「急性リンパ性白血病」の症状や原因・生存率はご存知ですか?医師が監修!
公開日:2023/07/03
急性リンパ性白血病(ALL)は、血液がんの一種です。この病気は主に小児にみられ成人ではまれで、発症率は1年間におよそ10万人に1人程度とされています。
急性リンパ性白血病の症状や治療方法について、詳しく解説していきましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
急性リンパ性白血病の症状
急性リンパ性白血病はどのような病気ですか?
急性リンパ性白血病(ALL)は、血液がんの一種です。
骨髄内には血液細胞の元となる造血幹細胞があり、これらの細胞は赤血球・血小板・白血球など、私たちの体に欠かせない血球を作り出します。赤血球は酸素を運ぶ役割を持ち、血小板は出血を止める働きをし、そして白血球は体を病原菌から守る免疫細胞です。白血球はリンパ球と骨髄球にわけられます。
急性リンパ性白血病では、造血幹細胞がリンパ球へと成長する過程で異常が起こり、細胞が成長を停止して白血病細胞または芽球と呼ばれる異常な細胞が増殖し始めるのです。これにより、正常な血液細胞が作られず、骨髄が白血病細胞で充満してしまいます。治療を行わないと、命を脅かす結果となりえるでしょう。
骨髄内には血液細胞の元となる造血幹細胞があり、これらの細胞は赤血球・血小板・白血球など、私たちの体に欠かせない血球を作り出します。赤血球は酸素を運ぶ役割を持ち、血小板は出血を止める働きをし、そして白血球は体を病原菌から守る免疫細胞です。白血球はリンパ球と骨髄球にわけられます。
急性リンパ性白血病では、造血幹細胞がリンパ球へと成長する過程で異常が起こり、細胞が成長を停止して白血病細胞または芽球と呼ばれる異常な細胞が増殖し始めるのです。これにより、正常な血液細胞が作られず、骨髄が白血病細胞で充満してしまいます。治療を行わないと、命を脅かす結果となりえるでしょう。
症状を教えてください。
急性リンパ性白血病では、骨髄中の血液細胞の生成が妨げられ、正常な血球が減少します。この結果白血球の減少により感染症状が現れ、細菌やウイルスに対する抵抗力が低下し、発熱や肺炎などの感染が起こりやすくなるのです。また、赤血球の減少により貧血が生じ、めまい・疲労感・息切れなどの症状が現れます。
さらに、血小板の減少によって鼻血・歯肉出血・皮下出血などが起こることもあるでしょう。白血病細胞が浸潤し、リンパ節・肝臓・脾臓が腫れることもあります。急性リンパ性白血病は、中枢神経にも侵入しやすいため、頭痛・吐き気・手足の麻痺などの症状も現れることがあるかもしれません。
さらに、血小板の減少によって鼻血・歯肉出血・皮下出血などが起こることもあるでしょう。白血病細胞が浸潤し、リンパ節・肝臓・脾臓が腫れることもあります。急性リンパ性白血病は、中枢神経にも侵入しやすいため、頭痛・吐き気・手足の麻痺などの症状も現れることがあるかもしれません。
発症の原因を教えてください。
健康な人でも急性リンパ性白血病(ALL)を発症することがあり、その原因は明確にはわかっていません。
小児のALLでは特定の感受性遺伝子が関与していることが知られていますが、実際に遺伝子変異を持つ子供がALLになる確率は低いため、遺伝的な検査は一般的に行われていません。環境要因としては、農薬・放射線の曝露・幼少期の感染症などが考えられています。
具体的な発症のメカニズムについてはまだ解明されていないです。
小児のALLでは特定の感受性遺伝子が関与していることが知られていますが、実際に遺伝子変異を持つ子供がALLになる確率は低いため、遺伝的な検査は一般的に行われていません。環境要因としては、農薬・放射線の曝露・幼少期の感染症などが考えられています。
具体的な発症のメカニズムについてはまだ解明されていないです。
どのような人がなりやすいのでしょうか?
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、全年齢層で発症する可能性がありますが、特に小児に多くみられます。
15歳未満の小児が白血病の75%を占めていて、最も頻度が高いのは2〜5歳の幼児です。成人では、45歳以上になると多少増加します。
15歳未満の小児が白血病の75%を占めていて、最も頻度が高いのは2〜5歳の幼児です。成人では、45歳以上になると多少増加します。
進行スピードは早いのでしょうか?
