「強膜炎」を発症すると現れる初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
更新日:2023/03/27
強膜炎とは、眼球を強固にする役割を持つ強膜が炎症を起こし、目が充血したり強い痛みが生じたりする病気です。
症例はそれほど多くありませんが、他の目の炎症に比べて症状が強く出る傾向があります。
特に目の痛みは日常生活に支障が出るほど悩まされるケースが多く、最悪の場合は失明する可能性もあるため、早めに病院を受診し治療することが大切です。
今回は、強膜炎の症状や原因・治療方法や治療期間などについて詳しく解説します。大切な目を守るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
目次 -INDEX-
強膜炎の症状と原因
強膜炎はどのような病気でしょうか?
強膜炎は、眼を覆っている強膜に炎症が生じる病気です。
強膜は白目の部分にある厚さ0.4~1mmの強固な線維性の組織で、表層の部分を指す上強膜とその下にある強膜があります。そのため病気も上強膜炎と強膜炎に分類されており、一般的に強膜炎の方が症状が強く出る傾向です。
また、強膜炎は形状によって下記のようにも分類されます。
強膜は白目の部分にある厚さ0.4~1mmの強固な線維性の組織で、表層の部分を指す上強膜とその下にある強膜があります。そのため病気も上強膜炎と強膜炎に分類されており、一般的に強膜炎の方が症状が強く出る傾向です。
また、強膜炎は形状によって下記のようにも分類されます。
- 壊死性強膜炎
- 結節性強膜炎
- びまん性強膜炎
重症度はびまん性強膜炎が最も低く、壊死性強膜炎が最も高くなります。中でも壊死性強膜炎は強膜の組織が壊死してしまう特徴があり、失明のリスクは他の強膜炎に比べて高いです。
発症する原因は何でしょうか?
強膜炎の原因としては、関節リウマチなどの自己免疫疾患・全身性疾患に関連して発症するケースが多くみられます。全身性エリテマトーデス(SLE)との関連も比較的多いです。
その他原因となりうる病気としてあげられるのは、結合組織疾患(膠原病)・結核・梅毒・ヘルペス・痛風などです。強膜はコラーゲン・結合組織を豊富に含んでいることから、コラーゲンに関連する合併症が起こりやすいのではと考えられています。しかし発症者全体の約半数は原因がわかっていません。
合併した症例が比較的多くみられることから、さまざまな物質が原因で起きるアレルギー反応として発症しているのではないかといわれています。
その他原因となりうる病気としてあげられるのは、結合組織疾患(膠原病)・結核・梅毒・ヘルペス・痛風などです。強膜はコラーゲン・結合組織を豊富に含んでいることから、コラーゲンに関連する合併症が起こりやすいのではと考えられています。しかし発症者全体の約半数は原因がわかっていません。
合併した症例が比較的多くみられることから、さまざまな物質が原因で起きるアレルギー反応として発症しているのではないかといわれています。
症状を教えてください。
症状として多くみられるのは、強い目の痛みです。
目の奥深くで刺すような痛みや圧迫されているような痛みが生じ、日常生活や睡眠にも影響が出ます。特に夜に悪化する傾向があり、ときには顔から顎にかけて広範囲に痛みが広がるケースもみられます。また、眼球の充血や涙の量の増加、さらに明るい光に対して過敏になる羞明(しゅうめい)という症状も出る可能性が高いです。
充血する範囲は眼の全体だけではなく、上方部分のみ、あるいは鼻の近くの内側部分のみに発症することもあるでしょう。なお、多くの場合強膜炎は眼の前側で発症しますが眼の後ろ側で発症するケースもあり、この場合は視界の霞みや視力低下といった症状が出やすいです。
後ろ側での発症は後部強膜炎と呼ばれ、一般的な前部強膜炎とは区別していますが、両方発症するケースもあります。また、強膜炎は場合によって強膜の一部が溶け、強膜の内側にあるぶどう膜が透けることで白目が青紫調に見えることがあります。
症状が進行すると眼球の強度がもろくなり、眼球に穴があく眼球穿孔が生じ、失明や眼球摘出となるため非常に危険です。その他、網膜剥離・ぶどう膜炎・続発性緑内障などが合併する可能性もあります。
目の奥深くで刺すような痛みや圧迫されているような痛みが生じ、日常生活や睡眠にも影響が出ます。特に夜に悪化する傾向があり、ときには顔から顎にかけて広範囲に痛みが広がるケースもみられます。また、眼球の充血や涙の量の増加、さらに明るい光に対して過敏になる羞明(しゅうめい)という症状も出る可能性が高いです。
充血する範囲は眼の全体だけではなく、上方部分のみ、あるいは鼻の近くの内側部分のみに発症することもあるでしょう。なお、多くの場合強膜炎は眼の前側で発症しますが眼の後ろ側で発症するケースもあり、この場合は視界の霞みや視力低下といった症状が出やすいです。
後ろ側での発症は後部強膜炎と呼ばれ、一般的な前部強膜炎とは区別していますが、両方発症するケースもあります。また、強膜炎は場合によって強膜の一部が溶け、強膜の内側にあるぶどう膜が透けることで白目が青紫調に見えることがあります。
症状が進行すると眼球の強度がもろくなり、眼球に穴があく眼球穿孔が生じ、失明や眼球摘出となるため非常に危険です。その他、網膜剥離・ぶどう膜炎・続発性緑内障などが合併する可能性もあります。
どのような初期症状がみられますか?
