「臍炎」という新生児に発症するおへそが炎症を起こす病気について解説!
臍炎とは、おへそが炎症を起こす病気で、主に新生児がかかります。それほど一般的ではないので、初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。
あまり馴染みの無い症状ですが、悪化すると全身に影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。「臍炎かもしれない」と思ったら、早めの受診をおすすめします。
この記事では臍炎について、症状や治療法に加え、合併症の有無についても詳しくご紹介します。正しい知識を身につけて、早めの受診や治療につなげましょう。
おへそに痛みや赤みが見られる方や、お子様の発症に備えたい方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
臍炎(さいえん)の原因や症状
臍炎とはどのような病気ですか?
適切な治療を受ければ重症化せずに治ることがほとんどです。しかし、悪化すると炎症が体内に広がったり、細菌が全身に回ったりする可能性もあるので注意しましょう。
発症は新生児が主ですが、乳児期以降でも引っ掻き傷などが原因で発症することがあります。一方、大人が発症する場合の多くは尿膜管遺残症の合併症です。尿膜管遺残については後ほど詳しく解説します。
臍炎の原因を教えてください。
赤ちゃんが産まれてへその緒を切ると血行が途絶え、へその緒は乾燥し、やがて自然に外れます。もともとへその緒が付いていた穴は瘢痕組織と呼ばれる傷跡修復のための組織によって覆われ、修復されるのです。この修復が完了する前に細菌に感染してしまうと、傷口(おへそ)が膿んだり赤く腫れたりする臍炎が引き起こされます。
一方で、乳児期以降や大人になってから発症する臍炎は残った尿膜管に感染が起こることで発症するケースが多いです。尿膜管は膀胱とおへそを繋ぐ管で、胎児期に使われます。
出生・成長に伴って閉鎖されることがほとんどですが、まれに一部または全部が閉じずに残存する場合があります。これが尿膜管遺残です。残留した尿膜管は細菌感染を起こしやすいため、この病気を発症する大きな要因となります。
どのような症状が出るのですか?
- おへその周囲が赤く腫れる
- おへそや腹部の痛み
- ジクジクと湿る
- おへそから膿がでる
- 発熱
どの症状も細菌感染によって引き起こされるものです。発熱や強い腹痛がある場合は重症化している可能性があるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
似た症状に臍肉芽腫があります。おへそに赤い肉のかたまりのようなものができ、湿潤したり出血したりしますが、臍炎と違って痛みはありません。糸で縛る・硝酸銀で焼くなど、取り除くための治療が行われます。臍炎とは痛みや腫れの有無などで見分けるようにしましょう。
発症しやすい年齢層は?
一方で、尿膜管遺残症に合併して症状が現れるケースでは、乳児期以降や大人になってからのことも多いです。幼児期以降もおへその炎症を繰り返す・成人で臍炎を発症したなどの場合は注意が必要です。
臍炎(さいえん)の検査や治療
医療機関ではどのような検査が行われますか?
尿膜管遺残は4形態ありますが、中でも尿膜管洞と呼ばれる形態が最も頻度が高く、かつ臍炎を合併しやすい形態です。
治療方法を教えてください。
一方で、残った尿膜管が臍炎の原因となっている場合は、原因である尿膜管遺残症に対する治療が必要です。乳児期では成長に伴って尿膜管が自然に閉塞する可能性もあるため、経過観察となることもあります。
対して成人では、根治的な治療のために多くは手術が必要となります。この病気を発症したら、感染の重症化防止に加え尿膜管遺残症の早期発見のため、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
手術が行われることもあるのですか?
従来、尿膜管遺残の手術では下腹部を大きく切開する方法が一般的でした。おへそも一緒に切除するため術後の見た目の変化が大きいものでした。しかし、現在は腹腔鏡手術が多く選択されています。比較的若年での手術が多いという背景から、身体への手術痕を最小限に留めることが重視されるためです。
腹腔鏡による尿膜管遺残の手術は標準的な術式が確立されていないため、医療機関によって手順や傷跡の様相に若干の違いが生じます。どのような手法で行われるのかや術後の経過などを事前に確認しておくと安心です。
臍炎(さいえん)の再発や合併症
臍炎は繰り返し起こることがあるのですか?
尿膜管遺残症はまれに尿膜管癌に進行する場合もあるので注意が必要です。
合併症が起こることはありますか?
どちらも適切な治療で予後は良好となることがほとんどです。しかし、新生児は感染症に対する免疫が十分でないため、なるべく早く受診するようにしましょう。
また、ご紹介したように、臍炎を繰り返す場合や乳児期以降に発症した場合、尿膜管遺残症や尿膜管癌などが根本的な原因の可能性もあります。おへその炎症がひどい・腹部が広範囲に痛む・発熱があるなどの場合は、我慢せず受診しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
日頃から赤ちゃんのおへそを観察し、赤み・腫れ・膿などが見られたら医師に相談しましょう。また、出生後おへそが乾いて傷口が塞がるまでは、アルコール消毒などの産院で指示されたケアを継続しましょう。おへその炎症を予防する効果が期待できます。
一方で、臍炎を何度も繰り返す・乳児期以降や大人になってから発症したなどの場合は、他の疾患が隠れている可能性もあります。我慢せず、医師に相談してください。
編集部まとめ
臍炎は新生児期・乳児期以降ともに、早期に受診し適切な治療を受ければ予後良好な疾患です。
尿膜管遺残症を合併していたとしても、腹腔鏡手術を選択すれば傷口は目立ちにくく、社会復帰も早いのでご安心ください。
しかし、この病気について知識が無ければ「たいしたこと無いだろう」と見逃してしまい、重症化してしまったり尿膜管癌に進行してしまったりする可能性もあります。
正しい知識を身につけ、体調に違和感がある場合は医師に相談しましょう。特に新生児や乳幼児は自分で症状を伝えられないので、定期的におへその様子をチェックしてあげれば安心です。
普段あまり気に留めないおへそですが、大切な身体の一部です。適切なケアと早期の受診を心がけるようにしましょう。
参考文献