目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「リステリア症」という食中毒はご存知ですか?原因や感染経路について解説!

「リステリア症」という食中毒はご存知ですか?原因や感染経路について解説!

 公開日:2023/07/02
「リステリア症」という食中毒はご存知ですか?原因や感染経路について解説!

リステリア症は、リステリアモノサイトゲネスという細菌によって引き起こされる食中毒の一種です。

この細菌は特別なものではなく、土壌・水・植物・動物の糞便などさまざまな環境に存在しています。

多くの場合、リステリア症は、感染した食品の摂取によって起こることが多いといわれています。

同じようなイメージを持つ一般的な食中毒との違いは、重症化リスクの有無です。リステリア症は、重症化する可能性が他の食中毒に比べて高いという報告があります。

今回は、重症化リスクを減らすために、知っておくべきリステリア症についての詳しい情報をご紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

リステリア症の原因や症状

食べ物

リステリア症とはどのような病気ですか?

リステリア症は、リステリアモノサイトゲネスという細菌によって引き起こされる食中毒です。リステリア症の症状は、一般的な食中毒と似ています。
しかし、そのまま放っておいたり感染が進行したまま対処しなかったりすると、重篤な症状を引き起こすことがあります。
普段の症状は一般的な食中毒と同じ、発熱・筋肉痛・関節痛・頭痛・嘔吐・下痢などです。感染が進行してしまうと、中枢神経系に影響を及ぼす可能性があり、頭痛や痙攣などの症状や意識障害が発生します。
リステリア症は、免疫力の低下している妊婦や高齢者にとって危険な感染症です。特に妊娠中に感染すると、胎児が流産したり、重篤な合併症を患ったりする可能性があります。

リステリア症の原因を教えてください。

リステリア菌は、感染した動物や食品から人へと移ることがあります。一般的な感染経路は、感染した食品を摂取することです。
夏の暑い時期は冷蔵庫で食品を冷やすことで対処できると思いがちですが、リステリア菌は低温でも増殖できるため、生の食品だけでなく冷蔵庫で保存された食品であっても感染源となることがあります。
特に、未加熱の肉や魚・生乳製品・未加熱の加工肉製品などが感染リスクが高いとされています。

リステリア症の感染経路は?

リステリア症の感染経路は、大きく3つが考えられます。
1つめは、摂取した食品から直接感染する場合です。リステリア菌は、感染した食品を摂取することによって発症します。
2つめは、妊婦から胎児への感染です。妊娠中の女性がリステリア菌に感染すると、胎児にまでリステリア菌が広がることが考えられます。
妊娠中の女性が感染したことによるリスクは大変大きいので、特に注意が必要です。
3つめは接触による感染です。リステリア菌は、人が生活している環境の中で存在しています。
そのため、感染したものの表面に触れると、触れた人がそのまま感染してしまう可能性があります。特に、感染した動物との直接的な接触は、リスクが高いです。
また、リステリア菌は低温に強く低温の環境でも増殖が可能なので、冷蔵庫や冷凍庫内であっても生存できます。このことは十分に注意が必要です。

どのような症状がありますか?

リステリア症の症状はほぼ一般的な食中毒と同じです。発熱は人によっては、38度以上の高熱が出る場合があるでしょう。
発熱に伴い全身の筋肉や関節の痛みを感じたり、強い頭痛や頭のだるさを感じたりします。人によって起きるのは発疹です。体中にできる人もいれば、一部のみの人もいます。
他にも消化器の症状として、吐き気や嘔吐が現れる場合もあるでしょう。一般的には、リステリア症に感染した場合でも軽度の症状が維持される場合が多いです。
しかし、妊婦や高齢者のような免疫力が低下している人の場合は重篤な合併症や症状が進行して重篤化する可能性があります。

リステリア症のタイプを教えてください。

リステリア症には、大きく2つのタイプがあります。
ひとつは非侵襲的病態で、もうひとつが侵襲的病態です。
非侵襲性リステリア症は、発熱性のリステリア菌による胃腸炎です。
主に健康な人が、何らかの理由で発症した場合はこのタイプが多いと考えられています。軽度の症状である下痢・発熱・頭痛・筋肉痛などが確認できます。
リステリア菌を含む食品を大量に摂取した時に発症し、潜伏期間は数日です。一方、浸潤性リステリア症は、通常のリステリア症のさらに重篤な病態です。
妊婦や高齢者といった、ある特定の条件をもつ人が発症しやすいといわれています。このタイプの病態は、重篤な症状になりやすく、高い致死率を特徴とします。
潜伏期間も1週間から2週間と長いのも特徴です。

リステリア症の診断と治療

薬

リステリア症はどのように診断されますか?

