「アキレス腱炎」は知らない間に発症?原因やなりやすい人など医師が監修!
人体の中で最も強く、そして太い腱であるアキレス腱ですが、酷使する部分であるため頻繁に炎症が起きやすいです。
どのような人がアキレス腱炎になりやすいのでしょうか。また、アキレス腱炎を起こさないためにも日頃からできる予防はあるのでしょうか。
ここではアキレス腱炎の症状・原因・なりやすい人・治療方法などを解説します。誰でも起こりうる病気なので、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
アキレス腱炎とは?
アキレス腱炎の特徴を教えてください。
歩くのはもちろん、ジャンプをしたり走ったりなど瞬時に足に力を入れるため疲労度も高いです。
そのため、使いすぎたり使い方を誤ってしまったりすると炎症が起こりやすい部位になります。アキレス腱炎以外にも、アキレス腱周囲にみられる炎症もあり、それをアキレス腱周囲炎といいますが、これもアキレス腱炎と同じところでみられる病気です。
こちらは腱自体に炎症が現れるのではなく、腱の周辺にあるゼリー状の組織(パラテノン)に炎症が現れます。見た目では触診だけでは判断が難しいですが、アキレス腱炎同様の扱いをすることが多いです。
どのような症状がみられますか?
足首を中心に上下でよく痛みが現れやすく、1つはかかと近くの骨の部分、もう1つがふくらはぎよりくびれたような部分です。この他にも、腱を曲げ伸ばす動作の時にも痛みが現れやすいです。
痛みに気をとられがちですが、痛みが現れているところを触ると腫れていたり赤くなっていたりすることもあります。
痛みによって筋力が低下することはあまりないですが、日常生活に支障をきたしやすいです。そのため、痛みが出たまま放置するのではなく速やかに病院へ受診することをおすすめします。
発症する原因は何でしょうか?
小さな断裂ではあるものの、頻繁に起こる上に断裂を治そうと再生している途中で発症する場合もあります。
スポーツでアキレス腱を酷使したにもかかわらず、十分な休息もとらない・合わない靴を履く・体の使い方が悪い・スポーツをする環境が劣悪であるなどもアキレス腱に負荷をかける原因につながります。
この他にも、年齢を重ねることによりアキレス腱も弱くなっていきます。弱くなれば必然的にダメージを受けやすく、アキレス腱炎が現れやすくなるのです。
どのような人がなりやすいのでしょうか?
中でもランナーの方に多くみられます。スポーツ自体が足をよく動かすため、どうしてもスポーツをしていない方と比較すると酷使してしまいがちです。
また、スポーツをしない方にもアキレス腱炎は現れ、年齢を重ねた高齢者も現れやすいです。他にも、リスク因子として以下のようなものもあります。
- 男性
- 扁平足
- 肥満
- 高血圧
- ニューキノロン系の抗生物質を服用している方
あくまでの因子であり、必ずしも全員がアキレス腱炎になるものではありません。中にはならない方もいます。
ならない、もしくはなりにくくするためにも予防は非常に大切です。
アキレス腱炎の治療
アキレス腱炎で受診する目安を教えてください。
アキレス腱炎はアキレス腱に大きな負荷を与えることで現れる炎症であるため、安静にする対応からとります。
同時にアイシングや湿布などの痛みを和らげる対処もとると良いです。もちろん早めに病院へ受診するのも1つです。病院へも行かず痛みを我慢し続けて無理に足を動かすことこそ、アキレス腱炎を悪化させる原因になります。
日常生活に支障をきたす動作が痛みによって制限されれば、生活の質も悪くなります。痛みを我慢し続けるなら、病院へ行き適切な治療を受けることが最善です。
診断は痛みのでている部位を医師が押し、痛みの有無を確認します。画像診断ではMRIや超音波画像診断にて痛み・腫れの所見を確認します。
どのような治療を行いますか?