初期にみられる症状としては、やはり目の痛みから異常を感じるケースが多いです。また、充血や羞明もよくみられます。視力が大きく低下することも少なくありません。
なお、症状は約3分の1の人が両目で発症しています。30~50代の女性に多くみられることも特徴のひとつです。
なお、症状は約3分の1の人が両目で発症しています。30~50代の女性に多くみられることも特徴のひとつです。
強膜炎の治療
どのような検査で診断されますか?
医師は眼の症状と外観を評価し、併せて細隙灯顕微鏡検査を行います。細隙灯顕微鏡とは、帯状の光を目に当てて眼の前部を観察する拡大鏡です。強膜炎の範囲・程度などがわかります。
後部強膜炎の有無を調べるためには、CT(コンピュータ断層撮影)や超音波検査で眼の内部を評価することが必要です。MRI・Bモードエコー検査・眼底検査で確認するときもあります。
さらに診察時には関節痛・背中の痛みや消化器症状の有無を確認し、全身性疾患との関連が考えられるときには、原因となる病気を特定する検査を行うこともあるでしょう。身体診察と併せて、血液検査・胸部レントゲン写真などの画像検査・尿検査などが行われます。
場合によっては塗抹標本や生化学検査が必要になるケースもあります。ただし強膜炎は検査をしても原因がわからないケースが多く、ひとまず治療に踏み切るケースも多いです。
後部強膜炎の有無を調べるためには、CT(コンピュータ断層撮影)や超音波検査で眼の内部を評価することが必要です。MRI・Bモードエコー検査・眼底検査で確認するときもあります。
さらに診察時には関節痛・背中の痛みや消化器症状の有無を確認し、全身性疾患との関連が考えられるときには、原因となる病気を特定する検査を行うこともあるでしょう。身体診察と併せて、血液検査・胸部レントゲン写真などの画像検査・尿検査などが行われます。
場合によっては塗抹標本や生化学検査が必要になるケースもあります。ただし強膜炎は検査をしても原因がわからないケースが多く、ひとまず治療に踏み切るケースも多いです。
治療方法を教えてください。
基本的には副腎皮質ステロイドの点眼を行います。炎症が広範囲に出ていたり充血が強く出ていたりすると、ステロイドの注射または内服を行うケースもあります。
注射の場合は複数回の通院が必要です。多くの場合、ステロイドを全身投与することで痛みや充血は軽快する傾向です。しかし、ステロイドは大量に投与し続けると副作用の不安があるため長期的な投与はできません。
強膜炎の症状が再発するかその徴候がみられる場合は、ステロイドを全身投与するのではなく点眼に留め、非ステロイド抗炎症薬の内服で経過を見ることが多いです。
症状が強くステロイドの全身投与以外に選択肢がないと思われる場合でも、長くて2週間程度に抑えるのが理想です。また、発症の原因が感染症であるときは、抗生剤や抗菌剤を併用します。
一方体の疾患が原因となっていたときは、その疾患に対する治療も必要です。また、穿孔のリスクがある場合は手術が必要となります。
注射の場合は複数回の通院が必要です。多くの場合、ステロイドを全身投与することで痛みや充血は軽快する傾向です。しかし、ステロイドは大量に投与し続けると副作用の不安があるため長期的な投与はできません。
強膜炎の症状が再発するかその徴候がみられる場合は、ステロイドを全身投与するのではなく点眼に留め、非ステロイド抗炎症薬の内服で経過を見ることが多いです。
症状が強くステロイドの全身投与以外に選択肢がないと思われる場合でも、長くて2週間程度に抑えるのが理想です。また、発症の原因が感染症であるときは、抗生剤や抗菌剤を併用します。
一方体の疾患が原因となっていたときは、その疾患に対する治療も必要です。また、穿孔のリスクがある場合は手術が必要となります。
治療期間はどのくらいでしょうか?
