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「唾液腺がん」を疑う初期症状・原因・生存率はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/16
「唾液腺がん」を疑う初期症状・原因・生存率はご存知ですか?医師が監修!

唾液腺がんは、唾液を作る臓器である唾液腺にできてしまう悪性腫瘍のことを指します。頭頸部がん全体の5%程度の、がんとしては発生頻度が多くない部類に入るでしょう。

しかし、逆に診断が難しく、悪性腫瘍の範囲を限定しづらく治療が難しいともいわれています。唾液腺がんの症状が疑われる場合は、早めに専門医に相談するのが良いでしょう。

今回は、唾液腺がんについての解説をします。症状の特徴・発症する原因・受診すべき診療科・検査方法・罹患後の余命についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

熊谷 靖司

監修歯科医師
熊谷 靖司(歯科医師)

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熊谷歯科医院 院長

唾液腺がんとは?

口を開ける

唾液腺がんはどのような病気でしょうか?

唾液腺がんとは、唾液を作る臓器である唾液腺に発症するがんです。唾液腺に悪性腫瘍が発生する病気のことを指します。唾液腺は、大きく分けると大唾液腺と小唾液腺の2つです。大唾液腺は耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つから構成されています。
小唾液腺は、口腔粘膜やのどの粘膜の一部に存在しており、口の中に直接唾液を分泌する働きを持っています。これらの臓器のいずれかで悪性腫瘍が発生した場合が、唾液腺がんです。唾液腺がんのほとんどは耳下腺がんと顎下腺がんであるとされており、舌下腺に腫瘍が発生するケースはまれです。

唾液腺がんの症状を教えてください。

唾液腺がんに罹患すると、耳の下やあごの下が不自然に腫れてくる症状がみられます。がんの特徴として、腫れが急速に広がっていく傾向があるため、悪性腫瘍と気付くケースが多いです。唾液腺の周辺を顔面神経が通過していることから、唾液腺がんになったら顔面神経麻痺を発症するケースがあるともされています。
最初はあまり痛みを感じないことが多いですが、徐々に痛みが増していき、しびれや麻痺といった症状が表れてくるケースもみられます。何の原因もなく、不自然に腫れが発生してきたら、唾液腺がんの疑いがあるため、早急に専門医に相談しましょう。

初期症状はどのようなものがありますか?

唾液腺がんの初期症状としては、耳の下やあごの下の腫れが起こるケースが多いです。最初は痛みを伴わない場合が多いため、大したことはないと自己判断してしまう方も多いかもしれません。しかし、放置していると徐々に痛みが発生してきて、のちにしびれや麻痺などが発生してしまう恐れがあります。表情を上手く変えられず、困るケースもあるでしょう。
唾液腺がんでは、食べ物を食べた時に、痛みを感じる場合も多いです。食べ物が口に入ったことで、反射的に唾液が分泌され、痛みを感じてしまう場合もあるでしょう。ただ単に顔が腫れている程度でも、唾液腺がんの可能性があります。少しでも違和感があれば、早めに専門の医師に相談しましょう。

何が原因で唾液腺がんを発症するのでしょうか?

唾液腺がんが発症する原因は、まだ解明されていませんが、主に以下のようなものがリスク印紙として考えられています。

  • 高齢であること
  • 頭頸部に対する放射線療法の影響
  • 放射線など有害物質を浴びてしまう仕事への従事

唾液腺がんは、発症の症例が多くないため油断する方も多いかもしれません。しかし、唾液腺がんはれっきとしたがんであり、罹患した場合は長期間の治療を余儀なくされてしまいます。
少しでも普段とは異なる初期症状が発見された場合は、できるだけ早めに専門医に相談しましょう。

唾液腺がんを受診する診療科

医師

唾液腺がんを疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか?

