皮膚の一部に異変が起こった場合、皮膚がんではないかと不安になる方も多いのではないでしょうか。
皮膚がんは自分の目で見られる部位に発症することも多いため、発見できる可能性が高いのが特徴です。
一口に皮膚がんといっても細胞のどの部位にできるかによって病名も変わります。そのなかから、今回は有棘細胞がんについて解説します。
有棘がんの症状・原因・見分け方などについてご紹介しますので、皮膚の異変に不安がある方はぜひ参考にしてください。
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの症状・原因・見分け方
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんとはどのような病気でしょうか?
有棘細胞がんは
皮膚がんの一種です。表皮は上から角質層・顆粒層・有棘層・基底層に分かれており、有棘細胞がんはそのなかの
有棘層の細胞が悪性化することによってできるがんです。皮膚がんのなかでは、基底細胞がんに続いて2番目に多いとされています。発症しやすいといわれている部位は顔・首・頭皮・手足などです。
高齢者に発症することが多く、年齢が上がるにつれて罹る人が増えるとされています。一般的によく知られている皮膚がんには、有棘細胞がんのほかにもメラノーマ・基底細胞がん・乳房外パジェット病などがあります。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの症状を教えてください
有棘細胞がんでは一般的に、潰瘍やびらん・盛り上がったしこり・赤い結節・かさぶたのようなものがみられます。病変の
大きさは1~2cm程度のことが多いですが、小さな傷のようなものから、数センチの大きさのものまでさまざまです。表面は
湿っていることもあるでしょう。湿疹だと思って様子をみていたけれど治らず、病院を受診したら有棘細胞がんだったなどというケースもあります。通常は痛みやかゆみなどを伴うことは多くなく、進行してくると腫瘍から液体が出る・出血がみられる・悪臭を放つなどの症状が出てくることもあります。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの主な原因は何でしょうか?
有棘細胞がんは日光を浴びる部位にできることが多いため、
紫外線の影響が原因のひとつだと考えられています。また、
やけどの痕や傷などから発症するケースがあるのも特徴です。さらに、
ウイルス・放射線・化学物質・慢性の炎症なども原因になると考えられています。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの見分け方はありますか?
有棘細胞がんの腫瘍は一見湿疹やおできのように見えるものもあり、危険ではない疾患との
見分け方が難しいケースもあります。普段は比較的すぐに治る湿疹やおできがいつもよりも治りにくいという場合には注意が必要でしょう。さらに、その部位から
液体が出る・出血する・悪臭があるという場合も有棘細胞がんの危険があります。一見ちょっとしたおできや傷に見えるけれど実は有棘細胞がんだったなどということもあるため、
なかなか治らない場合は病院を受診しましょう。
また、有棘細胞がんの
早期段階はボーエン病と呼ばれ、この段階では遠隔転移などは起こりません。そのため有棘細胞がんになる前の
ボーエン病の時点でほかの疾患と見分けて早期治療を行うのが望ましいでしょう。赤や茶色のシミ状のものが顔などにできた場合は注意が必要です。ただし、脂漏性角化症や湿疹などと見分けるのは難しいため、疑わしい場合には
無理に自分で見分けようとせず検査ではっきりさせることをおすすめします。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの検査・治療方法
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの検査方法を教えてください
有棘細胞がんが疑われる場合、病変の状態を目で見て診断する
視診や皮膚の一部を採取して行う
生検などの検査が行われます。生検の結果浸潤がんだった場合には、ほかの臓器やリンパ節などへの転移の有無を調べるために
CT・MRI・レントゲンなどの検査が行われることもあります。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの治療方法を教えてください
有棘細胞がんの治療では、
病変部位を取り除く手術が行われるのが一般的です。がんをしっかりと取りきるために、有棘細胞がんの病変とその周辺の正常な部位を切除します。有棘細胞がんの病期(ステージ)は進行状況によって0期からⅣ期に分けられますが、一般的に手術を行うのはⅢ期までです。
また、病変の部位によってはⅢ期までの有棘細胞がんでも
手術ができないケースがあります。そのような場合、
放射線治療や化学療法などが行われます。そのほか、高齢者の方や持病がある方にも向いているのが液体窒素を用いてがん細胞を凍結して壊死させる
凍結療法です。この治療方法は、治療中や治療後の身体への影響が少ないとされています。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの予防方法はありますか?
