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「猫アレルギー」の症状・飼っていて発症した場合の対処法はご存知ですか?

 更新日:2023/03/27
「猫アレルギー」の症状・飼っていて発症した場合の対処法はご存知ですか?

猫は人気のペットであり、人間にとって最も身近な動物といえます。愛らしい姿から飼ってみたいと思っている人も多いでしょう。

しかし猫をなでたり抱っこしたり、猫を飼っているお宅に招かれたりしたとき、鼻水・くしゃみ・目や皮膚のかゆみなどの症状が表れたことはありませんか。

また、すでに猫を飼っているのに最近同じような症状が気になっていませんか。もしかしたら猫アレルギーかもしれません。

この記事では、猫アレルギーの症状・原因物質・発症した場合の対処法などを紹介します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

猫アレルギーの症状と原因

咳する女性

猫アレルギーとはどんな病気ですか?

人間の体には、体の成分と異なる物質が外部から入ってくると、攻撃して排除しようという仕組みがあります。これが免疫です。アレルギー反応は広くは免疫の一つですが、体を守るだけでなく自分自身の体も傷つけてしまう反応のことをいいます。
アレルギー反応を引き起こす原因物質がアレルゲン(抗原)です。その多くがタンパク質であり、食物・ダニ・カビ・花粉などとともに猫など動物の皮屑が含まれます。
猫アレルギーとは、猫の皮屑(フケ・垢)に反応するアレルギー症状のことです。猫のフケ・垢に付着したアレルゲンが体内に入るとIgE抗体が作られ、待機している状態になります。これを感作といいます。
そしてアレルゲンが再び体内に侵入したときにIgE抗体が反応し、アレルギー症状を引き起こすのです。

猫アレルギーではどんな症状が出ますか?

猫などのアレルゲンに反応するIgE抗体は即時型アレルギー反応を引き起こします。以下のような症状が挙げられます。

  • アレルギー性鼻炎(くしゃみ・鼻水・鼻詰まり)
  • アレルギー性結膜炎(目のかゆみ・充血・目やに)
  • 気管支喘息(気管支の収縮・粘膜のはれ・たんの分泌増加で気道が狭くなり、ヒューヒュー、ゼーゼーと呼吸が苦しくなる)
  • アトピー性皮膚炎(慢性的に顔や体にかゆみを伴う湿疹)
  • じんましん(一時的に皮膚がぶつぶつと赤く膨らみ、跡が残らないのが特徴)
  • アナフィラキシー(呼吸困難・じんましん・しびれ・血圧低下などの急激に表れる全身症状)

特に短時間のうちに全身に呼吸困難やじんましんなどの症状が急激に表れるアナフィラキシーは、ショック状態(アナフィラキシーショック)になると命の危険があるため注意が必要です。猫に触れたときに症状が出たら、猫アレルギーの可能性があります。

猫アレルギーの原因物質はなんですか?

猫由来のアレルゲンとしては 8 種が知られており、特にFel d 1(フェルディーワン)は猫アレルギーの人の90%以上が反応するとされています。
Fel d 1は唾液腺や皮脂腺で作られ、猫が毛づくろいでなめることで毛に移ると考えられてきましたが、毛の表面にも元々あることが分かりました。非常に細かい物質のため空気中に長時間浮遊します。

猫アレルギーの発症率はどれくらいですか?

5人に1人が猫アレルギーといわれていますが、症状の程度はさまざまです。また、血液検査で陽性を示しても実際には症状が出ない場合もあります。気管支喘息やアレルギー性鼻炎の人は猫アレルギーの可能性も高いと考えられています。

猫アレルギーの診断・治療方法

問診票

猫アレルギーはどのように診断されますか?

自覚症状があれば内科・小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科などを受診しましょう。日本アレルギー学会が認定するアレルギー専門医のいる医療機関もあります。問診では以下のようなことが聞かれるでしょう。

  • どのような症状か・いつからどのようなときに症状が出るのか(皮膚に出た場合は写真に残しておくと役立ちます)
  • これまでにかかったアレルギー疾患
  • すでにアレルギー治療している場合は薬の種類・使用期間・治療方法
  • 家族にアレルギー疾患の人がいるか

血液検査では各種アレルゲンに対するIgE抗体の量を測定します。測定量は0~6の7段階で示され、200項目以上のアレルゲンを調べることが可能ですが、医療機関では猫や犬の皮屑を含む39項目の検査が一般的です。保険適用でどのような検査ができるか相談してみましょう。
検査結果が出るまで1週間ほどかかります。ただ検査結果でIgE抗体が陽性を示していても実際に症状が出るとは限りません。また、猫アレルギーだと思って受診しても別のアレルゲンが原因の症状ということもあります。

猫アレルギーは治るのでしょうか。

症状を和らげたり抑えたりするための治療や対策はありますが、完全に治す方法は今のところありません。アレルギーの根治を目的とした方法に、減感作療法(アレルゲン免疫療法)があります。
アレルゲンを低濃度から体内に取り込み、少しずつ濃度を上げていくことで体を慣れさせ、アレルギー症状が出ない体質・状態にしていくものです。食物アレルギー・スギ花粉症・ダニアレルギーなどの治療が行われていますが、猫アレルギーなどの動物アレルギーについてはまだ確立されていません。

症状を抑える薬はありますか?

