FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「広場恐怖症」の症状・原因・閉所恐怖症との違いはご存知ですか?医師が監修!

「広場恐怖症」の症状・原因・閉所恐怖症との違いはご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/06/01
「広場恐怖症」の症状・原因・閉所恐怖症との違いはご存知ですか?医師が監修!

広場恐怖症とは、特定の場所・状況に直面した時に強い不安や恐怖を感じてしまう病気です。

以前は、広々とした空間に対して恐怖の感情を抱くと定義されていましたが、近年では広場に限らず過剰に不安や恐怖を感じる症状を広義に捉えるようになりました。

広場恐怖症からパニック障害を引き起こしてしまう可能性があるなど、放置していては危険な病気です。

今回は、広場恐怖症の症状について紹介します。また、パニック障害との関連・診断および治療の方法・自力で治せる可能性についても併せて解説するので、参考にしてみてください。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

プロフィールをもっと見る
専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

広場恐怖症の症状とパニック障害との関連

電車に乗る女性

広場恐怖症の症状を教えてください。

広場恐怖症に罹患すると、特定の場所を訪れたり、ある状況になったりした時に不安や恐怖を異常に感じてしまう病気です。
パニック障害のような状態に陥ってしまい、平常心でいられなくなってしまいます。症状としては、以下のようなものがみられます。

  • 動悸
  • 発汗
  • 息苦しさ・窒息感
  • 胸部や腹部の違和感・痛み
  • めまい・ふらつき
  • 現実感の喪失

これらの症状が同時に発生するケースが多いです。電車など公共交通機関の利用や人前に出ることを避けるようになり、日常生活に支障をきたしてしまうケースもあります。パニック障害の症状を伴わず、恐怖心や不安感だけを強く感じてしまう人もいます。

発症の原因を教えてください。

広場恐怖症が発症する原因は、人によって異なります。原因として多く見られるのが、過去のパニック障害の経験です。過去にパニック障害が起こった場所に行くと、再び発作が起こることを心配し、強い恐怖心や不安感を覚えてしまうと考えられています。
パニック障害の状態を恐れるだけでなく、死ぬこと・気を失うこと・人前で恥をかくことなどへの恐怖心がさらに症状を悪化させてしまう場合も多いです。また、遺伝により発症する事例も多いと考えられています。

どのような方が広場恐怖症になりやすいのでしょうか?

広場恐怖症は、他の合併症を患うケースが多いと考えられています。特に、精神面の疾患に連動して発症する事例が多いです。パニック障害・社交不安障害・限局性恐怖症などが挙げられます。
また、うつ病を経験した方も広場恐怖症になりやすいと考えられています。さらに、前述のように遺伝の影響も大きい病気であると考えられているため、両親が広場恐怖症の経験を持っている場合は罹患しやすいでしょう。治療を受けて治ったと思っても、何らかの出来事がきっかけで再発する事例も多いと考えられています。
一度広場恐怖症の診断を受けた方は、少しずつ行動範囲を広げていく方が安心でしょう。

パニック障害と関連があるのですね。

前述のように、広場恐怖症はパニック障害を過去に経験したことのある方がかかりやすいと考えられています。パニック障害を発症した場所を再び訪れることで、不安感や恐怖心が掻き立てられ、広場恐怖症に発展するケースが多いです。広場恐怖症に罹患すると、外出自体が難しくなるなど、日常生活に支障をきたしてしまう場合が多くなります。
パニック障害を経験したことがある方は、生活習慣を十分に整え、ストレスをできるだけ溜めず生活することが大切です。対応が難しいと判断される場合は、精神科などの専門医に早めに相談しましょう。

閉所恐怖症とはどのような違いがありますか?

閉所恐怖症とは、狭く密閉された空間に対して異常な恐怖心を抱く病気です。エレベーターや窓がない部屋など、逃げ出せない空間にいることに恐怖を感じてしまいます。広場恐怖症も、同様の状況において不安感や恐怖心を抱くという点で、両者は似通った部分があるといえるでしょう。
しかし、閉所恐怖症が閉ざされた空間にのみ恐怖を感じるのに対し、広場恐怖症は閉所に限らず様々な環境に恐怖を感じる可能性があります。閉所恐怖症に比べ、広場恐怖症の方が症状が発現する範囲が広い病気であるといえるでしょう。

広場恐怖症の診断と治療方法

整骨院でカウンセリングする整体師・医者

広場恐怖症はどのように診断されますか?

