「春季カタル」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!
春季カタルとは、アレルギー性結膜疾患の一種であり、学童期の男児に見られることの多い病気です。
聞き慣れない人も多いかもしれませんが、悪化すると視力の低下などを引き起こすために早期の発見と治療が大切です。
そこで本記事では、春季カタルとはどのような病気なのかをご紹介します。
原因・症状・なりやすい人の特徴・治療方法・完治するのかについても詳しく解説するので、お子様の異常に早めに気づけるようにするためにも、特徴をしっかり把握しましょう。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
春季カタルの原因と症状
春季カタルはどのような病気でしょうか?
冬になると症状が軽くなりますが、春から夏にかけて症状が広くなることからこの名前が付けられています。幼児から学童期くらいまでの男子児童に発症するケースが多く、成長につれて症状が軽くなる傾向です。
発症する原因を教えてください。
- 花粉
- ダニ
- コンタクトレンズの汚れ
春になると症状が悪化しやすいのは、スギ・ヒノキ・ブタクサなどの花粉が飛び交っているためです。また、ダニやコンタクトレンズの汚れなどにもアレルギー反応を示して発症する場合もあります。
どのような症状がみられますか?
- 目のかゆみ
- 充血
- 浮腫
- 涙目
- 目の異物感
代表的な症状が目のかゆみです。かゆみが伴うために目を強くこすって角膜を傷つけてしまい、目の強い痛みを生じるケースもあります。角膜を傷つけてしまうと視力の低下を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
その他にも、充血・浮腫・涙目など、一部花粉症の時に感じるような症状が現れることもあります。また、まぶたの裏にゴツゴツとした腫れができるため、異物感をおぼえることも多いです。
これらの症状は重症化すると学業や日常生活にも支障が生じる可能性があるため、お子様が目のかゆみを訴えている場合は早めに専門の医療機関を受診しましょう。
なりやすい人の特徴を教えてください。
- 幼児から学童期の男子児童
- アトピー体質の人
- 喘息にかかっている人
- ストレスが多い人
なりやすい人の特徴の1つが、幼児から学童期の男子児童であることです。理由ははっきりとは分かっていませんが、思春期を迎えるまでの男子児童に多い傾向があります。
なお、思春期を境に症状が改善することもありますが、持続することもあるため症状が長引くケースがある点も把握しておきましょう。
さらになりやすい人の特徴としては、これまでの症例から、アトピー体質の人・喘息にかかっている人・ストレスが多い人もかかりやすいと考えられます。
春季カタルの治療
診断ではどのような検査を行いますか?
そして、発症時期・アレルギー歴・家族歴などをもとに、春季カタルであるかを総合的に判断します。一般的には、諸症状から診断が行われるため特別な検査が行われるケースは少ないですが、アレルギー検査などを行う可能性もあるでしょう。
アレルギー検査では、アレルギー反応を起こしている原因物質を把握します。
治療方法を教えてください。
- 内科的治療
- 外科的治療
内科的治療としては、かゆみや炎症などを軽くする抗アレルギー点眼薬などを使用した方法です。
通常のアレルギー性結膜炎の治療と同様の薬が使われます。しかし、この薬だけでは症状が改善しないケースも多いです。その場合は、以下のような薬の使用も検討されます。
- ステロイド内服薬
- ステロイド結膜下注射
- 免疫抑制剤
症状の経過を診ながら、上記の薬を組み合わせて治療を進めます。しかし、内科的治療では効果が現れない場合や症状が進行してしまう場合には、外科的治療が検討されるでしょう。
外科的治療としては、結膜乳頭の切除や角膜プラークの切除を行います。薬の効果や手術が必要となるかなど確認を取りながら、医師としっかり相談した上で治療を進めることが大切です。
治療期間はどのくらいですか?
しかし、症状が重い場合や合併症が伴う場合には、治療期間が1カ月を超えるケースもあります。さらに、アレルギー物質によっては薬による治療を継続的に行わなければならないケースもあるでしょう。薬の使用を止めると、症状が再発することがあるためです。
どのような薬を使用するのでしょうか?
- 抗アレルギー点眼薬
- 抗アレルギー内服薬
- ステロイド点眼薬
- ステロイド内服薬
- 市販の目薬
軽度の症状の場合には、ケトチフェンなどの抗アレルギー点眼薬などの使用が一般的です。抗アレルギー点眼薬には、ヒスタミンH1拮抗点眼薬とメディエーター遊離抑制点眼薬の2種類があります。ヒスタミンH1拮抗点眼薬は、かゆみを引き起こすヒスタミンの作用を阻止してくれるためアレルギー症状を緩和してくれます。メディエーター遊離抑制点眼薬は、ヒスタミンが増えないように作用して症状緩和につながる薬です。
そのため、メディエーター遊離抑制点眼薬の使用は、症状が現れる前から使用しなければなりません。また、フェキソフェナジン・セチリジン・ヒドロキシジンなどの抗アレルギー内服薬なども、鼻や耳などにアレルギー症状が出ている場合に有効です。しかし、症状が悪化すると抗アレルギー点眼薬や内服薬では十分に改善されないことがあります。その場合は、ステロイドの点眼薬や内服薬を使用する場合もあります。
ステロイド点眼薬は、症状緩和の効果に期待できる一方で、眼圧を上げてしまったり目の感染症リスクを高めてしまったりといった副作用があるため注意が必要です。ステロイド内服薬も含め、使用する際には必ず専門の医療機関の指示のもとで用いましょう。
市販の目薬は症状の緩和だけでなく、自覚症状が現れる前につけ始める薬として有用です。クロルフェニラミンやロタノールなどがあり、かゆみや涙目などを抑える効果が期待できます。様々な薬があり種類によっては副作用などもあるため、市販のものを利用する場合であっても、必ず医師に相談した上で使用しましょう。
春季カタルの予後
春季カタルは完治しますか?
また、思春期が訪れると自然に治るケースもあるため完治しないわけではありません。一方、症状が悪化している場合は、薬が十分効かなかったり思春期を迎えても自然に回復しなかったりするケースもあります。
その場合は、大人になっても継続的に治療が必要な場合もあるため、医師の指示に従いながら適切な治療を進めましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、目のかゆみから過度にこすってしまって、角膜を傷つけてしまうといった問題もあります。
ご両親など周囲の人が気づけるように、正しい知識をもって治療にあたりましょう。治療には、点眼薬や内服薬が用いられますが、中には副作用のあるものもあります。用法用量を守っての使用が重要なので、医師に相談しながら指示をしっかりと受けた上で使用しましょう。
編集部まとめ
春季カタルは、男子児童に多い病気です。原因ははっきりとは分かっていませんが、アレルギー反応によって引き起こされると考えられています。
思春期を境に自然に治る場合もありますが、継続的に症状が現れ大人になってからも治療を続ける必要があるケースもあります。
症状がひどい場合は、日常生活や学業などにも支障が出るかもしれません。そのような支障を出さないためにも早期発見できるように、正しい情報を把握しておきましょう。
万が一、お子様に異変が生じた場合や春季カタルの疑いがある場合には、すぐに専門の医療機関を受診しましょう。
参考文献