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「ノロウイルスの潜伏期間」はどのくらい?症状・予防法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/11/16
「ノロウイルスの潜伏期間」はどのくらい?症状・予防法も解説!【医師監修】

「胃腸炎は発症までどのくらいの期間があるのだろうか」「どうやって予防すればいいのだろう」

突然、自分や家族が感染性胃腸炎を発症することで、このように思われる方も少なくないのではないでしょうか。

そこで本記事では、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の潜伏期間から原因や治療方法、予防法について解説します。

重症化すると入院が必要になる場合もあるので、もしものときに対処できるよう正しい知識をつけておくことが大事です。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の原因や潜伏期間

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の原因を教えてください。

ノロウイルスが口から体内に入ることで起こる、経口感染が原因です。例えば、すでに感染している方の嘔吐物や排泄物を処理する際に、手を介して感染します。
また、空気中に飛び散ったウイルスが口から入ることで感染することもあるでしょう。食べ物からも感染することが知られており、ノロウイルスに汚染されたカキや二枚貝を生のまま食べることで感染することもあります。

どのような症状が出ますか?

個人差がありますが嘔吐や吐き気、下痢や頭痛、発熱といった胃腸炎症状が挙げられます。ノロウイルスによる症状の場合、突然起こる吹き出るような嘔吐がありますが、下痢やほかの症状と同じように1〜2日で症状が改善する傾向が強いです。
発熱も37〜38度と高熱は出にくいでしょう。ですが5歳未満や高齢者、免疫機能の低下している方は下痢の症状が5日以上続くなど強く出やすいため、脱水症状には十分注意が必要です。なかには、感染してもまったく胃腸炎症状が出ない方も一定数いるというデータがあります。
また症状が出なくなっても、便からウイルスの排出は続けられるので、処理をする際は注意しましょう。

潜伏期間はどのくらいですか?

通常12〜48時間程度と短めです。つまり、1〜2日程度の潜伏期間となるので、感染者と接触する機会や、排泄物の処理を行ったときは、2日程度症状が出なければ感染していない可能性が高いです。
一方、潜伏期間は短いものの、便中のウイルス排出期間は長い時で3週間(1か月程度)続きます。

潜伏期間に個人差はありますか?

潜伏期間が72時間に及ぶ例もありますが、通常は12〜48時間内に治まります。また、年齢や性別、免疫機能の違いによっても変わらないことがわかっています。
一方、ウイルス排出期間も個人差があり、乳幼児などの小児から成人までは長い時で3週間(1か月)程度となりますが、免疫疾患のある方では3ヵ月便中に排出された例もあります。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の治療方法

ノロウイルスで医療機関にかかる目安を教えてください。

頻回な下痢や嘔吐が続く場合もしくは高熱がでているときは受診するようにしましょう。下痢や嘔吐が続くと脱水症状につながってしまいます。脱水症状からくる皮膚や口の乾燥、尿量が少なくなる場合も注意が必要です。子どもなら、機嫌が悪い場合注意した方がよいでしょう。
多くの場合、数日で症状は改善しますが、重度の脱水により命にかかわることもあるため、注意が必要です。また、似た症状の原因としてアデノウイルスなどのほかのウイルスも考えられます。
少しでも不安な場合は早めに受診するといいでしょう。

どのような治療を行いますか?

症状に応じて、整腸剤や吐き気止めの服用、水分補給の点滴が行われます。ノロウイルスに対する治療薬や特効薬はないため、症状に対する対症療法を行います。
特に、脱水に注意が必要です。症状がひどい場合は下痢や嘔吐によって失われた水分を補うために点滴を行います。また、下痢は止めずに出し切るのが基本となります。
ひどいからといって自己判断で下痢止めを飲んでしまうと、ノロウイルスの排出を遅らせてしまい、治癒期間が長くなってしまうので注意しましょう。

入院は必要ですか?

