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「うつ病の初期症状」はご存知ですか?受診する目安も解説!【医師監修】

 公開日:2024/12/26
「うつ病の初期症状」はご存知ですか?受診する目安も解説!【医師監修】

うつ病は、思春期の方から働き盛りの方・定年退職をした方まで幅広い年代にみられます。誰でもなりうる病気ですが、気分の落ち込み以外にもさまざまな症状があることはあまり知られていないかもしれません。

今回の記事では、うつ病の概要や初期からみられる主な症状、治療方法などについて解説していきます。

心身の変調を感じて受診しようか迷っている方や、うつ病について知りたいと考えている方も、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

うつ病の初期症状と心と身体に現れるサイン

悩む高齢女性

うつ病とはどのような病気ですか?

うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が2週間以上続けてみられ、日常生活に支障をきたす病気です。うつ病は単に憂うつな気分になるだけではなく、正常の範囲内を超えた焦燥感や罪責感を感じている患者さんも多いとされています。この状態は、心だけでなく身体にも影響を及ぼします。うつ病は気分に関する病気ですが「もっと頑張らなければ」「明るく過ごさなければ」という気持ちの持ち方で改善されるものではありません。症状の改善や安定のためには、原因となっている物事や患者さん自身の考え方、ほかに抱えている病気や障害などをふまえた適切な治療を受けることが大切です。

原因を教えてください。

うつ病の原因は一つではなく、さまざまな要因が絡み合って発症します。原因は大きく分けて、生物学的要因・心理的要因・環境的要因の3つです。生物学的要因には、神経伝達物質のバランスが崩れて脳内の情報伝達がスムーズに行えないといった身体の中で実際に起こっていることが含まれます。また、うつ病の発症には家族歴も関わっているといわれています。こうした遺伝的なものも生物学的要因の一つです。心理的要因とは患者さん自身の精神面に原因があるものを指します。具体的には、几帳面で責任感が強かったり物事を悲観的にとらえやすかったりといった性格面の特徴や、ストレスへの耐性がこれに含まれます。環境的要因とは仕事の過労や人間関係の問題、近しい方の死など患者さん自身にとって大きなストレスになるような周囲の環境が原因となっているものです。環境的要因には、疲れや悲しみに直接つながるものだけでなく、社会的な孤立や経済的な困難も含まれます。これらの要因が重なり合うことで、うつ病を発症するリスクが高まります。しかし、同じような環境下で過ごしている方が必ずうつ病を発症するとは限らないため、どの要因がどの程度影響するかは個人によって異なると考えられるでしょう。

どのような初期症状が出ますか?

うつ病の初期症状として代表的なものは、持続的な気分の落ち込みや興味・喜びの喪失です。例えば、以前は楽しめた趣味や活動に対しても、具体的なきっかけがなく興味を持てなくなることがあります。また自己評価が低下し、「自分は価値のない人間だ」と感じたり、必要以上に「自分のせいだ」と考えたりするようになる患者さんもいるでしょう。さらに、不安感やイライラが増え、集中力や判断力が低下することも少なくありません。ただし、これらの症状を患者さん自身が自覚するのは難しい場合もあります。

心だけではなく身体にもサインが現れると聞いたのですが本当ですか?

うつ病になると身体的な症状が現れることも珍しくありません。しかし、うつ病は精神的な病気であるというイメージから、身体的な症状に気付いてもうつ病とは気付かず受診に至らない患者さんもいます。また、うつ病の身体的症状は多岐にわたり、ほかの病気と誤解される場合もあるため注意が必要です。うつ病の患者さんが自覚しやすい身体的症状には下記のようなものがあります。

  • 慢性的な疲労感
  • 食欲不振
  • 頭痛やめまい
  • 不眠または過眠
  • 胃腸の不調(腹痛、下痢、便秘など)
  • 首や肩、腰の痛みやこわばり
  • 動悸や息苦しさ

