「リスフラン関節症」という外反母趾や扁平足により発症する病気はご存知ですか?
リスフラン関節症は、外反母趾や扁平足などによりリスフラン関節に負担がかかり炎症を起こす症状です。
基本的に整形靴による矯正治療で改善しますが、症状の改善がみられない場合や骨棘(異常な骨の増殖によりできるトゲ状の骨)により痛みが強い場合は手術が必要になります。
日頃から足に負担がかかりにくい靴・効果のあるインソール・サポーターを使用するなど、自分なりに予防することが大切です。
そこでこの記事では、リスフラン関節症の概要・症状・原因・治療法を解説します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
リスフラン関節症の原因や症状
リスフラン関節はどこにありますか?
足の骨を大きく分けると、指として見分けがつく「趾骨」・足内部に隠れている「中足骨」・それ以外のかかと部分の「足根骨」にわかれます。中足骨と足根骨の間の関節が、リスフラン関節です。
そのため、別名「足根中足関節」といい、見た目には足の甲の真ん中あたり(足の縦アーチの中心近く)に存在しています。5本の指を支えており、足の全体構造の中心的な部位で、体重の負荷により強い力を受ける点が特徴です。
例えば、扁平足や外反母趾になると足の縦アーチが下がるため、リスフラン関節が変形し痛みが発生します。
なお、リスフラン関節の「リスフラン」はナポレオンの軍医の名前です。当時の戦争で、足根中足関節の切断術を多くしたため、名前が付けられています。
リスフラン関節症とはどのような病気ですか?
体重をかけたり踏み返しをしたりすると痛みが生じ、そのまま放置すると足の甲に骨棘ができて正座が困難になります。また、リスフラン関節の上を神経が通っているため、神経痛やしびれの症状が出る人も多いです。
外反母趾により発症するケースが多く、症状がひどい場合は手術により患部のリスフラン関節を固定します。
リスフラン関節症の原因を教えてください。
通常、人は歩くときに足の親指に力を入れて地面を蹴りますが、外反母趾になると親指で蹴り出せません。そのため、リスフラン関節に過剰な力がかかり、炎症を起こします。
外傷やリウマチなど明確な原因がわからない場合は、外反母趾の確率が65%です。この場合、外反母趾よりもリスフラン関節のほうが痛みが強いため、痛みの原因がわかりにくいでしょう。なお、外反母趾とは足の親指が小指側に曲がり、くの字に変形する状態を指します。
特に女性はハイヒールや先が細い靴などを履くため、足の指が靴の先で詰まり外反母趾になることが多いです。
どのような症状が出るのですか?
加えて、リスフラン関節の上に神経があるため、しびれや麻痺を起こします。また、足の甲の骨に隆起ができることが特徴です。
長期間放置すると、骨の隆起に「骨棘」ができて、さらに強い痛みになります。骨棘ができると正座が困難になり、靴を履くだけで痛みが生じるでしょう。
リスフラン関節症になりやすいのはどのような人ですか?
また、扁平足の人もリスフラン関節に強い力がかかるため注意が必要です。そのほかにも、スポーツで無理な力がかかりリスフラン関節に痛みが生じる場合や、関節リウマチによりリスフラン関節が痛くなる場合もあります。
ただし、スポーツによるリスフラン関節の痛みは、リスフラン関節靭帯損傷やリスフラン関節捻挫の可能性が高いです。この場合、リスフラン関節症とは異なるため、整形外科を受診して適切な治療を受けてください。
リスフラン関節症の検査や治療
検査項目を教えてください。
また、足を地面に着けたときに、足の甲の足首に近い部分に痛みを感じる場合はリスフラン関節症の可能性が高いです。かかと荷重よりもつま先荷重にしたときに痛みが強くなります。
リスフラン関節症の疑いがある場合は、整形外科で適切な検査を受けましょう。
どのような治療が行われますか?
矯正治療に使用するインソールは、ドイツ式の分厚いオーダーメイドのインソールを用います。一般的な薄いインソールでは、効果が期待できません。
また、整形靴のベロ部分(甲が当たる部分)は、骨の隆起に合わせて削ります。足の甲が尖っていて痛みが強い場合は、分厚いインソールを交換できるサンダル型の整形靴を使用することが一般的です。
さらに骨の隆起が大きく、骨棘ができて靴やインソールによる治療で痛みが取れない場合は手術を行います。手術の方法は、骨棘の切除と関節固定が一般的です。
1cmほど小切開をして骨棘を切除、その後にスクリューと呼ばれるネジを使用して関節の柔軟性が失われない程度に固定します。
リスフラン関節症の治療期間を教えて下さい。
リスフラン関節症の手術は、症状によって違いがあります。例えば、足関節のブロック麻酔で行う場合は、手術時間30分・入院は3日〜2週間くらいが目安です。
手術翌日から整形靴を装着し、手術から最初の1ヶ月間は週に1回のペースで通院します。整形靴は、1ヶ月半でスニーカーなどに変更可能です。手術後3ヶ月以降は、3〜6ヶ月に1回の受診で6ヶ月から1年程度様子をみます。
リスフラン関節症の予防や注意点
リスフラン関節症を予防する方法はありますか?
また、リスフラン関節症は外反母趾を理由に発症することが多いため、外反母趾の予防も必須です。普段から自分の足を確認し、外反母趾予防を心がけてください。
日常生活で注意することはありますか?
また、扁平足や外反母趾の人は、リスフラン関節症になる可能性が高いです。そのため、足の負担を軽減できる靴・インソール・サポーターなどを使用すると良いでしょう。
外反母趾は手術が必要なくらい症状がひどくなっても、痛みを伴わない可能性があります。痛くないからといってそのまま放置すると、いつの間にかリスフラン関節症になり、最悪の場合手術になるため注意が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
整形靴を用いれば治療が可能ですが、骨棘により痛みがひどい場合や症状が改善されない場合は手術が必要になります。女性に多くみられる外反母趾の症状がある場合はかかりやすいため注意が必要です。
また、ハイヒールや先の尖った靴は足に負担がかかり、外反母趾やリスフラン関節症になりやすくなります。外反母趾に効果がある運動やインソール・サポーターなど、自分なりの予防法を見つけると良いでしょう。
日頃から自分の足の形状を確認し、異変を感じたら整形外科に相談してください。
編集部まとめ
リスフラン関節症の概要・症状・原因・治療法を解説しました。
リスフラン関節症は、外反母趾や扁平足などによりリスフラン関節に負担がかかり炎症を起こす症状です。症状がひどくなると骨棘ができて、強い痛みを伴います。
基本的に整形靴による矯正治療で対応できますが、骨棘ができるようなひどい症状の場合は手術が必要になります。
日頃から足に負担がかからない靴・インソール・サポーターなどを使用して、外反母趾予防を心がけましょう。
参考文献