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「13トリソミー(パトウ症候群)」の特徴・合併症はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/06/24
「13トリソミー(パトウ症候群)」の特徴・合併症はご存知ですか?医師が監修!

子どもを妊娠中の方やこれから出産を考えている方にとって、子どもの病気は気になるポイントのひとつでしょう。

妊婦健診などで無事に成長している姿を確認するたびに安堵することも多いのではないでしょうか。

しかし、一定の確率で重篤な疾患を抱えて生まれてくる子どももおり、そのひとつが13トリソミー(パトウ症候群)です。今回はこの13トリソミー(パトウ症候群)の特徴・原因を解説し、その検査方法や合併症についても紹介します。

白井 沙良子

監修医師
白井 沙良子(医師)

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小児科医(日本小児科学会専門医)。慶應義塾大学医学部卒業。総合病院にて研修を修了し、現在はクリニックにて、様々な感染症やアレルギー疾患の診療、乳幼児健診、育児相談などを担当。オンライン医療相談、医療記事の執筆・監修、企業向けセミナーなども通じて「エビデンスに基づいた育児情報」を発信している。

13トリソミー(パトウ症候群)の特徴や原因

産婦人科

13トリソミー(パトウ症候群)とはどのような病気ですか?

まず、13トリソミー(パトウ症候群)がどのような特徴を持った病気なのか詳しく見てみましょう。13トリソミーはパトウ症候群ともよばれるもので、染色体異常の一つです。
人間の細胞内には通常、23対(46本)の染色体が存在します。そのうち1対(2本)が性染色体、その他22対(44本)が常染色体です。この1から22番まである常染色体のなかで、13番目の染色体異常が13トリソミーです。
通常2つしかない13番染色体が3つ存在するなど、通常と異なる構造がみられるため、13トリソミーと呼ばれます。

どのような特徴がありますか?

13トリソミー(パトウ症候群)の特徴的な症状は、成長や発達の遅れです。そのほかにも様々な異常を引き起こす可能性があります。例えば以下のような代表的な例が挙げられます。

  • 脳の構造異常
  • 心臓の壁に穴が開いているなどの心臓の異常
  • 腎臓など泌尿器系の異常
  • 骨格異常
  • 臍帯ヘルニアなどの消化器系の異常

特に、13トリソミー(パトウ症候群)の患者のうち約80%に心疾患があるとされています。
これら複数の合併症により体の機能維持が難しくなるため、生後1年の生存率は5〜10%という報告もありました(2003年)。ただし手術や新生児集中治療などにより、生後1年での生存率は50%を超えるという報告もあります(2018年)。

13トリソミー(パトウ症候群)の原因を教えてください。

13トリソミー(パトウ症候群)は、13番染色体が1本多いことなどによる先天的な要因が原因です。この染色体の数や構造の変化は、胎児の体内で起こる現象であり、ほとんどのケースにおいて家族の遺伝的要因はありません。

13トリソミー(パトウ症候群)はどのくらいの確率で発生しますか?

13トリソミー(パトウ症候群)は、出生児の約5,000人から1万2000人に一人の割合で見られます。100人の新生児のうち、3から5人は何らかの先天性異常を持って生まれてきます。
そのうち染色体異常を持って生まれてくる新生児は約25%です。さらに染色体異常の内訳をみると、最も割合の多いのが21トリソミーで約53%、次いで18トリソミーが13%、3番目が13トリソミーで5%となっています。

