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「SIBO(小腸内細菌増殖症)」の症状・原因・食事の注意点はご存知ですか?

 更新日:2023/04/11
「SIBO(小腸内細菌増殖症)」の症状・原因・食事の注意点はご存知ですか?

SIBO(小腸内細菌増殖症)とは、世界的にも認知度が低く、近年注目され始めた小腸の病気です。

普段の生活の中で、腹痛や便秘といった症状はさほど珍しくありません。しかし、いつものことだと考えていると症状が積み重なり、SIBO(小腸内細菌増殖症)を発症する要因になる可能性があります。

本記事では、SIBO(小腸内細菌増殖症)とはどのような病気なのか、発症時の症状・原因・治療・予防法などについて詳しく解説していきます。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

SIBO(小腸内細菌増殖症)とは

調査する女性

SIBO(小腸内細菌増殖症)はどのような病気ですか?

SIBO(小腸内細菌増殖症)とは、小腸内の細菌が過剰に増殖してしまう病気です。通常の小腸内には約1万個の細菌が存在していますが、SIBOを発症した場合、細菌の数は10万個以上にまで急激に増殖します。
SIBO(小腸内細菌増殖症)は世界的に見ても比較的新しい疾患であり、近年研究が進んでいます。そのため、まだ日本国内ではあまり認知されていないのが現状です。

症状を教えてください。

SIBO(小腸内細菌増殖症)を発症すると、腸内細菌の過剰増殖により食べた物を発酵させて大量のガス(メタンや硫化水素)を発生させ、以下の症状が出やすいです。

  • 頻繁にゲップが出る
  • お腹が張る
  • 便秘や下痢
  • 胃酸が逆流する

上記の症状は、IBS(過敏性腸症候群)とよばれる消化器系の病気にも該当します。また、IBS(過敏性腸症候群)のなかにSIBO(小腸内細菌増殖症)が隠れている場合もあります。
その症状として、小腸内にメタンが多いと便秘になりやすく、硫化水素が多いと下痢になりやすいです。
健康な小腸は、液体で満たされているため細い状態で腹腔内に納められていますが、大量のガスにより圧迫されてしまうと体に悪影響が出てしまうのです。

発症する原因を教えてください。

SIBO(小腸内細菌増殖症)を発症する原因は、主に以下の4つです。

  • 小腸の機能低下
  • 小腸は糖尿病・パーキンソン病などの基礎疾患や神経障害により機能が低下しやすいです。消化器系は、自律神経の高まりが消化作用に直接関わるため、精神状態の変化が腸内のぜん動運動に大きな影響を与えます。
    小腸のぜん動運動が低下すると、食べた物がなかなか消化されずに腸内に残り続けてしまい、腸内に細菌が増える要因になります。これが繰り返されることで、残った食べ物が発酵してガスが発生してしまうわけです。

  • 胃酸の減少
  • 胃酸は、食べ物の消化や腸内環境を整える重要な役割をもっています。胃酸が減少する原因としては、自律神経の失調・ホルモンバランスの乱れ・ピロリ菌感染などが挙げられます。
    自律神経の乱れと消化器系との関係が深いですが、ピロリ菌も胃酸を減少させる要因になります。ピロリ菌は、胃の粘膜に生息する細菌です。感染してしまうと胃酸を抑える効果があり、除去しない限りは腸内に残り続けるため慢性胃炎の状態が続きます。
    胃炎の腸内は、胃液や胃酸を分泌する組織が炎症を起こして胃の粘膜が萎縮してしまいます。その結果、腸内の細菌が過剰に増殖する環境になってしまうので注意が必要です。

  • 栄養食品の過剰摂取
  • 普段から健康によいとされる栄養食品を摂っている方は多いでしょう。野菜・果物を中心とした食物繊維やヨーグルト・納豆などの発酵食品は腸内環境によいとされています。
    しかし、体によいからといってこれらの食材を摂り過ぎてしまい、下痢や腹痛を引き起こしたことはありませんか。特に発酵食品は、摂り過ぎると腸内でガスを生成する要因となってしまいます。

  • 薬剤による副作用
  • 抗生物質やピロリ菌を抑える薬を長期にわたり服用すると、副作用により胃酸が減少してしまいます。その結果、腸内細菌が増殖し、SIBO(小腸内細菌増殖症)を発症するリスクが高まるでしょう。

SIBO(小腸内細菌増殖症)の診断と治療

診断書と聴診器

何科を受診すれば良いでしょうか?

