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「急性硬膜外血腫」の症状や原因はご存知ですか?頭部を打撲した後は要注意!

 更新日:2024/01/09
「急性硬膜外血腫」の症状や原因はご存知ですか?頭部を打撲した後は要注意!

急性硬膜外血腫をご存知でしょうか?これは頭部外傷が原因で、硬膜外の血管が破れて血液がたまる状態を指します。頭部外傷によって硬膜外の血管が損傷し、血液が蓄積することで脳に圧迫を及ぼし、重篤な状態を引き起こすことがあります。本記事では急性硬膜外血腫について以下の点を中心にご紹介します。

・急性硬膜外血腫とは
・急性硬膜外血腫の症状
・急性硬膜外血腫の予後

急性硬膜外血腫について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性硬膜外血腫について

急性硬膜外血腫について

急性硬膜外血腫とはどんな状態ですか?

急性硬膜外血腫とは、頭部が強く打撲することによって、脳を覆っている硬膜と頭蓋骨の間に血液がたまる状態を指します。この状態は、高所からの落下や階段からの転倒、交通事故などの外傷によって引き起こされます。主に頭蓋骨が骨折し、その部分の硬膜上に存在する血管が傷つくことで出血が生じます。

急性硬膜外血腫の重症度は、出血が起こる部位と出血の速さによって決まります。特に重篤な状態では、時間が重要であり、迅速な対応が必要です。この状態では、脳に圧迫がかかるため、神経学的症状や意識障害が生じることがあります。最も重篤な場合には、迅速な緊急手術が必要とされることもあります。

急性硬膜外血腫の原因を教えてください。

急性硬膜外血腫の原因は、頭蓋骨と脳を覆う硬膜、くも膜、軟膜の間に位置する血管の損傷です。頭蓋骨が外傷によって骨折し、その部位から出血するか、頭蓋骨に隣接する硬膜の血管が損傷されることで、血液が漏れ出て出血が起こります。

また、頭部外傷によって硬膜外の動脈や静脈が傷つき、血液がたまることも多い原因の一つです。特に骨折が伴うことが多く、側頭部の外傷によって中硬膜動脈や後頭蓋下に静脈が損傷されることが典型的です。

さらに、成人の場合は、後頭部への外力により後頭蓋下に血腫が形成されることもまれにあります。この場合は横静脈洞と呼ばれる静脈が損傷を受けることが発症の関連因子とされます。

急性硬膜外血腫が多く見られる年代はいくつくらいですか?

急性硬膜外血腫は、バットでの頭部打撃や喧嘩による頭部の殴打などが引き金となる場合もあります。また、交通事故やスポーツ中の落下、転倒などの外傷も原因とされています。特に10〜30歳前後の若年層で多く発症する傾向があり、社会的に活発な10-20代や高齢者、幼児(2歳以上)にも見られます。このような人々は、活動的な生活や運動の際に偶然の外傷を受ける可能性が高いため、急性硬膜外血腫に対する注意が求められます。

子どもも急性硬膜外血腫になることはありますか?

はい、急性硬膜外血腫は子供にも発生する可能性があります。子供は成長段階であり、遊びや活動中に転倒や頭部打撲を経験することが多いため、急性硬膜外血腫が発症することがあります。特に乳児はベッドやベビーベッドからの転落、幼児は階段からの転落、公園の遊具や自転車による事故が一般的です。もし子供が頭部を打撲した場合、症状によって対応が必要です。症状が重篤な場合や普段と違う様子を示す場合には、早急に病院を受診することが大切です。特に頭痛や嘔吐、異常な機嫌や行動、鼻や耳からの出血などが見られる場合は、素早く医師の診断を受けましょう。

急性硬膜外血腫の症状を教えてください。

急性硬膜外血腫による典型的な症状は、強い頭痛と嘔吐です。受傷直後または数時間後に激しい頭痛と嘔吐が現れ、一度症状が和らいでもしばらくして再発することがあります。この状態の特異な点は、意識が一時的に回復し、自覚症状が薄れることが多いことです。受傷直後は意識が曖昧になっていることもありますが、その後数分で回復することがあります。しかし、一定以上の出血が脳と硬膜の間に貯留されると、数時間後に頭痛、嘔吐、半身の脱力や麻痺、意識障害といった症状が現れます。特に半身脱力や麻痺は、血腫が脳の一側に形成された場合、対側の半身に影響を及ぼすことがあります。

急性硬膜外血腫の症状はすぐ出てきますか?

急性硬膜外血腫は、頭部外傷後に現れる疾患です。受傷直後は症状がなくても、時間が経つと急激に症状が出現することがあります。特に注意が必要なのは、頭部外傷の後約6時間以内で、その後の急激な異常発現は稀です。この特徴的な経過は急性硬膜外血腫と呼ばれる状態に特有です。

通常、頭蓋骨からの高さ約1.5mの落下などで骨折が生じます。頭蓋骨の下に位置する硬膜の動脈が骨折によって損傷され、血液が漏れ出て出血が起こることがあります。初期は脳そのものへの損傷は少ないため、一時的な脳振盪はあるかもしれませんが、意識障害は直ちに現れることはありません。

しかし、時間が経つにつれて出血量が増加し、血腫が脳を圧迫することで意識障害や麻痺が起こることがあります。この状態が通常約6時間以内に発生し、緊急の手術が必要とされます。

緊急性があるのは、人の背の高さからの衝撃などで怪我をした場合です。例えば、後頭部の打撲や子供を肩車中に落とす事故などが該当します。ただし、1日以上経過して症状がない場合は心配は少なく、また数週間後には慢性硬膜下血腫という病気がまれに発生することもあるため、適切な対応が重要です。

急性硬膜外血腫の治療について

急性硬膜外血腫の治療について

急性硬膜外血腫はどのように診断しますか?

