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「エナメル上皮腫」の原因・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/29
「エナメル上皮腫」の原因・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が監修!

エナメル上皮腫とは、歯を形成するエナメル器という組織に発生する腫瘍のことを指します。ほとんどが良性腫瘍であるため、症状を感じるケースは多くありません。
そのため、検査で発見されたときには状態が進行している場合が多く、周囲組織への増殖がみられたり、まれに悪性腫瘍となる可能性があったりするため、早期に治療を行うべきでしょう。

今回は、エナメル上皮腫とはどのような特徴を持つ病気であるのか、解説をします。また、病気の原因・発症率・初期症状の特徴・治療方法・再発の可能性・予後の特徴・病気を放置するリスクについて解説をします。

この病気の可能性を感じた場合は、早めに専門医に相談をして対応をしましょう。

酒向 誠

監修歯科医師
酒向 誠(酒向歯科口腔外科クリニック)

エナメル上皮腫の特徴

上半身

エナメル上皮腫の特徴を教えてください。

エナメル上皮腫は、歯原性腫瘍の一種です。歯原性腫瘍とは歯の組織に由来する特殊な腫瘍のことで、エナメル上皮腫はその中で最も発生頻度が多い病気とされています。
顎骨(がっこつ)に発生するのが特徴で、体幹など他の部位には発生しません。腫瘍が嚢胞(のうほう)のようになることもあります。
顎骨の中でも、特にあごの後方部に発生するケースが多く、大きくなると顎骨が膨隆して顔の見た目が変化する場合もあります。

どのような症状がみられますか?

この病気に罹患すると、痛みを伴うことなく顎骨の腫脹がみられるケースが多いです。さらに膨張が進むと顔面が左右非対称となり、顎骨の膨隆や変形が目立ってきます。
口腔内では、歯の位置の変化・萌出(ほうしゅつ)障害・歯列不正・歯の不安定さなどが発生することがあります。下あごの箇所では、下唇の知覚能力が低下したり麻痺及びしびれを感じたりするケースがあるでしょう。

発症の原因を教えてください。

発症原因は、明確には判明していません。エナメル上皮腫は、歯胚(しはい)の中にあるエナメル器と呼ばれる部分に腫瘍が発生することで発症する病気です。
しかし、エナメル器に腫瘍が発生するメカニズムが明確になっていないため、根本的な原因は不明であると考えられています。
現状では若年層に発症がみられやすい点や、男性の方が若干多いものの、男女の性別における発症率の差が大きくない点などが報告されています。

発症率は高いのでしょうか?

この病気の発症率は、数ある歯原性腫瘍の中でも最も高いという報告があります。歯原性腫瘍全体のおよそ3割がエナメル上皮腫です。発生する部位としては、下のあごの箇所が圧倒的に多いと考えられています。
上あごでの発症率が10%程度であるのに対し、下あごでの発症率はおよそ90%です。
また、下あご側では、大臼歯部での発症が最も多く、次いで下顎枝部・前歯部・小臼歯部の順に多いという研究結果があります。上あご側では、大臼歯部・前歯部・後臼歯部・小臼歯部の順に多いです。

エナメル上皮腫になりやすい方の特徴はありますか?

この病気になりやすいのは、若年層という報告があります。主に10~20歳代の若い年代で発症がみられるケースが多いです。
また、女性が40%程度であるのに対し、男性が60%程度であり、若干男性の方が多いという報告もあります。腫瘍の発生要因が明確になっていないため、どのような性質の方が罹患しやすいのか、明確になっていないのが現状です。
そのため、予防の方法も明確になっておらず、あらかじめ対策を取ったり予防をしたりすることが難しい病気ともいえるでしょう。

エナメル上皮腫の治療方法

医師

受診を検討するべき初期症状はありますか?

エナメル上皮腫は、痛みを伴わないケースが多いため、症状に気付きづらい点が特徴として挙げられます。虫歯などの歯科治療を受ける過程で、X線を撮影した際に発見される例も多いです。
ある程度病状が進み、顔の左右が非対称になってきた場合に気付くことも多いでしょう。口腔内において、歯の位置の移動・歯列不正・歯の不安定さなどがみられた場合には、早めに専門医を訪ねて受診することをおすすめします。

どのような検査で診断されるのでしょうか?

