考えられます。また、胃は食べたものを一時的に貯め、胃液で分解し吸収しやすい形にして十二指腸に送る臓器です。しかし、胃下垂になると排出機能が低下し、胃に長時間食べ物が貯まっている状態になり、胃もたれやお腹のハリなどの不調を感じやすい状態になります。

どのような症状が出ますか?

胃の位置が正常な位置から下がってしまっても、症状がない場合もあります。胃下垂の度合いがひどく、胃の働きに支障がでてくると不快な症状が表れやすくなります。この状態を胃アトニーと呼び、症状は以下のとおりです。

  • お腹のハリ・膨満感
  • 腹痛
  • 食後の下腹部の膨れ
  • 少量で満腹感を感じる
  • 食後のむかつき
  • 食欲不振
  • 吐き気・げっぷ

また、胃の位置が下がることで胸の下辺りが窪み、下腹部がぽっこり出て見えたり、重心のバランスが崩れやすくなり、猫背に見えたりします。

食事の後に下腹が出るのですが胃下垂でしょうか?

胃下垂の症状の一つに、食後の下腹部の膨れがあります。しかし、この症状だけで胃下垂と判断することはできません。食後に限らず下腹部が出る原因は、胃下垂のほかに、便秘・脂肪・骨盤のゆがみなどがあります。便秘で下腹部が出るのは、腸内に便が溜まることが原因です。脂肪はお腹周りにつきやすく、下腹部が出る原因になります。骨盤のゆがみは、内臓の位置が崩れたり、血液循環が悪くなって余分な水分が溜まりやすくなったりする原因になります。このように下腹部が出る原因はさまざまですが、いつも食後に症状が出る場合は、胃下垂の可能性が考えられるでしょう。気になる症状が続くようなら、受診して検査を受けるようにしましょう。

胃下垂になる原因を教えてください。

胃は筋肉と脂肪で支えられた臓器です。お腹付近の筋力が弱く胃壁の脂肪が少なすぎると胃壁が伸びやすく胃を支えられなくなる可能性があります。胃壁が引き延ばされてしまうと蠕動運動が弱まり、胃の全体的な動きの低下につながります。また、筋肉や脂肪が少ないと腹圧の低下につながり、胃の運動機能に影響が出るでしょう。ほかにも胃下垂に関連があるといわれているのは、猫背、急激な体重の減少や腹部の手術・出産などです。普段から暴飲暴食の方、よく噛まない方、過労やストレスも胃下垂の原因になると考えられており、さまざまな要因が複合的に重なっていると考えられます。

胃下垂の検査や治療方法

スケッチブック胃

胃下垂の検査方法を教えてください。

検査の前に問診と診察で患者さんの状態を詳しく聞きます。自覚症状を聞いたり、身体の診察をしたりして胃下垂に関わる点を確認するためです。胃下垂が疑われる場合は腹部X線検査をします。X線検査では胃の位置や形を確認できます。食前と食後のX線写真を比べると、胃の変化や移動がわかりやすく診断に有効です。しかし、胃下垂は特有の症状がないため、似た症状のその他の病気を否定する必要があります。そこで胃内視鏡(胃カメラ)検査をして、胃内部の粘膜の状態や胃下垂の程度を確認します。詳細な観察ができ、必要に応じて、検査と同時に組織採取や止血も可能です。

どのような状態だと胃下垂と診断されますか?

胃X線検査で、胃の曲がっている部分が骨盤の上部にある腸骨より下がっていたら、胃下垂と判断する基準になります。しかし、胃下垂には特有の症状がないため、X線検査で胃下垂とわかってもお腹の症状すべてが胃下垂によるものかの判断はできません。胃内視鏡(胃カメラ)検査を受け、同じような症状のほかの病気の可能性が否定されることも胃下垂の診断のポイントです。胃下垂と診断されても症状がない場合や軽症の場合はそれほど心配する必要はありません。胃下垂により、胃壁の緊張の低下や胃の動きが鈍い状態になり、患者さんからお腹の症状の訴えがあれば治療することになります。

胃下垂の治療方法を教えてください。

胃下垂は無症状であれば病気とはならず、治療の必要はありません。お腹の不快な症状がある場合は、食事療法が基本です。胃の負担を軽くし、栄養を十分に取る必要があります。特に消化しやすいたんぱく質を意識して摂るようにしましょう。豆腐、湯葉、白身魚などがおすすめです。まとめて食べるとつらい症状が出る場合は、一度に食べる量を減らして食事の回数を増やす対策がおすすめです。

空腹や大量の飲酒は、胃の粘膜が荒れたり胃の運動機能を低下させたりする原因になります。また、ニコチンは胃の排出機能を低下させる作用があります。飲酒・喫煙は控えましょう。症状がつらいときは薬物による治療をすることもあります。胃の運動機能を高める薬や消化を助ける薬など、症状に応じた薬を服用します。

普段の生活で気を付けるべきポイントを教えてください。

胃下垂の症状緩和には規則正しい生活・適度な運動・バランスの取れた食事をすることが大切です。胃下垂の予防法は確立されていませんが「食べたら不快な症状が出るかもしれない」と過度に不安がらず、精神的にリラックスして過ごしましょう。腹筋の発達や適度に脂肪が付くことで症状の改善につながると考えられます。無理のない範囲で腹筋運動を取り入れたり、食事の回数を増やしたりして、症状の改善を目指しましょう。また、姿勢が悪いと胸やお腹が縮こまり、内臓を圧迫してしまいます。姿勢を正しく保つことで、腹筋が鍛えられ、内臓の圧迫も解消できます。日頃からよい姿勢を意識するのもおすすめです。

編集部まとめ

緑の中でストレッチをする笑顔の女性
胃下垂は、胃が正常な位置よりも垂れ下がっている状態です。一般的に痩せている女性に多い傾向がありますが、胃下垂になれば痩せられるということではありません。

胃下垂でも症状が無ければあまり問題にしなくてよいのですが、下腹部の膨れや食後のむかつきなど不快な症状に悩まされることもあります。

胃下垂の主な原因は、細身で筋肉や脂肪が少ないこととされています。胃を支える筋肉や適度な脂肪をつけること、症状を気にせずリラックスして少しずつ回数を増やして食べることなどで症状の改善を図りましょう。

気になる症状が長引く場合は一度検査を受けてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修医師