アレルギー症状に応じた薬が処方されます。症状が表れたときに軽減させるための薬アレルギー性炎症反応が起きないようにコントロールするため長期的に服用する薬があります。

  • アレルギー性鼻炎 抗ヒスタミン薬・鼻噴霧用ステロイド薬
  • アレルギー性結膜炎 免疫抑制の点眼薬
  • 気管支喘息 発作が起きないように気道の慢性炎症を抑える吸入薬や飲み薬・発作の際に気道を拡げる短時間作用性β2刺激薬(吸入薬・内服薬)やテオフィリン薬
  • アトピー性皮膚炎 皮膚のバリア機能を守り、炎症を抑えるステロイド外用薬やタクロリムス外用薬・かゆみを軽減させる抗ヒスタミン薬
  • アナフィラシキー アナフィラキシーが起きたときに使うアドレナリン自己注射液

猫アレルギーの予防方法

家

猫アレルギーの予防方法や対策法を教えてください。

猫アレルギー症状の予防にはアレルゲンの回避が最も重要となります。そのため、猫を飼わないようにすることに加え、猫に触れないことや猫のいる部屋に行かないことを心がけましょう。
猫を飼っている人は、アレルゲン物質を除去するために日ごろからこまめに猫のフケ・垢、ともに発生するダニ・ほこりを掃除してください。猫のフケ・垢の多い環境で長期的に生活すると、アレルギー症状を引き起こすIgE抗体が体内で作られていく可能性があります。

すでに猫を飼っていてアレルギーを発症した場合の対処法を知りたいです。

まずは、アレルゲンをまき散らす猫の毛・フケ・垢をこまめに掃除することです。掃除機をかけ、カーペットなどを粘着クリーナー(コロコロ)できれいに保ちましょう。布製のクッションやソファ、ぬいぐるみなどは猫の毛などが付きやすいため、なるべく置かないことが望ましいです。カーテンもブラインドやロールカーテンに替えるとよいでしょう。
猫に触れた後は手を洗うようにしてください。飼育用の部屋を決め、猫アレルギーのある人の居室や寝室に入れないようにする対策もあります。猫の体を定期的にブラッシングして抜け落ちる毛の量を減らしましょう。こまめに洗ったり、シャンプー効果のあるウェットタオルで拭いたりするとさらによいです。
猫アレルゲンのFel d 1(フェルディーワン)は分子量が小さく空気中に浮遊するため、空気清浄機も低減するためには有効です。猫の体質改善によるアプローチもあります。「ピュリナ プロプラン リブクリア」というキャットフードをご存じでしょうか。この商品のメーカーによると、猫に毎日食べさせると猫アレルゲンを中和させ減らす効果があるということです。
猫を飼ってから発症した猫アレルギーの症状が重篤ならば、譲り受けてくれる人を探す必要が出てくるかもしれません。例えば、保護猫カフェには譲渡にあたって万が一の際に猫を引き受けてくれる保証人を求めるお店もあります。
最後まで責任を持って対応しましょう。猫を飼いたいと希望している人は事前に猫を飼っているお宅や保護猫カフェを何度か訪れ、30分以上過ごしてみて体に症状が出ないか確認することをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

猫を飼っている人が猫アレルギーを発症しても、できる対策は多くあります。引き続き大切な猫と暮らせるように前向きに室内の環境を整えてみてください。猫を飼うことを検討している人は、できるだけ事前に猫アレルギーがないか確認するように努めましょう。
猫は室内飼育が推奨されており、多くの人が飼っている人気のペットです。誰でも日常生活で触れる機会が訪れるかもしれません。そのときに思わぬ症状に見舞われたら、猫アレルギーの可能性を考えましょう。

編集部まとめ

猫
猫アレルギーは、くしゃみ・鼻水・目のかゆみ・喘息などの症状を引き起こします。

症状に応じた薬を処方してもらうことで、アレルギー反応が出ないようにコントロールすることも可能ですし、猫アレルゲンを減らすように環境を工夫・対策することもできます。

ただアナフィラキシーショックなどの重篤な症状が起こる可能性もあるので注意してください。

猫に触れたときに何らかのアレルギー症状が表れた人や猫を飼っていて最近体調の異変を感じるようになった人は一度医師に相談してみましょう。

この記事の監修医師