毎日の快便は健康的な生活習慣の目安になります。きちんとしたバランスのとれた食生活を送っていても、毎日のお通じが快適でないと気分がすぐれません。
快便のためには食物繊維の多い食べ物がおすすめです。食物繊維にはいくつかのタイプがあり、便秘の種類によっても必要な食品が変わってきます。
便秘に効くおすすめの食べ物や便秘解消に役立つ食生活、生活習慣などについて、解説していきます。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
便秘に効くおすすめの食べ物
便秘改善に役立つ成分はなんですか?
便秘の改善に役立つ成分は、便秘の種類にもよりますが、食物繊維や善玉菌が有効とされています。慢性的に起きる食生活や運動不足からくる弛緩性便秘とよばれるものは、十分な水分補給と食物繊維の摂取、腸内環境を整えるビフィズス菌を積極的に取り入れることが効果的とされています。ほかにも適度な香辛料・酢・炭酸飲料などは、腸の運動を促進させる効果があるので有効です。ただしストレスや自律神経失調による痙攣性便秘の場合は、刺激のある食品は避けた方がよいでしょう。医師と相談のうえ、自分がどのタイプの便秘なのか調べてから食生活の改善をしていきましょう。
水溶性食物繊維を多く含む食べ物を教えてください。
水溶性食物繊維は、水に溶ける性質を持つ食物繊維です。主にわかめ・昆布・もずくなどの海藻類、りんご・柑橘類・バナナなどの果物、こんにゃく・寒天などに多く含まれています。水溶性の食物繊維は、便に溶けてやわらかくなるので便秘の解消に有効です。水溶性食物繊維は腸内環境を整え、生活習慣病の予防や改善になるため、バランスの取れた食事で積極的に摂取することが推奨されています。
不溶性食物繊維を多く含む食べ物を教えてください。
不溶性食物繊維は、水に溶けない特性を持ち、腸内で水分を吸収して便の量を増やすことが可能です。この食物繊維は、主に豆類や根菜類・野菜・きのこに多く含まれており、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進します。便秘解消に役立つだけでなく、腸内環境を整える重要な役割も果たします。さらに、不溶性食物繊維は食後の血糖値の急激な上昇を抑えるため、ダイエットや健康管理にも効果的といえるでしょう。
不飽和脂肪酸を多く含む食べ物を教えてください。
適度な油は便がスムーズに出るようになるため、便秘の解消に効果が期待できます。なかでもオメガ3といわれる多価不飽和脂肪酸n‐3系は、
動脈硬化のリスクを減らす脂肪として注目されています。多価不飽和脂肪酸n-3系が多いものは、以下のような食べ物です。
多価不飽和脂肪酸n‐3系は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)など、魚の脂に多く含まれている成分です。人の体内で合成することができないため、食品から補う必要があります。
オリゴ糖を多く含む食べ物を教えてください。
オリゴ糖は、糖質のひとつです。腸内環境を整える働きがあり、善玉菌のエサとなる重要な成分です。これにより、腸内フローラのバランスを改善し、便通を促進する効果が期待されています。そのため、オリゴ糖を意識的に摂取することが腸の健康にとって有益です。オリゴ糖が多く含まれる食べ物は以下になります。
- きなこ
- ごぼう
- 玉ねぎ
- はちみつ
- 蒸し大豆
- にんにく
- バナナ
- ライ麦
- アスパラガス
オリゴ糖は、そのままシロップでも販売しています。ヨーグルトにかけて一緒に食べると便秘改善の効果が増すといわれています。さらに、オリゴ糖はさまざまな料理や飲み物に加えることができるため、日常生活で手軽に摂取しやすいです。例えば、スムージー・サラダドレッシング・スープに混ぜるなど、工夫次第で多くのメニューに取り入れることが可能です。これにより、腸内の善玉菌を育て、健康的な腸環境を維持するサポートになるでしょう。
発酵食品は何がおすすめですか?
