「痛風性関節炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
痛風とは、過剰なエネルギー摂取や運動不足などから発症する病気です。足の先が痛むような症状があり、誰しも発生する可能性がある生活習慣病のひとつです。
そのような痛風の症状の中に、痛風性関節炎があります。主に母趾や膝関節に発症しやすく、早期に発見しなければ強い痛みが伴います。
早期発見のためには、症状や原因をしっかりと把握することが大切です。そこで本記事では、痛風性関節炎の症状を解説します。
原因・なりやすい人・初期症状・治療方法・日常生活での注意点もご紹介するので参考にしてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
痛風性関節炎の症状と原因
痛風性関節炎はどのような病気でしょうか?
痛風とは、血液中の尿酸値が上昇することで引き起こされる病気です。局所的に急激な腫れが見られ、痛みが伴います。
場合によっては、夜も眠れないほど強い痛みとなるケースもあるため注意が必要です。また、関節も限定的ではなく、足関節・指・手関節・肘関節などあらゆる関節で発症する可能性があります。
女性よりも男性に多く、痛みは短時間のうちに強くなる特徴です。関節炎が発症した部分は、動かさなくても痛みます。
特別な治療を行わなくても、自然に痛みが回復するケースもありますが、血液中の尿酸値が高いままでは再発を繰り返す可能性があります。
症状を教えてください。
- 赤い腫れや炎症
- 関節の痛み
- 関節の動きの悪化
- 発熱
まず目立った症状としては見た目の変化と強い痛みです。関節炎が発症している箇所が、赤くなり腫れます。
さらに痛みを伴います。非常に強い痛みとなる時もあり、足の関節に炎症が発生した場合は、歩行が困難になるほどです。
また、関節の動きも悪化します。硬くなり動かせる範囲が制限されることもあるでしょう。
発熱が伴うこともあります。患部が熱を帯びるだけでなく、全身の発熱が現れるケースもあるため注意が必要です。
さまざまな症状が現れますが、このような症状は前触れがなく急に発症します。また、症状は夜間に起こる傾向があり、痛みで眠れないことも少なくありません。
症状が現れやすい場所はありますか?
足関節や足背関節にも発症するケースが多く、長期に渡って罹患している人は、膝関節や手指の関節にも生じることがあります。
また、稀に肩関節や股関節などにも生じることがあります。一般的に痛みが現れるのは、これらの場所のうち一か所だけです。しかし、症状が進行すると、複数の関節で発症することがあります。
また、関節変形や機能障害をきたす可能性もあるため注意が必要です。
発症する原因を教えてください。
その結果、関節内で尿酸が塊を作ります。この塊を白血球が壊そうとするため、関節の痛みや腫れが生じるというメカニズムです。
高尿酸血症を引き起こす要因としては、次のようなものが挙げられます。
- アルコールの飲み過ぎ
- プリン体を多く含む食品の摂りすぎ
高尿酸血症を引き起こす原因のひとつが、アルコールの飲み過ぎです。アルコールは尿酸値を上げる作用があります。
体内には、エネルギー源であるATPと呼ばれる物質があります。この物質は分解されると、プリン体を生み出す構造で、アルコールはこの分解を促進してしまうのです。
その結果、プリン体が分解される時に尿酸を生産し、過剰に体内に溜まってしまうため高尿酸血症を招きます。また、アルコールは腎機能を低下させる作用があります。
通常、尿酸は尿から排出される仕組みです。しかし、アルコールにより腎機能が低下すると、尿酸が体内から出にくくなってしまいます。すると、体内に尿酸が溜まってしまうのです。
さらに、高尿酸血症は、アルコール以外にもプリン体を多く含む食品の摂りすぎによっても引き起こされます。
プリン体を多く含む食品としては、レバー・白子・海産物などです。このような食品の多く含まれる食事を続けると、プリン体が体内に溜まり高尿酸血症を引き起こします。
このような状態が続くことで、関節内に尿酸の塊ができて、辛い痛みを発症します。
なりやすい人の特徴を教えてください。
- 30代の男性
- 血縁者に痛風の人がいる
- 水分をあまりとらない人
- 激しい運動をする人
- 生活習慣病に罹患している人
20代以上の男性は尿酸値が高くなる傾向で、30代となるとさらに高尿酸血症の人が増えます。これは、アルコールの摂取量や生活習慣などさまざまな要因が考えられるためです。
また、血縁者に痛風の人がいる場合もなりやすいです。これは、体質や食生活が似てくる可能性があるため、高尿酸血症になりやすいと考えられえています。
水分をあまりとらない人も、なりやすいといわれています。尿酸は、尿から排出されますが、水分を取らないことで排出される機会が少なくなってしまうためです。
激しい運動をする人もなりやすいと考えられます。これは、激しい運動によって、先述したエネルギー源のATPが大量に消費されるためです。
ATPが分解されるとプリン体が作られ、プリン体が分解されて尿酸が増えてしまい、高尿酸血症となります。また、痛風以外に肥満などの生活習慣病にかかっている人も発症しやすいです。
食習慣や飲酒などの食生活が乱れている影響で、発症の可能性は高いと考えられます。
痛風性関節炎の治療
注意が必要な初期症状はありますか?
