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「知的障害の原因」はご存知ですか?症状や特徴も解説!【医師監修】

 公開日:2024/11/05
「知的障害の原因」はご存知ですか?症状や特徴も解説!【医師監修】

知的障害は予防や治療の方法がわかっておらず、患者さん自身が社会生活を送るうえでも大きな影響を及ぼすことが少なくない障害です。

この記事では知的障害の概要や原因のほか、混同されることがある発達障害との違いや、知的障害と診断された場合に利用できる制度・窓口などについて解説します。

身近に知的障害の患者さんがいる方だけでなく、知的障害について知りたいと思っている方も、ぜひ参考にしてください。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

知的障害の原因や特徴・症状

泣く赤ちゃんに話しかける男の子

知的障害の原因について教えてください。

知的障害の原因には、大きく分けて遺伝的要因や外的要因があります。遺伝的要因の具体例として挙げられるのは、ダウン症やコフィン・ローリー症候群などの染色体異常です。また、先天的な代謝異常も知的障害の発症リスクを高めるとされています。一方、傷病や環境など外的要因の例は下記のとおりです。

  • 低酸素状態での出生
  • 早産
  • 頭部外傷
  • 脳炎や髄膜炎

その他に、母体の健康状態が知的障害の発症リスクを高める可能性があります。例えば、妊娠中に風疹や麻疹などの感染症に罹患した場合や、母体の栄養不足、アルコールの摂取も原因になることがあるため注意が必要です。ただし、複数の要因が影響しあって発症する場合もあり、知的障害の原因が断定できるケースは多くありません。

知的障害の特徴について教えてください。

知的障害の特徴としては、知的機能の低下と、それに伴う適応行動の困難さが挙げられます。まず、知的機能の低下とは、学習能力のほか概念的思考や問題解決能力、思考の柔軟性に課題がある状態を指します。また、適応行動には社会的なスキルを身につけたり、環境に合わせて行動を変えたりといった幅広い能力が含まれます。こうした機能の発達が不十分なため、知的障害がある方は自己管理や対人関係のほか仕事の遂行など、生活のさまざまな領域において困難を抱えやすいという特徴があります。さらに、こうした影響から年齢相応の社会的な役割を果たすことや、独立した生活を送ることが難しいケースも少なくないでしょう。

知的障害の症状にはどのようなものがありますか?

知的障害の症状は、知的機能や日常生活における適応行動に関する困難が中心です。具体的な症状としては、下記のようなものが挙げられます。

  • 記憶力や学習能力の遅れ
  • 注意力や集中力の不足
  • 言語発達の遅れ
  • 問題解決や判断力の低さ
  • 日常生活動作の拙さ
  • 自己管理能力の低さ

また、社会的なスキルにも影響が出ることが多く、他者とのコミュニケーションや対人関係の構築に困難を抱えることがあります。同じ知的障害のなかでも障害の重さは幅広く、また個人の特性により抱える困難にも差があります。

知的障害と発達障害の違いについて教えてください。

知的障害では知的機能全体に影響がみられ、知能指数(IQ)がおおよそ70未満で、学習や日常生活スキルの制限が見られる状態を指します。先天性の原因も多く、18歳までに症状が現れることが特徴です。一方、発達障害は脳の特定の機能の発達に問題があり、知的機能には問題がない場合も多いのが特徴です。特定の領域での困難が特徴ですが、不得意とする領域以外の活動は一般的な水準で行えるため、小児期には異常が目立ちにくく成人してから診断されるケースも少なくありません。なお、発達障害は単一の疾患ではなく自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などを含む障害の総称であり、それぞれの特性に応じた支援が必要です。

知的障害の診断基準や予防法・治療法

子どもを診る医療従事者

知的障害の診断基準について教えてください。

知的障害は、前述のとおり知的機能の低下と適応行動の制限を特徴とします。そのため、診断の際は知能指数(IQ)の検査を行います。これに加え、本人や家族から日常生活でのエピソードや普段の様子などを聴取して、適応行動の困難が確認されることも大切な判断材料です。また、知的障害の症状は18歳以下の発達期に現れるため、これ以降に知的機能の低下がみられた場合は別の障害や疾患の可能性を疑います。

