「せん妄」は幻覚や妄想を引き起こす?認知症との違いやなりやすい人の特徴を解説!
本記事にたどり着いたほとんどの人が「せん妄ってどのような病気なの?」と疑問を抱いていることでしょう。実はせん妄を知らないと答えている人は約83%であるといわれています。
せん妄は意識障害の1つであり、高齢化とともに発症リスクが高まる病気です。
一体どのような症状がみられるのか、またせん妄を発症した家族とどのように接していけば良いのかについて詳しく解説していきます。
ほかにもせん妄の原因・発症しやすい人の特徴・診察・治療方法についてもお伝えしていきますので、最後までお付き合いください。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
せん妄の原因や症状
せん妄とはどのような病気ですか?
夕方から夜間にかけて発生する可能性が高く、大半は数日以内で改善するケースが多いです。しかし、昏睡状態に陥ったり死に至ったりする最悪の場合もあります。一言でせん妄といっても、症状は大きく3つに分類されています。
- 過活動型せん妄(運動活動性の量的増加・活動性の制御喪失・不穏・徘徊)
- 低活動型せん妄(活動量と行動速度の低下・会話の低下・無気力・ひきこもり)
- 混合型せん妄(過活動型と低活動型の症状が1日の中で混合している)
幻覚や妄想から錯乱状態に陥ると転倒でのケガや、治療で行っている点滴の自己抜去などさまざまなトラブルを引き起こすことも特徴です。
また、せん妄を発症している間の記憶がない患者も多く、家族を含めて大きな苦痛を味わうといったことも特徴の1つになります。認知症やうつ病と症状が似ている特徴をもった病気ともいわれています。
原因を教えてください。
- 薬剤の副作用
- ほかの病気による合併症
- 炎症
- ストレスや精神疾患
- 代謝異常
- 環境の急激な変化
- 睡眠障害
とくに、炎症などによって脳の奥にある海馬・扁桃体・帯状回などで引き起こされる大脳辺縁系の過剰な興奮と、中脳や視床などの活動低下によるものはせん妄を発症しやすいと考えられています。
どのような症状が出るのですか?
- 会話にまとまりがなくボーっとしている
- 夕方から夜にかけて興奮し、眠れなくなる
- 時間・日付・自分のいる場所・家族の名前などが曖昧になる
- 人が変わったように不機嫌でイライラしている
- 実在しない人や物が見えて怯えたり錯乱したりするような動作をする(幻視)
また、興奮状態や錯乱状態によって転倒やけがなどにつながることがあります。症状が治まった後に、暴れていた記憶がない場合もせん妄の症状である可能性が高いといえるでしょう。
せん妄が起こりやすいのはどのような人ですか?
また、年齢問わず風邪・便秘・脱水症状・睡眠不足・高熱・肺炎・腎不全など体の状態が著しく低下する状態や病気を発症すると、せん妄を引き起こす可能性が高いです。大きなストレスも症状が起こりやすいとされているため、注意しましょう。
認知症との違いを教えてください。
また認知症と比べると、発症が急性であり1日の中でコロコロと症状の変動がみられます。しかし、認知症でもせん妄を発症する場合があります。合併した際は、両者の見極めが非常に難しくなるといえるでしょう。
せん妄の診断や治療
せん妄が疑われる場合どのような検査を行うのですか?
- 血液検査
- 画像検査
- 髄液検査
- 頭部CT
- MRI
- 脳波検査
せん妄は血液検査や画像検査などで、特異的な異常が見られることはありません。あくまでもほかの病気が隠れていないかをチェックする意味でも身体検査が有効とされています。
どのように診断されるのですか?
治療方法を教えてください。
また手術や入院などで起こる可能性の高い薬剤性せん妄の場合には、せん妄の原因となっている可能性がある薬剤の使用を速やかに中止または減量しなければなりません。必要に応じて、他の安全性の高い薬剤に変更されることもあります。適切な対処が遅れてしまうと、症状が急激に悪化することもあるので注意が必要です。
せん妄の注意点や接し方
普段の生活での注意点を教えてください。
環境の急激な変化にも要注意が必要で、住み慣れた環境を大きく変えるのは避けるのが無難です。やむを得ない場合にはできるだけ「日常」を意識できるような工夫をしましょう。日常を意識できるおすすめの方法は以下の通りです。
- 昼夜の区別がつく環境を作る
- 愛用している日用品を持ち込む
- 生活のリズムを崩さないよう心がける
- 朝起きたら日光を浴びる
- 体調不良や体に違和感を覚えたらすぐさま病院へ受診する(早期発見)
さまざまな原因で発症するせん妄は、早期発見と早期対応が極めて重要となります。そのため、体調不良や体に違和感を覚えたら病院へ受診することを心がけましょう。
せん妄の症状がある人へ家族ができることを教えてください。
- 日中は部屋のカーテンを開けて部屋を明るくする
- 積極的に昼間の覚醒を図る
- 声かけを頻繁に行う
上記のように、可能な限り患者に付き添うことが家族にできる最大の治療方法となります。家族の付き添いで、せん妄の再出現リスクの低減が大いに期待できます。家族のコミュニケーションを増やすよう心がけましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
体に違和感を覚えたり、急に様子が変わったりした場合にはすみやかに病院へ受診してください。早期発見と早期対応が治療のカギとなります。家族のコミュニケーションを日頃から心がけていきましょう。
編集部まとめ
約83%に知られていないとされている「せん妄」について詳しく解説してきました。発症する原因はさまざまなため、しっかり検査を行う必要のある病気です。
急に興奮状態や錯乱状態が起こり、症状が治まった後に暴れていた記憶がない場合はせん妄である可能性が高いといえます。家族からの情報が適切な治療の重要なカギとなります。
病院へ受診した際には、症状を詳しく伝えられるよう心がけてください。