エナメル上皮腫を診断する際には、組織を一部採取して調べる病理組織検査を実施するケースが多いです。また、X線検査やCT検査によって腫瘍の部位や大きさを診断する方法も並行して実施されます。
X線で撮影した場合の透過性をチェックしたり、隔壁構造がみられないかを確認したりして、病状の進行具合を認識します。エナメル上皮腫は進行が遅く、痛みを伴わないケースが多いため、問診や触診での検査が難しいです。
歯の矯正治療中など、歯科治療の過程で発見される例が多いため、定期的な歯科健診を受けるのも早期発見につながるでしょう。

エナメル上皮腫の治療方法を教えてください。

この病気の治療は、現状では手術による患部の切除を実施する方法が一般的です。手術の方法は、主に以下の2つを採用するケースが多いです。

  • 顎骨切除法
  • 顎骨保存外科療法

顎骨切除法は、周囲のあごの骨とともに腫瘍を切除する方法になります。あごの骨を大きく切除した場合は、他の部位から骨を移植する再建手術が必要になるケースが多いです。
顎骨保存外科療法は、周囲の骨をできるだけ残して、あご本来の形状や働きを維持することを主眼に置いた方法です。あごへのダメージが少ない方法ですが、腫瘍の再発事例が多いという欠点もあります。

エナメル上皮腫の治療期間を教えてください。

この病気の治療には、主に手術による患部の切除が行われるため、手術自体が終われば治療はいったん終了します。しかし、再発の可能性が高い病気であるため、経過観察が重要になります。
手術の内容によって違いはありますが、少なくとも10年間は経過観察の目的で健診を受けるのが一般的です。
長期的な治療期間が必要になりますが、場合によっては悪性腫瘍となって危険な病状を発現する可能性もあるため、慎重に対応しましょう。

エナメル上皮腫の予後と放置するリスク

あご

エナメル上皮腫は再発するのでしょうか?

エナメル上皮腫は、再発の事例が多くみられる病気です。特に、顎骨保存外科療法を実施した場合には再発の事例が多くみられます。
エナメル上皮腫は良性腫瘍で、症状を伴わないケースが多いです。そのため進行に気付きにくく、場合によっては悪性腫瘍に変化する事例も報告されているため、注意が必要です。
手術後2年以内に再発した事例は、5割を超えているという報告もあります。手術を終えたからといって安心するのではなく、必ず定期的な健診を受けて再発に備えましょう。

エナメル上皮腫は死亡率が高いのでしょうか?

この病気に罹患した場合の死亡率は、高くないと考えられています。しかし、まれに悪性腫瘍になって周囲の組織に転移していく事例もあります。
腸骨再建などの手術を要する場合も起こるリスクのある病気です。エナメル上皮種の可能性がある場合は、早めに治療を進めることをおすすめします。

エナメル上皮腫を放置するリスクを教えてください。

前述の通り、エナメル上皮腫は無症状で経過するケースが多いです。そのため、気付かない間に腫瘍が大きくなっている可能性があります。
まれに悪性腫瘍になるリスクがあるため放置するのはおすすめできません。また、顔の変形・バランスの悪さが進行するリスクがあります。
さらに、歯列不正や歯の不安定さにより食生活への悪影響が及ぶケースも懸念されます。軽視することなく、専門医と相談しながら適切な治療を受けましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

この病気は、ほとんどが良性腫瘍で無症状で経過することが多いため病状の進行に気付きにくいのが特徴です。放置して病状が進行すると、顔の形が変わったり左右のバランスが悪くなったりします。
また、悪性腫瘍に変化する可能性もあるため、ぜひ治療を検討してください。定期的な歯科健診を受けて、早期発見につなげるのもおすすめです。

編集部まとめ

受診する女性
エナメル上皮腫は痛みを伴うケースが少なく、症状の進行も遅いため、気付かない方も多いでしょう。良性腫瘍であるケースが多いため、治療するまでもないと判断する方も多いかもしれません。

しかし、病状の進行により顔の見た目が変わったり、歯並びに悪影響が及んだりします。悪性腫瘍となって命に関わる重大な病気になるケースもまれになります。

この病気が見つかった場合は、決して放置することなく、治療を受けることを検討しましょう。また、治療後は再発に備えて定期的な健診を受けることをおすすめします。

この記事の監修歯科医師