便秘解消のためには腸内環境を整え、善玉菌を増やすことが重要です。そのため、発酵食品は大変効果的です。腸内のバランスを保ち、消化を助ける役割を果たす発酵食品のおすすめとして、以下のような食べ物があります。
- ヨーグルト
- ぬか漬け
- 味噌・しょう油
- 水キムチ
- 納豆
特に水キムチには乳酸菌が豊富に含まれています。毎朝、漬けた水分を一緒に取ると腸内環境の改善が期待できます。ほかにも、腸内細菌は毎日コツコツと継続して摂取するのが有効です。味噌やしょう油などの調味料を使って、日常的に補っていきましょう。
便秘の原因
便秘の原因は何ですか?
便秘の原因はいくつかあります。朝食を抜いたり規則正しい時間に食事を取らなかったりすることで、便秘になりやすいといわれています。乱れた食習慣は、腸の動きのリズムを狂わせ、排便が習慣化できなくなるからです。ほかにも、過剰な食事制限や偏った食事も便秘を引き起こしやすくなります。過剰な食事制限から生じる便秘は、便の量が減ってしまうことが一因です。なかなか便が出ない場合、腸内で水分が失われて硬くなり、栓になってしまうのも一因となります。また砂糖や加工食品ばかりの偏った食事も、便の質を下げ便秘になりやすいでしょう。さらに高齢や運動不足により腸の動きが弱ってしまったときにも、便秘になりやすいとされています。
便秘を悪化させる食生活はどういうものですか?
便秘を悪化させる食生活は以下のような習慣になります。
- 十分な水分補給ができていない
- 朝食を抜く
- 不規則な食生活
- 食物繊維の不足した食事
- 加工食品が多く腸内環境が乱れる食事
- 腸に刺激の少ない食事
- 食べる時間が決まっていない食生活
- 過剰な食事制限
これらの習慣は、腸の働きに悪影響を与え、便秘を悪化させる要因です。例えば、水分補給が不足すると腸内の水分が減少し、便が硬くなってしまいます。これにより、便通がさらに困難になることがあるでしょう。また、食物繊維が不足していると腸内の蠕動(ぜんどう)運動が鈍り、便の排出がスムーズに行われなくなります。
便秘解消に役立つ食生活・生活習慣
便秘改善が見込める食習慣は?
便秘解消のためには、腸のリズムを整えることが大切です。まず朝起きたら一杯の水を飲むことをおすすめします。それから決まった時間に食事を取り、特に朝食は欠かさないようにしましょう。朝食は、寝ている間に休んでいた腸が再び活動を開始する合図となります。朝の食習慣のない方は、ヨーグルトにオリゴ糖や食物繊維が含まれるバナナやきな粉を混ぜて食べるのがおすすめです。食事全般としては、水溶性と不溶性の両方の食品をバランスよく組み合わせた食物繊維の多い食事を心がけ、ナッツや魚などの油脂を含む食品も積極的に取っていきましょう。なお、アルコールやカフェイン、塩分は身体の水分不足になりやすいです。過剰に摂りすぎないように気をつけましょう。
スムーズな便通につながる生活習慣は?
快便のための生活習慣は2つあります。1つ目は、腸のリズムをつけるために、決まった時間に排便習慣をつけることです。朝や昼、夕食前など決まったリズムでトイレに行く習慣をつけると継続しやすいでしょう。2つ目は、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進することです。腸の動きは、適度な運動習慣やストレッチなどで活性化されます。例えば、ウォーキングやジョギングなどは通学や出勤の際にも行いやすく、腸の働きを助けるのに効果的です。また、お腹のマッサージも有効です。仰向けになって時計回りにお腹をマッサージすると、スムーズな便通につながりやすいでしょう。
編集部まとめ
「たかが便秘」と思っていても、放置すると慢性的になり、病気を招いてしまうのが便秘の恐さです。
気がついたときに食生活や日常生活を改善することが便秘解消につながるため、規則正しい習慣を身につけていきましょう。
また、過度なストレスも便秘の原因になります。ストレスはなるべく溜めないようにしましょう。
1日の疲れがその日のうちに取れるように十分な睡眠時間を取ることも大切です。
食生活や生活習慣の改善で便秘を改善し、毎日を快適に過ごせるようにしましょう。
長引く便秘の場合は腫瘍や炎症などの腸の器質的疾患の可能性もあり、消化器専門の医療機関を受診してください。