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「胆嚢がん」の原因や症状はご存じですか?ステージについても解説!【医師監修】

 公開日:2023/09/15
「胆嚢がん」の原因や症状はご存じですか?ステージについても解説!【医師監修】

胆嚢がんは、多くの人々にとって馴染みの薄い疾患かもしれません。しかしながら、その進行の速さと早期発見の難しさから、注目されるがんの一つです。

胆嚢は私たちの消化に欠かせない役割を果たす臓器であり、その異常は生活の質や健康に大きな影響を及ぼしかねません。

この記事では、胆嚢がんの原因・症状・治療方法・早期発見の重要性について詳しく解説していきます。

胆嚢がんに関する正確な知識を持つことで、自身や大切な人の健康を守る手助けとなることを願っています。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

胆嚢がんの原因や症状

診察

胆嚢は体のどのあたりにありますか?

胆嚢は、私たちの体の右上腹部に位置する小さな袋状の臓器として知られています。具体的には、肝臓の下部・肝臓の裏側に隠れるように存在しています。この臓器の主要な機能は、肝臓で生成される胆汁を一時的に保存・濃縮することです。
食事を摂取する際、胆嚢は収縮し、胆汁を十二指腸に放出します。この胆汁は、食物中の脂肪の消化を助ける役割を果たしています。胆嚢の存在により、食事のタイミングに合わせて適切な量の胆汁が供給され、効率的な消化が可能となるのです。

胆嚢がんの原因について教えてください。

胆嚢がんの発症の具体的な原因は、完全には明らかにされていないのが現状です。しかし、胆嚢がんのリスクを増加させるいくつかの要因やリスクファクターが指摘されています。
特に、胆石の存在は胆嚢がんのリスクを高める主要な要因です。胆嚢がんの患者さんの中で、約60%の方が胆石を持っているとの研究結果があります。胆石が胆嚢内に長期間存在することで、胆嚢の壁に炎症や刺激を引き起こし、その炎症や刺激が長期間続くことで胆嚢がんのリスクが高まるとされています。

どのような症状があるのですか?

胆嚢がんは、初期症状が少ない病気です。しかし、がんが進行するにつれて、いくつかの症状が現れることが知られています。例えば、黄疸・右上腹部の痛み・食欲の低下・体重の減少などが主な症状として挙げられます。特に黄疸は、胆汁の流れががんによって遮られることで発生する症状です。
また、痛みはがんが胆嚢の壁を侵すことや、周囲の組織や臓器に拡がることで生じることが多いとされています。これらの症状が現れた場合、速やかに医師の診察を受けることが重要です。

胆嚢がんのステージについて教えてください。

胆嚢がんの進行度は、ステージⅠからステージⅣまで分類されており、がんの大きさ・深さ・周囲の臓器やリンパ節への浸潤や転移の有無に基づいて評価されます。

  • ステージI: がん細胞が胆管の中に存在しており、深く進行していない状態
  • ステージII: がんは胆嚢の胆管壁の外側にわずかに広がっている状態
  • ステージIII: がんは胆嚢の周辺の組織や臓器に広がり、近くのリンパ節にも転移している可能性がある状態
  • ステージIV: がんが胆嚢から遠くの臓器やリンパ節に転移している状態

早いステージであればあるほど、がんが広がっていない状態です。そのため、早期発見・早期治療が治療によって治る確率を高めるためにも重要です。

胆嚢がんの検査や治療方法

レントゲンを確認

胆嚢がんが疑われる場合どのような検査が行われますか?

初期段階の胆嚢がん、特に局所進行が少ない場合、手術による切除が最も効果的な治療とされています。この手術では、がん細胞を含む胆嚢を完全に取り除くだけでなく、がんの拡大や転移のリスクを低減できます。
そのため、周辺の組織やリンパ節も一緒に切除されることが一般的です。しかし、胆嚢がんが進行して他の臓器に広がってしまった場合や、患者の健康状態が手術を許容しない場合は、他の治療方法を検討する必要があります。
その場合、以下の主な治療方法として以下の3つが挙げられます。

  • 放射線治療
  • 化学療法
  • 分子標的治療薬

放射線治療は、がん細胞を破壊するための放射線を照射する方法で、特に手術が困難な場合や再発した場合に有効です。また、化学療法は、がんの成長を抑制する薬物を使用する治療方法です。化学療法は進行がんや転移がんの治療に用いられます。
最近では、分子標的治療薬も胆嚢がんの治療に導入されており、特定のがん細胞の特性を標的として効果を発揮する新しい治療法として注目されています。治療の選択や方針は、医師・患者・家族が十分な情報共有を行い、患者の希望や生活の質を最優先に考慮しながら決定されることが最も重要です。
そのため、胆嚢がんの治療を行う場合には医師や家族ともコミュニケーションをしっかりと取るようにしましょう。

どのように診断されるのですか?

