【闘病】勤務中に「脳出血」で意識失い緊急搬送 原因は『脳動静脈奇形』だった

脳動静脈奇形は脳内の血管が絡み合い、破裂や出血を引き起こしやすくなった状態です。しかし、初期症状が分かりにくいことが多く、異変に気づくのが難しい病気でもあります。実里さん(仮称)は、脳動静脈奇形が原因で急性硬膜外血腫を起こし、職場で意識を失いました。それでも、脳動静脈奇形と戦いながらも出産や育児を乗り越え、前向きに生きる実里さんに、これまでの体験を話してもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年10月取材。

体験者プロフィール:
実里さん(仮称)
1992年生まれ、大阪在住。2024年4月、妊娠中に脳出血を発症。救命手術と摘出手術を受け、無事に出産した。その後、頭蓋骨形成手術を受け退院。現在は日常生活に復帰し、育児に力を入れている。受診した診療科は、脳神経外科、産婦人科、精神科。
職場で気を失い、緊急搬送

編集部
脳動静脈奇形が判明した経緯について教えてください。
実里さん
職場で突然意識を失って、緊急搬送されたのです。病院で急性硬膜外血腫と診断され、助かるかどうかは五分五分という状態だったそうです。そのため、脳の腫れを抑えるための救命手術(外減圧術)を受けることになりました。幸い手術は無事に成功し、その後の検査で脳出血の原因が脳動静脈奇形だと分かりました。
編集部
はじめにカラダに起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?
実里さん
実は倒れた当時の記憶が全くありません。ただ、スマートフォンの検索履歴に「後頭部 痛い 立てない」と残っていたので、倒れる直前に何か違和感を抱いていたようです。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
実里さん
まさか自分が先天性の脳疾患を持っていたなんて思いもしませんでした。当時は妊娠中だったので、「帝王切開になるかもしれない」という不安がありました。そこに脳出血のことやその治療が上手くいくのかという不安まで重なって、かなり落ち込みました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
実里さん
脳動静脈奇形については、まずはカテーテルで血管を閉塞する治療を行い、その後に開頭手術で摘出する、という説明でした。実際の摘出手術は10時間にも及びましたが、無事に成功してひとまずホッとしました。手術後は「脳の腫れが治まるまでは右側の頭蓋骨は外したままにしましょう。腫れが引いたタイミングで人工の頭蓋骨を戻します」と言われました。その後はリハビリテーションを経て一時退院しましたが、また出産のタイミングで再度入院しました。出産後翌週に人工の頭蓋骨を戻す手術を受け、その後カテーテル検査で異常なしと診断され、無事退院しました。
日常生活に復帰するまで

編集部
脳動静脈奇形発症後、生活にどのような変化がありましたか?
実里さん
頭蓋骨を外している間は、衝撃から脳を守るためにヘッドギアを装着しなくてはいけませんでした。外出するときは衝撃を受けないよう、主人や母の付き添いが必要になりましたね。
編集部
症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
実里さん
退院時に「血圧を上げないように注意してください」と医師から指示を受けたので、血圧計を購入して定期的に測るようにしています。血圧を上げないために、身体と心に無理をさせないよう日頃から意識しています。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
実里さん
毎日面会に来てくれた家族や友人たち、そして同じ脳動静脈奇形を経験した人たちとのやり取りが大きな支えでした。脳出血の治療でメンタルが落ち込んでいたときも面会に来てくれたり、LINEでのやり取りをしてくれたり、本当に励まされました。私と同じ脳動静脈奇形を経験された人の話を聞くことで、不安もかなり和らぎました。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
実里さん
人工骨を戻した部分に少し違和感が残っています。それでも、おかげさまで以前と変わらない生活ができています。今は子育てに奮闘中です。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
実里さん
「脳のMRI検査を受けて」と言いたいですね。普段はMRI検査を受ける機会が少ないと思いますが、早期に見つかれば治療の選択肢も広がると思うので。
定期的に検査を受けてほしい

編集部
脳動静脈奇形を意識していない人に一言お願いします。
実里さん
脳動静脈奇形は先天性の疾患で、いつ発症するか分かりません。発症するまでは無症状ですが、脳出血を起こすと後遺症が残ることもあります。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
実里さん
私と関わってくださった医療従事者の皆さんには本当に感謝していて、特に望むことはありません。強いて言うなら、医療従事者の皆さんもぜひ健康に気をつけて治療にあたってほしいと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
実里さん
私の場合、もし事前に脳動静脈奇形があると分かっていれば、脳出血を起こす前に治療ができたかもしれません。不幸中の幸いですが、私は職場で倒れたから早く対応をしてもらえました。そして後遺症もなく回復できました。でも、これが「もしほかの場所で倒れていたら」と思うと、ゾッとします。皆さんも自分の身に異常を感じたら、すぐ誰かに相談してほしいです。
編集部まとめ
実里さんの話をきいて「定期的な検査」と「病気を発症したあとの迅速な対応」がいかに重要かを強く感じました。この記事を読んでいるあなたも、異変がなくとも定期的に検査を受けるようにしましょう。脳動静脈奇形のように、初期の症状が分かりにくい病気の可能性がありますので。定期的な検査による早期発見があなたの命を救うかもしれません。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。