知的障害を診断するための検査について教えてください。

知的障害の診断では、知能検査と適応行動の評価を行います。知能検査としては、言語理解や知覚推理のほか作業記憶や処理速度など脳の機能ごとの評価を点数化できるウェクスラー式知能検査や、子ども向けに作られた田中ビネー式知能検査を用いることが多いでしょう。また、適応行動の評価では日常生活におけるエピソードを聴取し、医師や心理士の主観ではなくVineland適応行動尺度といった一定の評価基準に沿って測定します。検査には医師や心理士だけでなく、教育機関のスタッフが協力する場合もあり、さまざまな視点からの総合的な評価が可能です。

知的障害を予防する方法はありますか?

冒頭で紹介したとおり知的障害には複数の原因があり、完全に予防することは難しいでしょう。しかし、妊娠中の母体の健康状態が発症リスクと関連することがわかっています。そのため、風疹や麻疹など知的障害のリスクを高める感染症のワクチンを接種して、感染症になるリスクを下げることが知的障害の予防に役立つ可能性があります。また、胎児の脳や神経系の発達に影響する可能性があるため、アルコールや薬物の摂取を避けることも知的障害予防につながるでしょう。なお、特定の遺伝的疾患や代謝異常については、予防は困難ですが出生前診断により早期発見や早期治療につなげることが可能です。

知的障害の治療方法にはどのようなものがありますか?

知的障害は原因がわからない場合も多く、根治が望める治療方法はありません。しかし、適切な支援や教育により一人ひとりの能力や特徴に合った生活の方法や工夫を身につけることで、生活の質を向上させることが可能です。知的障害を抱える方への支援内容としては、個々のニーズに合わせたリハビリテーションや特別支援教育が挙げられます。また、日常生活のスキルを向上させるための訓練や、社会的スキルを学ぶためのプログラムへの参加も効果的とされています。その他、併存する障害や症状がある場合は、その障害に対する支援や症状の治療も同時に行っていくケースが多いでしょう。

知的障害がある人への支援制度と接し方

療育手帳

知的障害がある人向けの支援制度や機関について教えてください。

知的障害を持つ方を支援するため、いくつかの制度や機関が整備されています。利用できる制度としては、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスがあります。療育手帳を取得することでサービスの対象となり、日常生活に必要な支援を受ける居宅介護のほか、短期入所やデイサービスなどの利用が可能です。また、就労することや仕事をうまく続けていくことを支援するため、就労移行支援や就労継続支援といったサービスもあります。こうした制度を利用したい場合や、知的障害に関する相談窓口を探している場合の窓口は、地域にある障害者相談支援センターです。その他、市区町村の支援課や保健所、特別支援学校や福祉事業所などに相談するのもよいでしょう。

知的障害がある人との接し方を教えてください。

知的障害がある人と接するときは、まず相手の特性やニーズを理解することが重要です。具体的には、相手の得意なことや興味を持っていることを尊重し、自己肯定感を高めるような対応を心がけましょう。また、十分に理解できないまま話を進めることは、誤解や行き違いのもとになります。相手のペースに合わせてゆっくりと話し、わかりやすい言葉を使うことが大切です。その他、一度にたくさんのことを伝えずに、短い文で必要なことを一つひとつ伝えながら理解できているか確認することを心がけましょう。加えて、行動や返事を待つ際には急かさず、相手の反応を待つ姿勢も必要です。なお、知的障害がある方は反応や考え方に強いこだわりや個々の特性が現れるケースも少なくありません。無理に一般的な会話のルールだけに沿わず、柔軟に対応するとコミュニケーションが取りやすいでしょう。

編集部まとめ

絵本を読む親子
知的障害を抱えている方は、ほかの人が日常的に行っていることや何気なくできていることにも大きな困難を感じていることも多いでしょう。

また、発症に先天的要因が関わっていることや患者さんの自立した生活が難しいことから、知的障害がある方の兄弟や親が大きな負担を抱えている場合もあります。

こうした背景のなかで、周囲の人たちが知的障害の特性や支援の在り方について理解を深めることは、患者さん本人や家族の負担を和らげることにつながるかもしれません。

この記事の監修医師

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