「滑液包炎」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
滑液包炎とは、運動の摩擦などを和らげるための役割を持つ滑液包が炎症を起こす病気です。
過剰な運動などで使われ過ぎることで発症する可能性があり、誰しも起こり得る病気です。適切な治療を行うためには、正しく病気を把握しておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、滑液包炎とはどのような病気かについてご紹介します。滑液包炎の原因・検査方法・治療方法・治療期間についても併せて解説するので、参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
滑液包炎とは?
滑液包炎とはどんな病気なのでしょうか。
また、滑液包炎は次のような種類に分けられます。
- 急性滑液包炎
- 慢性滑液包炎
急性滑液包炎は、炎症反応が強く、少し関節を動かしたり触ったりするだけでも痛むような状態です。
一般的な症状としては、膝や肘などは滑液包が皮膚の表面近くに位置しているため、皮膚が赤く腫れるようなこともあります。症状は、数時間~数日間かけて発生します。
慢性滑液包炎は、急性滑液包炎が繰り返したり繰り返し摩擦が起きたりすることで発症する病気です。痛みや腫れが続くと、関節の可動域が狭くなっていたり、動作時に強く痛んだりします。
これによって筋力の低下なども引き起こされる可能性があるため注意が必要です。
滑液包炎の初期症状が知りたいです。
- 違和感
- 痛み
- 腫れ
初期症状としては、違和感を覚えることから始まることが多いです。関節を動かす時に動かしづらさなどの違和感を覚えます。
そして、痛みも初期症状の1つです。動いた時に圧迫や引き延ばされるために痛みを伴います。強く押した時に圧痛を感じることもあるでしょう。
また、腫れが見られることがあります。肘などの場合は、滑液包が皮膚表面に近いこともあり、痛みよりも腫れの方が顕著に現れるケースもあります。
滑液包炎は痛風や感染症が原因になると聞いたのですが…
また、感染症による滑液包炎は、滑液包が細菌感染することで発症する疾患です。主に黄色ブドウ球菌などの感染症が挙げられます。
原因はさまざまであるため、痛風や関節症などでこの病気を発症している場合には、原因となる痛風や感染症の治療を行う必要があります。
滑液包炎の原因と検査方法
滑液包炎の主な原因を教えてください。
- 外傷
- 適度な運動
滑液包炎の原因の中で最も多いのが外傷です。スポーツや事故などによって外傷を受けた際に発症するケースがあります。
また、先述した感染症による滑液包炎も外傷をきっかけに細菌感染を起こすケースがあります。特に、免疫力が低下している方や糖尿病にかかっている方は、発症のリスクが高い傾向です。過度な運動も原因の1つです。
繰り返し負荷をかけすぎた場合や、普段とは異なる運動をした場合などで炎症が生じるケースがあります。骨・軟骨・皮膚・筋肉などと強い摩擦を繰り返すことで引き起こされます。
滑液包炎の検査方法ついて詳しく教えてください。
- 医師による身体検査
- 画像検査
- 滑液の検査
検査方法としては、医師による触診や視診などの身体検査が挙げられます。皮膚の腫れている場所を触って痛みが伴う場合や、関節の動きによって痛みが伴う場合には滑液包炎が疑われます。
また、画像検査も検査方法の1つです。MRI検査・X線検査・超音波検査などを用いて、滑液包炎の大きさなどを観察し診断確定に役立てます。さらに、滑液の検査を行うケースもあります。
採取方法は、針で滑液包から直接採取するというものです。肘や膝などの皮膚に近い滑液包の場合に用いられる方法となります。
滑液包炎を放置すると姿勢に影響がでたりするのでしょうか。
滑液包炎を放置すると、慢性滑液包炎と呼ばれる状態となり、関節の可動域に制限がかかったり限定的な動作時に強い痛みが伴ったります。例えば、膝の滑液包炎が発症した場合は、足の曲げ伸ばしの動作で激しい痛みが伴うことがあります。
そのため、痛みのない座り方や立ち方にしようとして、姿勢に影響が出ることがあるのです。日常生活にも大きな支障が伴うケースがあるため注意が必要です。
滑液包炎の検査・診断方法を教えてください。
この時、手術跡や外傷の有無も確認し、原因の特定も進めます。しかし、触診だけでは断定できないことも多いため、画像検査も併せて行うケースが多いです。 画像検査では、炎症がひどくない場合には検出が困難なケースもありますが、滑液包の内部にたまった滑液を検出できるためほとんど断定できます。
滑液の検査では、滑液包炎が感染症や痛風によって生じているかを診断するのに役立ちます。
滑液包炎の治療方法と期間
滑液包炎の治療方法について詳しく知りたいです。
- 安静
- 患部の固定
- 非ステロイド系抗炎症薬
症状が軽度の場合は、症状の出ている患部の動きを避けて安静にすることで、症状の緩和が期待できます。場合によっては患部を固定する方法も有効です。また、非ステロイド系抗炎症薬は、痛みや炎症の軽減に役立つ薬です。
これらの治療を行って、3~6週間程度経過しても効果が見られない場合には、滑液の吸引とステロイド薬の注射を行う場合があります。
しかし、感染症が原因の場合や慢性的な滑液包炎の場合には、次のような治療を行う必要があります。
- 抗菌薬
- 滑液の吸引
- 手術
感染症による滑液包炎の場合は抗菌薬の使用が必須です。先述した黄色ブドウ球菌などに有効な抗菌薬を服用する必要があります。例えすぐに症状が良くなっても、体内にはまだ細菌が残っている可能性もあるため、処方された期間は必ず抗菌薬を飲みましょう。
患部によっては、針を指して感染した滑液を吸引する治療も行われます。また、稀に抗菌薬などの治療では改善しない場合があり、手術が必要となるケースもあります。
滑液包炎は完治までにどのくらいかかるのでしょうか。
しかし、感染症の場合は完治まで長期に及ぶ可能性があります。
抗菌薬の服用は1週間程度は必要であり、仮に手術を必要とする場合には、手術後のリハビリ加療時期も含めると数カ月程度期間が必要なケースもあるでしょう。
滑液包炎を治すためには安静にしていないといけないのでしょうか。
例えば軽度の場合で、薬の効果や安静にした結果痛みが治まったのであれば、運動を増やした方が良いと考えられています。関節の可動域を正常な範囲まで広げるのに役立ち、筋力の低下を抑えられるためです。
しかし、自己判断で運動を行うのはやめましょう。安静な期間が必要な場合に無理に運動してしまうと、治療の長期化を招く可能性があります。治療の方法や運動の開始時期などは、医師と相談しましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
受診することで原因を解明し、非ステロイド系抗炎症薬・抗菌薬などの的確な治療を受ければ早い回復につながることが多いです。
関節の痛み・違和感・腫れが気になる場合は、早めに医師の診療を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
滑液包炎とは、運動や外傷などさまざまな原因で発症する可能性がある病気です。痛みだけでなく、非常に大きな腫れが伴うケースもあります。
しかし、正しい治療を行えば完治できる病気です。手術が必要なケースは稀であるため、薬などでも十分改善が期待できます。
万が一、違和感を覚えた場合や症状が見られる場合には、医療機関を受診して早期治療を行いましょう。
参考文献