「ギャンブル依存症」の特徴・原因はご存知ですか?医師が監修!
ギャンブル依存症は数ある依存症のうちの1つで、ギャンブルにのめりこんでしまう病気を指します。
借金をするなど、自分や周囲の生活に不利益や迷惑が生じることをわかっていながらも、より大きな刺激を求めてギャンブルを続けてしまうことが特徴です。
今回はギャンブル依存症について、この病気にかかりやすい人の特徴や、身近な人がこの病気になった時の対処方法について紹介しましょう。
気になる症状がある時の相談窓口も複数紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
ギャンブル依存症の特徴と原因
ギャンブル依存症とはどんな病気ですか?
この病気に関わる賭け事や遊戯として、日本でパチンコ・スロットマシーンが一番多く、競馬や麻雀がそれに続きます。2009年の全国調査では、成人男性の9.6%、女性の1.6%がこの依存症であるとされました。
また2016年の患者数は外来患者が2929人、入院患者が261人で、治療をしていないけれども依存と思われる人は約70万人に上ります。この数字からもわかる通り、この依存症は病気としての認識が非常に低く、アルコール依存症などに比べても、治療に取り組んでいる人はごくわずかというのが現状です。
ギャンブル依存症の特徴を知りたいです。
- ある物事・行動・関係性にのめりこんでしまい、自己制御ができなくなる。
- 依存行動によって自分の健康や生活、家族に問題が生じていてもコントロールできない。
依存症は物質依存と行動嗜癖の2つに分かれますが、ギャンブル依存症は行動嗜癖に分類されています。行動嗜癖はほかに、過度な買い物・万引き・スマホゲーム・自傷行為などが挙げられます。物質依存の例としては、アルコールや薬物依存症が有名です。
この依存症の特徴により社会生活に支障が出て、仕事を解雇されたり、借金に追われたりする人も多いです。家族など身近な人が被害にあう病気でもあります。
ギャンブル依存症の原因はなんですか?
この場合の大きな刺激とはつまり、巨額の賭け金などを指します。多少の勝ち負けでは脳の耐性で快楽が得られなくなってしまうので、より大きな刺激を求め、ますます賭け事にのめりこんでいってしまうのです。
ギャンブル依存症になりやすい人はどんな人ですか?
周囲の人が、少しでも本人の行動がおかしいと思ったら、相談機関に相談してみることが大切です。
ギャンブル依存症の診断と治療
ギャンブル依存症はどのように診断されますか?
- 望む興奮を得るために、掛け金の増額が必要になる
- ギャンブルをやめると落ちつかなくなったり、いらいらしたりする
- ギャンブルを控えよう・減らそう・止めようと努力を繰り返したが成功していない
- 過去のギャンブルの経験をまざまざと思い出したり、次のハンディ付けや計画を考えたり、資金を得る方法を考えるなどいつもギャンブルのことを考えている
- 苦痛な気分(無力感・罪悪感・不安・抑鬱)の時にギャンブルに走ることがよくある
- 負けた分を別の日にとり返そうすることがよくある
- ギャンブルに熱中している程度を隠そうと嘘をつく
- ギャンブルのために重要な人間関係・仕事・教育・職業上のチャンスを失いかけるか、失ったりしたことがある
- 賭け事が原因の絶望的な経済状況を救済する金を出してほしいと他人に頼る
カウンセリングでは過去1年でこうしたチェック項目に当てはまるかどうかをチェックし、重症度を調べます。アメリカでは、上記のうち4〜5項目当てはまれば軽度、6〜7項目で中度、8〜9項目で重度とされています。
ギャンブル依存症は治るのでしょうか?
ギャンブル依存症はどのような治療を行いますか?
またこの病気では、本人だけでなく家族など周囲の人にも迷惑や被害が及んでいることが少なくありません。それに伴う心理的な問題や本人の罪悪感なども乗り越えていく必要があります。
そしてこの病気ではカウンセリングだけではなく、同じ病気を抱える人たちの自助グループに加入し、支援を受けることもおすすめします。自助グループではグループミーティングによる報告活動などの定例活動を行っており、この活動がミーティングによって長期的にギャンブルから離れられ、生き方が変わったという人も多いです。
ギャンブル依存症の対処方法
身近な人がギャンブル依存症になった場合の対処方法を教えてください。
以下に、この病気のサインとして知られるものを紹介しましょう。
- 日常のほとんどの時間を賭け事に費やすようになった。
- 賭け事や借⾦に関して嘘をつくようになった。
- 賭け事による借⾦を返すために、さらにギャンブルをするようになった。
これらの行為に気付いたら、たとえ本人が依存症を否定しても、一度専門機関に相談されることをおすすめします。
病院以外に相談できる場所はありますか?
また、依存症専門サイト「依存症対策全国センター」でも全国の診療機関や自助グループについて調べられます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
直接病院にかかる以外にも多くの支援の方法があることを覚えておくといいでしょう。
編集部まとめ
ギャンブル依存症は本人の気持ちや性格が原因ではなく、脳の病気です。
本人の自覚なしに症状が進むことが多く、身近な人が発見し、サポートしてあげることが治療・回復のポイントです。
病気の治療には病院だけでなく、行政機関や自助グループも利用できます。
この病気は精神療法や自助グループによる内省活動によって、ギャンブルから離れた生活を手に入れることで回復します。
もし身近な人がパチンコなどのギャンブルや賭け事にのめりこみ過ぎていると感じたら、まずは専門窓口に相談してみることが大切です。
参考文献