有棘細胞がんを確実に予防する方法は、残念ながら確立されていません。
紫外線を浴びることが有棘細胞がんの原因のひとつと考えられているため、予防のためには
紫外線対策をしっかりと行うことが大事だといえるでしょう。紫外線の強い時期には帽子や日傘を活用し、紫外線を浴びないように注意してください。帽子や日傘が使えない場所では、日焼け止めクリームを塗る、なるべく日陰を選んで歩くなどの対策をしましょう。有棘細胞がんなどの皮膚がんは自分の目で確認できる部位にできることも多いがんです。気になる症状が出た場合には自己判断せずに
病院を受診して、早期発見をすることも大事です。
また、がん全般としては
禁煙・禁酒・正しい食生活・身体活動・適性体重の維持によってリスクを軽減できるとされています。規則正しい健康的な生活を送って、がんの予防を心掛けましょう。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの予後について
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんが再発することはありますか?
有棘細胞がんは
再発する頻度がそこまで高くないがんだといわれていますが、真皮に浸潤してしまった場合にはリンパ節などに転移する可能性があるため注意が必要です。自分で首・わきの下・足の付け根などのリンパ節を触って、しこりができていないか定期的に
セルフチェックをしましょう。そのうえで、おかしいと思ったらすぐに医師に相談をすることが大事です。あらかじめ、再発やセルフチェックなどについての注意点を
医師に確認しておくとよいでしょう。
有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんの生存率を教えてください
有棘細胞がんなどの皮膚がんはほかの部位にできるがんに比べて自分で発見できる可能性が高いため、早期発見しやすいのが特徴です。0期やⅠ期に発見・治療できたケースでは、5年生存率は
ほぼ100%といわれています。
Ⅱ期の場合で
85%、Ⅲ期でリンパ節に転移していない場合は
65%くらいです。内臓までがんが転移してしまっている場合には生存率が低くなります。5年相対生存率の統計でみると、
限局の場合98.1%・領域の場合65.8%・遠隔の場合は16.5%です。生存率を知ることで、早期発見・早期治療がいかに大事かがお分かり頂けるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします
有棘細胞がんは表皮の有棘層にできる皮膚がんの一種です。皮膚がんは自分で発見できる可能性もあるため、
異変に気づいたらすぐに病院を受診しましょう。湿疹やおできのようなものができても「このくらい大したことはない」と思ってしまいがちですが、安易な
自己判断は危険です。少しでもおかしいと感じたり、治りが遅いと感じたりした場合には、早めに医師に相談してくださいね。
編集部まとめ
有棘細胞がんは、皮膚がんのなかでも基底細胞がんの次に多いとされているがんです。
頭皮・顔・手足など自分の目で見える部位に発症することも多いので、早期発見できる可能性があります。
皮膚に赤い盛り上がり・かさぶたのようなもの・じゅくじゅくしてなかなか治らない湿疹のようなものができている場合には注意が必要です。
早期に発見するほど生存率も高くなりますので、気になる皮膚の異変があればすぐに受診することをおすすめします。
有棘細胞がんの原因のひとつに紫外線が挙げられます。日ごろから紫外線を浴びる機会が多い方は注意が必要です。
有棘細胞がんは頭皮や顔などにできることが多いため、頭や顔を帽子や日傘などでガードして紫外線を極力浴びないように注意しましょう。
また、がんの予防には禁煙・禁酒・正しい食生活・身体活動・適性体重の維持などが大事だとされています。
規則正しい生活を心掛け、有棘細胞がんをはじめとするがんを予防しましょう。