広場恐怖症は、以下の5つの状況のうち2つ以上で不安感や恐怖心を強く感じるかどうかで判断をします。

  • 公共交通機関の利用時
  • 開放された空間での滞在
  • 閉鎖された空間での滞在
  • 列に並ぶ、または人ごみの中にいること
  • 自宅外に1人でいること

以上のうち2つ以上の状態で、6か月以上継続して不安感や恐怖心を覚える場合には、広場恐怖症である可能性が高いと判断されます。
広場恐怖症のような精神性の疾患は、治療を開始する前に時間がかかればかかるほど、治るまでの時間が長くなりがちです。ご自身はもちろんのこと、家族や友人知人に広場恐怖症と思しき症状がみられた場合には、専門医への早期の相談をおすすめします。

治療方法を教えてください。

広場恐怖症の治療には、薬物療法あるいは精神療法を用いるケースが多いです。薬物療法では、抗うつ剤として使用される薬品が用いられます。
精神療法では、主に認知行動療法と曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)を実施するケースが多いです。認知行動療法とは、不安や恐怖を感じる状況を冷静に認識し、考え方の修正を図る方法です。
曝露反応妨害法とは、不安・恐怖を感じる状況に自身を少しずつ曝していき、不安が軽減するまで繰り返す治療法を指します。不安・恐怖を感じる状況に少しずつ慣れていくという考え方です。

治療にはどのような薬が使われるのでしょうか?

広場恐怖症の治療で薬物療法を実施する場合に利用される薬は、主に以下のようなものです。

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬

いずれもうつ症状の緩和を目的として処方される、抗うつ剤です。また、不安症状やパニック症状の緩和を目的として、即効性のある抗不安薬を使用するケースもあります。

広場恐怖症の治療期間を教えてください。

広場恐怖症の治療期間は、パニック障害に準じた治療期間が必要であると考えられています。早くても半年から1年間、長ければ2年以上治療をしないといけない場合があります。
広場恐怖症のような精神疾患は、急速に回復するような病気ではありません。根気よく対応していく必要があります。また、症状が治まったと思っても、何らかの要因で再発してしまう事例も多いです。継続して専門医のアドバイスを守るなど、油断せず対応することが大切であるといえるでしょう。

広場恐怖症は自力で治る?

泣くビジネスウーマン

広場恐怖症は治りますか?

広場恐怖症は、前述のように、薬物療法あるいは精神療法を用いて治療するケースが多いです。専門医の指導の下、ご自身に合ったペースで治療を進めれば、治る可能性は十分あります。精神疾患は、1人1人に合った対応が大切です。無理をせず、徐々に恐怖心を払拭していくことを心がけましょう。
広場恐怖症に罹患している本人だけでなく、家族や友人知人など周囲の人の対応も重要です。無理に苦手な場所に連れ出したりせず、専門医のアドバイスに従って対応しましょう。

広場恐怖症は自力で治せるのでしょうか?

広場恐怖症は、状況によっては自力で治せる可能性がないわけではありません。日常生活を送る中で、自己流で曝露反応妨害法を実行する方もいます。恐怖心はあるものの、徐々に苦手な場所に赴き、苦手意識を払拭していると考えられます。
しかし、専門的な知識なしで自力で治そうとするのは、パニック障害を引き起こしてしまう危険があるため、おすすめできません。単に苦手な場所を避けて行動することで、治ったと勘違いするケースも多いといわれています。無理をせず、専門医に相談するのが良いでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

広場恐怖症のような精神的な疾患について、理解が広がっていないのが現状かもしれません。しかし、広場恐怖症はれっきとした病気ですので、どうしても不安や恐怖心をぬぐえない状況がある場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
1人1人に合った、適切な治療方法を提案してもらえるでしょう。不安な気持ちを正直に話す環境ができるだけでも、精神的な負担を軽減できるかもしれません。

編集部まとめ

体調が良い女性
広場恐怖症は、特定の場所や状況に極度の恐怖心や不安感を覚えてしまう病気です。状況によっては、パニック障害と同様の症状を引き起こしてしまう可能性があります。

外出するのが怖くなるなど、日常生活に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。症状が深刻化する前に、早めに専門医に相談して治療を受けるのをおすすめします。

精神的な疾患について理解の少ない方は、自力で治せるのではないかと考える場合もあるかもしれません。確かに自力で治せる場合もありますが、自己判断で取り組むのは危険です。専門医の指導の下、治療を進めるのが良いでしょう。

この記事の監修医師

注目記事