唾液腺がんと思われる症状があらわれてきた場合、まずは耳鼻咽喉科に相談に行きましょう。まずは最寄りの病院やクリニックで診断を受けると良いでしょう。診断・検査の結果、悪性腫瘍があると疑われる場合には、がん治療における設備が整った専門の病院を紹介してもらいます。
人間の頭部には唾液腺以外にも様々な臓器が集中しているため、唾液腺がんの症状が現れたとしても、他の病気である可能性も大いにあります。医師の判断をしっかりと聞き、正しく対処して治療に臨むことが大切です。

唾液腺がんの検査方法を教えてください。

唾液腺がんの検査は、穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)という方法を採用するのが一般的です。これは、病変の箇所に注射針を穿刺し、内部の細胞を吸引する方法になります。
通常、がんの検査は病変の一部を塊として採取して検査を行うのが一般的です。採取した組織を検査して良性・悪性の鑑別や病気に罹患している組織の確認を行ないます。しかし、唾液腺の場合は病変の箇所に到達するのが難しいため、穿刺吸引細胞診が採用されることが多いです。

どのような手術を行うのでしょうか?

唾液腺がんの治療には、手術を用いるケースが多いです。基本的には、悪性腫瘍の部分を含んだ組織を切除する手術を実施します。腫瘍の進行度によって、全摘出か一部の組織を取り除くのかを判断します。組織を取り除いた後、欠損してしまった部分については腹部の筋肉・皮膚・大腿部の皮下脂肪などを移植して補うのが一般的です。
頸部リンパ節に転移している場合、あるいは潜在的な転移の可能性が疑われる場合は、同時にリンパ節の切除も検討しないといけません。切除した検体の病理結果次第では、追加で放射線治療を実施する場合もあります。

放射線療法や化学療法は行わないのでしょうか?

唾液腺がんの治療は、まず手術の実施を検討します。放射線治療や化学療法をメインの治療法とするケースは多くありません。唾液腺がんに対して、放射線治療や化学療法は高い効果が期待できないという考え方が主流です。しかし、手術によって摘出した組織を倦怠として検査し、その状態によっては補助的に放射線治療を実施するケースがあります。
また、唾液腺がんの種類によっては、放射線に対して感受性を持つものもあります。その場合には、放射線治療を実施する方が良いと判断される場合もあるでしょう。しかし、現状では唾液腺がんの治療には手術を行うのが一般的であると理解しておきましょう。

唾液腺がんの予後

健康的な女性

唾液腺がんは生存率が低いのでしょうか?

唾液腺がんに罹患した場合の5年生存率は、がんの進行ステージがIV期に達した場合、かなり低いことが分かっています。耳下腺がんの場合は43%、顎下腺がんの場合は25%という報告もあります。唾液腺がんは、リンパ節への転移や肺への遠隔転移が発生するケースが多いです。
唾液腺がんの摘出が終わったとしても、すでに転移がみられている場合が少なからずあるため、生存率は低いです。がんは、早期治療が重要であるため、耳やあご周辺の腫れなど初期症状がみられたら早めに専門医に相談をしましょう。

唾液腺がんと診断された場合の余命を教えてください。

唾液腺がん患者は、前述のように低い生存率が報告されています。ステージIVに達した患者は、余命宣告を受けてしまう場合もある怖い病気です。前述のとおり、5年生存率は25%という報告もみられるほどです。唾液腺がんに罹患した場合に起こる初期症状を見逃さず、早めに医師に相談するのが良いでしょう。
がんは、早めに対処することで生存率が大きく変わってきます。少しでも違和感を覚えたら、早めにかかりつけの耳鼻咽喉科に行って診断を受けましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

唾液腺がんは、生存率が低いと考えられている治療が難しい病気です。治療には手術を用いるケースがほとんどであるため、必ず専門医に相談をしてください。
耳やあごなど顔の部分に原因不明の腫れが見つけられた場合は、できるだけ早めに対処しましょう。早期に治療を開始することにより、完治する可能性は高まります。気軽にかかりつけの医師に相談してください。

編集部まとめ

白衣
唾液腺がんは、進行が早く周囲への転移も多くみられるがんです。できるだけ早めに対処して治療を開始すれば、生存率は高くなるでしょう。

人間の頭部には、様々な臓器が集中しています。初期症状だけではどの部位に異常があるのか判断するのが難しいため、医師の判断をよく聞いて指示に従うのが良いです。

耳周りの腫れなど、少しでも身体に違和感があった場合は、早めに医師に相談をすることが大切です。ぜひ早期の治療に臨んでください。

この記事の監修歯科医師