「耳垢塞栓」という耳垢が詰まる病気はご存知ですか?耳掃除のポイントなど解説!
耳垢塞栓(じこうそくせん)とは、耳垢が詰まって耳の穴がふさがり音が聞き取りにくくなる症状です。
通常、耳垢は外耳道にある分泌腺から生じた分泌物にほこりや古くなった皮などが交じって生じます。
一般的に、耳垢は自然に外に出るようになっているため、あまり耳掃除は頻繁に行う必要はありません。
しかし、湿った耳垢がたまると耳垢塞栓を引き起こしやすくなるため注意しましょう。
そこで今回は、耳垢塞栓の原因や症状・治療方法などを解説し、耳掃除のポイントを絞って説明します。
耳垢塞栓の予防と発症した際の治療方法を理解して、日々の生活に役立てましょう。
監修医師:
矢富 正徳(医師)
保有免許・資格
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本耳鼻咽喉科学会認定指導医
日本睡眠学会認定睡眠専門医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
難病指定医
身体障害者福祉法第15条指定医
目次 -INDEX-
耳垢塞栓の原因や症状
耳垢塞栓とはどのような状態ですか?
耳垢というと耳からの排出物のようなイメージがありますが、耳の保護にも役立っている点が特徴です。耳垢は鼓膜を塵や汚れから守るだけでなく、皮膚を虫や細菌感染から保護する働きをし、外耳道(耳の穴)の表面を防御しています。
耳垢自体は疾患ではなく、通常は耳から自然に外に出ますが、耳垢が大量になると外耳道に詰まることがあります。これが、耳垢塞栓です。
原因を教えてください。
健康な方では、耳垢塞栓の頻度は30〜40歳では約2%であり、子供は外耳道が狭いため蓄積しやすく約5%です。幼児の外耳道(耳の穴)は成人に比べて狭く、代謝も活発です。そのため、耳垢がたまりやすい傾向があります。また、寝返りを打つ前は、通常は片側の耳を下にして寝ます。したがって、下側の耳は湿度が高く湿性耳垢がたまりやすくなるでしょう。
さらに、外耳炎・湿疹・耳真菌症などの原因にもなると考えられています。一方、60代では約10%、70歳以上では20から30%と年齢を重ねると発症しやすくなる点が特徴です。また、高齢者施設の80歳以上の方では50%を超えるとの報告もあり、高齢者の中ではこの問題が増えています。高齢者はもともと加齢による難聴がある上に、コミュニケーションの障害が生じやすいため、耳垢が聴力に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、近年では高齢者の認知機能にとって聴覚刺激が重要であることが明らかになっており、耳垢塞栓による聴力への悪影響も認知機能の低下に影響するでしょう。
症状を教えてください。
しかし、そのような状態で水泳や洗髪などして耳内に水が入ると、耳垢の固まりが水分を吸収して膨らみます。そのため、完全に耳がふさがり、急に症状が現れることがあるでしょう。まれに、喉の違和感や胃の不快感・吐き気などを感じる人もいます。
なお、耳垢は病気ではないため、耳垢の存在だけで体に影響することはほとんどありません。
耳垢塞栓の受診と治療
耳垢塞栓で受診する目安を教えてください。
どのような検査を行うのですか?
ここで異常が見られない場合、内耳の問題が考えられるでしょう。また、中耳炎の疑いがある場合には、鼻の中も確認します。さらに、外耳道の皮膚が細菌感染を起こして外耳炎になっている場合には、細菌培養検査を実施します。
耳鼻咽喉科ではどのような処置を行うのですか?
耳垢塞栓の予防や耳掃除のポイント
耳垢塞栓の予防方法を教えてください。
耳掃除のポイントを教えてください。
耳の内部には、気持ちの良い刺激を感じる神経があるので、耳掃除は心地よいことがあるでしょう。しかし、過度に行うと外耳道に傷をつけ、外耳炎を引き起こす可能性があります。また、子供の耳掃除を自宅で行う際には、耳垢が見える部分を湿らせた綿棒や耳かきを使用して注意深く取り除いてください。
手探りで綿棒を使用することは、逆に耳垢を奥に押し込んでしまう可能性があるため注意しましょう。自宅での適切なケアが難しい場合や耳垢がたまりやすい方には、2〜3か月ごとに耳鼻咽喉科で耳掃除してもらうことをおすすめします。
子どもの耳掃除の適切な頻度はどのくらいですか?
このような場合は、自宅で無理に取り除かず定期的に耳鼻咽喉科で耳垢を除去することをおすすめします。幼い子供は耳の穴も狭いため、耳掃除をすると逆に耳垢が奥に押し込まれるかもしれません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
普段から外耳道の状態を意識し、耳に違和感を覚えたときは専門の医師に相談しましょう。
編集部まとめ
耳垢塞栓は、耳垢が非常に増加し、塊となって外耳道を詰まらせる現象です。
耳垢は耳の保護に役立っており、鼓膜を塵や汚れから守るだけでなく、皮膚を細菌感染からも保護する働きをして外耳道(耳の穴)の表面を防御しています。
食事を摂ったり話をしたりする際に顎を動かすことで、乾燥耳垢は外耳道から自然に外に排出されるため、普段は特別に何かする必要はありません。
しかし、湿った耳垢は固まりやすく外耳道に溜まる可能性があります。
耳垢塞栓の予防には、定期的な耳掃除が必要です。耳の入り口周辺をそっと綿棒で拭く程度にして、耳の奥部分には触れないように心がけましょう。
万が一、耳垢塞栓にかかったときは、聞こえにくさや耳の閉塞感を覚えます。そのようなときは耳鼻咽喉科で治療を受けてください。
普段からこまめに耳掃除をし、耳垢塞栓にならないよう気を付けましょう。