急性リンパ性白血病は進行が速く、症状が急に現れることが多いです。早期の診断と治療が重要です。
白血病細胞の増加により正常な血液細胞の生成が妨げられ、赤血球・白血球・血小板が減少します。その結果、貧血による息切れや動悸が起こることや、血小板不足により鼻血や歯ぐきの出血が生じることがあります。また、倦怠感や発熱などの症状も現れることがあるでしょう。
白血病細胞が臓器に侵入すると、関節の痛みや腫れたリンパ節が現れることがあり、中枢神経に侵入すると、頭痛や吐き気が起こることもあります。症状を少しでも感じたら速やかに医師に相談しましょう。
白血病細胞の増加により正常な血液細胞の生成が妨げられ、赤血球・白血球・血小板が減少します。その結果、貧血による息切れや動悸が起こることや、血小板不足により鼻血や歯ぐきの出血が生じることがあります。また、倦怠感や発熱などの症状も現れることがあるでしょう。
白血病細胞が臓器に侵入すると、関節の痛みや腫れたリンパ節が現れることがあり、中枢神経に侵入すると、頭痛や吐き気が起こることもあります。症状を少しでも感じたら速やかに医師に相談しましょう。
急性リンパ性白血病の治療方法
急性リンパ性白血病はどのような検査で診断されますか?
急性リンパ性白血病の疑いがある場合、身体の診察に加えて血液検査と骨髄検査が行われます。血液検査では、白血球の数が異常に高い場合や低い場合があり、赤血球と血小板の数が一般的に減少しているのです。
ただし、血液検査の結果だけでは診断が確定できないため、骨髄検査が必要になります。骨髄検査では、メイギムザ染色法と呼ばれる染色法を用いて細胞の形態を観察し、芽球などの幼い細胞から成熟した細胞まで細かく分類するのです。現在のWHO分類では、骨髄中の芽球の割合が20%以上の場合に急性白血病と診断されます。
さらにペルオキシダーゼ染色という方法を使って、陽性の芽球が3%未満ならば急性リンパ性白血病と診断され、3%以上ならば急性骨髄性白血病と診断されるでしょう。
急性リンパ性白血病では、フィラデルフィア染色体の有無が治療方法や予後に大きな影響を与えます。フィラデルフィア染色体は、9番染色体と22番染色体の間で転座が生じ、bcr-abl融合遺伝子が形成される異常な染色体です。この有無は染色体検査や遺伝子検査によって確認されます。治療方法や予後の見通しは以下のように大きく異なります。
ただし、血液検査の結果だけでは診断が確定できないため、骨髄検査が必要になります。骨髄検査では、メイギムザ染色法と呼ばれる染色法を用いて細胞の形態を観察し、芽球などの幼い細胞から成熟した細胞まで細かく分類するのです。現在のWHO分類では、骨髄中の芽球の割合が20%以上の場合に急性白血病と診断されます。
さらにペルオキシダーゼ染色という方法を使って、陽性の芽球が3%未満ならば急性リンパ性白血病と診断され、3%以上ならば急性骨髄性白血病と診断されるでしょう。
急性リンパ性白血病では、フィラデルフィア染色体の有無が治療方法や予後に大きな影響を与えます。フィラデルフィア染色体は、9番染色体と22番染色体の間で転座が生じ、bcr-abl融合遺伝子が形成される異常な染色体です。この有無は染色体検査や遺伝子検査によって確認されます。治療方法や予後の見通しは以下のように大きく異なります。
治療方法を教えてください。
急性リンパ性白血病の治療では、まず早急に入院し、化学療法と呼ばれる抗がん剤の組み合わせ治療を行います。この治療の目標は寛解と呼ばれる状態であり、骨髄検査や画像検査で白血病細胞がみられない状態を目指すのです。ただし寛解状態でも治療を中断すると再発のリスクが高まるため、地固め療法や維持療法といった追加の化学療法を繰り返し行い、根治を目指します。
寛解導入療法には、欧米の白血病臨床研究グループが推奨する治療プロトコル(hyper CVAD+MTX/AraC交代療法など)を使うのです。この治療では、アドリアマイシン・シクロフォスファミド・オンコビン・L-アスパラギナーゼ・メソトレキサート・シタラビン・ステロイド剤など、複数の抗がん剤を組み合わせて使用します。
もしフィラデルフィア染色体が存在する場合、ダサチニブやポナチニブといったチロシンキナーゼ阻害剤を併用して、bcr-ablの働きを抑えるのです。治療の後は地固め療法や維持療法が行われますが、フィラデルフィア染色体が存在する場合は引き続きチロシンキナーゼ阻害剤が使用されます。
