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「胃食道逆流症」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/16
「胃食道逆流症」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

胃食道逆流症は、胃の酸が食道に逆流してしまい、胃や食道の痛み・不快感を引き起こす病気です。

薬物療法や生活習慣の改善で症状が緩和できますが、放置しておくと食道がんに繋がるおそれもあります。

今回はこの病気について、症状・原因・受診する科・治療方法を紹介しましょう。

日常生活での注意点にも触れますので、ぜひ参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃食道逆流症の症状と原因

ミルクを飲む赤ちゃん

胃食道逆流症の特徴を教えてください。

胃食道逆流症は、胃の酸が食道に戻ってきて胃痛や喉の痛み、咳などの症状を引き起こす疾患です。通常、胃と食道の間には口腔から食道に向かって進む食物を防ぐ弁の機能がありますが、これがうまく機能しない場合に起こります。
症状としては、常に酸っぱい味が口に残る・胸や喉が痛む・咳・呼吸困難などが出ることが多いです。慢性的な胃食道逆流は食道の炎症(逆流性食道炎)を引き起こす可能性があり、重篤な場合は食道癌の原因にもなる可能性があります。

胃食道逆流症と逆流性食道炎の違いは何でしょうか?

胃食道逆流症は、胃の中の酸が食道に逆流し、食道を刺激することによって引き起こされる疾患です。逆流性食道炎は、胃食道逆流症によって引き起こされる食道の炎症です。
この2つの病気の違いは、胃食道逆流症は胃酸の逆流を指し、逆流性食道炎は胃酸の逆流によって食道に引き起こされる炎症であるというところにあります。
通常、胃食道逆流症は長期間続くことが多く、逆流性食道炎は慢性的な炎症となる可能性が高くなります。

症状を教えてください。

胃食道逆流症の症状には以下のようなものがあります。

  • 口に酸っぱい酸性の味が残る
  • 胸や喉が痛む
  • 呼吸困難
  • 食事後に疲れる
  • 食事中や食事後に胃の痛みや不快感がある
  • アイスクリームやチョコレートなどの食べ物を食べると症状が悪化する
  • 昼寝や就寝時に症状が悪化する

ただし、この症状は個人差があります。またこれらの症状は他の疾患にも似ているため、正確な診断をするためには医師に診てもらうことが必要です。

発症する原因を教えてください。

この病気の発症原因は複数あります。主な原因は、食道の下部にある胃と食道を隔てるバルーンのようなもの、LES(下部食道弁)が機能していないことです。LESは、胃に入った食物を胃に留めるために閉じる必要があります。しかしLESがうまく閉じない場合、胃の酸が食道に逆流し、食道を刺激するのです。
その他の発症原因には、胃が過剰に酸を分泌すること・胃が空いている時に寝ること・肥満・妊娠・ストレス・喫煙・アルコールの摂取・特定の薬の副作用などがあります。

赤ちゃんも発症すると聞いたのですが…。

赤ちゃんも胃食道逆流症を発症することがあります。赤ちゃんの場合は、食道のバリア(LES)が未熟なため、胃の酸が食道に戻ってきやすくなります。
また、胃が小さく食道に向かって進む食物を押し戻す力も弱いため、胃の酸が食道に戻ってきやすくなるのです。
赤ちゃんの胃食道逆流症の症状には、以下のようなものがあります。

  • 食事後に嘔吐・胃の痛みがある
  • 食事中や食事後に不安定な様子で泣き止むのが難しい
  • 食事中や食事後に咳、呼吸困難がある
  • 寝ている時に咳・呼吸困難・胸の痛みがある

ただし赤ちゃんは言葉を話せないため、症状がわかりにくいことが多いです。また、赤ちゃんの場合は、症状が改善するためには母乳育児やミルクの量の調整などが必要になります。そのためには医師や専門家の指導が必要です。

胃食道逆流症の治療

内視鏡検査

胃食道逆流症は何科を受診すれば良いでしょうか?

消化器科の専門医が診断・治療を行います。消化器科医は胃や食道、腸などの消化器系の疾患について専門的な知識を持っており、この病気の治療にも熟練しています。
また、胃食道逆流症は症状だけでなく、食道の形態や病理学的変化も考慮しなければならないため、消化器内視鏡検査を行うことが多いです。消化器内視鏡検査は消化器科の医師が行うことが一般的です。

どのような検査で診断されますか?

