「急性アルコール中毒」になる飲酒量・症状・対処法はご存知ですか?医師が監修!
成人になりお酒を飲む機会も増えることでしょう。それによって過度に飲みすぎてしまうこともあるかもしれません。
急性アルコール中毒は、一過性の過剰なアルコール摂取によって引き起こされる状態です。
最悪の場合死に至ることもあり、非常に危険な症状とされています。
急性アルコール中毒の原因について、症状・治療・予防も解説していきます。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
急性アルコール中毒の原因とは
急性アルコール中毒の原因を教えてください。
急性アルコール中毒は、短時間に大量のアルコールを摂取することで血液を通じて脳に到達し、神経細胞を麻痺させる中毒症状です。
症状には吐き気・嘔吐・酩酊感・歩行困難などがあり、軽度から重度のものまで様々です。一部では昏睡や呼吸抑制、さらには呼吸停止など、命にかかわる重篤な状態に至ることもあります。
急性アルコール中毒になるまでの時間と飲酒量の目安は?
アルコールの吸収や代謝速度は個人差がありますが、アルコールの効果が現れるまでには約10〜30分ほどかかることが一般的です。急性アルコール中毒の症状が現れる飲酒量は個人によって異なりますが、一般的には血中アルコール濃度(BAC)が0.3〜0.4%以上になると中毒症状が現れるといわれています。
アルコールの摂取速度や体格・体重・性別・飲酒経験などがBACに影響を与えます。一般的には、男性で一度に純アルコールで20〜40g程度(ビール約1〜2杯・日本酒約2合・ワイン約2〜4杯)を摂取すると、中毒症状が現れる可能性が高くなります。
急性アルコール中毒になるリスクを高める要因は何ですか?
女性は男性に比べてアルコールを代謝する能力が低く、同じ量のアルコールを摂取した場合に血中アルコール濃度が高くなりやすいため、中毒症状が現れやすいのです。疲労・睡眠不足・病気などの体調不良の状態では、アルコールの影響を受けやすくなります。
これらの要因は個人の体質や状況によって異なりますが、アルコールの摂取に際しては適切な量と状況を把握し、リスクを最小限に抑えるために注意することが重要です。
急性アルコール中毒の症状と治療
急性アルコール中毒の症状にはどのようなものがありますか?
- 酩酊(めいてい):高揚感・陽気さ・言動の不適切さなどの典型的なアルコールの影響下にある状態
- 吐き気・嘔吐:アルコールの摂取量や個人の感受性によって引き起こされることがある
- 昏睡(こんすい):意識レベルが低下し、眠り込んでしまう状態
- 呼吸抑制:呼吸が浅くなったり、停止したりする
- 循環器症状:脈拍の速さ・不規則さ・血圧の低下
- 体温調節障害:高い体温や低い体温、発汗の異常
- 痙攣(けいれん):筋肉の収縮が起こり、けいれんやひきつけを引き起こす
- 意識障害:意識の混乱・記憶喪失・幻覚などの症状が現れる
急性アルコール中毒の症状は、個人のアルコール感受性・摂取量・体調などによって異なる場合があります。重度の中毒症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があるでしょう。
急性アルコール中毒の治療法は?