脱水症状がひどいときは、入院が必要な場合もあります。重症化すると脱水で命を落とす可能性があるため、医師の指示に従いましょう。重症化しないように家庭でできることは、こまめな水分補給とウイルスと戦うための体力をつけるためにしっかりと休むことです。
スポーツドリンクや経口補水液は失った水分や電解質を補充するのに、おすすめです。しかし、これらを過剰に摂取するとビタミンB1不足になり、意識障害を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
また水分を口から摂る際、一度に大量に摂取してしまうと吐き気を強めてしまうことがあるので、スプーン一杯程度を少しずつ摂取することがおすすめです。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の予防方法

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行時期を教えてください。

冬季に流行するのが特徴です。特に11月頃から増え始め、12月から1月にかけてピークを迎え、3月頃に落ち着いてきます。その後、症状の出ない方たちの間でウイルスが保持され、糞便中に出たウイルスが下水を通してカキや二枚貝を汚染するのです。
また、気温の低下とともに免疫低下が起こった方たちに感染することで再び流行時期を迎えると考えられます。一方、ロタウイルスによる感染性胃腸炎もあり、こちらは1月から4月が流行時期となります。ロタウイルスによる胃腸炎の場合は2歳までの乳幼児に多く見られ、特に下痢による脱水がノロウイルスの場合よりも顕著です。
流行時期が被っていることから家庭での判別は難しいといえるでしょう。

予防方法を教えてください。

手洗い、85度以上で1分以上の加熱、0.02%〜0.1%(200〜1000ppm)濃度の次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が効果的です。

  • 手洗い:食事前のほか、幼稚園や学校など人が多く集まるところから帰ってきたときは必ず石けんで手洗いをします。また、ドアノブを触った手を介してノロウイルスが口から入ることもあるので注意しましょう。
  • 85度以上で1分以上の加熱:ノロウイルスは熱に弱いウイルスです。汚染の可能性がある食材は十分加熱して食べたり、服はアイロンをかけたりするといいでしょう。
  • 0.02%〜0.1%(200〜1000ppm)濃度の次亜塩素酸ナトリウムでの消毒:次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液での消毒が効果的です。服や食器類、調理器具の消毒には、0.02%(200ppm)のもの(水500mLに対してボトルキャップ1/2杯の次亜塩素酸ナトリウム)が適切です。嘔吐物の処理には、0.1%(1000ppm)のもの(水500mLに対してボトルキャップ2杯の次亜塩素酸ナトリウム)を使用しましょう。

なお、ノロウイルスにアルコールは効かないので代用できません。次亜塩素酸ナトリウムは、市販の塩素系漂白剤で対応できます。

感染者が使用した食器類は消毒するべきですか?

消毒するべきです。感染者が使った食器にはノロウイルスが付着している可能性があります。85度以上の熱で1分間洗い続けるのは難しいため、通常の手洗いでは不十分です。
そのため、食器類は0.02%(200ppm)の次亜塩素酸ナトリウムで消毒するようにしてください。また、ノロウイルスは室温で2週間は存在するため、ノロウイルスが感染者の体から排出される3週間(長い時で1か月程度)に加えて2週間は消毒を行うと安心です。

編集部まとめ

本記事では、ノロウイルスの原因や潜伏期間・治療法・予防方法について解説しました。

原因はノロウイルスの経口感染によるもので、感染者の嘔吐物などの処理だけでなく、汚染されたカキや二枚貝を食べることでも感染します。

潜伏期間は通常12〜48時間です。便中のウイルスの排出期間は、健康な方で長い時で3週間(1か月程度)と長期になるので注意しましょう。

治療法は、特効薬がないため対症療法として点滴、吐き気止めといった各症状や重症度に合わせたものになります。

予防方法として、アルコールではノロウイルスの消毒ができないため、0.02%〜0.1%濃度の次亜塩素酸ナトリウムを使用しましょう。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、突然発症します。あらかじめ対処方法を知っておくことで、症状に対処し重症化を防ぐことができるでしょう。

この記事の監修医師