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「膵石症」になりやすい人や症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/07/05
「膵石症」になりやすい人や症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

日々を健康に過ごすためには体のそれぞれの機能が正常に稼働している必要があります。

特に臓器はそれぞれが重要な役割持っているので全てが揃って問題なく動くことが望まれます。

膵臓は、体内の重要なホルモンを作り出す場所として重要な役割を持つ臓器です。膵石症は、膵臓内に石のような塊ができる病気です。

膵石症になると、膵臓の機能を大きく低下させる可能性があります。

重要な臓器を守るためにも、まず膵石症についてしっかりと理解しましょう。ここでは、膵石症の症状・原因・治療方法について詳しく説明します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

膵石症の原因や症状

考える人

膵石症とはどのような病気ですか?

膵臓内に膵石という石のような塊ができるのが膵石症です。膵臓は、体が活動するために必要な消化酵素やインスリンといったホルモンを生産します。その過程で臓器に溜まっていく消化酵素やミネラルの堆積によって作られるのが膵石です。 膵臓内で堆積されたものはカルシウムやビリルビンなどで、時間が経つと固くなり石化してしまいます。
膵臓内の膵石によって起こるのは、膵管・胆管を詰まらせ、膵液・胆汁の流れを悪くさせる症状です。その結果、炎症や損傷の原因となる可能性があります。特に膵管を閉塞して起こる炎症を膵炎と呼びます。

膵石症の原因は?

膵石症の原因はいくつか考えられます。まず1つめが過剰なアルコール摂取です。長期間にわたりアルコールの摂取を過剰に行うと、膵臓が大きなダメージを受けます。これは、アルコールが膵液の排出を妨げる働きをするからです。それにより、消化酵素が膵臓から排出されず膵石となります。2つめが胆石症によるものです。 胆石は胆嚢内・胆管内にできた石です。胆石が胆管を閉ざし、胆汁だけでなく膵液の排出も妨げることが考えられます。
3つめが高脂肪な食物の摂取です。高脂肪な食物は分解するために膵液が必要になります。その結果、膵液の分泌を増加させてしまうのです。この状態が長期化すると、膵臓の負担が増え、膵石の形成を促します。最後に遺伝的な要因もあると考えられています。遺伝子の変異によって膵液の排出異常を起こしたり、石の形成が促されたりする場合もあるでしょう。

どのような症状がありますか?

膵石症の症状は、できてしまった膵石の場所・大きさ・炎症の程度によって異なってきます。膵石が膵管を閉塞してしまうと、持続的な腹痛が生じることがあります。特に痛みを感じるのは、上腹部や背中です。また、吐き気と嘔吐も起きることが多いです。多くの膵石症の患者が、吐き気や嘔吐の症状を訴えている報告がされています。
この場合の多くは、膵炎が進行している場合にみられます。これによって引き起こるのが、食欲不振と体重減少です。膵液の適切な分泌や消化酵素の働きが妨げられている状態が続き、結果としてうまく食物を消化できず、栄養の吸収も不十分になります。さらに膵臓の消化酵素の生産が妨げられることで脂肪の消化ができなくなります。また、インスリンの生産が妨げられることで糖尿病の発症を促進する可能性もあるでしょう。

膵石症になりやすいのはどのような人ですか?

膵石症になりやすいのは、飲食の不摂生を長期にわたり行っている場合が考えられます。長期間にわたり過剰なアルコール摂取を行うと、直接的に膵臓にダメージを与えるため膵石症のリスクを増加させる可能性があります。同様に長期的な高脂肪食の摂取も、膵臓を刺激してしまうことで膵液の組成や排出に影響を与えるでしょう。
また、遺伝的な要因もある可能性があります。膵液の排出を妨げる原因となる膵疾患です。さらに、すでに胆石症を患っている方は、胆汁の排出とともに膵液の排出にも影響を与えてしまうので注意が必要です。胆石症は膵石症のリスク因子のひとつとされており、胆石が胆管を閉塞し胆汁の流れが妨げられると膵液の排出も妨げられ、膵石の形成が促進される可能性があります。

膵石症の検査や治療方法

指標

どのような検査が行われますか?

