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「緑内障になったらしてはいけないこと」はご存知ですか?日常生活の注意点も解説!

 公開日:2024/10/25
「緑内障になったらしてはいけないこと」はご存知ですか?日常生活の注意点も解説!

緑内障は、眼圧の上昇により視神経に障害が起き、視野異常を引き起こす疾患です。

ただし、正常眼圧緑内障と呼ばれる、眼圧が正常範囲内(10〜20mmHg)にもかかわらず発症する緑内障もあります。この種類の緑内障は、視神経の脆弱性や血流の問題が関係していると考えられています。日本の疫学調査によると、40歳以上の人口において、正常眼圧緑内障の頻度は2.04%で、眼圧が高い緑内障(0.58%)の約3.5倍であることが分かっています​​。

いずれのタイプの緑内障の治療でも、眼圧の管理がとても大切です。眼圧を上昇させる行動や薬剤の使用を避ける必要があります。

症状を悪化させないためには、緑内障の正しい知識と注意点をしっかり理解することが大切です。

この記事では、緑内障を抱える方が知っておくべき禁忌薬剤や日常生活での注意点を解説します。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

プロフィールをもっと見る
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

緑内障の特徴と症状

目の不調を訴える

緑内障とはどのような病気ですか?

緑内障とは、眼球内部の圧力(眼圧)が上昇し、視神経が圧迫されることで視野に異常をきたす眼の疾患です。房水という眼の中の透明な液体の流れが何らかの原因で妨げられ、眼圧が高くなることが主な要因です。40歳以上の5%にあたる20人に1人が緑内障で、年齢が上がるにつれて有病率も上昇し、70歳以上では10%を超える方が緑内障であるという統計があります。緑内障は、治療を行っても完治しません。そのため治療も目の健康維持が目的です。緑内障の原因は、高齢・家族歴・糖尿病・近視などが挙げられます。房水の出口(隅角)の広さにより、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の二つに大きく分けられます。隅角が広く症状の進行が緩やかで自覚症状がない場合が多いのが開放隅角緑内障で、隅角が狭く急に発症する場合があり、強い眼の痛みや視力低下を伴うことが多いのが閉塞隅角緑内障です。

緑内障の症状を教えてください。

緑内障の初期や中期は、自覚症状がないため気付きにくく、眼科で診察を受けないとわからない場合が多いのが特徴です。そのため、早期に発見するのが難しく、発見されたときには症状が進行している場合があるので注意が必要です。病状が進行すると、視野の外側から視野欠損が起こります。読書をしている際に読み飛ばしていたり、視野の端が暗かったり見えにくく感じるなどの自覚症状が出てきます。また、視野が霞んだりぼやけたりすることもあるでしょう。眼圧が高くなるため、眼の痛みや頭痛を伴う場合もあるでしょう。何らかの原因で急激に眼圧が上昇する急性緑内障発作の場合、眼が急に見えづらい・眼の充血・頭痛・吐き気が起こる場合もあります。

緑内障の治療法を教えてください。

緑内障の治療法は、薬物療法・レーザー治療・手術治療の3つがあり、眼圧を下げ病状の進行を予防する目的で行われます。どの治療法を行うかは、症状や治療経過により異なるため、医師とよく話し合うことが大切です。薬物療法では点眼薬が主に使用されます。主に使われる点眼薬は、

  • プロスタグランジン関連薬
  • β遮断薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
  • α2作動薬
  • 副交感神経刺激薬

緑内障の種類や進行度合に合わせて薬剤を選択し、複数の点眼薬を併用する場合もあります。薬物療法で眼圧が下がらない場合、病状に応じてレーザー治療が選択されます。2種類の方法があり、レーザー線維柱形成術は開放隅角緑内障、レーザー虹彩切開術は閉塞隅角緑内障の患者さんが対象です。薬物療法やレーザー治療で症状が改善しない場合、または効果がなく眼圧を下げることができなかった重度の緑内障の場合には、手術での治療となります。

  • 線維柱帯切開術(トラベクロトミー):薬物治療やレーザー治療で十分な効果が得られない場合に検討される手術法
  • 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー):眼の外側に小さな排出路をつくり、房水が眼の外に流れやすくする方法
  • チューブシャント手術:小さなチューブを挿入し、房水がほかの部分に排出されるようにする方法

患者さんの全身状態・緑内障の種類・進行度に合わせて上記の手術方法が選択されます。

緑内障になったらしてはいけないことや禁忌薬剤

注意マークと医師

緑内障になったらしてはいけないことを教えてください。

緑内障になった場合、日常生活で気をつけなくてはいけないことは、緑内障を進行させる原因である眼圧を上昇させないことです。眼圧を上昇させる動作の1つに、うつ伏せが挙げられます。うつ伏せの状態を長時間続けると、眼圧が高くなる可能性が高いため、緑内障を発症している場合は禁忌です。また、スマートフォンやタブレットなどの下を向いての作業も、眼圧を上昇させる原因になります。下を向いた状態は、水晶体が前方に傾き隅角が圧迫され、何度も繰り返していると眼圧が上昇する原因となります。うつ伏せで寝ること・長時間下を向いて本を読むことなどは避けるようにしましょう。

禁忌薬剤がありますか?