13トリソミー(パトウ症候群)の検査

超音波

出生前に行われる検査について教えてください。

13トリソミー(パトウ症候群)と診断するために、妊娠中と出生後に行われる検査があります。まず13トリソミー(パトウ症候群)が見つかるのは、妊婦健診です。超音波検査の際に、胎児の形態異常・心臓の疾患・消化器系の異常などが見つかるケースがあります。
最近ではNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)にて、生まれる前に染色体異常の検査を受けることができます。この検査では、胎児が13・18・21の3つのトリソミーいずれかの可能性を知ることができます。
妊娠9から10週目以降に妊婦さんの血液を20mL程度採取し、血液中のDNA断片を分析します。約2・3週間後に陽性か陰性かの判定結果が報告され、陽性の場合には追加の確定検査が必要です。
超音波検査やNIPTは母体への負担や流産のリスクは低い一方、確定検査は母体の子宮内から羊水や絨毛を採取して細胞を分析するため、流産・破水リスクが0.3%から1%程度あります。また、採取の際に母体腹部に針を刺すため、母体への負担も大きくなります。
しかし、出産年齢が高齢化するほど常染色体異常の発生率も増加するという傾向が報告されており、出生前検査への関心は次第に強くなっています

出生後に行われる検査について教えてください。

出生後に13トリソミー(パトウ症候群)の疑いがあった場合、染色体検査を実施します。新生児の末梢血液中の白血球細胞を培養し、染色体の数的異常や構造異常を調べます。

13トリソミー(パトウ症候群)を治療する方法はありますか?

出生後は集中治療室での処置が行われ、呼吸機能などの管理が行われます。心疾患があるケースでは心臓手術が検討される場合もあります。
20年前は、1年生存率が5〜10%という報告もありましたが、これは心疾患の合併によるところが大きく、近年では世界的に積極的な手術が行われています。その結果、10年以上生存するケースも増えています。

13トリソミー(パトウ症候群)の合併症や寿命

エコー写真

13トリソミー(パトウ症候群)の合併症について教えてください。

13トリソミー(パトウ症候群)の合併症はさまざまです。例えば以下のような例が確認されています。

  • 中枢神経系(脳構造の異常、けいれん)
  • 呼吸器(無呼吸発作など)
  • 循環器(先天性心疾患など)
  • 消化器(臍帯ヘルニアなど)
  • 尿路生殖器(水腎症、停留精巣など)
  • 内分泌(甲状腺機能低下症など)

全患者に上記全てが起きるのではなく、患者ごとに異なります。

13トリソミー(パトウ症候群)の子どもの寿命は?

13トリソミー(パトウ症候群)の多くは流産もしくは死産になります。無事に出生できてもさまざまな合併症のため、1年後まで生存できるのは5~10%といわれています。
しかし、手術や新生児集中治療などにより、生後1年での生存率は50%を超えるという報告もあります。13トリソミー(パトウ症候群)患者の生存率が低い理由のひとつは、心疾患などの合併症です。
近年の積極的な手術などの処置によりその生存率は向上しており、成人している患者さんも存在します。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

13トリソミー(パトウ症候群)とひとくちにいっても、どのような合併症を、どの程度の重症度であわせもっているかで治療の内容や生存率も大きく異なります。出生前遺伝学的検査や出生後に医師からの説明を受けられる際には、今回お伝えした内容はもちろんですが、「同じ症候群でも実際には一人ひとりかなり症状が違うもの」ということもおさえておくことが大切です。

編集部まとめ

赤ちゃんと診察
13トリソミー(パトウ症候群)は13番染色体が通常よりも1本多いなど構造の異常がみられるために、さまざまな合併症を引き起こす病気です。そのため、出生後の生存率が悪く、発達や成長も通常より遅いという特徴があります。

13トリソミー(パトウ症候群)の胎児では形態異常が多くみられるため、出生前の超音波検査や遺伝学的検査で発見されます。近年の出産の高齢化に伴い、出生前検査を受ける方も増えており、今後もこの傾向はつづくと予想されます。

しかし、13トリソミー(パトウ症候群)に限らず染色体異常の確率が高いことが事前に分かってもその段階で処置はできません。また、染色体異常の可能性が低い場合でも他の先天性疾患を患っている可能性も否定できません。

出生前診断を受けるか受けないか、また診断の結果をどう受けとめるかは、絶対の正解はありません。納得のいく判断ができるよう、検査だけではなく、遺伝カウンセリングもあわせて受けられることをおすすめします。

この記事の監修医師