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「肺分画症」という先天性の病気はご存知ですか?症状や原因について解説!

 公開日:2023/09/28
「肺分画症」という先天性の病気はご存知ですか?症状や原因について解説!

私たちの身体には無数の細胞・組織があり、それぞれが特定の役割を果たしています。

特に私たちが息をするための肺は、酸素を体内に取り込んで二酸化炭素を排出する重要な役割を担っています。

時には肺に異常が生じることがあり、その中の一つが「肺分画症」という疾患です。

一般的に聞き馴染みのない疾患ですが、進行の程度によっては手術が必要になる病気です。今回は肺分画症の原因・症状・治療法などについて解説します。

健康に関する知識は、予防や早期発見に繋がる大切な武器となります。ぜひ、最後までお読みいただき、肺分画症についての理解を深めてください。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

肺分画症とは

授乳中

肺分画症ってなんですか?

肺分画症は、正常であれば肺動脈から血液を供給されるはずの肺が、大動脈などの肺動脈以外の血管から異常に血液を供給されるようになってしまう病気です。
この肺分画症は肺の中にできる「肺葉内肺分画症」と肺の外にできる「肺葉外肺分画症」に分けられます。肺分画症は無症状であることも多い病気です。。
しかし、異常な血流によって肺の一部が正常な機能を果たせなくなり、時には発熱・呼吸困難・酸素不足などの症状を引き起こすことがあります。肺分画症の部位によっては、他の肺組織との境界がはっきりしておらず、診断が難しい場合もあります。

肺分画症はどうやって診断できますか?

肺分画症の診断は胸部のレントゲンやCTスキャンなどの画像診断超音波検査を用いて行われます。
特に、近年の画像診断技術の進化により、CTやMRIを使用して、異常な血流の部分やその起源となる血管を正確に特定することが可能となりました。画像診断において異常な影が見られた場所に流入する血管が肺動脈ではなく、それ以外の動脈であることを確認することで、肺分画症の診断が確定されます。
さらに、近年では超音波検査によって出生前に肺分画症が見つかる場合もあります。

肺分画症の発症時期を教えてください。

肺分画症は先天的なものであり、生まれつき持っていることが多いです。肺葉外肺分画症は、胎児期の超音波検査などで早期に発見されることもあります。
この胎児において見つかる肺葉外肺分画症の場合、肺の外側に水が大量に貯まってしまう場合や病変が大きい場合には出生後すぐに治療が始まることもあります。ただし、多くの場合、出生後に検査と治療を行えば問題はありません。
一方、肺葉内肺分画症は、成人になってから発見されることが多い病気です。これは、周囲に正常な肺組織が存在するため、画像診断では見つけにくいためや症状が出にくいためです。その結果、偶然のレントゲン検査などで発見されることが多くなります。
しかし、発症時期が遅いとはいえ、早期発見・早期治療が重要です。定期的にレントゲン検査やCT検査を受け、病状の進行を早期に把握するようにしましょう。

肺分画症の原因・症状

妊婦

肺分画症の原因はなんですか?

肺分画症の原因は、大部分が先天的なものです。胎児の発育過程で、肺の血管の形成が正常に行われないことが原因となります。
具体的には、通常肺動脈から供給されるはずの肺組織に、大動脈や腹部大動脈などの異常な血管から栄養が供給されることで別の肺が生じることがあります。
この異常な血管の形成は、遺伝的要因・母体の健康状態・妊娠中の薬物の摂取など、多岐にわたる要因が関与していると考えられていますが、明確な原因は明らかになっていません。

肺分画症の症状はどのようなものですか?

肺分画症の症状は、異常な血管の位置・大きさ・その影響を受ける肺組織の範囲によって異なります。初期段階では、特に症状が出ないことも多いです。
しかし、病状が進行すると、呼吸困難・息切れ・胸痛・喀血などの症状が現れることがあります。

肺分画症の経過について教えてください。

肺分画症は、軽度の場合や異常な血管が小さい場合は日常生活に大きな支障をきたすことなく、長期間安定した状態が続くことが多いです。
しかし、異常な血管が大きい場合や肺の大部分が影響を受ける場合は症状が進行することで肺炎や呼吸障害の原因となったり、心臓への負担が増大したりすることがあります。
このような場合、早期の治療が必要となります。また、レントゲン検査やCT検査を受けることで、病状の進行を早期に把握して適切な治療を受けることが重要です。

肺分画症の治療

女医

肺分画症の治療はどのようなものですか?

主な治療方法は、外科的手術による異常な肺組織の除去です。近年の医療技術の進歩により、手術は内視鏡を使用して胸を開かずに行う方法が主流となってきました。この内視鏡を使用した手術は、従来の胸を切って開く手術と比べて痛みが少なく、入院期間も短縮されるメリットがあります。
また、肺炎も同時に発症している場合には、抗生剤によって感染をコントロールしてから手術を行うことが推奨されることが多いです。ただし、肺分画症の治療は緊急性が高くない場合も多いため、時間的・精神的余裕のある時に手術をすればよいケースもあります。
そのため、治療のタイミングについては、主治医と相談をしましょう。

無症状でも治療が必要ですか?

肺分画症は、無症状であっても異常な血流が存在するため、将来的な症状の進行や合併症を予防するための治療が必要となることがあります。特に、異常な血管が大きい場合や肺の大部分が影響を受けている場合は、早期に治療を行った方がよいでしょう。
無症状であっても、定期的にレントゲン検査やCT検査を受けることで病状の変化や進行を早期に把握し、適切な治療を受けることが重要です。

手術は必要ですか?

肺分画症の治療において手術が必要となる場合は、症状が重度である場合・異常な血管が大きい場合・肺の機能が著しく低下している場合です。手術では、異常な血管を縛って固定したり、切除することで正常な血流を回復させることを目的とします。
症状が軽度である場合は、緊急性は高くはありませんが、予防の観点から手術を行った方がよいです。ただし、手術の方法などは、患者の状態・病院の設備・医師の経験によって異なるため、専門の医師と十分な相談を行うことが重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

肺分画症は、早期発見・早期治療が非常に重要な疾患です。症状が軽度であっても、定期的にレントゲン検査やCT検査を受けることで、病状の進行を把握できます。肺分画症の治療のための手術が怖いという方もいるかもしれません。
しかし、肺分画症の手術は痛みが少なく、入院期間も短いという特徴があります。そのため、肺分画症の治療を怖がる必要はありません。何かしらの症状を感じた場合や不安を感じる場合には、専門の医師に相談することをおすすめします。
健康を守るために、自分の体と向き合い、適切な治療を受けることが大切です。

編集部まとめ

医師たち
今回は肺分画症の原因・症状・治療法について解説しました。

肺分画症は、異常な血管が肺内に形成される疾患で、症状の程度や異常な血管の大きさによって治療方法が異なります。

軽度の症状の場合は経過観察で十分なこともありますが、重度の症状や大きな異常血管がある場合は手術が必要となることもあります。

ただし、手術といっても胸を切って開くような手術ではなく、内視鏡による手術は痛みも少ない手術なので過度に不安に思う必要はありません。

症状が軽くても、早期発見・早期治療が非常に重要です。健康のためにも、定期的な健康診断や医師の診察を受け、自身の体調をしっかりとチェックすることをおすすめします。

肺分画症について何か気になることや、不安なことがあれば呼吸器内科を受診し、専門の医師にご相談ください。

この記事の監修医師