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「子宮留膿腫」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/06/14
「子宮留膿腫」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

子宮留膿腫(しきゅうりゅうのうしゅ)という病名は一般の方にはあまり聞き覚えがないかもしれませんが、原因不明の腹痛や発熱は子宮留膿腫のサインの可能性があります。

子宮留膿腫は女性特有の病気で婦人科以外では発見されにくい病気です。帯下(おりもの)が黄色や黄緑色で悪臭がする場合は注意が必要です。

放っておくと子宮内に膿がたまります。最悪の場合では突然の激しい腹痛に襲われショック状態になることもあります。

そうした事態を防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。あまり知られていない子宮留膿腫の症状・原因・治療方法や予防方法などについて詳しく解説します。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

子宮留膿腫の症状と原因

女性医師

子宮留膿腫の症状を教えてください。

子宮留膿腫で最も多い症状は帯下(おりもの)の異常です。正常な帯下は透明または半透明の液体ですが、子宮留膿腫になると膿が混ざり黄色または黄緑色を帯びてきます。次に多い症状は不正出血です。
子宮留膿腫は閉経後の女性に多く見られますが、閉経後の出血は子宮に何らかの異常がある場合が多く、子宮留膿腫もその原因のひとつです。さらに進行し重度になると、発熱・悪寒・腹痛の症状が起こります。
発熱は微熱の場合もありますが高熱を発する場合もあり、高熱の場合は深刻な病状と考えられますので早急に婦人科の受診が必要です。

発症する原因を教えてください。

子宮留膿腫は主に子宮内の貯留物が細菌に感染することにより発症します。細菌感染の原因となる菌が子宮内に入ってしまう要因として外陰部からの流入が考えられます。
介護が必要な高齢の女性の場合、小便や大便に含まれる菌による発症が多いのが特徴です。介護用の紙パンツが小便や大便で汚れた状態が続くと小便や大便に含まれる菌が大陰茎から膣内に入ってしまいます。
そうした菌がさらに膣内から子宮内に到達し子宮留膿腫を引き起こすと考えていいでしょう。外的原因以外にも子宮悪性腫瘍や結核性子宮内膜炎による膿が原因で子宮留膿腫を発症する場合もあります。

高齢の女性に多いと聞きましたが…。

子宮留膿腫は閉経後の女性に多い病気です。これは閉経することで子宮内から定期的に内容物が排出されなくなるためと考えられています。また高齢になるにつれ細菌感染に対する免疫の防御機能が衰えることも高齢の女性が発症しやすい要因でしょう。
さらに要介護の高齢者で介護用紙パンツを使用している場合、介護者や介護施設の子宮留膿腫への認識が低ければ介護用紙パンツが汚れた状態が続くこともあります。高齢になればなるほど要介護者が介護者に不快感を訴えるのが難しくなりますので、介護をする側では積極的な介護用紙パンツの汚れチェックが重要です。

子宮留膿腫の診断と治療

カウンセリング

子宮留膿腫はどのように診断されますか?

子宮留膿腫の診断は問診・内診・検査で診断されます。問診では腹痛・帯下の異常・発熱・悪寒・不正出血といった自覚症状と自覚症状が出た時期などの聞き取りがあります。
内診では帯下の状態や血液検査などがあり、検査機器を使った検査は超音波検査やCT検査です。この時点で子宮内に膿がたまっていることが確認され、病状が切迫している場合には緊急手術となる可能性があります。
子宮からの膿の排出、超音波検査やCT検査によって子宮留膿腫と診断され、原因を明らかにするため細胞診や膿の培養検査などが行われます。

治療方法を教えてください。

子宮留膿腫では子宮内にたまった膿を排出することが大切です。緊急性が高くない子宮留膿腫の治療では、まず子宮につながる膣内を生理食塩水で洗浄します。
次は子宮内の膿の排出です。子宮にカテーテルを挿入し、たまった膿を吸引した後、さらに子宮内部も生理食塩水で洗浄します。こうした治療を毎日または1日置きに行い、必要に応じて抗生物質を投与して治療します。

手術することもあるのでしょうか?