- 呼吸と循環のサポート:呼吸困難や循環器症状を管理するために、酸素供給や必要に応じて人工呼吸や点滴などを行う
- 毒性物質の除去:胃洗浄や吸引を行い、未吸収のアルコールを取り除く
- 対症療法:吐き気や嘔吐を抑えるために抗吐気薬が使用されることがあり、痙攣を抑制するための抗痙攣薬も必要
- サポートとモニタリング:患者の状態を定期的にモニタリングし、必要に応じて入院治療を行う
重度の急性アルコール中毒では、一般的には医療専門家や救急医療チームによる治療が必要です。治療の具体的なアプローチは、個々の症状や状態に基づいて判断されます。
自己判断せず、早めに医療機関に受診することが重要です。
症状の重さによる治療法の違いを教えてください。
以下が一般的なケースごとの治療法の違いです。
- 軽度の中毒症状
- 中等度の中毒症状
- 重度の中毒症状
軽度の中毒症状では、呼吸や循環に大きな異常がなく、意識も比較的明瞭な場合は安静にして経過観察することが重要です。必要に応じて対症療法(吐き気や嘔吐の抑制など)が行われる場合もあります。
また、中等度の中毒症状で呼吸や循環に異常があり意識障害(酩酊状態)がみられる場合は、呼吸補助・酸素供給・点滴などの支持的な治療が重要です。抗痙攣薬の使用や、点滴補給による中毒の解毒を促すことも考慮されます。
最後に重度の中毒症状は呼吸や循環が重篤な影響を受け、意識障害が深刻な場合は緊急治療が必要です。人工呼吸や循環支持(心肺蘇生)、中毒物質の除去(胃洗浄や吸引)などの措置が取られ、抗痙攣薬や他の支持的治療も行われる場合があります。
重度の中毒症状では、専門的な医療機関や救急医療チームによる即時の治療が必要です。症状の重さに関わらず、早期の適切な医療専門家の評価と治療を受けましょう。
急性アルコール中毒の治療にはどのくらいの時間がかかりますか?
一般的には4〜6時間で回復する場合が多いですが、重篤な場合は入院治療が必要です。
急性アルコール中毒の予防と対処法
過剰飲酒による急性アルコール中毒の予防方法はありますか?
飲酒時には食事を摂ることも予防に効果的です。食事をすることでアルコールの吸収が緩やかになり、血中アルコール濃度の上昇を抑えます。
また、自身の飲酒状況を把握し、リスクを理解することも重要です。自己管理や節度を心掛け、飲酒量や頻度をコントロールすることが求められます。飲酒後には休息と回復を大切にしましょう。
十分な睡眠をとり、体力を回復させることで、アルコールの影響を軽減できます。健康を守りながら楽しい飲酒の場を提供するためにも、予防の意識を持って飲酒を楽しむことが重要です。
予防のために注意すべきポイントを教えてください。
特に一気飲みなどで急性アルコール中毒に至り、死亡するケースもありますので、注意が必要となります。また空腹時はアルコールの吸収が早くなるため、食事をしながら飲むか、事前に牛乳などを摂取することも考慮しましょう。
予防のためには、自己の限度を理解し、飲酒に関する情報や注意事項に十分に目を向けることが重要です。
万が一急性アルコール中毒を発症した場合の対処法を教えて下さい。
- 1人にせず、周囲の人にサポートを求める。
- 患者の衣服をゆるめて楽にし、体温低下を防ぐために毛布などで暖かく保つ。
- 吐物による窒息を防ぐため、患者を横向きに寝かせる。
- 吐きそうになったら、横向きの状態で吐かせる。ただし、無理に吐かせようとせず、患者の安全を確保する。
- 意識低下や異常な症状が現れた場合は、即座に救急車を呼んでください。
なお体調不良を知りつつ飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた場合は、刑法第205条(傷害致死罪)に触れる可能性があります。
場合によっては、3年以上の懲役刑が科せられることがあるので、適切な対応と思いやりのある行動を心がけましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
安全な飲酒習慣を心掛け、自己と周囲の健康と安全を守ることが大切になります。皆さんの健康と安全を守るために、予防と正しい対応に努めましょう。
編集部まとめ
飲酒は楽しみの一つですが、適度な範囲で楽しむことが大切です。
急性アルコール中毒は命に関わる重大な状態を引き起こす可能性があります。周囲の人々の健康と安全を守るためにも、予防と適切な対応が必要です。
自分の適正量や限界を知り、過剰な飲酒を避けることが予防の第一歩になります。また、飲み会などでの相互の配慮や見守りも重要です。
若者や未成年者は特に注意が必要であり、正しい情報や教育を通じてアルコールに対する知識を深めることも大切でしょう。
もし周囲で急性アルコール中毒の症状がみられた場合、一人にせずに適切な対処を心がけてください。回復体位の確保や救急車の手配など、迅速な行動が重要です。
楽しいひとときを過ごすために、責任ある飲酒行動を心掛けましょう。
参考文献