リステリア症であるかの判断は、現在の症状やこれまで発症した病歴など総合的な情報で行います。最初に一般的に行われているレベルの身体検査からです。
リステリア症は身体検査では判断できませんが、他の病気の可能性を極力除外するために行われます。次に血液検査で、リステリアモノサイトゲネスのバクテリアに対する抗体の有無を確認します。
症状が出ている場合は、直接リステリアモノサイトゲネスを検出するために組織サンプルで調べることを優先して行うことが必要です。
これらの総合判断でリステリア症かどうかを断定します。

治療方法を教えてください。

リステリア症の治療は、抗生物質の投与で行います。どの抗生物質を使うかは医師の判断によりますが、アンピシリンやシフトラジンが一般的です。
これらの抗生物質は、リステリア症の症状をやわらげ、感染の進行を止めることが期待できます。次に行うのが、現在の症状に対する対応です。
発熱している場合は解熱剤を投与し、痛みがある場合は鎮痛剤で軽減します。吐き気や下痢に対しては、脱水症状になる可能性がありますので、その対策を行います。
さらに、考慮すべきなのは、リステリア症によって髄膜炎などの合併症を発症する可能性です。それらに対しては、追加で抗生物質を投与するなどの治療を行います。

リステリア症にかかりやすい人と予防方法

サラダを食べる女性

リステリア症にかかりやすいのはどのような人ですか?

リステリア症にかかりやすいのは、さまざまな理由で免疫機能が低下している人です。例えば、妊娠中の女性は免疫系が一部抑制されています。
そのためかかりやすいといえるでしょう。また、リステリア症を発症した場合は、合併症や胎児への感染リスクが考えられます。高齢者も対象です。
一般的に、高齢者は免疫機能が低下していますので、注意が必要です。現在、なんらかの病気にかかっていて免疫不全の状態にある人は、感染リスクが高まります。
糖尿病・腎臓病・肝臓病といった免疫機能が低下している可能性のある病気を持っている人は、リステリア症に感染しやすくなります。

リステリア症を予防する方法はありますか?

リステリア症は、食中毒の一種ですから、まずは食品に対して適切な取り扱いをすることが大切です。
感染リスクの高い生肉や魚介類を調理する場合は、十分に火を通すようにします。ソーセージなどの加工肉も同様です。
生のままで食べる野菜やくだものは、食べる前にしっかりと洗うことを心がけます。また、まな板などの調理器具も考慮すべきものです。
さらに、食品の保存をする場合は、それぞれの食品に合った温度と場所で保存します。冷蔵や冷凍保存をする場合は、冷蔵庫などの温度を適切に保つ工夫ができます。
リステリアモノサイトゲネスは低温でも増殖できる菌です。食品を冷蔵庫・冷凍庫で適切に保管することで、菌の成長を抑制はできます。
しかし、なくなるわけではありませんので、注意しましょう。

気を付けたほうが良い食品はありますか?

最も気をつけた方が良い食品は、生モノです。生肉・生魚・生野菜は、それぞれリステリアモノサイトゲネスが存在している可能性があります。
肉では特に鶏肉と牛肉、魚では貝類は注意が必要な食品です。加工肉は大丈夫と思いがちですが、生ハムやソーセージのように通常冷蔵庫で保存するものについては注意する必要があります。
また、加熱をしていない生乳製品も同様です。未加熱のミルクやカマンベールのような柔らかいチーズには、菌が含まれている可能性があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

リステリア症は食中毒のひとつです。まずは、通常の食中毒対策と同じように生の食品を常に丁寧に洗って食べることや、できるだけ火を通すことを心がけるだけで感染リスクは低減します。
特に合併症を心配する方や妊娠中の方は気をつけましょう。

編集部まとめ

カルテ記入
食中毒は免疫力の有無で感染リスクが大きく変わります。

常日頃から適度な運動とバランスの良い食事を心がけることで免疫力の維持に努めることが大切です。

また、睡眠時間をしっかりと取ったり、ストレスを緩和したりする努力をすることも有効です。それでも何か気になる症状があれば、すぐにかかりつけ医に相談してください。

この記事の監修医師