SIBO(小腸内細菌増殖症)は消化器系の疾患のため「消化器内科」または「胃腸科」を受診してください。
しかし、医師は単に長期的な腹痛・下痢・便秘といった理由だけでSIBO(小腸内細菌増殖症)だと判断できません。前述のとおり、SIBO(小腸内細菌増殖症)は国内ではあまり認知度が高くなく、明確な判断基準が定まっていないためです。
消化器系の専門医でさえ気づかないケースも少なくありません。そのため、正確な治療には多角的な診断が必要になります。また、自律神経の影響も受けやすいので、日々ストレスを感じている方であれば心療内科や精神科の診断も検討するとよいでしょう。

どのような検査で診断されるのでしょうか?

SIBO(小腸内細菌増殖症)の診断には「呼気検査」が行われます。呼気検査とは、糖質を含む食べ物を食べたあとに、吐く息を検査する診断方法です。
検査時間は2~3時間程度かかり、小腸内に細菌が増殖している場合、メタンや硫化水素が検出されます。一般的にもっとも費用対効果の高い診断方法として用いられています。
なぜなら、細菌の増殖によって小腸にガスが溜まっている状態は、CTやエコーなどの画像検査では正確な診断ができないからです。呼気検査を受診する場合、12時間の準備食期間と断食期間があり、それぞれ食事制限がされます。準備食をとる理由は、測定する呼気の発酵食品の割合を最小限にして、明確な規定値を定めるためです。
呼気検査を受診する際の注意点としては、自己検査に該当するため医療保険が適応されません。そのため、検査費用として4~5万円ほどかかってしまう点です。詳細な金額は、呼気検査が行えるクリニックや専門の施設にて確認してください。

治療方法を教えてください。

SIBO(小腸内細菌増殖症)の治療方法には食事療法・薬物療法・心理療法の3種類があります。

  • 食事療法
  • 小腸内の細菌を増やさないために低FODMAP食とよばれる食事療法が有効です。低FODMAP食とは、「発酵性(Fermentable)」・「オリゴ糖(Oligosaccharides)」・「二糖類(Disaccharides)」・「単糖類(Monosaccharides)」・「ポリオール類(Polyols)」これらの頭文字をとった小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称です。
    糖質が低く、腸内の細菌増殖を抑える効果が期待できます。
    逆に高FODMAP食といわれる小麦を使った糖質が高い食材を避け、腸内環境の改善を目的としています。

  • 薬物療法
  • SIBO(小腸内細菌増殖症)の治療や再発防止のために抗生物質による薬物療法が有効です。治療が進んでいる欧米諸国では、下痢に効果が高いとされるリファキシミン・ネオマイシンなどが広く使われています。
    腸のぜん動運動を促すためには、モサプリド・エリスロマイシン・漢方薬などが使用されます。

  • 心理療法
  • 過度にストレスがかかった状態は、消化不良や吐き気などの症状が表れやすくなります。そのため、SIBO(小腸内細菌増殖症)は精神面のケアも重要な疾患です。
    アダプトゲンという気分を落ち着かせる作用があるハーブや瞑想・ヨガといった呼吸法を行い、ストレスの軽減を目的に小腸のぜん動活動の改善を図ります。

市販薬は使用できますか?