急性硬膜外血腫の診断には、まず頭部外傷の患者に対してCTやMRIの画像診断が必要です。緊急の治療が必要な場合が多いため、通常はCTが用いられ、放射線被ばくを避けたい場合を除いて迅速な診断が求められます。
頭部CTにより、血腫の有無が容易に確認されます。一定の大きさ以上の場合は直ちに手術が検討されますが、それ以外の場合は数時間後に再度CT撮影が行われ、出血の進行を確認し、緊急手術の必要性を検討します。また、頭部外傷においては硬膜外血腫だけでなく、他の状態(例:硬膜下血腫、脳挫傷)も同時に見られることがあり、画像を詳細に検査し診断をします。血腫が小さい場合は、意識障害や麻痺の症状がなければ、定期的な画像検査をしつつ、経過を観察します。

急性硬膜外血腫の治療法を教えてください。

急性硬膜外血腫の治療は、症状の重さに応じて異なります。軽症例では自然吸収されることもあり、手術は不要です。しかし、大きな血腫の場合は緊急手術が一般的です。手術では全身麻酔下で頭蓋骨を開け、血腫を取り除く操作が必要です。血腫の大きさによっては、脳のむくみが引くまで頭蓋骨を元に戻さずに時間をかけてむくみを解消する減圧開頭術も併用されることがあります。血腫を取り除いても脳が腫れていると、脳幹を圧迫し命に関わることがあるためです。同時に、骨折した頭蓋骨の修復や、人工骨を用いて元に戻す手続きも行われることがあります。脳内に損傷がない場合、脳を覆う膜を切除する必要がないため、早期治療により良好な結果が期待されます。

急性硬膜外血腫は自然に治る事はありますか?

急性硬膜外血腫の症状が軽い場合や血腫の量が少ない場合、頭痛や嘔吐などの症状がみられることがあります。このようなケースでは、入院し経過を観察するか、頭蓋内圧の上昇に対処するために脳圧降下薬(グリセオール)を点滴投与することも考えられます。少量の血腫は時間をかけて数カ月以上で自然に吸収されることもあります。しかし、血腫が大きい、あるいは症状が重篤な場合、自然治癒が難しいことが多いです。

急性硬膜外血腫のその後

急性硬膜外血腫のその後

性硬膜外血腫が進行したらどうなりますか?

急性硬膜外血腫が放置されると、血腫は大きくなり脳を圧迫し、意識障害や麻痺が悪化するリスクがあり、最悪の場合は命に関わる危険性もあります。症状が現れていても、早期に手術を受けることで症状の改善が期待できます。手術は頭蓋骨に小さな穴を開けて、流動性のある血液を吸引する単純な手術が一般的です。手術を早めにすることで、重篤な状態の進行を防ぎ、速やかな回復が期待できます。

急性硬膜外血腫の予後について教えてください。

急性硬膜外血腫の予後は、早期の診断と治療が重要です。急性硬膜外血腫が脳を圧迫すると、脳の正常な機能が阻害され、局所的な症状が現れます。さらに進行すると脳ヘルニアと呼ばれる状態が起こります。この状態では脳幹が圧迫され、瞳孔の大きさに左右の差が生じたり、両方の瞳孔が異常に散大することもあります。症状が進行すると循環障害が起こり、生命維持が困難になる可能性があります。
昏睡状態の場合、社会復帰率は62%とされています。脳損傷の程度も予後に影響します。ただし、これは一般的な統計であり、個々の状況によって異なる可能性があります。

急性硬膜外血腫の後遺症について教えてください。

急性硬膜下血腫や急性硬膜外血腫は、脳の損傷が回復不可能な後遺障害を引き起こすリスクが高い疾患です。主な後遺障害は以下の通りです。

外傷性てんかん:血腫によって脳が損傷し、持続的なてんかん発作が起こる可能性があります。発作の種類や頻度によって、後遺障害等級が認定されることがあります。

高次脳機能障害:脳の損傷によって、感情の制御や認知機能に障害が生じ、目的の遂行などに支障が出ることがあります。障害の程度に応じて、後遺障害等級が判定されることがあります。

遷延性意識障害:長期間意識が低い状態が続く「植物状態」が含まれます。自己の移動や食事、意味のある発話などができない状態で、全面的な介護が必要となることがあります。これにより後遺障害等級が判定されることもあります。

これらの後遺障害は、急性硬膜下血腫や急性硬膜外血腫による脳損傷の結果として生じる可能性があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

急性硬膜外血腫は、急激な頭部外傷による出血から発症する重大な状態です。早期の症状はわかりにくいこともありますが、頭痛や嘔吐が続く場合は無視せず、医師の診断を受けることをお勧めします。適切な治療とケアが適用されれば、予後は改善する可能性があります。

編集部まとめ

急性硬膜外血腫
ここまで急性硬膜外血腫についてお伝えしてきました。急性硬膜外血腫の要点をまとめると以下の通りです。

・急性硬膜外血腫とは頭部が強く打撲されることによって、脳を覆っている硬膜と頭蓋骨の間に血液がたまる状態
・急性硬膜外血腫の症状は強い頭痛症状で、時間が経過すると症状が現れることがあるので注意が必要
・急性硬膜外血腫が進行すると脳ヘルニアと呼ばれる状態に陥る

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師