子宮留膿腫は重篤な状態になるまで、ほぼ無症状なケースが多い病気です。そのため、ある日突然急激な腹痛に襲われてショック状態になり、救急搬送された先の病院で緊急開腹手術となる場合があります。
ショック状態をともなう腹痛で緊急搬送された場合、婦人科医でなければ子宮留膿腫を疑う医師は少ないでしょう。まず胃や腸に穴があき、胃液や腸液が漏れている穿孔性腹膜炎などが疑われます。
緊急性の高さから検査と治療を目的に開腹し、はじめて子宮留膿腫の重症化したものと分かることが珍しくありません。

子宮留膿腫の治療期間を教えてください。

子宮留膿腫の治療期間は病状によって異なります。
体力のある人で膿も少なく軽度の場合はおおむね10日から14日程度で、命にかかわる重篤な状態で手術をともなう治療ではおおむね20日から30日程度の治療期間が必要です。高齢になればなるほど治療期間が長くなる傾向があります。

子宮留膿腫の再発と予防

女性ビジネスマン

子宮留膿腫の死亡率は高いのでしょうか?

子宮留膿腫は多くの場合は快癒が望める病気で死亡率は高くありません。ショック状態をともなう激しい腹痛がある場合や高熱を発している場合でも適切な治療ができれば快癒するでしょう。
子宮留膿腫で最も危険なのは、子宮留膿腫とわからないまま発熱や腹痛の症状に応じて対症療法が続けられるケースです。こうした対処療法を続けても効果がないため、婦人科に回ってきたときには重篤な状態になっている場合があります。
高齢者医療において婦人科系疾患への認識を高めることが課題のひとつといえるでしょう。

子宮留膿腫は再発しますか?

子宮留膿腫は主に外陰部からの混入する細菌が原因の感染症で、外陰部が清潔な状態であれば発症のリスクが少ない病気です。逆に外陰部が小便や大便で汚れた状態では発症のリスクが高いといえます。
したがって快癒しても外陰部が汚れた状態が続けば再発する可能性が高いでしょう。介護が必要で介護用紙パンツを使用しているのであれば、汚れたらすぐに取り換えるよう介護する側が配慮する必要があります。

予防する方法はありますか?

子宮頸がんなどの悪性疾患にともなう子宮留膿腫は予防が難しいのが現状ですが、外陰部からの細菌の流入によって発症する突発性の子宮留膿腫は予防できます。原因の章でも述べましたが、外陰部を清潔にすることが子宮留膿腫の予防の重要なポイントです。
また膿性の帯下が出ていないかなどを確認し、普段の生活で子宮留膿腫の兆候を見逃さないことも悪化を防ぐという意味で予防といえるでしょう。子宮留膿腫は重篤な状態になるまで無症状な場合もあるため、定期的に婦人科の検査を受けるのも予防の一環と考えてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

子宮留膿腫は高齢の女性に多い病気ですが若い女性も無縁ではありません。帯下に異常があったり不正出血があったりという自覚症状がある場合は、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。
また、ご家族に介護が必要な高齢の女性がいる場合は、ご家族が気を配ることも大切です。子宮留膿腫は婦人科の定期健診で発見される場合も多い病気ですが、婦人科を受診するのは恥ずかしいと感じる人もいるでしょう。
しかし子宮や膣は女性の大切な器官です。大切な器官を守るために定期的な婦人科検診を受け、異常を感じる場合は早めに婦人科を受診することをおすすめします。

編集部まとめ

四つ葉のクローバーと太陽
子宮留膿腫になると膿性の帯下・不正出血・腹痛・発熱・倦怠感といった症状が出ます。特に帯下は黄色や黄緑色を帯びて悪臭がするため気づきやすい症状です。

こういった症状が出た場合は早めに婦人科を受診することが、子宮留膿腫の早期発見と治療につながります。

婦人科の受診に抵抗を感じる人も多いでしょう。特に若い女性にとって婦人科の受診はハードルが高いかもしれません。

しかし女性特有の病気は恥ずかしがらずに早めに婦人科を受診することが大切です。

また介護が必要な高齢の女性の場合、介護用紙パンツの汚れは子宮留膿腫の大きな原因です。汚れた状態が続かないよう周囲の人が気を配る必要があります。

この記事の監修医師