これらは幅広い病気で現れる可能性がある症状で、内科や消化器科などを受診しても明確に原因がわからず、うつ病と気付かれないまま症状が遷延しているケースもみられます。

うつ病の診療科と受診の目安

考える医療スタッフ

うつ病が疑われる場合の診療科を教えてください。

うつ病を専門とする診療科は、精神科や心療内科です。実際に通う場合は精神科か心療内科だけでなく通いやすさも大切ですが、どちらの診療科に行けばよいのか迷う患者さんもいるかもしれません。次の質問でそれぞれの診療科の特徴について回答しているので、そちらも参考にしてみてはいかがでしょうか。

精神科と心療内科の違いを教えてください。

現在では、標榜している診療科が精神科でも心療内科でも、診察の内容に明確な違いはない医療機関が多いでしょう。ただし、診療の対象が異なるとする場合もあります。この場合、精神科では心の病気そのものを専門に診療して薬物療法や心理療法を中心に治療を進めます。一方、心療内科はストレスが原因で現れる身体症状が治療対象です。治療方法は、薬物療法に加えてストレス管理法の指導なども含まれます。ただし、精神科という診療科名は「受診しにくい」というイメージを持たれることもあるため、診療内容は上記の精神科に近い医療機関でも心療内科を標榜している場合もあります。そのため、診療科の違いが気になりなかなか受診先を決められない場合には上記の違いも参考にしながら、通いやすい医療機関を選ぶことが大切です。

うつ病で受診する目安を教えてください。

うつ病の主な症状は前述のとおりですが、精神面での症状は患者さん自身が自覚しにくいこともあります。そのため、生活のなかで下記のような状態が2週間程続いたら受診を検討するとよいでしょう。

  • 生活や思考の支障になる程の気分の落ち込み
  • 以前楽しんでいたことに興味を持てない
  • 入眠してから何度も起きてしまう
  • 必要以上に長時間寝てしまい起きられない
  • 食欲の低下または亢進
  • 集中力が低下して仕事や勉強がはかどらない
  • 仕事・家事への意欲が低下して実施に支障をきたす

上記に当てはまらない場合にも、精神的なつらさや慢性的で身体が動かない程の疲労感などで日常生活に支障をきたしている場合は、早めの受診をおすすめします。

うつ病の治療方法

心の健康を守る医師

うつ病の治療方法を教えてください。

うつ病の治療は、主に薬物療法と心理療法を組み合わせて行われます。薬物療法とは、抗うつ薬を中心とした薬の服用により、脳内の神経伝達物質のバランスを整える治療方法です。一方、心理療法では対話や記録・活動などを通して症状の緩和やストレスへの対処を目指します。心理療法では、考え方のくせや自分の状況を患者さん自身が客観的に認識するためのアプローチをすることが多いでしょう。

入院が必要になるケースもありますか?

うつ病の症状が重い場合や安全性の高い環境が必要な場合には、入院が必要と判断されることがあります。例えば、自傷・他害行為や自殺企図のリスクがある場合や、うつ病の症状により生活全般に支障をきたし、自宅での生活が困難な場合です。入院期間中は、医師や看護師などによるサポートのもとで症状の軽減と社会復帰を目指します。

どのくらいの期間で仕事復帰できますか?

うつ病からの復帰期間は、症状の重さや原因・治療の進み具合によります。軽度の場合は、1~2ヶ月で復帰できることがあります。しかし、症状が十分軽快しない状態で復帰をすると、再発のリスクが高まるため注意が必要です。復帰の時期や復帰後の業務内容については、医師と相談しながら決めていきましょう。

編集部まとめ

心の不調を感じるサラリーマン
うつ病は、患者さん自身が不調を自覚して受診するまでに期間を要することもあり、また診断を受けてから症状改善までにも時間がかかる可能性がある病気です。

しかし、治療を受ければ症状が改善し、発症前に近い生活を送れる可能性もあります。症状が重くなる前に診断を受けて早期の回復を目指すためにも、うつ病の主な症状を知っておくことが大切です。

気になる症状が続く場合には、原因を調べるとともに適切な治療を受けるためにも、早めに精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

この記事の監修医師