治療期間は症状の程度によって異なるため、1~2週間程度で済むときもあれば、約1ヶ月程度かかることもあります。症状が再発するケースも多くあるため、医師による定期的な診察が非常に大切です。
ステロイドの副作用を考えると使用期間や量の調整が必要になるため、医師と相談しながら治療を続けましょう。
ステロイドの副作用を考えると使用期間や量の調整が必要になるため、医師と相談しながら治療を続けましょう。
強膜炎は自然治癒しますか?
上強膜炎であれば自然治癒するケースもいくつかみられますが、強膜炎の場合はほとんどみられません。また日常生活や睡眠に影響が出るほど目の痛みが強く出るため、早期に病院へ受診することをおすすめします。
放置しておくと視力低下のリスクがあるだけでなく、最悪の場合失明する恐れもあり非常に危険です。
放置しておくと視力低下のリスクがあるだけでなく、最悪の場合失明する恐れもあり非常に危険です。
強膜炎の予後
再発することもあるのでしょうか?
強膜炎が再発するケースは珍しくありません。治療が遅れると重症化するリスクも高いため、早期に治療を開始することが非常に大切です。特に壊死性強膜炎に至った場合、症状の進行が早かったり手術が必要になったりと、治療に猶予がなくなる可能性が高まります。
一旦症状が治まったからと自己判断で通院を止めるのではなく、必ず医師と相談しながら再発のリスクに備えてください。
一旦症状が治まったからと自己判断で通院を止めるのではなく、必ず医師と相談しながら再発のリスクに備えてください。
死亡率を教えてください。
壊死性強膜炎に至った患者のうち基礎疾患で全身性血管炎がある場合、最大50%の人が10年以内に死亡するといわれています。その大半は心筋梗塞が直接の死因になりますが、強膜炎が関連している死亡例といえます。
なお、強膜炎のみの発症で死に至るケースはほとんどみられません。検査で合併症の有無を早期発見することが非常に重要になります。
なお、強膜炎のみの発症で死に至るケースはほとんどみられません。検査で合併症の有無を早期発見することが非常に重要になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
強膜炎が発症するケースはあまり多くはないものの、一度発症すると再発するケースも多い厄介な病気です。また壊死性強膜炎になると穿孔によって失明するリスクがあるため、早期に治療を開始することが非常に大切です。
失明までには至らなくても、数年以内に視力が低下するケースが多くみられています。そして何より目に強い痛みが出るため、様子を見ているのは身体的にも精神的にも大きな負荷がかかるでしょう。
病院ではステロイドを使用して痛みを緩和させると同時に、検査によって可能な限り原因を調べ、一人一人に適した治療を行います。目に痛みがあったり充血したりといった症状が出た場合はぜひ早めに病院を受診し、医師と相談しながら治療を続けてください。
失明までには至らなくても、数年以内に視力が低下するケースが多くみられています。そして何より目に強い痛みが出るため、様子を見ているのは身体的にも精神的にも大きな負荷がかかるでしょう。
病院ではステロイドを使用して痛みを緩和させると同時に、検査によって可能な限り原因を調べ、一人一人に適した治療を行います。目に痛みがあったり充血したりといった症状が出た場合はぜひ早めに病院を受診し、医師と相談しながら治療を続けてください。
編集部まとめ
強膜炎は失明する可能性もある危険な病気ですが、早期に治療を開始することでリスクは回避できる可能性が高いです。
目に痛みが出た場合は我慢せず、できるだけ早く病院を受診しましょう。上強膜炎であれば自然治癒する可能性もありますが、自己判断するのはほぼ不可能です。
医師のアドバイスを受けながら、治療方針に沿って通院を続けることが再発予防に繋がります。
大切な視力を失わないためにも、早めの行動と継続的な治療を心がけましょう。