閉塞隅角緑内障の場合、瞳孔を広げる瞳孔作用のある抗コリン薬が禁忌薬です。例として次のような薬剤が挙げられます。

  • 抗ヒスタミン薬
  • 鎮痛薬
  • 睡眠薬
  • 抗不安薬・抗うつ薬
  • 抗パーキンソン薬

このほかにも、副腎皮質ステロイド・血管拡張薬・強心薬などがあります。閉塞隅角緑内障の方が抗コリン薬を内服した場合、散瞳作用により隅角が閉塞してしまい緑内障発作を起こす可能性が高いです。発作が起きると緊急手術での対応が必要となり、失明する場合もあります。内服している薬がある場合は、禁忌薬が含まれていないか確認し、医師や薬剤師と相談しましょう。

ステロイド剤は避けるべきですか?

ステロイドを含んでいる薬剤は眼圧を上昇させる可能性が高いため、閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障どちらの場合でも、使用を避けた方がよいでしょう。眼圧に影響する房水の流れが悪くなるため、眼圧を上昇させてしまうと考えられています。抗炎症作用が強いベタメタゾン・デキサメタゾン・プレドニゾロンで眼圧上昇が起こりやすいといわれています。また、点眼・軟膏・クリームなどを眼の周りや顔に塗布している場合は、眼圧が上昇する可能性が高くなるため注意が必要です。ステロイド剤を治療で使用している場合は、定期的に眼圧を測定し、眼圧の変動がないか確認することも重要です。

禁忌薬剤が使用できるケースはありますか?

禁忌薬剤の影響を受けるのは閉塞隅角緑内障ですが、薬物療法や外科的手術などを行い、眼圧のコントロールができている場合は薬の影響で散瞳しても緑内障発作は起こりにくいといわれています。眼圧が正常値である10〜20mmHgに維持できている状態であれば、禁忌薬剤の投与は可能です。内服を継続する場合には自己判断で行わず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

緑内障の日常生活の注意点

点眼する女性

日常生活で注意することはありますか?

緑内障になったからといって、嗜好品や運動などの制限は特にありません。眼を使ってもよいのかと心配になる方もいらっしゃるかと思いますが、通常眼を使っても緑内障が悪化することはありません。今までどおりの生活を送って頂いて大丈夫です。ただし、普段の生活のなかで守って頂きたいのが、処方された目薬をきちんとさすことです。点眼は1回に1滴・異なる目薬を併用している場合は5分以上間隔を開けましょう。また、閉塞隅角緑内障の方は、ほかの疾患の治療に必要な内服薬や注射などにより眼圧が上がる可能性があります。そのため、自分は閉塞隅角緑内障であるかを把握し、医療機関で尋ねられたときに返答できるようにしておくことが大切です。

眼底検査は定期的に行う必要がありますか?

眼底検査とは、眼の奥である眼底・血管・網膜・視神経の状態を調べる眼の検査方法です。視神経の障害度を測定して、緑内障の病期を知ることができます。また、正常眼圧緑内障の場合、眼底検査で緑内障の診断ができる場合もあります。緑内障の状態を把握し、症状の変化がないか経過観察するうえで眼底検査を定期的に受けることが大切です。

予防する方法はありますか?

緑内障を予防する方法は、定期的に眼科検診を受けることです。緑内障は一度症状が進行すると、治療を行っても完治はできません。そのため、少しでも早く発見し、緑内障の進行を遅らせるための治療を開始することが重要です。発症初期に治療を開始できた場合、視野欠損や見えにくいなどの症状がなく、軽症な状態を維持できる可能性が高くなります。初期の段階では自覚症状がないため、ほとんどの場合気付きにくく、自覚症状が現れた頃には悪化している場合があります。定期的に検査を受け早期に発見できると、眼の健康を長く保てるでしょう。

編集部まとめ

診察する医師
緑内障は、初期の段階では発見されにくく、症状が進行すると視力低下や失明につながる疾患です。

緑内障の治療法には、薬物療法・レーザー治療・手術治療が行われます。
治療中の疾患がある場合には、眼圧が上がる薬剤の使用を避ける必要があります。

また、日常生活ではうつ伏せや下を向く作業を長時間行わないなど、眼圧が上がる可能性がある行動を避けるように意識しましょう。

眼の健康を維持できるよう、早期発見・早期治療が大切です。定期的に検診を受け、異常に気付いたときは早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師