中には鎮痛剤や注射を打ちながらでも無理をしてスポーツをするケースもあります。根本的に解決しているわけではないため、スポーツを中止することが大切です。
無理をしても良いものではありません。痛みが引いたら、次は血行促進を目的とした温熱療法に切り替えます。
この時点でもアキレス腱に負荷のかかることはしてはいけません。中には重症化してしまうケースもあり、その際には難治性アキレス腱炎を発症している可能性が高いです。
難治性アキレス腱炎になれば、上記でご説明した保存療法では改善しません。そこで有用的な治療法が運動器カテーテル治療です。
難治性アキレス腱炎は新たに作られた血管(新生血管)と神経が一緒に増えて痛みを出現させていることがわかりました。その痛みの原因となる新生血管にカテーテルを通し塞栓させます。
どのくらいで完治するのでしょうか?
重症のものは予測ができず、発症から2週間以上経ってもまだ緩和しない方もいます。しかし早く治癒したいと思うなら、医師の指示どおりにすることが1番です。
そして、安静にすることも早く治癒するためには欠かせません。それでもなかなか改善しない場合はアプローチの仕方に誤りがある、もしくは他の病気(アキレス腱断裂・かかとの骨折など)の可能性も否定はできません。
その場合は再度病院へ受診し、しっかり検査をしてもらうようにしましょう。
アキレス腱が痛むときのセルフチェック法を教えてください。
- かかとのあたりやふくらはぎが痛い
- 背伸びした時にアキレス腱に痛みを感じた
- 椅子から立ち上がった時にかかとに痛みを感じた
- 動く時に痛みを感じる
これらどれかに当てはまる場合、アキレス腱炎の可能性が考えられるでしょう。
しかし、中にはアキレス腱炎と似たアキレス周囲炎やアキレス腱断裂も考えられます。あくまでも目安として、疑わしいと感じたらすぐ整形外科へ受診しましょう。
アキレス腱炎の予防
アキレス腱炎を放置するリスクを教えてください。
しかし、痛みをそのまま放置していると痛さがさらに増し、うまく歩けない・一歩も足を出せないなどといった症状が出現して、日常生活に支障をきたします。
その他に、繰り返し断裂した組織が再生する時に作られる瘢痕組織(はんこんそしき)に置き換えられる可能性もあります。瘢痕組織には傷を再生する能力はないため、もし新たに断裂しても元の状態に戻すことが難しいです。
生活の質も悪くなる・断裂した組織も治りづらくなるなど良い面がないため放置することは避けましょう。
予防する方法はありますか?
しかし、スポーツは負荷をかけずにはできないため、日々のストレッチが欠かせません。ふくらはぎのひらめ筋を伸ばすストレッチを毎日行いましょう。
運動前と運動後はもちろん、朝起きたら目覚まし代わりにするのも良いです。筋肉や腱が柔らかくなければ、運動時にかかる力が大きくなりアキレス腱にかかる負荷も減りアキレス腱炎の予防につながります。
少し違和感を覚える場合は安静にすることが良いですが、無理な場合はテーピングをしてふくらはぎへの負担を減らしつつ、運動量を減らす方法も1つです。
見落としがちですが、靴もご自身に合うものを選ぶことも大切な予防になります。靴底のクッション性は変化しないとはいい切れません。
クッション性がなくなれば足底のアーチが崩れ、結果として痛みが出てしまいます。足元を快適にすることも忘れずに行ってみてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし、症状が軽いうちに適切な治療を受けることで悪化することは少ないです。ならないためにもふくらはぎの筋肉をストレッチにて柔らかくしたり運動量を調整したりしましょう。
また、足底に合った靴を選ぶことで痛みの原因を1つ減らすことができます。
編集部まとめ
たかが痛みと放置しているアキレス腱炎は治りづらくなるだけではなく、日常生活に支障をきたしてしまう傾向にあります。
特にスポーツはアキレス腱に負荷をかけないほうが難しいため、痛みがなかなか引かないケースもあるでしょう。
しかし、アキレス腱炎は予防で防げるため、入念なストレッチ・症状がある際には無理をしない・靴を見直すことなどを徹底してみてください。
そして、違和感を覚えるなら自己流ではなく、医師の指示の元でしっかり治療を行うようにしましょう。