SIBO(小腸内細菌増殖症)の治療には、薬局やドラッグストアで購入できる市販の第3類医薬品や漢方薬がお腹の張りや便秘に効果的とされています。しかし、薬剤そのものに腸内の殺菌作用がある物や、長期服用すると結局便秘を引き起こしてしまう物もあります。
さらに服用後に発疹や痒みが出たという報告もあるため、使用する場合は一時的な効果はあれど副作用の可能性も考慮しておきましょう。また、購入前に店舗のスタッフや薬剤師に相談するとより確実でしょう。

SIBO(小腸内細菌増殖症)の予防

診察する女医

SIBO(小腸内細菌増殖症)は治りますか?

SIBO(小腸内細菌増殖症)は、一度かかってしまうと慢性的に発症しやすく、再発性の高い病気です。一般的な再発の期間は約3ヵ月といわれています。
しかし、重度の基礎疾患を除く偏った食事や過度のストレスなど、腸内の細菌が増殖する原因に対して適切な対処を施すことで症状の改善・再発防止につながるでしょう。

改善するために食事で注意することを教えてください。

腸内環境が悪い場合には、前述した低FODMAP食を意識して糖質を控えた食事を心がけましょう。
具体的な食品としては、穀物ではお米やオート―ミール、果物ではバナナやオレンジ、野菜ではトマトやブロッコリーなどは比較的糖質が低いためおすすめです。対して、パン・ラーメンといった小麦を使った物や桃・柿などの糖質が多い食材はできるだけ避けるようにしてください。
また、単品ではなく、複数でバランスよく摂取することが重要です。症状が改善していくと同時に徐々に食べる範囲を拡げていきましょう。

予防方法を教えてください。

SIBO(小腸内細菌増殖症)を予防する方法としては、以下の4つが効果的です。

  • 体の異常を感じたら早期対処
  • SIBO(小腸内細菌増殖症)に知見のある医師を見つける
  • 糖質を意識した食事管理
  • ストレスフリーな環境づくり
  • 普段の生活をしていると、腹痛や便秘といった症状は珍しくありません。しかし、急激なお腹の張りや慢性的な下痢などの場合は早急に医師の診断を受けるようにしましょう。
    また、体調が優れないことがストレスになっているケースもあるため、糖質を意識した食事管理は症状の改善と同時にストレス軽減にも効果が期待できます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

SIBO(小腸内細菌増殖症)は、病気が少ないといわれる小腸の数少ない疾患です。一般的だけでなく医師にも認知が少ないため、たとえ発症していてもSIBO(小腸内細菌増殖症)と診断されずに適切な治療を受けられない方もいます。
しかし、逆に珍しい病気のため高額な薬剤や治療費を請求してくる医師もいるようです。そのような医師は総じて消化器系以外の自由診療を行っている場合が多いため、治療を受ける際は必ず「消化器内科」の医師に診断してもらいましょう。
また、腹部の張りや下痢が頻繁に起こるにもかかわらず、CTやエコーによる画像検査では原因が分からない場合は、SIBO(小腸内細菌増殖症)の可能性があるので覚えておきましょう。

編集部まとめ

人差し指を立てる女性
SIBO(小腸内細菌増殖症)について解説してきました。

珍しい病気のため、聞きなれない方も多かったのではないでしょうか。消化器系の専門医でさえ気づかない場合がある病気です。

そのため、できるだけ自身でもSIBO(小腸内細菌増殖症)に関する情報を知っておきましょう。実際に正しい治療を行ってもらえず苦しんでいる方々もいます。

SIBO(小腸内細菌増殖症)にかかってしまった場合、もっとも効果的な治療法は糖質の低い食事療法を行い症状を徐々に改善していくことです

いきなり多くの制限をするのではなく、ストレスを感じない程度の食事管理から始めてみてください。同時に医師からの薬剤療法を並行することでより効果が期待できるでしょう。

本記事を機にSIBO(小腸内細菌増殖症)に関する知識を深めてもらい、もしも発症してしまった場合に正しい対処法を取って改善に繋げてもらえたら幸いです。

この記事の監修医師