「マタニティブルー」の原因・症状はご存知ですか?産後うつとの違いも解説!
妊娠中や出産後には、気分が落ち込んだり怒りっぽくなったりする時があります。それはマタニティブルーの症状が出る時期なのかもしれません。
マタニティブルーは一過性の症状で、エストロゲンの増減が大きく影響します。
急に泣きたくなったり、何でもないことにイライラしたりしても自分を責めないでください。それは誰にでも発生する生理現象です。
本記事ではマタニティブルーの原因・なりやすい時期・予防方法・産後うつとの違いなどについて詳しく解説します。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
マタニティーブルーになりやすい時期や原因
マタニティーブルーになりやすい時期はいつですか?
マタニティブルーはホルモンバランスが変化する時期に発生します。医学的には出産後3日から10日で現れる不安症を「マタニティブルーズ」と定義しています。
マタニティブルーズは急激に血中エストロゲン量が減少することで発生する一時的な不安症です。一方、一般的な「マタニティブルー」は、妊娠・出産にともなう「心と体の不調」を指します。
本記事では医学的な「マタニティブルーズ」と一般的な「マタニティブルー」を合わせて、「マタニティブルー」として解説します。
原因はなんですか?
最も大きく変動するのはエストロゲンです。妊娠後期の血中濃度は通常の100倍ですが、出産後はゼロ近くまで減少します。これらの変化が自立神経の働きに影響し、心や体の不調が生じると考えられています。
2つ目の原因は心理的ストレスです。ストレス要因として、妊娠前と同じように行動できない不自由さや、将来に対する不安などがあげられます。
3つ目の原因は疲れや体調不良です。
大きなお腹でいるのは疲れます。妊娠中から産後まで続く慢性的な疲労や、出産による疲労が心理面に影響し、マタニティブルーになりやすくなります。
症状を教えてください。
- 気持ちの落ち込み
- 急に涙がでる
- 急な気分の変化
- 強い恐怖感や不安感
- 強い焦燥感
- 自己嫌悪
- イライラする
- 唐突な怒り
- 集中力の低下
多くは情緒不安定といわれる症状で、一時的なものです。程度の差はあるものの、妊娠・出産を経験した女性であれば覚えがある方も多いのではないでしょうか。
「体の不調」には以下のような症状があります。
- 眠れない
- 疲れやすい
- 食欲不振・過食
- 動悸・息切れ・頭痛
以上の症状は一過性のもので、通常は2週間程度で治まります。
産後うつとの違いを教えてください。
マタニティブルーは一過性の症状であり、2週間程度で自然になくなります。しかし、産後うつとは、状態によっては治療が必要なメンタルの病気です。
マタニティブルーと産後うつは、症状が似ているため判別がつきにくい傾向があります。
マタニティブルーが2週間以上続く場合や、「自殺願望(希死念慮)」などの深刻な症状がある場合は産後うつの可能性があります。
早急に出産した病院や、地域の保健センターなどに相談してください。
なりやすい人はどのような人ですか?
- 真面目で几帳面
- 責任感が強い
- 悩みを人に打ち明けるのが苦手
以下のような環境の人もマタニティブルーになりやすいです。
- 家事や育児にパートナーの協力が得られない
- 周囲に相談できる人がいない
またPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快症候群)と診断されている(もしくは疑いがある)方も、マタニティブルーになりやすいと考えられます。
エストロゲンの減少は、PMSやPMDDの原因因子の1つとされています。出産後は急激にエストロゲンが低下するため、マタニティブルーの発症に留意してください。
マタニティーブルーの診断や改善方法
どのように診断されますか?
- 状況に関係なく、突然泣きたくなる(涙が出る)
- 憂うつ感がある
- 不安感が強い
- 常に緊張している
- 落ち着きがなくなった
- 疲労感がある
- 食欲不振・過食
- 集中力の低下
- 眠れない
これらの症状で複数の症状が該当すると、マタニティブルーと診断されるケースが多いでしょう。
マタニティーブルーの改善方法は?
理解した上で以下に挙げる改善方法を試してみましょう。
- 感情を素直に出す:生理現象でも辛いものは辛いといいましょう。泣きたい時は泣きましょう。SOSを発信することで、周囲の理解とサポートを受けやすくなります。
- 相談する:辛いことを誰かに打ち明けましょう。相談することで気持ちが楽になります。また、サポートも受けやすくなります。
- 十分に休養をとる:睡眠不足はメンタルの不安定を招きます。何よりも自分の体調が大切です。無理に仕事や家事をすることはありません。辛い時は、冷凍食品・お弁当・ベビーシッター・家事サービスなどを活用し、休養する時間を作ってください。
- 運動する:体調面で問題がなければ運動しましょう。運動することで血の巡りがよくなり、脳が活性化します。活性化すると「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌が多くなります。軽いウォーキングやヨガなどがおすすめです。
相談できるパートナーや家族がいない人もいるでしょう。そういった人には、地域の相談員さんや保健師さんなどへの相談をおすすめします。
自然に治ることはありますか?
主治医に相談し、必要ならメンタルの治療を受けましょう。
マタニティーブルーの予防や過ごし方
マタニティーブルーを予防する方法はありますか?
自治体や病院などのマタニティスクールや母親学級などで、同じ悩みを持つ仲間と悩みを共有したり、先輩ママのアドバイスを聞いたりするのもよいでしょう。
体調が許すなら、ウォーキングや水泳などの軽い運動も予防に効果があります。また、同居する家族やパートナーと妊娠・出産に伴う変化を知ってもらうことも大切な予防策です。
日々の過ごし方で注意する点は?
- 1人で抱え込まない: 悩みがあったら周囲に相談しましょう。
- 我慢しない:辛い時には辛いと周囲に訴えましょう。
- 完璧を求めない:家事や育児は大変です。手を抜くことを覚えましょう。
- できない時は無理をしない:色々なことを無理にしようとせず、本当に大事なことだけに絞りましょう。
- 睡眠をとる:妊娠・出産・育児は体力が必要です。できるだけ睡眠をとりましょう。
以上の点に注意していても、マタニティブルーになることはあります。その時は「生理現象」だと割り切ってください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
マタニティブルーかもしれないと思ったら、頑張るのを止めて休みましょう。辛い状況・苦しい状況を1人で我慢せずに、パートナーや家族に話してください。
そういった情報の共有から、周囲の理解やサポートが生まれます。
編集部まとめ
マタニティブルーには、妊娠・出産に伴うエストロゲンの増減が大きく影響します。
憂うつな気分・情緒不安定・イライラといったメンタルの不調は「生理現象」です。通常、2週間程度で症状は落ち着いていきます。
誰にでも起こり得ることなので、考え込まないようにしましょう。マタニティブルーは一過性の症状で病気ではありません。
不眠・食欲不振・過食などの体調面での不調には、適切な処方があります。我慢せず主治医に相談してください。