この病気は、胃の内容物が食道に戻ってきて、胸や喉の痛み・咳などの症状を引き起こす病気です。それを診断するためには次のような検査が行われます。

  • 内視鏡検査:食道内部を撮影するために、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を実施
  • 24時間pHモニタリング検査:胃酸が食道に漏れているかどうかを検査するために、pHメーター検査を実施
  • 食道内圧検査:食道の圧力を測定するために、マノメトリー検査を実施

診断には上記のいずれかの検査が使用されることが一般的です。

治療方法を教えてください。

治療方法には、薬物療法・生活習慣の変更・手術の3つがあるので紹介しましょう。
薬物療法では抗酸薬で胃酸分泌を抑制し、胃の酸を取り除き、食道を保護します。またプロスタグランディン阻害薬というLESの機能を改善する薬で、胃の酸が食道に逆流するのを防ぎます。また抗炎症薬という食道の炎症を抑制する薬で痛みや刺激を和らげることも多いです。
生活習慣では、食事時間を調整し、油っぽいものや辛いものを減らすよう指導することが多いです。また肥満がある場合はこの病気を引き起こす要因の一つですので、適正な体重になるように指導します。
手術では食道バルーン挿入術を用い、食道のバルーンを挿入し、LESを支持することで、胃の酸が食道に逆流するのを防ぎます。 また食道切除術では食道と胃を切り離すことで、胃の酸が食道に逆流するのを防ぐことも多いです。
これらの治療方法は、症状や病態によって適した方法が異なりますので、消化器科の医師によって適切な治療方法を決定することになります。

胃食道逆流症は完治するのでしょうか?

この病気は慢性の病気であり、完治することは難しいです。しかし適切な治療を受けることで症状を軽減し、普通の日常生活を送れるようになります。

胃食道逆流症の再発とリスク

気分不良の女性

再発するのでしょうか?

この病気は、薬物療法や生活習慣の変更によって改善できますが、再発する可能性があります。治療を中断したり、生活習慣を戻したり、または治療効果が不十分だったりしたことが原因になります。
再発を防ぐためには治療を完了し、薬物療法や生活習慣の変更を継続することが重要です。症状が再発する場合は医師に相談し、適切な治療法を決定しましょう。また手術を受けた場合は、手術後のフォローアップを受けることで、再発を防げます。

食事など日常生活で注意するはありますか?

この病気の治療には、生活習慣の変更も重要です。以下のような点に気をつけることが推奨されます。

  • 食事:腹部に詰め込み過ぎないように食事をとり、食事後は数時間寝かせるようにする。特に油っぽい食べ物・辛い食べ物・コーヒー・アルコール・タバコなどは避けるようにする
  • 体重:過体重や肥満は胃食道逆流症の症状を悪化させるため、適量体重を保つよう努力する
  • 睡眠:上体を高くするように寝る。例えば枕を多く使用するようにして、頭部を高くすることで胃の内容物が食道に戻らないようにする
  • スポーツ:食事後1時間以内に運動をすることを避ける
  • ストレス:ストレスは胃食道逆流症の症状を悪化させるため、ストレスを減らす方法を見つける

これらの生活習慣の変更によって、胃食道逆流症の症状を軽減できる可能性があります。ただし、個人差があり一概には言えないため、症状に合わせて調整することが大切です。また、自己判断ではなく医師に相談することを忘れないようにしましょう。

胃食道逆流症を放置するリスクを教えてください。

胃食道逆流症を放置すると、 食道癌のリスクが高まる可能性があります。胃食道逆流症によって食道に胃酸が侵入し炎症が長期間続くことで、食道の非常に細い部分にも影響を与え、胃食道逆流症を原因とする食道癌の発症率が高くなるのです。
また食道粘膜の慢性的な炎症が引き起こされる可能性があり、食道狭窄や食道瘤などの異物感を引き起こす可能性があります。食道の傷害によって、食事を楽しめなくなる・食事による痛みや不快感を引き起こすことがあります。早期に発症した胃食道逆流症を適切に治療することが重要です。
さらに食道の炎症が長期にわたって続くことで、食道の形態が変化し、食道狭窄を引き起こす可能性もあるのです。胃食道逆流症は、適切な治療を受けないと、重篤な疾患に発展する可能性があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

この病気は命に関わるようなことはまれですが、放置しておくと食事が楽しくなくなる、常に食道が痛むなど日常生活に支障が出てきますので早めに病院で治療をすることがおすすめです。
また偏った食生活・強いストレス・不規則な睡眠時間などの要因はこの病気を引き起こす可能性があります。もし胃食道逆流症と診断されたら、 
病気そのものの治療に併せて、自分の生活習慣も見直してみましょう。

編集部まとめ

気分不良の男性
胃食道逆流症は胃の酸が食道に戻ってきて胃痛や喉の痛み、咳などの症状を引き起こす疾患です。

胃から食道へ食物が逆流するのを防ぐバリア機能が低下することで発生し、胃や食道の痛み・不快感に悩まされることになります。

まだ胃や食道の機能が発達していない赤ちゃんにも起こる病気ですが、成人の場合は乱れた食生活・睡眠時間・ストレスが引き金になることも多いです。

早期発見すれば服薬や生活習慣の改善によって寛解しますので、もし胃部に不快感を覚える場合は、早めに病院へかかるようにしましょう。

この記事の監修医師