胆嚢がんの診断のため、下記のような検査が行われます。

  • 超音波検査・CT・MRIなどの画像診断
  • 細胞診検査
  • 組織診検査

まず、超音波検査・CT・MRIなどの画像診断を行い、胆嚢の異常や腫瘍の存在を確認します。しかし、これだけではがんであると確定することは困難です。そのため、さらに詳しい検査が必要となります。
細胞診はその一つで、胆管内視鏡という特殊なカメラを使用して、胆管や胆嚢の内部を直接観察する検査方法です。この際、疑わしい部位から細胞を採取し、その細胞ががん細胞であるかどうかの確認を行います。この方法は、非常に微細な部位からも細胞を採取できるため、高い精度での診断が期待されます。
さらに、組織診も行われることが多いです。これは、疑わしい部位から少量の組織を採取し、顕微鏡下でその組織の構造や細胞の形状を詳しく観察する方法です。組織診により、がんの種類・進行度・細胞の性質などをより詳しく調べられます。
これらの検査結果を総合的に評価し、医師は胆嚢がんの診断を下します。診断の際には、専門家の意見や最新の医療情報も参考にされることが多いです。

治療方法について教えてください。

初期の胆嚢がんであれば、手術による切除が第一選択です。手術では、胆嚢だけでなく、周囲の組織やリンパ節も同時に取り除くことが多いです。
進行が進んで手術が困難な場合や、再発した場合には、放射線治療化学療法が選択されることがあります。これらの治療は、がんの成長を遅らせるためや、症状を軽減するために行われます。
治療の選択や方針は、医師と患者が十分な情報共有を行いながら決定されることが重要です。

胆嚢がんの生存率や早期発見

鉗子を持つ手元

胆嚢がんの5年生存率を教えてください。

胆嚢がんの5年生存率は、がんのステージや進行度によって大きく異なります。各ステージにおける5年後生存率は下記のとおりです。

  • ステージⅠ:90%
  • ステージⅡ:65%
  • ステージⅢ:50%
  • ステージⅣ:10〜20%

初期の胆嚢がん、特に手術で完全に切除が可能な場合の5年生存率は比較的高く、60%以上とされています。しかし、進行が進んだ周囲の臓器への浸潤・転移が確認される場合の5年生存率は、10%〜20%程度と大幅に低下します。

胆嚢がんを早期発見する方法はありますか?

胆嚢がんの早期発見のためには、定期的な健康診断超音波検査を受けることが重要です。特に、胆石のリスクがある方や家族歴がある方は、定期的な検査が重要です。
超音波検査は身体への負担も軽く、胆嚢の形状・大きさ・胆石の有無・胆嚢の壁の肥厚などを確認できます。そのため、胆嚢がんの早期発見に有効です。また、不明な症状や異常を感じた場合は、速やかに医師の診察を受けることが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

胆嚢がんは、早期発見が難しいがんの一つとされていますが、早期に発見・治療することでより良い治療結果を期待できます。日常生活の中で、自身の体の変化や異常を感じた場合は、遠慮せず医師の診察を受けてください。
また、定期的な健康診断や検査を受けることで、がんのリスクを低減できます。健康を守るために、自分自身の体と向き合い、適切なケアを心がけてください。

編集部まとめ

カンファレンス
胆嚢がんは、体の右上腹部に位置する胆嚢という臓器に発生するがんです。胆石の存在が主要なリスクファクターとして知られており、胆嚢がんの進行は非常に速いとされています。

初期症状が少ないため、早期発見が難しいですが、超音波検査などの定期的な健康診断を受けることで早期に発見・治療も可能です。

治療方法は、がんのステージや患者の健康状態に応じて選択され、手術・放射線治療・化学療法などが考えられます。

胆嚢がんの5年生存率は、がんのステージによって異なり、早期のものは60%以上とされています。

そのため、健康を守るためには、自身の体の変化や異常を感じた場合は迅速に医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師