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「胃腸炎はうつる?」原因や予防法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/01/04
「胃腸炎はうつる?」原因や予防法も解説!【医師監修】

胃腸炎がうつると聞いて、ピンとこない方もいるかもしれません。ウイルスや細菌が原因の胃腸炎は感染性胃腸炎といわれ、人から人へ感染することがあります。

特に家庭や職場から感染が拡大することが多いため、注意が必要です。

本記事では、感染性胃腸炎の感染経路や予防方法、さらに感染者がどのように対処すべきかについて詳しく解説します。感染リスクを減らし、家族や周囲を守るため、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。

胃腸炎はうつる?

腹痛

感染性胃腸炎の原因を教えてください。

感染性胃腸炎は、細菌、ウイルス感染などによる腸炎です。腸炎の多くは原因がわからない細菌、ウイルスなどが感染源となります。これらの病原体は、感染者の便や嘔吐物を介して広がります。病原体が付着した手でお口に触れることや、食器・物品などを介してほかの人に感染が拡大する(接触感染)ため、衛生管理が大切です。また、食品や水の摂取でも感染する可能性があります(経口感染)。感染してすぐには症状が出ないことがあるため、早めの対策が必要です。ウイルスや細菌は外的環境でも一定時間生存することがあるため、こまめに手を洗い定期的に換気するなど、日常生活でも対策を行いましょう。

非感染性胃腸炎の原因を教えてください。

非感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌による感染が原因ではないものをいいます。主な原因は次のものです。

  • ストレス(心因性の機能性胃腸症)
  • 暴飲暴食
  • 脂っこい食事
  • 食物アレルギー
  • 薬物の副作用

非感染性胃腸炎は、直接的な感染経路はありませんが、胃腸の機能が低下し消化器系の不調を引き起こします。非感染性のため、他人にうつることはありません。食べすぎや飲みすぎ、急な環境の変化によって消化不良や腹痛が現れることもあります。自己判断で薬を服用すると、症状を悪化させたり副作用を引き起こしたりすることがあります。市販薬を服用する際は、医師や薬剤師に相談しましょう。

胃腸炎はうつりますか?

感染性胃腸炎は他人にうつるリスクがあります。ウイルス性の胃腸炎は感染力が強く、感染者の便や嘔吐物を介して感染が広がります。感染拡大を防ぐには、公共の場所や家庭内での接触をできるだけ避けるようにしましょう。トイレの後や食事の前の石鹸と流水での手洗いや、消毒の徹底が基本です。可能であれば、感染者は別の部屋に隔離しましょう。症状が現れてから数日間は他人に感染するリスクが高いため、同じ空間で過ごすことが多い家族は、ウイルスに感染しやすくなります。定期的に消毒、流水でのこまめな手洗いを行いましょう。

症状がおさまれば感染の心配はありませんか?

症状が治まっても、胃腸炎の感染力が完全になくなったわけではありません。嘔吐や下痢を起こさなくなった後も、身体の中にはウイルスが残っていることがあり、数日間は便として排出され続けます。そのため、症状が治まっても数日間は便を介して感染する可能性があるため、引き続き対策が必要です。体内にウイルスが残っている間は人との接触を避け、手洗いや消毒を徹底しましょう。再感染や再発を防ぐためにも、回復後も一定期間は衛生管理を続けて、無理をせず体調を整えましょう。

胃腸炎の予防方法・対策

手洗い

手洗い・換気・消毒の仕方を教えてください。

胃腸炎の予防には、こまめな手洗い・換気・消毒が重要です。感染している人が触ったドアノブや手すりなどを触って、細菌がついた手でお口や目などの粘膜を触ると、自分も感染する可能性があります。外出後やトイレの後、食事の前などに手を洗うことを習慣にしましょう。手洗いは石鹸を使い、15秒以上かけて手の平・指の間・爪の周りをしっかりと洗いましょう。次のようにします。

  • 手を水でぬらしてハンドソープを泡立てる
  • 手のひらを洗う
  • 手の甲を洗う
  • 指先・爪の間を反対の手のひらに立てるようにこすり洗う
  • 指の間を洗う
  • 手の甲側からも指の間を洗う
  • 親指をねじるように洗う
  • 手首を洗う
  • 流水でよく洗い流す

室内の空気を入れ替えて換気をすると、ウイルスを減らせます。1時間に数回窓を開けて新鮮な空気を取り込みましょう。窓は複数箇所開けて、空気の通り道を作るのがポイントです。手の消毒は手洗いが有効ですが、すぐに手が洗えないときはアルコール消毒液を使いましょう。ドアノブやテーブルなどよく触れる場所についても、アルコール消毒液で拭くとよいでしょう。ただ、一部のウイルスはアルコールが効かないので、次亜塩素酸ナトリウムが必要となります。また、アルコール消毒ですべてのウイルスを防ぐことはできないので、こまめに手洗いを行うことが大切です。

食中毒を予防するにはどうしたらよいですか?