血液検査において、血清アミラーゼやリパーゼのような特定の酵素やホルモンのレベルを測定することで、膵石症の可能性を見つけ出すことがあります。大きい石であれば、超音波検査も有効です。超音波を使った膵臓の画像を解析すると、膵臓内の異常だけでなく膵石の存在を確認できる可能性があります。
小さな膵石も合わせて検出したい場合は、CTスキャンやMRIを使います。膵石の存在・大きさ・位置を確認するのに有効なのはCTスキャンです。 MRIは、磁場と無線波を使って膵臓の様子を確認し膵石を見つけ出します。内視鏡を使う場合は、膵臓に音波を送り高解像度の画像を撮影したり、膵管に造影剤を注入してX線で撮影したりします。

治療方法を教えてください。

膵石症は症状によっていくつかの治療方法が確立されています。膵石症が原因で消化酵素の分泌が十分に行われていない場合に行われるのは経口酵素補充療法です。消化酵素の錠剤やカプセルを食事と一緒に摂取して、食物の消化と栄養吸収を助けます。急激な痛みがある場合は、まず痛みを和らげる処理をします。鎮痛薬や抗炎症薬の処方・神経ブロック・神経刺激療法などです。
膵液の排出がすでにうまくいっていない場合には、内視鏡を使ってバルーン拡張術を行ったり、ステント挿入を行ったりして、膵管の通路確保を行います。膵石が原因でインスリン分泌に障害が出ている場合は、糖尿病を引き起こす可能性が高いので、血糖管理をします。食事療法・運動・血糖降下薬の投与・インスリンの投与などです。症状が重篤になると、外科的処理を検討することになります。

手術が行われるケースはありますか?

症状が重篤で早急な改善が望まれる場合は、外科手術が行われることがあります。これは、他の治療法で効果が出ず重篤化しているので、同じ治療を継続しても効果が得られないと判断した場合になります。
症状により処置の仕方は異なりますが、膵臓の一部を切除したり、ルートを確保して膵液の排出を改善したりといった手術です。

膵石症の予防と注意点

食事

膵石症を予防する方法はありますか?

健康的な生活習慣を実行することが一番ですが、特に注意すべきはアルコール摂取です。過度のアルコール摂取は膵臓に大きな負担を与えます。節度を持って行うことが大切です。
食事に関しては、高脂肪なものや高カロリーの食事は膵臓に負担をかけるため、バランスの取れた食事を心掛けます。このような生活習慣の改善を行うことで、適切な体重を維持できます。過体重や肥満には、膵臓に大きな負担をかける可能性があるからです。バランスの取れた食事と適度な運動を組み合わせて膵臓への負担を減らしましょう。

食生活の注意点はありますか?

バランスの良い食事を摂ることが最も重要なことです。しかし特に高脂肪の食事は、膵臓に負担をかける可能性がありますので、低脂肪食事を心掛けましょう。揚げ物や加工食品などに含まれる飽和脂肪やトランス脂肪酸はある程度制限をする方が良いといわれています。その代わりの脂肪源としておすすめなのは、魚・オリーブオイル・ナッツ・種子などです。
逆に高繊維食品は多く摂るようにします。野菜・果物・全粒穀物・豆類などは、膵臓の働きをサポートしてくれます。ただ、必要な栄養素だからといって過度のタンパク質摂取は逆に膵臓に負担をかけるため注意してください。総合的にみると、あまり気負って食べるものを選定するのではなく、バランスのよい食事を心がけることです。

日常生活での注意点を教えてください。

食事の回数や量の調整は膵臓の負担には大きな影響があります。一度に大量の食事を摂ることで過度の食べ過ぎにならないようにしましょう。
代わりに、少量の食事を頻繁に摂ると膵臓への負担は減らせます。また、十分な水分を摂ることも重要です。水分の摂取によって、膵液の正常な分泌を促します。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

膵石症は、膵臓に負担をかけることで、膵臓の働きに異常が発生し起こります。常日頃から健康的な生活習慣を維持するように心がけましょう。健康的な生活習慣を維持することで膵臓が健全な状態で活動し、ストレスや負担が低減されます。

編集部まとめ

女性
膵臓は人が持つ臓器の中でも健康な体を維持するために重要な役割を担っています。

日頃から大きな負担をかけてしまう臓器だからこそ、日々の生活の中で異常を感じた場合はかかりつけ医に早めに相談するようにしましょう。

この記事の監修医師