寛解導入療法には、欧米の白血病臨床研究グループが推奨する治療プロトコル(hyper CVAD+MTX/AraC交代療法など)を使うのです。この治療では、アドリアマイシン・シクロフォスファミド・オンコビン・L-アスパラギナーゼ・メソトレキサート・シタラビン・ステロイド剤など、複数の抗がん剤を組み合わせて使用します。
もしフィラデルフィア染色体が存在する場合、ダサチニブやポナチニブといったチロシンキナーゼ阻害剤を併用して、bcr-ablの働きを抑えるのです。治療の後は地固め療法や維持療法が行われますが、フィラデルフィア染色体が存在する場合は引き続きチロシンキナーゼ阻害剤が使用されます。
治療期間を教えてください。
寛解導入療法は約3週間にわたり、薬の投与が行われます。投与スケジュールは病院によって異なりますが、寛解が得られた場合は、引き続き入院し地固め療法を行うでしょう。
地固め療法では、シクロホスファミド・ビンクリスチン・アントラサイクリン系抗がん剤・ステロイド剤などの多剤併用療法を数ヶ月間継続します。高齢者や合併症のある患者には個別に抗がん剤の調整を行うこともあるでしょう。
寛解が得られない場合は、救援療法として抗がん剤の種類を変更し、寛解を目指します。
地固め療法では、シクロホスファミド・ビンクリスチン・アントラサイクリン系抗がん剤・ステロイド剤などの多剤併用療法を数ヶ月間継続します。高齢者や合併症のある患者には個別に抗がん剤の調整を行うこともあるでしょう。
寛解が得られない場合は、救援療法として抗がん剤の種類を変更し、寛解を目指します。
急性リンパ性白血病は治るのでしょうか?
寛解後も治療を継続する必要があります。しかし、寛解状態では骨髄検査でも白血病細胞はみつからないため、「治った」と判断することはできません。治療の効果や検査結果などを総合的に考慮し、最も治癒率が高いとされる薬剤の量と期間で治療を行います。
治療が終了しても、白血病細胞が残っている場合には再発が起こります。再発は治療終了後2年以内に多くみられますが、治療終了後2年以上経過し、症状がなく血液検査でも異常がない場合は治癒した可能性が高いと考えられるでしょう。さらに、治療終了後4年以上経過し問題がなければ、一般的には治癒とみなされます。
ただし、完全な再発のない確定的な時期はまだわかっていません。したがって、「治癒率」という言葉を厳密に使用することはできず、「長期生存率」という言葉を使用して表現されます。実際には治療終了後4年経過して再発がない場合、その後の再発リスクは1%以下とされ、治癒したとみなされるでしょう。
治療が終了しても、白血病細胞が残っている場合には再発が起こります。再発は治療終了後2年以内に多くみられますが、治療終了後2年以上経過し、症状がなく血液検査でも異常がない場合は治癒した可能性が高いと考えられるでしょう。さらに、治療終了後4年以上経過し問題がなければ、一般的には治癒とみなされます。
ただし、完全な再発のない確定的な時期はまだわかっていません。したがって、「治癒率」という言葉を厳密に使用することはできず、「長期生存率」という言葉を使用して表現されます。実際には治療終了後4年経過して再発がない場合、その後の再発リスクは1%以下とされ、治癒したとみなされるでしょう。
急性リンパ性白血病の生存率と再発
急性リンパ性白血病の生存率を教えてください。
急性リンパ性白血病の長期生存率は約80%です。その20%の死亡例のほとんどは白血病の再発に関連していますが、化学療法による合併症による死亡率も2-3%あります(造血幹細胞移植を除く)。ただし、感染症やその他の合併症を避けるために抗がん剤治療を弱めすぎると、白血病の治癒率が低下する可能性があります。
白血病の長期生存率は近年で向上していますが、この進歩は輸血技術の向上や抗生物質による感染対策などの補助治療の発展によるものです。これにより、より強力な治療が可能となりました。最終的に、良好な健康状態で治癒する確率を高めるためには、一定の強度で治療を行うことが必要です。
白血病の長期生存率は近年で向上していますが、この進歩は輸血技術の向上や抗生物質による感染対策などの補助治療の発展によるものです。これにより、より強力な治療が可能となりました。最終的に、良好な健康状態で治癒する確率を高めるためには、一定の強度で治療を行うことが必要です。
急性リンパ性白血病は再発しますか?