細菌による食中毒の予防は、つけない・増やさない・やっつけるという食中毒予防の3原則が大事です。食材は調理前にしっかりと洗い、生野菜や果物は流水で十分にすすぎましょう。肉や魚は十分に加熱し、中心部まで火を通します。冷蔵庫での保存は、生ものを別の容器に入れてほかの食材と分けて、菌の繁殖を防ぎましょう。調理器具は、使用後は熱湯で消毒し、まな板や包丁は生もの用とほかの食材用で分けて使用すると効果的です。ウイルス性食中毒を予防するには、ウイルスの持ち込みを防ぐことも重要です。

胃腸炎に罹患した場合の対処方法

看病する母親

嘔吐物・便の処理方法を教えてください。

胃腸炎にかかった場合、嘔吐物や便にはウイルスが含まれている可能性があるため、適切に処理する必要があります。嘔吐物や便を処理する際は、使い捨ての手袋とマスク、エプロンを着用して直接触れないようにしましょう。処理後は手を石鹸でしっかり洗い、手指の消毒を行います。嘔吐物や便を拭き取るタオルや布は使い捨てのものを使用するか、使用後は熱湯で消毒するとよいでしょう。また、床や周辺はアルコール消毒剤を使ってしっかり拭き取り、ウイルスの拡散を防ぎましょう。ただ、一部のウイルスはアルコールが効かないことがあります。

食事はどのようなものをとったらよいですか?

急性胃腸炎の場合、機能が戻るまでに5〜10日程かかるといわれています。食事をとる場合、一週間くらいは内容に気をつけましょう。最初はお粥やスープ、ゼリーなどの水分を多く含み、胃に負担がかからないものを少量ずつ摂取して消化に優しい食事を心がけましょう。嘔吐や下痢で失われた水分と電解質を補給するため、経口補水液や薄めたスポーツドリンクを適量摂取することも推奨されています。症状が改善してきたら、徐々にやわらかく調理した野菜や、脂肪分の少ない魚や鶏肉を取り入れていくとよいです。脂っこい食べ物や、消化に悪いものは避けましょう。また、食事は数日取れなくても何とかなりますが、水分が取れない場合はすぐに病院を受診するようにしましょう。

感染者がお風呂に入る場合の注意点を教えてください。

胃腸炎の感染者がお風呂に入る場合は、タオルやバスタオルは共用しないことが大切です。感染者が触れた場所や、使用したタオルなどからウイルスが広がる可能性があります。症状が治まって体力が回復したら、2〜3週間くらいはシャワーのみにするか、お風呂を使う場合は最後に入るようにしましょう。入浴後は浴槽やシャワーヘッド、ドアノブなどをアルコールや次亜塩素酸ナトリウムでしっかり消毒し、使用したタオルはほかの人とは別にして洗濯します。なお、公衆浴場や温泉、プールなどは塩素消毒をして管理しているので過剰に心配する必要はありません。

子どもが感染した場合は仕事を休んだ方がよいですか?

子どもが胃腸炎に感染しても、仕事を休む必要はありません。飲食業など、食品に触れる仕事をしている場合は会社の規則により出勤停止になることがあります。本人が細菌やウイルスに感染すると、食品を介して感染がひろがる可能性があるためです。子どもが胃腸炎に感染したときは、就業規則を確認しましょう。仕事を休んで看病する場合、家庭内での感染拡大を防ぐための対策も必要です。本人も胃腸炎になるとさらに仕事を休むことになります。また感染に気付かないまま出勤した場合、職場にウイルスを持ち込むことになりかねません。子どもの症状が安定するまでは、家庭内でのケアに専念して、なるべく仕事を休みましょう。

編集部まとめ

笑顔の女性
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌によって引き起こされる胃腸炎で、感染力がとても強いです。嘔吐物や便を介した接触感染が主な感染経路のため、手洗い・消毒・換気を徹底し、感染しないための予防を徹底しましょう。

また、感染者が出た場合は嘔吐物や便の適切な処理を行い、感染者と同じタオルや食器を使わないなどの管理や消毒を行ってほかの家族や周囲の人への感染を予防しましょう。

症状が治まった後も数日間は感染力が残るため、引き続き注意が必要です。食事は消化によいものを摂取し、感染者とほかの家族が接触しないように工夫しましょう。

細菌やウイルスが原因の胃腸炎は、ちょっとした接触で他人にうつることがあります。手洗い・換気・消毒の予防対策を徹底し、感染時は適切な処理とケアで感染拡大を防ぎ、回復に努めましょう。

この記事の監修医師