また、初期症状の特徴としては、関節の痛み・腫れ・動きが制限されるなどが挙げられます。痛みや腫れは、夜や朝に現れることが多く、急速に痛みが強くなります。
しかし、痛みが出てくるまではほとんど違和感を覚えないため、痛みや腫れが現れるまで気づかないケースが多いです。
どのような検査で診断されるのでしょうか?
- 血液検査
- 画像検査
血液検査では、尿酸値を測定します。尿酸値が基準値の7.0mg/dlを超えていると、血中の尿酸が飽和状態であることを示し、尿酸の結晶化が始まります。
画像検査は、X線を使った検査です。しかし、初期症状の場合は、画像により特徴的な所見が認められないことがあります。
そのため、画像検査にて痛風結節を確認できた場合は、この症状が重症化していることを示します。痛風結節とは、関節以外の皮膚の下にできた尿酸の結晶です。
治療方法を教えてください。
- コルヒチン
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 副腎皮質ステロイド
コルヒチンは、前兆期に投与する薬です。しかし、症状が現れてからは効果が得られにくいため、その際には短期間のみ多量に非ステロイド系抗炎症薬を投与します。
症状が改善したら、投与を中止します。しかし、必ずしも非ステロイド性抗炎症薬が使用できるわけではありません。
投与できない場合は、経口にて副腎皮質ステロイドを投与します。
痛風性関節炎の注意点
再発するのでしょうか?
しかし、食生活の改善を行わなければ再発の可能性は高いです。そのため、再発を防ぐために、食生活改善と同時に薬を使った予防が大切です。予防のための薬には、次のようなものが挙げられます。
- 尿酸生成抑制薬
- 尿酸排泄促進薬
尿酸生成抑制薬は、プリン体を分解した際に生成する尿酸を、抑制するための薬です。
また、尿酸排泄促進薬は、尿酸を尿の中に混ぜて排泄できるように促すための薬です。
尿酸を過剰に生成しているタイプか、排泄が上手くできていないかといった状況に合わせて、薬を使い分けて予防します。
痛みが起こったときに自分でできるケアはありますか?
関節を休めて、痛みを和らげましょう。また、冷却も有効なケアのひとつです。
強い痛みが生じている場合、患部を冷やすことで痛みを和らげられます。また、お酒は飲まないようにしましょう。
日常生活で注意することを教えてください。
- 食生活の改善
- 飲酒の制限
- 適度な運動
まずは食生活の改善です。プリン体を多く含む食事に気をつけ、摂取量を1日400mg以下を目安に下げるようにすることが大切です。
また、先述したレバーなどの食品以外にも、ショ糖や果糖も発症のリスクを上げるため摂取しすぎないようにしましょう。次に飲酒の制限も行いましょう。
アルコールの中でも、最も症状と関係があるのがビールです。しかし、他のアルコールもプリン体の有無に関わらず発症リスクを上げる可能性があるため、過剰に摂取しないようにしましょう。
適度な運動も必要です。特に肥満の人は運動によって肥満を改善させましょう。ただし、無酸素運動はかえって尿酸値を上げてしまう可能性があります。
運動をするのであれば、有酸素運動を意識して行いましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
強い痛みや腫れが生じ、薬によって一時的に痛みが改善しても、再発する可能性もあります。
そのため、症状が改善したからといって安心せずに、継続的に日常生活でも注意が必要です。
万が一、痛みや腫れが見られる場合には、早めに専門の医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
編集部まとめ
痛風性関節炎は、痛み・腫れ・関節の動きの悪化などの症状が現れます。
症状が現れるまでは、全く気づかないことも多く、夜になって突然強い痛みが現れるケースも少なくありません。
また、薬による治療で一時的に症状が改善しても、再発の可能性があります。そのため、日常生活での食事管理や飲酒制限などの予防が大切です。
万が一、症状が現れた場合や日常生活での予防方法について知りたい際には、専門の医療機関に相談して適切な対応を行いましょう。