治療終了後の初期段階では、通常1〜2カ月に1回の血液検査が行われます。この検査によって、症状が現れる前に異常な数値が検出されることが多いです。
症状が現れる場合、一般的な症状には疲れやすさ・止血の困難さ・抵抗力の低下による感染症の治癒困難さなどがあります。また白血病細胞は髄液に再発することもあり、頭痛・吐き気・複視などの症状が現れるでしょう。さらに白血病が塊を作り、しこりを形成することもあり、男性の場合は睾丸(精巣)が腫れて大きくなることもあります。
ただし、治療結果には影響しないため、白血病の早期診断は最終的な結果に影響しません。再発時も同様で、上記の症状が現れた場合でも、緊急で受診する必要はないでしょう。
症状が現れる場合、一般的な症状には疲れやすさ・止血の困難さ・抵抗力の低下による感染症の治癒困難さなどがあります。また白血病細胞は髄液に再発することもあり、頭痛・吐き気・複視などの症状が現れるでしょう。さらに白血病が塊を作り、しこりを形成することもあり、男性の場合は睾丸(精巣)が腫れて大きくなることもあります。
ただし、治療結果には影響しないため、白血病の早期診断は最終的な結果に影響しません。再発時も同様で、上記の症状が現れた場合でも、緊急で受診する必要はないでしょう。
治療しないとどうなるのでしょうか?
急性リンパ性白血病(ALL)は、急速に進行する病状であり、治療を行わないと感染や出血によって数ヶ月で命を失う可能性があります。
ALLは、年齢・診断時の白血球数・寛解までの期間・染色体異常の有無などによって治癒のしやすさが異なります。
ALLは、年齢・診断時の白血球数・寛解までの期間・染色体異常の有無などによって治癒のしやすさが異なります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
白血病の治癒率に最も影響を与える要素は、白血病細胞自体の性質です。また、不十分な治療では治癒率が低下します。したがって治癒率を向上させるためには、白血病細胞の特性を正確に把握し、それに応じた適切な治療を徹底することが非常に重要でしょう。
白血病の子供の病状を振り返ると、診断される前から症状があったケースが多いです。しかし、白血病の最初の症状は一般的な病気(風邪など)と類似しており、だるさ・体調不良・軽い痛みなどが主な症状になります。
実際にこのような症状を示す子供のほとんどは白血病ではなく、他の病気であることがほとんどです。しかし、早期に医師に相談し、進行が進まないように気を付けましょう。
白血病の子供の病状を振り返ると、診断される前から症状があったケースが多いです。しかし、白血病の最初の症状は一般的な病気(風邪など)と類似しており、だるさ・体調不良・軽い痛みなどが主な症状になります。
実際にこのような症状を示す子供のほとんどは白血病ではなく、他の病気であることがほとんどです。しかし、早期に医師に相談し、進行が進まないように気を付けましょう。
編集部まとめ
急性リンパ性白血病(ALL)は、血液がんの一種です。この病気は主に小児にみられ、成人ではまれで、発症率は1年間におおよそ10万人に1人程度とされています。
しかし、症状が少しでもみられた場合は、病院へ受診し健康を最優先に考えましょう。早期の診断と適切な治療は治癒率を高めるために重要です。
病院は専門知識と経験豊富なスタッフが揃っており、最善のケアを提供します。未来のために、病院への受診を検討しましょう。
参考文献